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質疑応答

 司会: ありがとうございました。本当に多くのいろいろな活動があることがわかりました。それでは、長田さんにここで、皆さんの報告を聞いた上での感想を一言いただいて、その後で皆さんとのフリーなディスカッション、質疑応答に移りたいと思います。

  

長田: 感想は、実は大変だったのですけれど、家の夫が今日きているもので、私は通訳をしなければならないので通訳をしながら一生懸命聞いてということで、……。皆さんのお話を聞かせていただいて、すごく勇気づけられたというか、例えば私の思ったことが確信できたというか、やはりいろいろな活動をみんながいろいろやっているからいいのであって、皆さんがやっておられる活動というのは、いろいろお互いに助け合うというか、補い合うことで一つに、一体になっていくのではないか、という気がします。それはやはり大きなオーガニゼーション、例えば千葉さんのやっておられる日本財団さんみたいな大きなところと、小さなところのやっている活動の細かさというか、やっている活動の方向性というのがちょっと違ってきているような気がするし、それはそれであって当然だと思うのですけれど、小さなNGOさんが、大きなところとかODAのJICAとまるきり同じことをやってもそれだけの効果が上がるかどうかわからないし、やはりみんなよく考えているなというか。どこのNGOも、国連などを勉強しなければいけないなという気がしました。国連だって生き残りをやっているとさっきわかっていただいたと思いますけれど、紛争後のレバノンとかを重点的にやるのは必死になって自分がそこに強みがあるから生き残ろうとしてやるだけであって、やはり我々の業界というのはみんなお互いに狭いマーケットをシェアしていきながら、自分が得意なことをやって生き残っていこうとする生き残りのマーケティング精神というのは当然あるということ。

 ただ一つのコンクルージョンというか結論として考えられることというのは、やはり障害の分野というのはみんなそこに行き着いたというか。例えば、小さなNGOさんの場合は例えばドナーダーリンの国で自分のできることを探していたのですね。みんなが競争でやっている中で、どのセクターを特にカバーすればいいのかと探していた結果、障害に行き着いたと。つまり、確かに全体としての国の経済状態は良くなってきたけれど、一般開発としては、全体的な国家経済だけがすべてではないと思うのです。そういった中で経済が向上しているという実態にあまり恩恵を被らなかった人たちを探しているうちに行き着く先が障害と開発であったということだと思うのですね。そういうことで、やはり一つとしては障害と開発というのは今後の開発、特にNGOとかそういう小さな民間団体の開発にとっては、一つの大切なセクターになっていくということ。そういう大切なセクターになっていくというところから見て、この時期に権利条約ができたというのは、権利条約がすべてではないと思いますけれども、そういうものができたということは一番上の政策の分野と、そういうみんながどうやって生き残ろうかと思ってマーケティングをやって行き着く先が障害と開発であったみたいなものと、連携していくことができるのではないかという気がします。そういった具合で、あとは皆さん、いろいろなことをいろんなところでやっているのだなあという話で、そのまま頑張ってくれというか、そこのところであまり引き止まらないで、自分たちのやっていること、こんなことを小さな活動だしプロジェクトベースだし、影響力はないんじゃないかとか思わないで、自分の活動に自信を持ってやっていただいたらいいのではないかと思います。コメントはそれくらいにして、質問とかあったらそちらのほうに移ります。

  

司会: ありがとうございました。それでは、質疑応答に入ります。質問のある方は長田さんに対してでもいいですし、今報告のあった方々でも結構です。それから、ご自分の活動を紹介したいという方でも、そういった報告でも構いませんので、どなたかぜひ、お手をお挙げ下さい。発言の際にはお名前と所属を最初に言ってくださいますようお願いします。

 どうぞ、どんな質問でも結構です。

 今日は学生さんもたくさんお見えになっています。初めて聞くようなお話もあったかと思うのですが、どんなことでもどうぞ躊躇せずに手を挙げてみてください。

  

会場: アジア経済研究所の山形と申します。長田さん、お話どうもありがとうございました。2点質問させていただきたいと思います。

 障害分野の活動を国連の中でより活発にしていくために今後の方向として二つのことを仰ったと理解しました。一つは、ジェンダーにおけるUNIFEM、子どもの権利等に関するUNICEFというような国連機関を障害分野で作るということに言及なさったかと思います。この点について、今後の展望をお伺いしたく存じます。また一方で、現時点ではメインストリーミングしか対策がないと仰ったかと思います。私にはメインストリーミングの中身がぴんときておりません。ジェンダーの場合等でメインストリーミングという言葉を聞いたことはあるのですが、具体的に「活動を活発にする」ということ以上に何か意味があるのか、教えていただければと思います。よろしくお願いします。

  

長田: すごく鋭い質問で、後の質問は完全に飛ばしたところを言われたので。今あわててめくりましたけど。

 最初の質問から答えさせていただきます。最初の質問は、ジェンダーのUNIFEMのように専門機関がないということに関しては、私はそれは弱点だと思っているだけで、そういうことができるという可能性は、今のところ全然ないと思います。

 なぜかというと、国連にそういう機関を作るとか作らないとかいうことを決めるのは、いわゆるメンバーステーツ、だから政府なのです。だからどこの政府が国連総会に来て、こういうのを作るのだということが必要です。作るのだと言った政府は金も出さなければならないということですね。ジェンダーのときは、いわゆる女性差別撤廃条約ができたときに、UNDPの中にジェンダーをやるUNIFEMという資金援助組織を作ろうという、たぶんスカンジナビア諸国だったと思うのですが、そういう欧米諸国が本当に金とやる気があって、金も出して口も出してといった状況でした。要するに金と口を政府が出さないと国連は何も進まないということですね。それから、子供の権利条約では、UNICEFがあったというのは、UNICEFはただ単にラッキーだと思います。具体的にいうと日本政府なども資金を出さない。南‐南協力に関しては、特別な機関ではないのですが、UNDPの中に日本政府が完全に支持している南‐南協力ユニットというのがあるのですって。かなりそこに金も日本は出していて、ちょっと調べてください、どのくらい金を出しているか知りませんが、かなり金も口も日本政府は出していますから。それは障害者の権利条約も何もないのだけど、南‐南協力は日本が音頭を取るのだということで、そのうち日本が完全に南‐南協力、別に組織でなくてユニットでもいいんです、だからUNDPの中だとか。日本が一番便利なのは南‐南協力ユニットというのを日本がほとんど支援で作ったということ。それはユニットだけど金もあるし人材もついているから、組織としてかなり影響力、UNIFEMほどではないけれどかなり影響力はある。そういった資金の機関が全然ないんですね、この権利条約に関しては。だから現在の時点ではメインストリームにするしかないわけで、待っていたらいつまで経っても何もないかも知れないから、頑張ってメインストリームにしようということで。

 一番メインストリームの結果から言えば、国連の中から一番メインストリームで一番効果があるのは、UNDPがやってくれるのが一番いいのですね、本当は。UNDPというのは国連の中でも開発団体ですから、国連の大使館かJICAみたいなものがUNDPなのですね。各国に、140か国以上にUNDPの事務所がありますから、大使館みたいなものです。世界中の140か国以上でUNDPは開発の関係の仕事をしています、必ず。だから、必ずどこかの国で何かやっているわけです。UNDPがメインストリームででは何をするかというと、ここにありますから家に帰ってパワーポイントを読んでいただければもっとわかるのですが、一つとしては、今までの、例えば国連だっていろんな組織があるから、例えばUNIDO(国際連合工業開発機関)とか。UNIDOというのは産業の開発を支える国連の機関なのですが、そういうところに開発の担当者はいなかったのですよね。まず開発の担当者を各機関に置くこと。開発の担当者はこの人だよという、その人がいないと、国連の組織は30以上ありますから、例えばILOだったら障害者の労働と雇用をやっているでしょう?FAO(国連食糧農業機関)だったら農業をやっているわけですね。農業をやっているところに開発の専門を担当する職員がいなかったら、やはりメインストリームではできないですね。だから、まず一番先にメインストリームとしては自分の機関の中に職員を入れるということ。これも資金が必要です、組織としてはね。

 だから、組織の作るメインストリームは三つくらいあると思うのですね。まず組織としてのメインストリームと、それからセクターのプログラムの中での障害の視点を導入することと、最終的には結果ベースの障害のメインストリームと、私はいつも三つに分けて考えています。だから、組織のメインストリームとしては担当者を設置すること、それから組織の中をバリアフリー化すること。さっきJICAさんが言っておられましたけれども、国連ビルの建て直しを今やっていますから、新しい国連ビルは完全に今よりは絶対よくなることは間違いないと思います。そして、これはILOなんかが積極的にやっていますが、やはり障害を持った人を開発機関の職員として採用することもメインストリームになります。今のところそれをやっているのはILOだけですね、国際労働機関だけ。

 そしてUNDPが初めて今それに気づいていますから。UNDPがメインストリームの地域の中に人事を入れているのですね。今国連のメインストリームの中には人事の人が入っていませんから、メインストリームチームに。UNDPさんは最初から組織内のメインストリームチームに人事の人を入れているということで、それはインターナショナルなレベルで言っているかもしれない。でも、クリエイティブで言っていると思うのですね。世界で百何十か所以上に事務所がある国だから、そこで各国の新たな、特にローカル採用というか現地採用をする場合に特にそういう障害者を積極的に採用しようということ、そういうことも組織としてのメインストリームではあるわけです。

 あるいは、職員の訓練ですね、全然障害って何かわからない、なんで障害なんかやらなければいけないのか、障害なんか全然知らないと言っていた担当者を、やはりセンサタイジングする(認識させる)、そういうふうな。特にトップの人ですね、齢のいった人なんかで、私も齢いっていますけれど、齢いっても私のように偉くない人は結構認識しているのですが、齢がいっていて偉くなっちゃった人というのは意外とセンサタイズされていない人が多いのですね。そういう人に、障害の、コンピューターのトレーニングと一緒に障害のトレーニングをやるみたいな。やはりコンピューターの使えない人はもう辞めてもらうとか、障害のことを何も知らない人もついでに辞めてもらうくらい、厳しく職員訓練をやるということ。そういうことですね、それが組織としてのメインストリーム。実際にこれはやると思います。

 セクターごとのプログラムの障害の導入というのもあります。どこも今やらなければならないと思っているのは、やはり統計をとるということ。結局障害の統計が国ごとにないということですね。政策は立てられない、予算もつけられない、頭数を数えるということはそういう意味ですごく大事なのですね、国連のような組織の中では。でないと予算がつかないということになるのですね。それから、統計セクターのデータならば、国ごとに統計セクターの活動に障害統計を組み込むということをやっていて、ワシントングループというのが今あるのですが、国連とかWorld Bank(世界銀行)が一緒になって障害統計をやっています。ESCAP(アジア太平洋経済社会委員会)さんも最近、統計部がメインストリームで頑張って統計のほうをいるなあという感じがするのですが、国連のESCAPとかそういうみんな頑張って統計活動をやっている。

 そして医療セクター、これは特に国連が今やっているプライマリー・ヘルスケアというのがあるのですが、中にCBRを組み込むこと、これはWHOが中心になってやっています。

 あとはICT(情報通信技術)セクター、これも活発に結構最近やり始めまして、やはり権利条約のインパクトが大きくて、ICTセクターに障害を組み込むということで、例としてはESCAPのこれはやはりメインストリームの面で、最近ESCAPはメインストリームのほうで伸びているみたいで、ESCAPでは韓国に今度ICTのセクターができたのですってね。そこでバリアフリーのICTの訓練などをメインストリーム活動として結構やっています。

 それから、障害メインストリームのレポート。そういう評価とかそういうレポートに障害のインパクトを入れていく、組み込んでいくということとか、そういうことですね。評価、モニタリングの中ですね、障害者参加型のプロジェクト、計画の評価をやっていくという当たり前のことですけれど、そういうセクターごとのプログラムを。

 そして最終的にやはり国連の結果ベースと言われますけれども、最終的に大事なのはそういう参加者の訓練をやった参加者のうちの何人が障害者であったとか、そういう中途のアウトカム型のインパクトではなくていわゆる結果型の、アウトカムではなくて、長期的なインパクト型の結果ベースの障害のメインストリームという。結局最終的にはMDGの手法ですね、その開発結果の中に障害者がメインストリームにされたかということですね。つまり、障害者の雇用レベルは上がったのか、教育のレベルは上がったのか、MDGの指標の中でこれがまったく統計にないですから、障害者はじゃあちゃんとMDGの手法の中に入っていたのか。基本的な障害者が生活はよくなったか、あるいはまた政策ベースのアウトカムも説明しましたね。例えば差別は緩和されたかとか。そのモニタリングのための、ベース単位は必要ですね、やはり5年前と比べて差別の状況はよくなったのか、悪くなったのかとか、そういうことのガバナンス(統治)の一つとしてそういうアドボカシーのこともやっていく。結果ベース。一番これはヒエラルキーとして上のところです。

 こういうことを全部まとめて、段階的にやっていくということではないかと。これは全部やっています、国連も。他にだってやりようがないから、今必死になって、国連にはWorld Bankさんの場合は、有名なところではPRSP(貧困削減戦略文書)というのを持っていますよね。貧困政策ペーパーに相当するものが国連にも各国ごとにあるのですよね。今UNDPと言いましたが、今はUNDPに限らず、国連というのは一つの国ということで、UNカントリーチームというようになっているのです、どこも。威張っているのは実際問題UNDPかもしれないけれども、UNDP中心の国ごとのチームではなくて、UNカントリーチームというようになっていますから、すべて国連が一体化して、その国ごとに開発計画書というのを持っているのですね。それをUNDAF (国連開発援助枠組み)というのがありますから、それが国にいったら5か年計画みたいな感じで、国連はこういうのはずっとこれをやっていくのである、そういう計画を作るとだんだん国ごとに一体化することに、なっているのです、国連は。先ほど言ったように、お金がないのは出ないとインパクトがないわけですね、その国のバジェットの。国連全部で、それで変な話ですけれど、国連団体全体でODA予算の15%未満なのですよ、予算から言えば。だから国ごとでやはり一体化してもらわないと、国連が全然目立たないから、だからこの中のUNDAFの計画の中に障害を組み込む必要性があるということで、それに組み込むためのガイドラインを作ったりすることは実際にやっているし、それを作るためのチームもできていますから、進歩はかなりしていると思います。去年私もNYの本部に来て、同じことを聞かれたら、まだやり始めたばかりですと言っていたと思うのですけれど、今年はちょっとだいぶ自信を持って、やり始めたばかりなのですけれど、かなりのプログレスはあります。だから今後あと2年とか3年、2年くらいすると実際にそのカントリーチームでやり始めることはどんどん増えてくると思います。UNDPが一番最初にやるべきかもしれませんね。国連のカントリーチームの中では大抵どこの国でもUNDPが一番大きいのでね。 UNDPはどこの国にも事務所を構えており、援助をやっているわけだから、国連の中では規模的には一番大きいので。

 一番先にUNDPが実際にやり始めて、マッピングをやってもらったのですね。マッピングエクササイズ、どこの国でどれだけ実際に障害と開発をやっているかというマッピングをやってもらったら、意外にびっくりしたのですが、50か国以上の国でUNDPは何らかの形で障害者を対象とした活動を行っているのです、実は。ただそれが今までは権利条約とかがなかったからただばらばらとやっていて、やっていても全然リポートされていなかった。今度はそういうことを、まずマッピングエクササイズからやって、どこの国で何をやっているかということをやって、それが今年の8月にもUNDPが中心となって各国で何をやっているかというフォーラムを作って、それをネットに回しました。ネットというか何と言うか、うまく言えないのですが、私は得意じゃないから,1か月前に流すのです.会議にして、ネットで。それで私も参加しましたけれど、日本で参加した人がいるかどうかはわかりませんが。とにかく1か月か1か月半くらい、そういうネットの、バーチャルというかネットの会議をオープンにして、どこの国で何をやっていますということを公開しています。そういうことを今までUNDPでやったということは過去の歴史にはないから、かなりプログレスはあると思うのですね。

 今度今はその50か国、UNDPだけではなくて国連の国ごとのチーム、その時に私はUNDPだけでは駄目なのだよと言ったのですよ、私の仕事はUNDPだけを見るわけではないから、国チームで全部で見てもらわないと、すべての国連が一体化している中でどれだけ障害が組み込まれているかをマッピングをやってもらわないと進まないよと言ったから、今それをやっています。その結果は出ます、そのうち。結果で数だけでいいのでしたら私が訳して、どこの国が何をやっているかとか、そういうデータがあったら便利ですよね。そういうふうに、メインストリームにしようと頑張っています。

  

長田: 山形さん、ちょっと失礼なのですが、もっとみんなが助けてくれるのだったら、国際機関、なんというかお金がないままで、やはりメインストリームだけだったら弱いから、例えばUNDPの中でもいいから何かユニットくらい作ってくれればいいと思うんですよ、できればUNDPの中に作るのが一番いいと思うのだけれど、それを提唱するというのは政府が言うしかないから、日本政府の場合はお金があるから、いざとなってやるとなれば。日本政府がせっかく南‐南協力のユニットを作ったのだから、UNDP、これは全然私の個人的な意見ですけれど、UNDPの南‐南協力みたいな感じで障害のユニットを作ってくれれば、そして資金源をちょっとでもいいからつけてくれて、そういうふうにしてくれたりしたらかなり効果はあると思います。そういうことですね、今はないから、このメインストリームしかないのです。

  

会場: 来年、大学院では障害と開発に関する学位入学を目指して勉強中です。小島久世と申します。本日は講演ありがとうございました。

 今のにちょっと関係するのですけれど、以前、世界銀行の障害アドバイザーの地位にいられたジュディス・ヒューマンさんのセミナーに参加したときに理解したというか、私なりに理解したことが、障害分野というのはさまざまなところ、さまざまな分野の人たちがその障害の視点を持って、さまざまなところで援助を行っていくというか、障害に特化するのではなくて、さまざまな分野の根本に障害への視点が大事なのだと言われていたと思ったのですけれども、今の国連機関の弱点として、障害に特化した組織がないということを言われていたのですけれども、その組織なりユニットなりができることで、どのようなセオリーになるのか、どのような効果が期待されるのかを教えてください。

  

長田: 本当にいい質問だと思うのですが、やはりメインストリームということを、おっしゃっていることは全部当たっているのですが、理論的には。ジュディス・ヒューマンさんはそうおっしゃったと思いますけれど。メインストリームというのは森さんとかはもうご存知だと思いますけれど、メインストリームというのは結構気をつけなければいけない言葉なのですよね。国連とかそういう組織がメインストリームと言ったときにはだいたいお金もなくてやる気もないときに、メインストリームにしようと、環境問題とか言って環境問題をもうほったらかしたいときには、環境問題はもう環境部も潰します、全部メインストリームにすればいいと。これは開発をやっている人間だったら誰でも知っていることで、メインストリームにするからいいと言われたら気をつけなければ。バジェットをなくして潰しちゃって、格下げするときに手っとり早くメインストリームと言うのが一番いいわけですね。勝手に入れてください。

 でも実際にメインストリームをしようと思うと、組織も要るし人も要るし金も要るのですね。一番要るのは、人は結構要るかもしれません、国連機関というのは、他の組織はどうか知らないけれど、一人でやることのほうが多いから、その人が活発な人だったらいいけれど、人がちょっと代わったらがたっと落ちちゃうとかそういうことが結構あるから。でも本当は一人ではいけないのですけれど。何人かそういう専門、担当官があるとか、実はユニットがあればもっといいわけですね。人が何人もいて、組織があってペーパーも出せる、研究書も書けるくらいの組織活動というものがあって、それで資金がかなりないと、メインストリームは。会議も開けないわけですね、資金がないと。誰もそんな障害のことは誰も知らない、権利条約があったってそれを宣伝するお金もないという状況であっては、メインストリームなんてしなきゃいけない、しなきゃいけない課題が山ほどあるから、その課題の中でどの課題が生き残るか、どちらをとるか。えげつない言い方をするとほとんどゼロサムゲームに近いような状況だと思うのですよ、開発の分野というのは。だってメインストリームですることは山ほどあるわけだから。

 その中で私は、障害は、生き残る可能性は大いにあると思います。なぜかというと、一言で言うと権利条約ができたからだと思います。やはり八大権利条約ですから、かなり人権の中ではレベルが上というか、権利条約ができたからはっきり言うときつい言い方で私も国連に25年勤めていますから、権利条約ができたからやっと動き始めたのですよ。やっと真面目に、何かしなければいけないのではないか、何だこれは、障害、聞いたことないけどやってみよう、わかっている気にみんななっているのだと思うのです。そういうときに、ではこのまま続けてくださいということで、UNIFEMのようにというか。特別の組織、と言ってもツイントラックとごっちゃにしないでください。障害者のメインストリームと障害者のエンパワーメントを両方していかなければいけないというのはもう当たり前の話で。私が言った実施団体というのは障害者のエンパワーメントをするための実施団体ではありません。実施団体というのはメインストリームを含めてメインストリームを強化するための実施団体(担当者)があるし、課題をみんなが忘れないように宣伝するためにもあるし、すべてのことをやっていく。メインストリームというのは私が25年国連で開発ばかりずっとやっていたのですが、メインストリームは金がかかると思いますよ、メインストリームはタダだと思ったら大間違いだと思います。かなりバジェットをつけないとメインストリームなんか消えちゃいますよ、そんなもの。もう風船みたいなもので、国連なんて。1年2年、もうあっという間に。今年はこれ、来年はこれ、去年はこれ、次はこれ。売り出し中の若い女の子の歌手みたいなもので、ぱっと出てきては、ぱっといなくなるというのがメインストリームの世界だと思うのですよ。そこに実績があるとないのと大違い、金がついているかついていないかというのが大違い。その中でジェンダーのように生き残ったものもあるのです。

 国連に関しては、UNIFEMがあったということに関してはやはり、女性の差別撤廃条約とか、女性のジェンダーのメインストリーム化というのはものすごく進んだと思う。それから、メインストリームだけではなくて、サポートする政府がなければ駄目ですね。やはり女性差別、ジェンダーのときは欧米の、特に欧州の政府が最後まですごく頑張ってやっていて、今でもスカンジナビアの国とかがついていますよね、ジェンダーと言ったらもうスカンジナビアでばっとでてきますから、そういうばっと出てくる政府がどこまでいるのかな、という気はします。そんなところがちょっと弱いのではないかな、この権利条約。でもいないことはないです、メキシコとかやはり強いし、メキシコとかが今でもかなり。欧米も結構この権利条約に最近は、できてからは結構サポートは強くなっていますね。中国も結構サポートしています。逆にえげつない言い方をすると、だから日本なんかも相対的なサポート体制の位置というか、日本の相対的なディスアビリティ支援の態度なんかがぐっとこの障害と開発というのが権利条約ができてから落ちていると思います、他の国がやり始めましたからね。落ちていると思います、国際的には。その原因というのは、いいことか悪いか知らないけれど、日本はやはりこのアジアでずっと今までやってきた。私は自分が担当していたからわかるけど、アジアでずっとやってきたというそのプライドと、アジアでずっとやってきたという歴史があるから、そこから抜けきれていないのではないか。日本政府も、あるいは日本のNGOの人も、日本人の人も。そこでどうやってそれにけりをつけるかというと、えげつない言い方をすると、けりをつけると言ってもでも捨てちゃったら、千葉さんなんかもどのように言うかしれないけど、捨てちゃったら駄目ですよ、せっかく積み上げたもの、だってAPCDだってESCAPだって、あそこまで積み上げたのだから、積み上げたものは残さなければいけないのですよ。残さなければいけないが、世界の中心みたいなものが権利条約後にニューヨークやジュネーブに移っちゃったみたいな感じのことがあるのだから、そういう状況の中でこちらを残しながら、どうやってそこから今度はアフリカや世界に出ていくとか、アジアの中で、アジア太平洋でやってきたグッドプラクティスとしてどうやって今度アフリカとか別のところに拡大していって、かつ日本のプレゼンスを上げる。そういうことは必要だと思いますよ、ODAにもね。新しいビジョンも必要ですね。

 だから、日本はずっとアジア太平洋ですと言って、そういう殻のようなものから抜け出さなければいけないのではないかなという気がするのです。でも捨てちゃったら、積み上げたものを捨てちゃうというのは絶対に馬鹿らしいことだから、そこのところを連携させないと。そのバランスが微妙ですね。

 だから日本にとって大きいと思いますよ、NGOの人は頭を切り替えなければならないというか、権利条約の後と前とは全然世界は変わっているのです、世界的には。だから今までアジア太平洋でやったことをどうやって連携させてそれを国際化していくかという課題があると思います。日本政府のほう、今までアジア太平洋、特にバンコクあたり、バンコクのAPCDとかESCAPを中心にサポートをやっていたからどうやっていいかわからない、そして国際社会の権利条約は今どんどん取り残されていく。今度メキシコとかヨーロッパとかどんどん目立っていくわけですね。そこにどうやってわからないからおどおどしてしまうみたいな感じになってじゃあどういうふうにすればいいのだろうみたいな感じで、そういう状況になっているというのは私の本音ですよ、そこをどうやって克服するかというか、生き延びるかというか、経験のある千葉さんなんかはどう思っているかわかりませんが? 私間違っているでしょうか。

  

千葉: ありがとうございます。若干補足しますと、私、日本財団に来る前にバンコクのアジア太平洋障害者センターにJICAさんから派遣されてまして、それでちょっとこの質問をふられたのかなと思うのですが。ジュディス・ヒューマンさんのすべてのイシューというか、開発のイシュー全てに障害の問題を入れて事業を実施するというのは、理想というか目指すべき方向としはその通りかなと思います。

 他方、現実的にそこまで持っていくのにどうすればいいかという方法論を考えると、やはり国連においても活動の拠点となるものが必要なではないかと思って、そういう意味では障害に特化した国連機関なり、拠点となるようなセンターなりというのがやはり今後は必要であって、それがあることによっていろいろな権利条約の啓発活動もできますし、その啓発によって開発、例えば貧困に特化している人、教育に特化している人、就労に特化している人にも障害の視点を入れてもらって、そこからジュディスさんの言っているような理想に近づけるのかなと思いまして、それはもうちょっと長いスパンが必要なのかな、と思っています。

 そういう意味では、アジアにおいてAPCD(アジア太平洋障害者センター)というのが一つの拠点となりますし、また長田さんが以前いらっしゃられたESCAPですね、ここがまた一つの拠点になれると思います。それを他の南アメリカとかアフリカとか中東とかと比べると、アジアのそういった活動というのは非常にいい参考、グッドケーススタディとして他地域の参考になると思うので、それを広めていくような国際的な広がりというのは全体的な協力が必要ではないかと思いまして、その意味で長田さんのおっしゃる通りかと思っています。

  

司会: ありがとうございます。

 では関口さんの前に、奥野さん。それから関口さんにお願いします。

  

会場: 貴重なお話をありがとうございました。筑波大学の奥野と申します。CBRが非常に重要だということをお話くださり、また、CBRは開発の定義に近いということも分かったのですが、そのスライドの「CBRの重要性と正当性の認識」ということの後に括弧で、「リハビリテーションへのアレルギーを取り除くのは可能か」と書いてあることについて質問致します。
現在、国連には障害者の関係のユニットがないということでしたが、1960年代には国連にリハビリテーションユニットがありましたよね。そこに日本の厚生省の初代の更生課長であられた松本征二先生が、1960年から1962年まで赴任されていました。その後も国連のリハビリテーションユニットは非常に大きな役割を果たしており、1979年にはそのユニットの責任者のエスコ・コスーネン氏が東京で開催された「リハビリテーション交流セミナー」で講演をして下さいました。そのような意味で、日本との関係があったと思うのですけれども、「リハビリテーションへのアレルギー」ということは具体的にどういうことを意味しているのか、少し説明していただけますでしょうか。

  

長田: すごく難しい質問ですよね。簡単なほうから先に答えさせてください。

 障害者、私が言っているのは担当事務局がないわけではなくて、国連のニューヨークの中に、そこのユニットが成長したという形で、今は権利条約の事務局はあるのですね。権利条約推進事務局というのは国連の、私がいるところですけれども、経済社会問題を担当しているところに、UN/DESA(国連経済社会局)という、そこに権利条約の事務局というのがあって、そこには伊藤亜紀子さんという日本人の人権の専門家の方ですが、その方がおられます。ところが、国連の場合はそこにユニットがあるということは資金とは関係なく、国連事務局はUNDPではないから資金がないんですね。ユニットがあるということは職員がいて、そのオペレーションコストをカバーできるということで、例えば私などの場合は会議一つやろうと思うと、外からの資金、いわゆる外部リソースと言うのですが、外から補助された資金がなければ会議一つも開けないという状況なのです。私が言った状況というのは、UNIFEMという状況は、女性に関するこれはファンドだったわけですよ。女性を支援するファンド、つまり資金源だったわけですね。UNDPみたいな資金を持った、つまり骨だけではなくて身のついた組織だったのですね。UNICEFだってそうで、UNICEFだって活動、プログラムを実際に活動するための資金源をすごく持っている。それだけではなくて、自分でクリスマスカードを売っていて、お人形とかカードを売ってどんどん儲けてしまうことができるような、すごく実力のある、資金源のある、実際実施団体である組織なのです。

 国連の事務局というのは基本的に実施団体ではありません。ESCAPにいたときだってそうだけど、お金がなかったら何もできません。だからそこの担当者がどれだけお金をとってくるかということによってどれだけ会議ができるかとか、どれだけ活動ができるか、それはもうすごく伝統的なことなのですよね。国連事務局の場合は。だから事務局の中にはオフィスはありますけれど、結局UNDPとかUNICEFとか、資金とキャパシティのあるオーガニゼーションの中に、それを実施団体として本当に国レベルで担当する、実施していくだけの力のある組織がないのですよね。権利条約を開発と連携させて実施していくためにはそういう実施機関が、実施機関というのはそこがやるのではありませんよ、そこは他の機関、他の人にやらせるためにあるのだけれど、やると言ってもではUNICEFでやってくださいと言って、UNICEFでお金がありませんという答えが返ってくるのが一番なのです。お金をくれというと、必ず国連の人は誰かやると言ったらお金をくれと言うから、次の答えはでは、其れではお金は誰が払うのですか、ということになると、そういう資金なども持っているような機関が、今は全然ないのですよね。それを権利条約の議論のとき、子どもの権利条約と障害者の条約では全然違います、UNICEFというのはものすごく力のある、ものすごく大きな、UNDPの次に国連で2番目に力のある機関ですね、そこが全面的にやったわけですよ、権利条約、子どもの権利条約のときは。でも、障害の条約にはメインストリームしかないのです。それにそのための特別資金も誰も出さない。まったく違っています。そこを理解してください。

 女性差別撤廃条約のときはUNIFEMという機構をUNDPの中に作って、そこに担当をつけて、はい、女性のことをやりたい人はどんどんお金をあげます、メインストリームにすればなんでもいいのです、メインストリームでもエンパワーメントでも何でもいいから女性に関することをやれば、はい、この取り引きでお金をあげます、はい、あげますとどんどんやったからメインストリームになったのですね。メインストリームなんて、ほうっておいたら誰もしません、国連なんて。よそのオーガニゼーションもしませんよ、国連もしないのです。言わなかったら口だけでは絶対何もしない。やっといま権利条約ができたから、これは法律だから、こういうものができたからしょうがないからやる、しょうがないからというか、やるしかないと思ってやっていて、それはすごくいいことだなと思っていて、今まで全然動かなかったUNDPが、UNDPは障害なんて言ったって全然何もしなかったのですよ。今になってあわててやって、やって、と言って、マッピングエクササイズをやっていた。やっぱりやっていました。50か国以上の国で実はやっていたのですよ。実はやっていたのになぜ今まで調べなかったのですかと言うと、調査だって何もやっていなかった。権利条約ができたから初めて、しょうがないから調査をしているのですよね、メインストリームですね一応。やってみたら意外にやっていたという、よい結果なのですが、だからやろうと思ったらUNDPの場合いくらでもできるわけですね、でもそこは実施機関として裏からずっと押し続ける機関、UNIFEMのような機関がないというのはきついと思うのです。でないと、私もメインストリームの担当をやっていますが、バーがあまりにも高いんだもの。うちだってこればかりやっているわけではないし、女性のメインストリームも、環境だって全部やらなければならないわけですね、メインストリーム。そういう実施機関がないというのは非常に弱いなということで、先ほど質問された方の答えになったかどうかはわからないけれども、その実施機関(メインストリームのための、資金組織)というのはその人がエンパワーメントだけをやるという意味では全然ないですよ。どちらかというとメインストリームを押すほうが強いくらいですね。メインストリームにも特別な人も、金もかかります。これだけは理解してください。現実です。

 やはり比較的伝統のあるオーガニゼーション、例えばESCAPなどの場合は、メインストリームは強いですよ、よそよりはね。最近のESCAPを見るとやはりメインストリームのほうをやっているぞという気がする。統計だってやっているし、ICTだってやっているし、MDGのところだって何かやっているし、ESCAPくらいほうっておいてもメインストリームをやってくれる国連の機関というのはそんなにないですよ、まだ。世界的に見ても。UNDPなどは今やっと初めてやろうとしているだけで。そういう意味ではESCAPなどが作り上げた組織内での伝統というのは大きいと思うのですね、昔から。

 難しい方の質問ですが、最初のほうのRのほうのアレルギーのことは、Rのアレルギーは難しい問題ですね。特に、CBRのRに関するアレルギーは開発の面からするとちょっと困りますね。私はCBRとは、なぜCBRと開発は近いかというと、CBRというのはやはりコミュニティを対象としたものですね。まずプライマリー・ヘルスケアという大きなセクターの、国連の中ではものすごく大きな枠組みの、セクターの中に完璧に組み込まれた、いわばプリイマリー・ヘルスケアというちょっとしたものですから、国連の。もう資金もついているし。そこの中にはじめ組み込まれて生まれたものですから、CBRというのは。国連としてのインスティテューションが後ろにあるわけですね、CBRに関してだけは。さっき言ったように国連のWHOという非常にキャパシティのあるオーガニゼーション、それ以外では、ILO(労働を担当)やUNESCO(教育を担当)なども強力な国連組織としてあります。セクターで言えばWHOは健康セクターでしょう?ILOは雇用のセクターでしょう?UNESCO(国際連合教育科学文化機関)は教育セクターですね。だから三つの開発にとって大切なセクター三つが一緒になって生み出したものなのですよ、国連の中で。国連では、CBRは障害と開発を結びつけるツールであると思います。

 コミュニティを対象にしていますから、ということは私のような今開発にいる人間からはすごくばっちり合っているではないですか。コミュニティを対象にやっていくというのは開発の基本ですよね。開発の基本というのは人を対象にする場合もあるけれど、やはりコミュニティを基本にしていくというのは開発のアプローチに非常に近いわけであるし、そういう意味で非常に相性がいいと思う、ということですね。開発と障害に対して。Rへのアレルギーということは、皆さん、だから私がさっき言ったように、必ずしも開発で障害の問題を全て解決できるわけではない、障害に関する問題のすべてを開発の枠組みで解決しようとすることが間違っているのではないかと思うということで。CBRでも医学的に偏りすぎたものもあるし、Rへのアレルギーという気持ちはよくわかるし、それをさっき言ったように「医学モデル」から「社会モデル」へのパラダイムの移行と同じで、障害者が主体となっていかなければいけないということは目に見えていることだし、障害者の参加、障害者の主体性、そして障害当事者が健常者や専門家に対して、インフォーム(情報提供)していくというのは、つまり、健常者が障害者の経験から学んでいくことはもはや当たり前のモーダリティになっていると思うのですね。でも、Rは本当にマイナスでしょうか、開発の視点からすると?

 だから逆に、リハビリテーションという言葉は障害者を、ある意味では障害者の個人モデル的なものと誤解されやすいというか、障害者は変わらなければいけない、社会が変わるのではなくてリハビリテーション、リハビリ、リ(Re)、つまり「戻る」ですから、障害者のほうが変わらなければいけないかという。でも権利条約ははっきりリハビリテーションだけではなくて、リハビリテーションとハビリテーションという両方の権利というものを認めているわけですから、なにもリハビリテーションだけを言っているわけではないから、ハビリテーションもやはり障害者の当然の権利の一つとして、社会権の一つとして認められているということだから。権利条約は、社会モデルをさらに幅広い、Rの権利も含めた、統合的な人権モデルへと昇華するのに役立つのでは。社会の環境の向上と障害者のエンパワーメントの両方が必要と思います、月並みですが。

 私の本音から言えばそういうRに対するアレルギーということからCBRというものが正当に評価されないのであればせっかく国連が一生懸命やっていて、国連の中では唯一インパクトをあげている分野なのです、そのCBRというのは、結構認められているし、結構受入国にも人気があるし、お金もつきやすいし、ただそのCBRのモデルがうまくいっていないCBRというか、古臭いCBRのそういうパターンもあることはあるから、そういうものは改善する必要はあるし、改善することとはやめることとはまったく違うものであって、国連の職員としてはCBRもRも否定する方向には絶対にいきません。これは、非常に逆に国連のブランド商品というか、国連の障害と開発の連携の中では一番の目玉商品だから、それをどうやって向上させて、むしろどうやって向上させていくのか、どうやって国ごとによって、あるいはどうやってそれぞれの国ごとによってCBRがその国に特殊性を持って、その国のオーナーシップに合わせて形を変えていくか(人権と貧困削減に役立つか)ということが大事だと思うのですけれど、ちょっと間違っているかもしれないのでちょっと森さんに振ってください、障害と開発の両方の専門家の意見が必要ではないかと思います。私は当事者ではないのですけれど、Rアレルギーに関する論議は必要だと思います、もっと深くね。

 最後は森さんに聞いて終わったほうが。

  

森: 突然のご指名ですので、ちょっとびっくりしております。お話をうかがっておりますと、CBRのポジションペーパーの意味の理解が十分に広まっているかどうかが問題だと思うのですね。特にCBRでは、地域の開発として、リハビリがとらえられているということがきちんと広まっているかどうかというのが、大事だと思います。例えばフィリピンの現場を拝見すると、CBRで一番大きな問題は、CBRの医学化が見られます。バランガイというフィリピンの村のような単位のところに、普通の医学的リハビリテーション専門家が配置されるだけとか、また医学的リハビリテーションのRだけという現状があちこちにあるのですね。そうではなくて、本当に必要なのはそれで地域が変わること、社会が変わることが必要なのに、そうなっていないのです。もし先ほど出たような、地域開発としてのリハビリテーションということが広まっていればCBRも大きな意味があると思うし、また権利条約とも整合するCBRができると思うのですが、今はまだまだ医学的なリハビリテーションだけが広まっている地域が多いというのが現状だと思います。そんなコメントでよろしいでしょうか。

  

司会: ありがとうございます。では、関口さん、お願いします。

  

会場: 全国「精神病」者集団の運営委員の関口と申します。世界精神医療ユーザー・サバイバーネットワークの加盟団体で、JDF(日本障害フォーラム)にも加盟しています。昨年2月に、バングラデシュのダッカのAPDF(アジア太平洋障害フォーラム)に行ってきました。僕がこの間バンコクに行った限りでは、他の国の精神障害者の存在という意味では、中身はありませんでしたね。というか、そもそも目に留まってこない。このあいだの北京オリンピックも精神障害者は入国を拒否されましたね。そういうことがあって、ちょっといくつか質問したいと思います。

 まず、ソーシャル・キャピタルということですけれども、これはファイナンシャル・キャピタルとコマーシャル・キャピタルというのがあると思うのですが、どういうふうに切り分けるのか。

 その次に、日本のGDP(国内総生産)は結構大きいと思うのですけれども、なぜこれが援助に比例していかないのか。

 それからもう一つ、精神のほうでいいますと、僕らの仲間は統計によりますと6人に1人が生活保護を受けています。日本の中でそういう状態なのですが、世界全体ではグローバル・ソーシャル・プロテクションというものが必要になってくると思うのですが、これをどう考えていくのか。

 関連しますけれども、僕はよく(日本の)精神の仲間のことを例えて、日本国憲法14条に人種によって差別しないと書いてあるのですが、精神は人種が違うんだと。属性は持っているから人種は違うのだと。ただ同じ人権は持っているという言い方をします。けれども、そうしたときに、アメリカの公民権運動以来のアファーマティブ・アクションですね、そういうことも必要なのではないか。それをもっときちんと明確に打ち出さないと、メインストリームと言っても何がメインストリームかということです。きちんとアファーマティブ・アクションだということ、これは男女平等でもアメリカの公民権運動のアファーマティブ・アクションでやられてきたことですから。いかがです?

  

長田: 難しい質問なのですけれど、できるだけ自分で答えますけれど、もし不足していたら他の方に補っていただければと思います。

 まずソーシャル・キャピタル、社会資源、社会キャピタルということに関しては、二つあるというのは私もそう理解しているのですが。ソーシャル・キャピタルは、一つは社会関係資本と言っているのですね。いわゆるソーシャル・ネットワーキングのソーシャル・キャピタルと、それからソーシャル・キャピタルとしてインフラストラクチャーを作る、学校を作ったり、水場、きれいなお水が飲めるようになった、それだってソーシャル・キャピタルですね。だから二つあるというのは、私たちの理解では、ソーシャル・キャピタルの二つは、一つはソーシャル・リレーションシップの、社会関係資本というのですか、そういう、最近はそっちのほうが全部になっていますね、ソーシャル・キャピタルは前は社会関係資本、例えば障害者の自助団体とか障害者のNGOの団体、それがそういう人たちがお互いにネットワーキングを作って力をつけ合っていくという感じのソーシャル。あるいは障害者と障害者団体の人と政府の人、政府の方が交渉していくその過程でお互いにトラストを作るという社会関係ソーシャル・ネットワーキング・キャピタルのほうが主流になっていると思いますけれども。おっしゃったように二つあるとすれば、もうちょっと古い定義によれば、確かに学校を建てるのだって病院を建てるのだって、社会的な基盤を作れば誰も、ユニバーサルデザインだってそうですよね、ユニバーサルデザインだって立派なソーシャル・キャピタルだと思いますよね、ユニバーサルデザインの方がバリアフリーよりずっといいわけでしたから。そういう定義のソーシャル・キャピタルという考え方もまだまだ全然あると思います。社会的な公的な財というのですか、公共財という考え方もあると思います。それで答えになったかよくわからないのですけれど、私が知っているのはそういうレベルです。

 次に、MDGのドナーのトップですか、ドナーの貢献度、なぜGDPと比例していないか。確かに比例していませんね。今ここに出した表は、これは二カ国間は含んでいませんから、国連だけの、私は国連の人間ですから国連の貢献だけを言っているわけです。そうすると、順番から言えば合っていますよね、アメリカの場合は。一番GDPが大きいわけですから。でも、日本などはなぜ下がってきたかということに関しては、日本は少ないですね。スウェーデンなどは経済のサイズのわりに、経済の規模の割には非常に貢献度は高いということです。どうしてかと言われたら、やはりそれはその国の国連に対する貢献度という重要性がその国の指針で違っているのだと思います。はっきり言えば、オランダの場合は、8位ですね。国のサイズが小さい。ノルウェーはすごく大きくて多いですよね、こんなに国が小さいのにこういうふうに入っているということは、非常に国連に対する貢献度は多いですね。なぜノルウェーは特にこれは開発資金ですから開発資金に国連開発資金に対する貢献度はこんなに高いのになぜ日本は低いのでしょう。どんどん日本はどんどん低くなってしまって、今は3位ということはない、今は4位か5位くらいに落ちています。これは2004年のデータですから。なぜなっているかという質問であったら、それはやはりそれだけODAに対する考え方の意識が低い。低いというか、ではないかと。これは他の人に預けておきます。これに関しては、国の政策としては、ちょっとよくわからないのですけれども、そういうことは。

 それから、3番目と4番目、特にグローバル・ソーシャル・セキュリティとかアファーマティブ・アクションに関することは、法的な質問だと思うのですね、法律的な質問だと思って、私は先ほど言いましたように、それは私も特に差別禁止法などに関しては差別禁止法も必要だったと思うし、ポジティブ・ディスクリミネーション、逆差別というかアファーマティブ・アクションは私は一時的にはあってもいいと私は個人的には思っていますけれども、それ自体は開発協力自体とは特に関係ないと思います、私の場合は。だから私がさっき言ったように、こういう傾向があるのですよね、障害と開発を両方やっている人でも、開発専門家の人も障害の開発の人も、やはりどこまでが開発における障害なのか、どこから先が障害一般なのかというボーダーラインがグレーゾーンになってしまう。先ほどの結論から言えば、開発で障害の問題のすべてを解決しようとすること自体は私は間違っていると思うのです。そういうふうにしようとする人もいるから、誰が何をしたらいいのかわからないので、開発は障害者の複雑な多面的な問題のごく一部しか解決できないものだと私は理解しています。開発のほかにも、障害者の問題で大事なことはたくさんあるし、その一番の一つが差別禁止法の設定をすれば差別禁止を肯定化していくとか、そういう差別禁止に関すること、差別を緩和することが一番大事なことの一つだと思いますけれども、それ自体が開発協力かどうかというと、私はそれ自体は開発ではないと思います。権利に基づく開発ということならば開発であるし、キャパシティー向上も開発です。私の個人的な意見で私はあまり法律のことは得意ではないから、個人的には、私も同感、逆差別のどこが悪いのだと思いますけれども、法律の専門家に聞いたらやはり悪いという人もいるから。その人たちに言われると私も専門家ではないので「ああ、そうかな」と思ったりするのですけれども。これは、専門家の方に聞いてください。でも、私は賛成ですね、差別禁止法とかあったほうがいいと思うし、逆差別というのだってあったほうが良いのではと思ってしまいますね、無知かもしれませんが。ないとよくならないんじゃないかなというふうに単純に考えていますけれど。すみません、開発の専門家の意見ですから適当に無視してください。

  

司会: はい、ありがとうございました。時間をだいぶ大幅に過ぎてしまいまして、申し訳ございません。

 今日は本当に、開発分野で活動をしている方々、たくさん来てくださっています。その中でもJANIC=国際協力NGOセンターといいまして、約80団体のNGOが加盟しているネットワークで、「NGOを支援するNGO」があります。JANNET(障害分野NGO連絡会)も最近JANICの正会員になりました関係で、今後いろいろアドバイスを受けていくことができます。今日は事務局次長の富野さんが来てくださっていますので、富野さんから一言ご感想をいただいて、最後に長田さんからまた一言いただいて、終えたいと思います。

 富野さん、よろしくお願いします。

  

富野: JANIC事務局次長の富野です。JANICは今ご紹介のあったように、開発NGOを中心としたネットワークNGOです。ただJANICも特に今年はG8サミットに向けて環境系のNGOとお付き合いさせていただく中で、開発と環境の問題が絡み合っていることを実感して、今後開発系のNGOだけではなく、環境系のNGOであるとか、あるいは分野でいうと多文化共生をやっているNGOであるとか、今回はJANNETさんがやっていただきましたけれども、障害分野に専門性のあるNGOの方々とも連携していくことが、広く国際協力NGOの底上げにつながっていくのではないかと考えています。

 こういったことがありまして、今日は、私個人の学習という意味と、JANICとしてこの分野、開発と障害というところで何ができるのか、どういった貢献ができるのかということを考えながら聞かせていただいておりました。

 長田さんの説明にもありましたように、それぞれの団体の強みや得意分野を生かしてやっていけばいいということで、JANICの得意分野は何かと考えるとやはりネットワークということなので、NGOをネットワークすることでNGOの活動をより活発にしたり、あるいはもっとNGOの声を多くの人に届けたりとか、あるいはNGOのことをわかりやすく伝えて、一般市民の方との出会いの場を設けたりというところが、JANICの得意な分野、強いところだと思います。

 そういった中で、今後、JANICも今までいろいろなテーマでシンポジウムを開いたり研修を行ったりする中で、障害を一つのテーマとして採り上げることによって、今日何名かの団体の方々も既に取り組んでいるということを発表されましたけれども、そういったことをもっとより広く伝えていくような場を作ったりすることができるのではないかと考えております。

 そのためにも、我々はいかんせんまだまだ障害分野の専門性や関係性がないので、その点は特にJANETさんと連携することによって、我々が持っている強みとJANETさんが持っている専門性を生かしながら、先ほど申し上げましたようないろいろな観点でネットワークを生かして、開発と障害のことを幅広く皆さんにも知ってもらって、その結果より皆さんの専門性が高まるような後方支援をやっていけるのではないかなと感じました。今日は本当にありがとうございました。

  

司会: ありがとうございました。大変心強いメッセージをいただきました。

 長田さんはもうこれで終わりにしたいということでしたので、今日は本当に長時間にわたりお付き合いくださいましてありがとうございます。障害と開発を結びつけるものとして、やはり大きいところでは権利条約が今後どうなっていくのか。特に日本だけではなく、途上国でどういった形で実施されるのかというというのを追いかけていかなければならないというのと、それからCBRも非常に重要であるということ。それから、富野さんからネットワークが連携していくことも非常に重要だというお話をいただきました。

 開発の政策レベルの動き、権利条約という障害分野での政策や法律の動きを追いかける一方で、草の根レベルでの地道な活動というのも同時進行で私たちはより学び、また実施していきたいと思いました。

 今日は参加者の皆さんの積極的なご参加、ありがとうございます。手話通訳の皆さんにも感謝いたします。

 それから最後に、今日ご発言いただいた長田さんに大きな拍手をいただいて終わりたいと思います。

 最後に事務局からのお知らせですが、今後リハビリテーション協会またはJANETでもCBRに関連した勉強会を連続しておこなう予定です。ご案内のチラシは会場内にもおいてありますが、次回は12月22日にCBRと開発の連続勉強会(JANNET)があります。

 さらに、WHOでは今CBRのガイドラインを作成中なのですが、その最もキーパーソンでありますチャパル・カスナビスさんをリハビリテーション協会で招聘いたしまして、3月8日に終日かけてセミナーを開催いたします。CBRのガイドラインが今後どう使われていくのか、などについてお話を聞く予定ですので、今後も広く皆様に広報していきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 長時間、ありがとうございました。