母親が語る『発達障害のある大学生、ユニコと歩む日々』 その3
ユニコ、小学校入学を前に検査を受ける
ユニコの状態について、障害ではないかと考え、検査を受けて、下された診断を抵抗なく受け入れられたのは、その当時始めた仕事と関係がある。
ちょうどこの頃、以前一緒に活動していたボランティア仲間が、障害・福祉・リハビリテーション関係の翻訳の仕事を紹介してくれたのだ。
いろいろな文献を訳す中で、この分野について勉強する機会を得て、
さまざまな障害に、さまざまな支援法があることを知り、
たとえ障害があっても、それぞれにあった支援を受けながら生きていけるのだという前向きな考えが、自然と身についたように思う。
あの時この仕事をしていなければ、もっと長い間悩んだかもしれない。
「障害」という現実に打ちのめされることなく、
「支援」に向けて気持ちを切り替えられたのは、
同じように障害を持ちながら生きる人々の姿に、文献を通じて触れる機会があったから。
ちょうどよいタイミングでこの仕事を紹介してくれた友人には、心から感謝している。
ユニコのはじめての心理検査は、幼稚園年長の秋。
私立の特別支援学校に相談したところ、ラッキーなことに、あまり待たずに検査を受けられた。
首が座ったばかりの弟を背負い、ユニコの手を引いて学校に向かう。
結果は、動作性IQが言語性IQよりも10近く低く、
自分の中で、できることとできないことの差が大きくて、
学習障害が疑われるとのこと。
その後、区の福祉ケアセンターでも検査を受け、高機能自閉症と診断された。
検査は7歳と11歳の時にも、当時通っていた民間の支援機関や、リハビリを受けていた病院で受けたが、
そちらの結果では、言語性IQと動作性IQの差が、さらに40近くまで広がっていた。
生来の読書好きから、年齢とともに読書量が増え、言語性だけが突出して発達した結果ではないかと思う。
こうなると、自分の中でのアンバランスさが生きづらさになる。
特に目立っていたのが、知覚統合の苦手さだった。
別の民間機関で、視覚認知発達検査も受けてみた。
すると、立体や奥行の把握が苦手
対象を目で追い続けることが苦手で、頭ごと動かして対象を見てしまう
前庭覚が未発達で、運動しながら対象を見続けるのが苦手
1つのものを、環境や大きさが違っても同じものとして把握するのが苦手
ばらばらなもの、部分だけのものから全体像をイメージするのが苦手など、
いろいろとユニコの特徴がわかった。
言われてみれば、なるほどと思い当たることばかりで、検査を受けて本当によかった。
それまで周囲に責められてきた、親のしつけや子育ての失敗、
ユニコ自身のやる気のなさや練習不足、努力不足でもなく、
誰のせいでもないことだとわかったから。
今、悩んでいる人には、まず、検査を受けてほしい。
診断名を得るために、ではなく、
どんなことが苦手で、どんなやり方でそれを補えるのかが、はっきりするからだ。
検査は、それを知るとても有効な手段である。
ユニコが小学校に入学するに当たり、通級学級に入れたいと考えて、就学相談も受けた。
自分1人では、ユニコの学校生活をどう助けてやったらいいか、わからなかったので、
通級でユニコに必要な支援を受けたいと考えたのである。
入学先の小学校にも、就学時検診のときに申し出て、校長先生と事前にお話しした。
特に、水泳の授業など命にかかわることは、親もできる限り協力していきたいと。
その後、希望がかない、通級に受け入れてもらえることになり、少し肩の荷が軽くなったのを覚えている。