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これからの支援のあり方

メインストリーム協会 代表者 廉田俊二

 『支援する側の意識変革』。これが、私の理想と希望を含めた「これからの支援のあり方」の結論です。具体的には次の二つのことをやめる意識変革です。

  1. 支援する側とされる側の上下関係。
  2. 支援する側が利益や見返りを求める。

 これまで私たちは、アジアでの自立生活センター作りを支援してきました。そして、その支援は、かなり特殊な要素を持っています。

 アジアの国々で自立運動や障害者の人権運動を進める、社会を変える、ということは、「小さな革命」を起こすということです。大家族の中での家長主義に対して、自立の理念の自己決定。かわいそうな弱者で庇護される存在から、機会均等な権利を求める存在へ。など様々な価値や考え方を変えていかなければなりません。長い歴史が作り上げてきた伝統や文化さえも否定する場面が出てきます。社会を変えるには、大変時間がかかります。粘り強く続けることが大切です。家族からは活動を反対され、周りからは変人扱いされることもあります。それでも敢えて、「小さな革命」を起こすということは、ライフワークとして人生をかけて、やり続けるということなのです。

 同じ立場の私たちが支援する場合、支援の対象と見るのではなく、同じ目的を共有する仲間と見ます。上下関係ではなく、お互いに何でも言い合える対等な関係を目指します。もちろん、その関係作りには十分な時間を費やし、家族よりも強い絆を作りたいと思っています。この特殊な関係作りこそが、社会を変えるための支援に、なによりも必要な要素だと考えています。

 上記1のように、これまでの支援は、どうしても支援する側、される側、という上下関係になってしまう傾向があります。私たちも自立生活センターを設立して、これまでの18年間に様々な支援を受けてきました。支援する側は、「金も出すけど口も出す」。この当たり前の構図が、支援される側にとっては、なによりも面倒くさいことでした。そして、「なぜ、もっと自分たちを信用してくれないのか」という疑問を抱き始めます。本音で話せない関係の始まりです。

 支援する側は、いちいち細かいことに口を出すな。ほっておいても支援される側から必要なときには相談してくる。これが、私たちが目指している新しい関係での支援です。また、「小さな革命」に2の要素が入ってくると、関係作りには当然支障をきたし、目的を見失い、何のための支援かわからなくなることがあります。
 障害者の人権保障活動や自立運動を続ければ、様々な立場の人権や利益と相反する場面が出てきます。障害者と健常者、障害者と介助者、障害者と障害を持つ者の親、障害者と専門家、障害者と政府。その中に障害者の人権と企業の利益という相反関係が出てきます。それぞれの立場を踏まえて、何が大事なのかを十分理解した上で、2の要素を含まずに支援する。これが実現すれば、社会は大きく変わりそうな気がします。

 簡単そうにみえて難しい、この支援する側の根っこの部分の意識変革こそ、新しい支援のあり方だと思います。