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TPB(スウェーデン国立録音点字図書館)

TPB(スウェーデン国立録音点字図書館)

目次

TPBでは、地方の図書館と協力して、印刷物を読むことに障害を持つ人々に、文学へのアクセス・サービスを提供しています。 TPBの資金は全面的に政府から出ています。TPBの目的は録音図書及び点字図書を製作し、貸出することにあります。更に、TPBでは録音図書及び点字に関するアドバイスをし、情報を提供しています。

TPB(スウェーデン国立録音点字図書館)

録音図書

録音図書は視覚障害者など印刷物を読むことに障害をもつ人々に貸し出されます。地元の図書館で借りることができます。
TPBは図書館に対して録音図書の貸し出しを行う国のセンターでもあります。1997年時点で、既に54,000タイトルを越える録音図書を所蔵し、毎年3,000冊ずつ追加されています。また、TPBでは45言語に及ぶ書物を集めています。

点字

TPBは毎年、およそ400タイトルの点字図書を出版し、1997年度で約9,500タイトルを貸し出しています。多くのタイトルは、また、購入もできます。点字図書の利用のほとんどが、TPBに直接連絡をとって行われ、新しいタイトルの多くは要望を受けて製作されます。
TPBは、また、手で触わる絵本だけでなく、点字を差しはさんだ絵本も提供しています。盲ろう者や盲人のための利用者サービスでは、個人的な文書、雑誌の記事、処方箋、マニュアル等の点訳も行います。The Swedish Braille Authority(スウェーデン点字委員会)の課題は点字の標準化にありますが、TPBとも関係してきます。

教育関連サービス

TPBでは大学レベルの印刷物を読めない学生を対象に特別なサービスを用意しています。このサービスにより、学生は録音図書、電子テキスト本、点字、拡大文字テキストによる専門文献を利用することができます。これらの本はTPBの制作によるもので、仕事上その利用を望む専門職の人々も借りることができます。

研究と開発

DAISY (Digital Audio-based Information System) は、新タイトルの録音図書をつくったり、旧式の録音版を新しくしたり、また、マルチメディア対応のコンピューターで録音図書を再生できるようにするために開発されてきたものです。
DAISYの開発は、国際的なコンソーシアムにより続けられています。
また別なプロジェクトでは、視覚障害者が手で触れる絵をどう感じ受け止めるのかを研究しています。

法規

印刷物を読むことに障害をもつ人々に対するスウェーデンの図書館サービスは、以下のような法律によってサポートされています。スェーデン国憲法、著作権法、図書館法、 LSS法、そして郵便規定です。

スウェーデン国憲法

スウェーデン国憲法は、第2条により、すべての国民に情報の自由と言論の自由を保障しています。
これは、印刷物を読めない障害のある市民もまた、どんな媒体にせよ、アクセス可能な媒体があるならば、書かれた情報に対する権利を等しく持つものであると示唆しています。

著作権

スウェーデン著作権法により、図書館や政府により正式に認可された団体は、印刷物を読めない障害をもつ人々への貸与を目的に、出版されている本を録音図書にすることができます。これは著作者や出版社の許可なく行えます。また、出版物の点訳コピーについては、誰もがその権利をもっています。

図書館法

スウェーデン図書館法は骨格を成す法で、すべての地方自治体が市民に図書館サービスを提供するものであることを明記しています。また、第8条では、公共図書館及び学校図書館は、障害者と文学の必要性に特に注意を払うべきことを謳っています。

LSS法

何らかの機能障害をもつ人々への支援とサービスに関するこの法律では、各地方自治体が機能障害を持つ人々に日常必要となるサービスと情報を提供しなくてはならない旨を述べています。

郵便規定

スウェーデンは、スウェーデン郵便規定、第2条によって、万国郵便連合(Universal Postal Union)の、点字及び録音図書を盲人図書館から利用者へ、利用者から盲人図書館へと無料郵送する、との規則に従うことに同意しています。

貸し出し

印刷物読書障害の人々(すなわち、視覚障害者、身体障害者、読み書きに障害のある者、知的障害者、難聴者(聴力の訓練に)、慢性的な病気のある者、回復期にある者)はすべて
録音図書を借りることができます。地元の図書館を利用することになりますが、医療証明書は必要ありません。

公共図書館

スウェーデンでは、録音図書の貸し出しは公共図書館制度の一環としてあります。
288ある地方自治体の公共図書館は地方当局により運営され、地方税によって賄われています。24の大図書館は、国の図書館としても機能し、助言を与えたり、図書館間の貸し借りの仲介や図書館の改善も行っています。これらの活動資金は、県議会の基金や政府の補助金によります。
地方図書館は独自に録音図書のストックを持ち、各県立図書館はかなり大きな録音図書のセクションをもっています。

図書館間の貸し借り

TPBは図書館どうしで録音図書の貸し借りを行うための国立のセンターです。スウェーデンのすべての図書館及び学校は、直接に、TPBから録音図書を借りることができます。
また、コレクションの借り受け、つまり、数ヶ月に渡って多数の書物を借りることもできます。貸し出し期間は、普通、4週間です。録音図書が図書館の間を行き来する際の郵送料は免除されます。
地元の図書館に行けない人々は録音図書を自宅に無料で送ってもらうこともできます。と言っても、大抵の利用者は図書館に出向くことを好みます。点字読者は、TPBから直接借りることもできますし、地元の図書館や学校を通して借りることもできます。
TPBはMARCフォーマットでデジタルのカタログを用意しています。カタログには直接アクセスできますし、また公共図書館のデータベース経由でも可能です。CD-ROMにもなっています。1997年には、カタログをインターネットで見ることができるようになります。

印刷物を読むことに障害を持つ人は録音図書を借りることができます。
視覚障害者、知的障害者、身体障害者、読み書きに障害のある人々、
失語症者、難聴者、慢性疾患の患者、回復期にある人々です。

録音図書の製作

スウェーデンでは毎年3,000タイトルの録音図書が製作されています。これに対し印刷図書はおよそ12,000タイトルです。
録音図書はそのほとんどがTPBにより製作され、ナレーション部分は、いくつかの契約スタジオで行われます。録音図書はスウェーデン政府から特別な許可を得た団体だけが製作にあたることができます。TPBではデジタル録音図書の製作も始まっています(『研究と開発』の項にDAISYについての詳細があります)。
スウェーデンでは、市販のカセットブックも少量ながら製作されます。
TPBは図書館どうしの貸し出し用に、他の製作者からもカセットブックや録音図書を入手しています。これには外国語の図書も含まれますが、この外国語に関して言えば、TPBは45ヶ国語に及ぶ大きなストックを持っています。ある言語による特定のタイトルを探し、カセットがなかなか見つからない場合、TPBで録音することもできます。

様々な録音図書

TPBは54,000タイトル以上の録音図書を所蔵しています(1997年現在)。年齢、ジャンル、テーマ別に、それぞれ様々な本が用意されています。借りたいと申し出のあった本がまだ録音されていない場合は、録音を提案することもできます。TPBは読者の要望で録音図書を製作することに大変積極的です。
録音図書の中には、学習障害者や知的障害者を対象にナレーションが入っているものもあります。
視力はあるが読むことに障害のある人達のために、TPBは読書訓練用録音図書を製作しています。これらの図書では2、3種類の速度から選んでナレーションを聞くことができます。自分に最もあったスピードで聞き、同時に印刷されたテキストを読むことになります。
挿絵が豊富に入ったノン・フィクションの図書の中には、印刷本の方の該当ページを常に指示してくれるタイプの録音図書もでています。
特に知的障害者向けに行われた録音では、音楽や家庭内の音などを使った、音による描写が入ります。テキストは、いつも短かめの読みやすい本から採用され、はっきり且つゆっくり、といった仕上がりになっています。また、特殊効果のない、ゆっくりとした速度で読まれる録音図書もあります。

点字

TPBは、また、スウェーデンの最も大きな点字出版社であって、毎年約400タイトルずつ制作しています。これらは契約しているいくつかの点字印刷所へ発注されます。制作はコンピューター化していて、盲人であれば点字本を補助金対象価格で購入できます。
タイトルの多くは利用者の要望により制作されます。これらの利用者の希望に応えていくのがTPBの希望でもあります。このサービスについての評判が広まるにつれ、要望もどんどん舞い込むようになり、貸し出しも増加しました。現在(1997年)、およそ9,500タイトルの点字本があります。
ほとんどの点字本は短縮化されていない点字を使い両面印刷されます。初心者にとって点字が分かりやすいように、ダブルスペースで(行間を倍に広くとって)印刷されることもあります。

絵本

TPBはまた絵による描写を挿入した絵本を作っています。点字を印刷した透明なプラスチックのシートを挟み込むことで、視覚障害者の親が、目の見える子供に読んで聞かせることができるからです。
さわる絵本は視覚障害者の子供のために制作されます。子供が絵のそれぞれの部分をより簡単に識別できるように、異なった素材を使って作られます。これらの本は点字同様拡大文字でも読めるようにしてあって、浮き彫りにされた絵ははっきりとした色使いにしてあります。

点訳サービス

盲ろう者の点字読者及び盲人の点字読者のために、TPBは利用者サービスを設けています。手紙、マニュアルなど個人的な文書を点訳してもらえます。また、利用者は一般の定期刊行物の記事を点訳してもらうこともできます。

スウェーデン点字委員会(The Swedish Braille Authority)

スウェーデン点字委員会はTPBが援助する評議会です。
この団体は点字の標準を定め、その推奨を行い、点字使用の促進を図っています。スウェーデン文学の点字表記法による改訂版と数学完全表記法が、1997年に、8点方式新コードと共に出版されました。

教育関連サービス

TPBでは印刷物を読むことに障害をもつ大学生レベルの学生に対して特別なサービスを提供しています。ここで言う障害とは、視覚障害、身体障害、ディスレクシアです。学生は録音図書、電子テキスト本、点字、拡大文字テキストによる専門文献を利用することができます。録音図書は通常カセットテープで配布されます。しかし、TPBではCD-ROMの形で配布するデジタル録音図書のプロジェクトも進めています。(DAISYについての詳細は「研究と開発」の項をご参照下さい。)
電子テキスト本は、言語シンセサイザー、拡大スクリーン、点字パネルを使って読むことが可能です。フロッピーディスクやCD-ROMに保存され、テキストヴューと言うプログラムを使って読むことができます。このプログラムにより、目次あるいはインデックスから特定の箇所を見つけられますし、ブックマークを付したり、余白への書き込み、部分的なコピーもできます。
TPBでは、また、外国語の専門文献を提供していますが、外国の国々と協力し、録音図書の点字の貸し出しも行っています。TPBの製作による録音図書、点字本は、専門職にある人が仕事で使う時にも借りることができます。

研究と開発

TPBは技術の発達を生かし、役に立つ新技術を図書館環境に実現させていく責任があります。
TPBにより開発されたデジタル録音図書システム、DAISYは、今や、国際的なプロジェクトになっています。盲人のための絵の研究もまた国際的な注目を集めています。

DAISY

DAISYとは英語名のDigital Audio-based Information System の頭文字をとったものですが、録音図書の新タイトルの録音や、古い録音を新しくするなど、マルチメディア機能をもつコンピューターで録音図書を聞くために開発されたものです。目下のところ、録音図書はCD-ROMで配布されていますが、将来の新しい配布技術にも対応できるようなシステムにしてあります。
デジタル録音図書には利点がたくさんのあります。録音された目次から録音図書の全域に即座にアクセスすることができますし、ブックマークを付したり、アンダーラインをつけたり、また、余白にノートを取ることも可能です。

国際的なコンソーシアムがDAISY、つまりデジタル録音図書システムの開発を責任を持って進めています。
インターネットの http://www.daisy.org/ をご覧下さい。

DAISYコンソーシアムの目標のひとつは、デジタル録音図書及び市販録音図書の事実上の標準としてDAISYという概念を確立することにあります。

連動性(同期化)

DAISYシステムの中の電子テキストプログラムであるテキストヴューと音声再生を連動させようとのプロジェクトがあります。図書のある部分は合成音や点字パネルで読み、もっと複雑な部分はナレーターが説明するというものです。TPBは、更にもうひとつ、プロジェクトをあたためていて、その目標は電子テキストとデジタルによる絵を連動させることです。

触わる絵

TPBが手がけ、関わっているいくつかのプロジェクトには、視覚障害者はどう触わる絵を感じとっているのかを調べるものがあります。
子供のための絵本のほかに、TPBでは、大人のための触わる本を制作しようとしていますが、これは主としてスウェーデンの遺産、例えば建築や石の彫刻などを見せるためのものです。共同プロジェクトでは、弱視の子供たちのためにCD-ROMを制作しています。絵ははっきりとした輪郭とはっきりした色使いで対象を示します。

国際協力

TPBは、録音図書の貸し出しに関し、多くの国々と協力をしています。
スウェーデンの録音図書を借りたいと望む他国の人々には、TPBから直接送付しています。TPBは国際図書館連盟、IFLA(盲人図書館部門)のメンバーです。TPBからはDAISYコンソーシアムの会長も選出されています。

情報

TPBでは図書館や学校向けに、無料で、カタログ、テーマ・リスト、パンフ、ポスターなどを提供しています。
情報は、また、カセットの形でも入手できます。インターネットには、定期的なレポート、定期的刊行物およびホームページを載せています。

その他のサービス

多くの日刊紙、ジャーナル、雑誌にはカセット版があります。各県および一部の市町村ではカセットによる特製の定期刊行物もあります。多くの市町村で、テープによる地域利用者サービスを提供しています。

歴史的背景

スウェーデンの最初の盲人図書館は、1892年、点字協会の主導により設立されました。始まったばかりの頃から、ほとんどボランティア・ベースでその活動が行なわれ、1911年、盲人協会が点字協会から引き継いだ後も、状況は変わりませんでした。最初のスウェーデンの録音図書は1954年にワイヤーに磁気で書き込む形で製作されており、オープン・リールの録音図書は1955年からになります。1970年代には、カセットにコピーされるようになりました。TPBは、1980年から、文化省と教育省の管轄下に置かれる国の機関となっています。