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DAISYの活用事例を中心にして(第12回LD学会自主シンポジウム)

DAISY(Digital Accessible Information System)の活用事例を中心にして

野村 美佐子
財団法人 日本障害者リハビリテーション協会

野村氏が講演を行っている様子

こんにちは。日本障害者リハビリテーション協会・情報センターの野村と申します。

先ほどお話しいただきました河村さんは7月まで私の上司でした。その下で普及事業をやってきましたので今後も河村さんのアドバイスを受けながらDAISYを普及していきたいと考えております。

DAISYに関する情報というのは、私が担当しておりますDINF(障害保健福祉研究情報システム)、正式名称は“Di s a b i l i t y I n f o r m a t i o n Resources”というウェブサイトにあります。ここは障害者関連の情報が入っているのですが、特に“情報アクセス”というところに力点を置きまして、色々な障害者の方がどうやって情報を受けていくのだろうか、どうやって情報を提供したらいいのかとか、そういった情報をDINFの「情報アクセス」というカテゴリーのなかで紹介をしています。例えばディスレクシアに関する情報を外国から収集して翻訳して掲載しているわけです。DAISY の関連情報として見ていただければと思います。

それから先ほど申し上げました、国連世界情報社会サミットも頑張って、本当は英語なのですけれども日本語に訳してDINFのウェブサイトに掲載しておりますのでぜひ見ていただければと思います。尚、国連世界情報社会サミットは12 月10 日から12 日にスイスで開かれ、河村さんは障害者のコミュニティのフォーカルポイント(代表)として出席します。DINF にもその情報が掲載されることになりますが、来年の1月30 日(金曜日)に国連世界情報社会サミット報告会を開催いたします。こちらにお住まいの方は少し遠いですが東京に来ていただいて、最新の情報をぜひ聞いていただければと思いますのでよろしくお願いします。

さて、DAISY の話に入ります。
私どもは認知・知的障害者を対象としたDAISYの普及に携わり大体3年になります。基本的にはDAISYというのは視覚障害者のために始まったシステムなので、多くの人はDAISYと聞かれると、「ああ、視覚障害者の録音図書ですね」とおっしゃる方がいるのですが、今、私達が頑張って普及しようとしているのは認知・知的障害者を対象とした“マルチメディアDAISY”なんですね。視覚障害者のための音声だけのDAISYは、それがさらに発展・開発が進み、認知・知的障害者にも有効であるということでマルチメディアDAISYの普及が始まりました。2年前ぐらいからLD学会の方にも出席させていただきまして、普及活動に努めています。なかなかうまくいかない面もあるのですが、教育関係の方々に、DAISY をどうやって制作するか、実際に当事者がどう感じるのか、どう使ってもらえるのか、そういった研究開発をずっと行ってきました。そして今年が3年目になります。その3年目の成果をここで発表したいということで今回のシンポジウムになりました。まず、DAISY というものをご存じない方、手を挙げてもらっていいですか。……あ、何人か知らない方がおりますね。DAISY の正式名称は“デジタル・アクセシブル・インフォメーション・システム”といいます。昔は“デジタル・オーディオ・ベースト・インフォメーション・システム”といいました。音声だけの録音図書からそれがマルチメディアになって誰にでも使える情報提供システムということを意味しています。DAISY というのは、音とテキストと絵が“シンクロナイズドされる(同期される)”と言いますが、同時に見ること、聞くこと、読むことが出来ます。この3つが一緒になることによって、様々な障害者に役に立つのではないか、認知・知的障害者にとっても役に立つのではないか、ということで、マルチメディアのDAISY システムが作られました。では、ちょっと見ていただきたいと思います。

-DAISY 録音図書 赤いくつ- ある愛の物語- をDAISY( LpPlayer)で再生-
(音とテキストと絵がシンクロしている)
daisy図書

(再生されている音)赤いくつ ある愛の物語
ビョ- ン・アーベリン、ロッタ・ソールセン
daisy図書

「私はサンダルをもう取り替えたの。」アンネリーは言った。
もう怖くはなかった。
「私、サンダルは欲しくはなかったの。わかってちょうだい、ママ。私はもう大人なの。自分で決めたいの。」

(再生終了)

([赤いくつ- ある愛の物語]はスウェーデンLL(かんたんによめる本)出版よりdaisy化を許諾されています。)

これはスウェーデンの本で知的障害者の女の方が主人公です。それを私共で訳しまして、テキストにし、絵をスキャナで取り込み、マルチメディアのDAISY の絵本を作りました。これはスウェーデンでわかりやすい図書・やさしい図書という基準で製作されておりますので、私共もやさしい言葉で翻訳をし、これをDAISY 化いたしました。このDAISY 録音図書「赤いくつ」を再生しているソフトは、“LpPlayer”と言います。現在は目次が見えないようにしてありますが、このようにすると目次が左側にでてきます。この目次は自由にページからページにとぶことができます。この機能をいかしますと、辞書のような厚い印刷物でも自分の好きなページにとぶことができるというのが、DAISY の特徴の一つになります。それからこの目次というのは、もしうるさいなと思った方は、今のように隠すことも出来ます。それから、もうちょっと字を大きくしないと見えない、または見にくいなーという方もいらっしゃると思います。その場合はフォントサイズを変えることが出来ます。たとえばこういうふうに大きくしたり小さくしたり調節することが出来ます。それから、人によって、ゆっくり聴きたい方や早く聴きたいと思う方がいらっしゃいますのでスピードも変えることも出来るようにしています。

DAISY は、こういった特徴のあるソフトですけれども、さらに開発し、もうちょっと違う機能があれば、キーボードを使わなくても使えるんじゃないか、とか、視覚障害者のために点字ディスプレイ、わかる方いらっしゃいますか、点字が浮き上がってくるものなんですけれども、そういうものとつなげれば、視覚障害者も読めます。それから、例えばこういうジョイスティックをパソコンにつなげ本を読むのが辛いと思っている人が、こういうものを使うことで、ちょっとゲーム感覚で聞くこともできる。本に注意を惹きつけることができると考えまして、そうやって作られたのが「AMIS」なんですね。これは先程のLpPlayer というソフトがベースになりまして、AMIS というプレーヤーができあがりました。ちょっとお見せします。

あ、少し準備に時間がかかるようです。私どもは先ほど申し上げましたように3年間、認知・知的障害者のためのDAISY ということで、普及活動の中で、私たちはいろんな地域、北海道から九州、鹿児島までいろいろな所を訪れ、教育関係者またはLDの親の方たちを集め、DAISYをどうやって作ればいいんだろうという、作り方を勉強していただきました。大体3日間かかります。その中でテキストの作り方とか、絵をどうやって取り込んだらいいかとか、そういったことを勉強していただきました。その中で、作ったものをどうやったら様々なユーザーの方が使えるのかということで、AMISがうまれました。そろそろAMIS が立ち上がってきたようですのでご覧下さい。

- D A I S Y 録音図書「バースデーケーキができたよ! -」をAMIS で再生-
(音とテキストと絵がシンクロしている)

daisy図書 バースデーケーキができたよ!”を再生している画像

(再生されている音)バースデーケーキができたよ。
作・絵 くぼりえ

daisy図書 バースデーケーキができたよ!”を再生している画像

今日はりえちゃんのおかあさんのたんじょうび。
りえちゃんはおねえちゃんにてつだってもらってケーキをつくることにしました。
じぶんたちだけでつくってびっくりさせたいのです

daisy図書 バースデーケーキができたよ!”を再生している画像

ケーキのざいりょうを探しています。
「こむぎこ、さとう、たまごに……」)
(再生一時停止)

([バースデーケーキができたよ!]は出版元のひさかたチャイルド様のご好意によりdaisy化を許諾されています。)

AMIS は、簡単に作られていますので、多分パソコンが苦手だと思う人も使うことができるし、タッチパネルをこのようにつなげればこうやって指で触れ動かすことも出来るので、障害によってパソコンのキーボードを押すのが不自由だったり、嫌だな、と思う方は、AMIS の画面の下の操作ボタンを押せば色を変えたり、フォントも変えることができます。又、パソコンの知識が少しあれば、ホームページがおわかりになる方はご存じかもしれませんが、スタイルシートというものを変えることにより、大きさ、色、をニーズに応じて作り替えることができるわけです。ちょっと知っていればそういうこともできます。それから視覚障害者のピンディスプレイ、点字、モニターがあれば拡大文字もできますので、弱視の方にも使うことが出来ます。コアのプログラムが一つですが、それを付け加えていくことで、いかようにも使うことができるというのが、AMIS のミソになります。よろしかったら使ってみて下さい。
この情報に関しては、先ほど申し上げましたウェブサイト(http://www.amisproject.org/[英語])にあります。

では先程のAMIS の続きをご覧下さい。

- D A I S Y 録音図書 バースデーケーキができたよ! - をDAISY( AMIS)の再生-
(音とテキストと絵がシンクロしている)

daisy図書 バースデーケーキができたよ!”を再生している画像

(再生されている音)「かいものに いかなきゃ。」
「いってきまーす。」

はい、以上、AMIS をお見せしました。今、お見せしたのは再生用ソフトでしたが、DAISY には制作するソフトもあり私どもでも時々、研修会を開催しております。今後、皆さんそれぞれ関わる人たちのニーズに合わせたDAISY というものはどういうことかということで、今後さらに研究開発を進めていきたいと思いますし、LD 関係の方々、お母さん方、一回自分で作ってみたいなという方は、ぜひ私どもが行う研修会に参加していただければと思います。