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講演会「スウェーデンにおけるDAISYの認知・知的障害者への応用」

DAISYについて 

(財)日本障害者リハビリテーション協会情報センター長
河村宏

河村宏氏の写真

 皆さん、こんばんは。私は、日本障害者リハビリテーション協会の河村と申します。本日の進行をつとめます。よろしくお願いします。
本日は、ご案内をさしあげたように、スウェーデンからハンマルンドさん、ちょっと抑揚があり難しいですが、ハンマルンドさんご夫妻をお招きし、スウェーデンにおけるDAISYの認知・知的障害者への応用に関するお話を伺いたいと思います。
最初に、ハンマルンドさんご夫妻を紹介します。

 ハンス・ハンマルンドさんには、ご講演で詳しいお話をいただきます。私は一緒に来日された、奥さんのイエニー・ハンマルンドさんについて少し、補足的にご紹介します。
イエニーさんは、つづりは、JENNYです。です。イエニーさんはスウェーデンの特別なニーズを持つ、生徒のための教育研究所、という大きな700人もの職員がいるリソースセンターのスタッフで、日本では、「フレクシボード」というふうに商品として売られています、主に、盲児のための関連アプリケーションの開発をしていて、御夫婦揃って、特別ニーズのある生徒の教育支援について一緒に働いておられます。
イエニーさんの、作っておられるアプリケーションについては別の機会に改めてご紹介します。
私どもで、新たに開発しているAMIS(アミ)というユーザーインターフェースがありますが、このフレクシボードもインテグレートできるものと考えています。

 ではここで、私から「前座」として短くお話しいたします。ごく最近、2週間にわたって、日本で大きな国際会議が行われました。そのなかでDAISYも非常に注目され、新しい期待もありました。それについての概要を述べ、ハンスさんの講演の前奏とします。

 日本であった一連の会議というのは、「アジア太平洋障害者の10年」の締めくくり、および次の10年のためのスタートの会議です。北海道でありましたDPI国際会議にはじまり、大阪フォーラム、大津の政府間会合、これは国連の合同会議でした。次の10年の行動計画を決めました。
この一連の会議の成果としていくつかの重要な決定がなされました。
まず、それをちょうど一週間前に文部科学省から特別支援教育にかかわる調査報告がでましたので、それと重ね合わせながら、考えていける内容だと思い、若干、ご紹介したいと思います。

 最初に紹介するのは、琵琶湖宣言といいますか、本当は非常に長い名前ですが、あまり長すぎて誰も正確に言えないので、「琵琶湖宣言」とでも簡略に申し上げます。
いま、画面上に出します。
正確なタイトルは、"Draft Biwako Millenium Framewrok for Action Towards an Inclusive, Barrier-Free and Rights-based Society for Persons with Disabilities in Asia and Pacific"と、一息で言うのが難しいタイトルです。これが、次の10年の行動計画の柱になっています。この中で、何を言っているかをかいつまんでご報告します。

 この中にいくつか重点項目がありますが、そのひとつが、「情報コミュニーケンションへのアクセス及び情報コミュニケーション技術へのアクセス」です。
ここではっきり宣言したのは、情報へのアクセスが「いまや基本的な人権である」ということです。
情報とコミュニケーションへのアクセスが権利であるということから何がでてくるかは、次に続いているものです。著作権についてふれています。
そして、私にとってはいちばん重要と思うところ、おそらく国連文書としては世界で初めてこのようなことを決定し、しかも政府間の合意で決定したという意味で重要なのは、次の3行です。

 まず、著作権者は、著作物がアクセシブルであるということについて責任を負うべきである、ということを宣言しています。
それから、著作権を守るための「テクニカルブロック」、コピー防止技術がいろいろありますが、それが障害者、あるいはすべての人がその情報にアクセスする方法をもたないような防止策をこうじてはならない、とうたっています。つまり、経済的権利を守るためにアクセシビリティはどうでもいいんだ、という技術開発に対する警鐘をうながしています。これが政府間の合意として項目を一語一句うながして合意しているのでたまたま入ったのではないという点にご注目下さい。繰り返し確認をして、たくさん修正した中で、これは原案通りいきました。そういう意味で十分吟味された上で、確認された原則として著作権のありかた、これからの海賊版防止技術に対してもアクセスの保障を求めることが明記された点が非常に画期的だと思います。

 もうひとつ、技術の中で、どういう技術を発展させるべきかについての重要な一句です。アクセシビリティを将来にわたり確保する上で、とても重要なのは次のことである、といっています。今、大きくします。

 これが深くDAISYと関わります。
ICT、情報とコミュニケーションの技術というときに、ユニバーサル、オープン、ノンプロプライアティと3つ英単語を並べています。ユニバーサルとは、ユニバーサルデザインに近い、誰にとっても、あるいは普遍的という意味です。オープンというのは誰でもその技術を使えるという意味。ノンプロプライアティというのは誰かが占有していないという意味です。つまり、これからのアクセシビリティを築き上げる情報のしくみで、政府が推奨しなければいけないのはこういうユニバーサルであって、すべての障害のある人が共有でき、開かれた基準、規格であって、ある企業が独占しているというようなものではない、ノンプロプライアティというのはそういう意味です。そういうものが望まれる。そうでなければ長期間にわたって、私たちがITやICTの技術を蓄積する上で、十分な基盤を築くことができない、とうたっています。これも、非常に重要な原則であると考えます。他にもたくさんのことを言っていますが、主にこの2点というのが私にとっては非常に画期的であり、またDAISYの活用というところでも非常に重要な意味をもつと考えております。
そして、具体的にDAISYについてどのような新しいものが開かれたのか、ご紹介します。これはすべて国際会議で紹介したものです。本日の皆さんにお配りしたCDの中にもあります。いま画面にうつっているのはピンディスプレイを読んでいる姿です。その右横にノートパソコンがあります。このパソコンの中にCD-ROMが入っていてそこから直接出てきたデータをピンディスプレイで読んでいます。これは、国連のドキュメントをDAISYフォーマットで国連の依頼を受け、配りました。大津の会議では国連が初めてみずからのドキュメントをすべての人がアクセスできるようにという趣旨でDAISY化して、それを読んでいる一コマです。この絵の中、この右側のノートパソコンですが、これが、ちょうど国連の会議のスピーカーの一人である、タイのモンティエン・ブンタンの紹介記事の部分です。テキストは、大きな文字で横のスクリーンに出ています。つまり、今、読み上げているDAISYとシンクロナイズしている。今読み上げているところが、大きく拡大されてもう一つのスクリーンに出ています。このモニタースクリーンに出ている同じテキストがピンディスプレイに出ています。つまりこれで、全体画面がうつっているのが、右側にあり、読み上げている音声がこの真ん中のスピーカーから出て、読み上げているところの大活字のテキストが、もう一つのモニターに出ている。そして、その同じテキストがピンディスプレイに出ているということです。これが今、到達したDAISYの姿のひとつです。もうひとつ、お見せします。

 うまく動くことを祈ります。
いま手元のプレイバックを起動しました。
(パソコンから声がでています)
ちょっと変な音がしましたが。
(バースデーケーキができたよ:パソコンから音がでています)
ちょっと音が小さくてすみません。いま画面上でフォントの大きさをいくつか変えています。これはスタイルシートというもので、言ってみれば自由に大きさを変えることができます。また、色の使い方も自由に変えられます。こういったことが自由にできていると同時に今画面にうつしているのは、タッチパネルでも使えるような大きなボタン、があるAMIS(アミ)というユーザインタフェースです。今日はここにAMISをずっと開発しているマーク・ハッキネンさんとマリッサさんという2人がいて、そのうちのマリッサさんが来ているのでご紹介します。

 とてもシャイな方ですぐ座ってしまいました。非常に優秀なプログラマーで次々と短時間に、「じゃあ今度はジョイスティックをつけよう、フレキシボードに挑戦しようと、意欲的に、あらゆるユーザーインターフェイスを必要ならAMISにつけるよう次々開発しています。

 もうひとつの画面をおみせします。
特に重度の身体障害者に対応するスキャニングの画面です。画面上の一番下に、スキャン操作のための画面がでています。ブルーのハイライト表示に注目してください。
いま、10個のファンクションキーがあり、一つ一つ次々にスキャンの画面がうつっています。
なにか一つボタンをおす。ジョイスティックでもいいです、市販のものでも。たたくスイッチでも、フックスイッチでもいい。体のどこかが一カ所動くと操作できる。
プレイポーズが一番左上にあり、これをおすと再生、停止します。セレクトキーをおすと下矢印や上矢印を押したのと同じ機能が出ます。
本の画面です。下矢印、上矢印などいろんなアイコンがありますが、これらを一つのキーでやってしまうということが、スキャニングで可能になります。これにより、DAISYは、自分で本を手に持って読めなかった人に、読書の道を切り開くことができるようになりました。
ジョイスティックをいろんなかたちで活用することで、新しい分野を切り開くことができます。
それをお見せします。

 すいません、画面のサイズが違ったので、右側に出るはずのアイコンが、切れてしまって出ません。口だけで申し上げます。
さっきのAMISの下にアイコンがでます。
(パソコンから声が)
このアイコンに相当するジョイスティックのキーを自由に割り付けられます。ジョイスティックのキーのうえに、実際にマリッサのアイデアでやりましたが、おなじシンボルの絵を描いてキートップに貼り付ける。そうすると普段使っているジョイスティック、たとえばコンピュータゲームのものに、ラベルを貼り付けると、そうすると、チャプター(章)を選んで、これで再生、止めるという操作ができる。つまり、普段使い慣れたユーザーインターフェース、ゲームのジョイスティックを使って読書できる。そういういろんなユーザーインターフェースを開発できました。
そして、ボイスコマンドも可能です。今のところ英語ですが、そのうち日本語もできます。プレイポーズやセレクトなど、口でいうとできるようになる。つまり「DAISY」というひとつのマルチメディアのコンテンツを本当に必要とする、いろんな角度で自分が使える機能を使って、同じものを読むことができる、いま、実現した、ということをご報告できると思います。本日配ったCD-ROMには、AMISとおよびサンプルがはいっています。一つだけ、覚えておいていただきたいが、スクリーンリーダーをお使いの方は、サンプルのAMISをインストールするときは、よくよく覚悟してください。(笑)
つまり、自分が使っているマシンにサンプルのAMISをインストールすると、私ども、どんなスクリーンリーダーともバッティングしないようにというところまでいってません。ものすごくたいへんです。いろんな条件があるので。なので今回のAMISのサンプルは、こう考えてください。視覚障害以外の人たち、たとえばディスレクシアや肢体不自由のかたたちに扱いやすいサンプルのユーザーインターフェースは、こういうのはどうか、という提案のつもりで入れました。
同時に、LPプレーヤーもはいっています。視覚障害の方はLPプレーヤーを使ってください。そのうち、私たちがもっとがんばってあらゆる環境でのテストを繰り返して、これでスクリーンリーダーユーザーも一緒に使えるというものをだすつもりですが、今のところは、一日も早くこういう事が可能だということをLDや肢体不自由の方、そういった方々に知っていただきたいので、AMISをサンプルとして同梱しています。その点ご了解ください。

 もうひとつ、日本語のサンプルリストの中には、いま、4つ入っています。バースデーケーキが出来たよ、というのと「赤い靴」「ディスレクシアの本」それから「さをり」。これはそれぞれのご理解を得て作りました。
特に、本日お越しいただいたエッジの藤堂さんには特別なご配慮いただきました。「バースデイケーキ」と「赤い靴」については、森口瑤子さんという俳優の方に朗読してもらいました。あわせてご紹介します。

 以上で、今マルチメディアのDAISYがどこまできたのかの概略をお話しましたが、視覚障害の方のための特製のプレーヤー、プレクストークなどありますが、そのまま録音図書の再生機に入れて、そのまま読書できます。つまり、マルチメディアのDAISYだからといって、録音図書の機能がないわけではない。構造も操作も全く同じです。使うプレーヤー、ユーザーインターフェースが不要になったということです。従来のDAISY録音図書と完全な互換性を維持したまま、さらにもっと広がりをもった使い勝手を、DAISYとAMISという組み合わせで獲得できたと考えています。
今日は、今の到達点を簡単に紹介しました。このDAISYを活用して、スウェーデンではこれからどのように、特にディスレクシアの方々や、知的障害者のために展開を図るのか、これからハンスさんのお話を伺いたい。
特に、昨日スウェーデンのディスレクシア協会が記者会見をして、今伺ったばかりですが、話を聞くのはいい、「すぐDAISYをよこせ」という結論がでたそうです。そのあたりもふくめて、ハンスさんから活気のある状況についてお話しいただきます。