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行政報告
地上デジタル放送と視聴覚障害者向け放送を巡る政策・取組等について

総務省 情報流通行政局 情報通信利用促進課長 平林 正吉

 

ただいまご紹介いただいた総務省情報通信利用促進課の平林でございます。

本日は二つのことがらをお話ししたいと思います。一つは、私どもが講じております視聴覚障害者向けの放送の拡充についての施策について。それから後半には放送のデジタル化について私どもの取り組みをご説明したいと思っております。

まず字幕放送等の充実に取り組んでいる私どもの背景といたしまして、皆様方ご存じのように、現在総務省におきましてはいわゆるユビキタス社会の実現、いつでも、どこでも、何でも誰でもネットワークに簡単につながる社会を目指そうという U-Japan政策を推進しているところでございます。年齢や身体的な条件によるデジタル・デバイドが存在していまして、その解消を図る必要があるということから取り組みを行っているところでございます。

高齢者や障害者の方々にとりましては、ICTというのは自立した生活や社会参加のための重要なツールになるということでございます。このため、できるだけ多くの方々に ICTを利用できるようにすることを目指す、ユニバーサルデザインの考え方を開発段階から積極的に導入することの必要性が提言されているとこでございます。

また、政府全体の取り組みであるICT新改革戦略におきましても、デジタル・デバイドのないIT社会の実現といったことが掲げられているところでございます。

こうした背景のもとで総務省では、視聴覚障害者向け放送の充実に向けて各種の施策について取り組んでいるところでございます。

言うまでもなく放送というものは国民生活におきまして報道、教養、教育、娯楽、あるいは生活関連情報といったものを恒常的に入手できる手段として今や欠かすことのできない基幹的なメディアになっているものです。この点は視聴覚障害者にとりましても同様でございまして、この放送の効用を享受できるように、総務省においては、視聴覚障害者が放送を通じて情報を取得して社会参加していくために、字幕番組あるいは解説番組等の普及策に取り組んでいるところでございます。

ここに三つの施策を掲げさせていただきました。一番上の一つ目ですが、 1997年に放送法を一部改正いたしまして、視聴覚障害者向け番組の放送努力義務を新たに規定しました。

二つ目、字幕解説放送の普及のための目標を策定いたしました。またその進捗状況についても公表いたしまして放送事業者の取り組みを促進しています。当初1997年に行政指針を策定いたしまして、現在は新しい指針を平成19年に策定したところでございます。

それから三つ目といたしまして、字幕番組・解説番組等を制作する制作費に対しまして、一部予算措置、助成を行っているところでございます。

こういった三つの施策によりまして各放送事業者の自主的な取り組みを促進しているところです。さらにNHK及び民放のキー局といった放送事業者については自ら字幕拡充計画等を策定いただいているところでございます。

そういった取り組みで現在、どういう状況にあるのかをグラフにまとめさせていただきました。現状の字幕付与可能な放送時間に占める字幕放送時間の割合をまとめたものでございます。

先ほど申し上げましたように当初1997年に字幕放送普及のための行政指針を策定しました。その当時にはご覧のように、NHKの総合テレビで3割ちょっと。それから民放キー5局平均では3.5%。まだまだ数字としては非常に低かったわけです。それが1997年の行政指針を定めた結果、NHKおよび民放キー局につきましては計画達成時期として2007年度までに対象の放送番組のすべてに字幕付与を目標に定めまして、各局はそれぞれこれを目指して計画を推進してきたところでございます。

先ほど申し上げましたように当初は非常に低い数字でございましたが、特に民放の場合は数年間はしばらく低迷しておりましたけれども、その後着実に字幕放送は拡充してきまして、 NHKについては2006年度に100%、民放につきましては2007年度に約90%と、ほぼ計画を達成しました。

これは対象となる字幕付与可能な放送時間に対しての割合の現状でございますが、放送時間全体で見た場合の現状はどうなっているかをまとめたのがこのグラフでございます。総放送時間に占める字幕放送、解説放送、手話放送の割合を年次的に示したものでございます。今申し上げました字幕放送につきましては計画的に取り組んできたこともございまして着実に拡充してきまして、総放送時間で見た場合にはNHK総合で45%。それから民放キー局平均では40%というようになってございます。

それから解説放送につきましては放送時間の割合は低いのですが、ご覧のようにNHKの教育では約9%と少しずつ増加してきている。それからNHK総合で約4%。ただ民放キー5局につきましてはこの点、解説放送がなかなかまだ進んでいない。ほとんどゼロに近い数字になっていますし、また手話放送につきましてもやはり割合が低くてそれも横ばいの状況であるというのが現状でございます。

それから先ほど申し上げました、私どもが現在行っている助成措置、字幕番組等の制作費に対する助成について簡単にご説明いたします。

字幕番組等の制作費に対する助成を行いまして、字幕放送等の充実を図ろうじゃないかということを行っているところでございます。この仕組みは、国からまた独立行政法人情報通信研究機構という組織を通じまして助成を行っているところでございます。制作費の最大限2分の1を上限といたしまして助成を行っているところでございます。

それから先ほど申し上げましたように行政指針、当初は1997年、平成9年に指針を策定いたしまして平成19年度に目標を達成したということで、新たな指針を平成19年に策定いたしました。なお、この指針の策定に先立ちまして、関係者の参加とご協力を得まして、総務省の中で研究会として、デジタル放送時代の視聴覚障害者向け放送に関する研究会というものを設けました。そこで字幕放送等の現状や課題の把握、またデジタル放送の進展や高齢化の進展といったことも踏まえまして、当初の指針計画後の字幕放送等の拡充方策について検討しました。その報告書につきましては、総務省のホームページにも記載されていますので、機会がありましたらご覧いただければと思います。

そこで新しい行政指針についてでございます。平成20年度から29年度までの期間に設定しようということで、ただ技術革新等もありますので、策定から5年後を目途に見直しを行うというものでございます。

主な内容についてでございます。一つは、今までの指針は字幕放送について行ったものでございますが、その字幕放送につきましては、指針の対象となる字幕付与可能な番組の定義を拡大いたしました。今までは例えば生番組は除くといったものがございましたが、今度の新たな指針におきましては、複数人が同時に会話を行うといったようなものを除いた生放送番組も対象にしましょうといったこと。これが大きな改正点かと思います。それから手話により音声を説明している放送番組、大部分が歌唱の音楽番組も対象に入れましょう、さらに再放送番組も対象に入れましょうということで、いわば対象となる番組を拡大するということを行いました。また、今新しくデータ放送も行われていますが、データ放送やオープンキャプションによって番組の大部分を説明している場合には字幕放送に含めようというような改正をいたしました。

そのもとで対象となる字幕放送番組につきましては、NHKあるいは民放キー局等々につきましては目標の達成年度までにすべての対象の放送番組に字幕を付与しましょうということを指針、目標としたわけでございます。

それから今回の新しい指針におきましては新たに解説放送につきましても指針というものを設けたところでございます。先ほど現状の数字をご覧いただきましたが、解説放送は着実に増えているとは言いながらもまだまだ数字としては低い。 NHK教育では約9%という状況でございました。そこで新たな指針におきましては、NHK総合では対象となる番組は、ここにあるように権利処理上の理由等によって解説を付すことのできない放送番組を除くすべての放送番組に対しまして 2017年度までに10%について解説を付与しましょうと。教育放送につきましては15%を目標として取り組んでいこうということ。それから民放キー5局につきましても、同じように10%を目標として推進していこうというところでございます。

こちらの表は、平成19年以前の行政指針でございます。ご覧いただければと思います。

以上が現在私どもが取り組んでいる字幕放送等の取り組みでございます。新たな指針、初年度が平成 20年度、今年度になるわけでございまして、今年度終了後に状況を把握して、今度の6月頃には実績を取りまとめて公表しようということを考えております。

この新たな指針のもと、引き続き字幕放送等の普及に取り組んでいきたいと思っているところでございます。

続きまして放送のデジタル化につきましてご説明したいと思います。この分野、直接の担当ではないのでちょっと概括的になろうかと思いますがご容赦いただきたいと思います。

皆様方ご存じのように、総務省におきましては2011年7月24日の地上テレビジョン放送の完全デジタル化、地デジ化への完全移行に向けて現在取り組んでいるところでございます。

デジタル化につきましては、それぞれの地上放送だけでなく、衛星放送その他につきましてデジタル化というものが進められてきているところでございます。

そこでデジタルテレビについて、アナログテレビと随分違いがあるということで、デジタルテレビには様々な特性なりメリットがあるということを表であらわしたものでございます。

走査線数や画素数が大幅に増加するといったこと。あるいは視野角が広がってアナログテレビよりも見る角度が広がるので非常に臨場感のある映像が実現されるといったようなこと。さらに、最近の半導体技術等の進展によりまして、テレビが薄型になり軽量化して、さらに低消費電力といったことが実現しています。デジタル化に伴ってテレビが非常に進化してきているということがございます。

そこで地デジ化の意義といったものを、ここに三つに整理させていただきました。

一つは、より豊かな放送サービスが実現するということ。先ほど説明したようにテレビは非常に臨場感等々が進化するといったことから、様々な可能性が生まれるということ。

それから二つめには、周波数の有効利用といったようなこと。様々な増大する周波数需要がございますので、それに対しまして地デジ化にしますと電波の帯域が空いてくる。空いた電波帯を有効利用できることがあります。いろんなサービスが今、考えられているところでございます。携帯端末に対するマルチメディアの放送であるとか、あるいは交通では ITSシステムといいますが、高度交通システムというような、渋滞や事故を防止するという点で威力を発揮すると思われるのが ITSです。携帯電話も需要が伸びているので、さらに使いやすくするといったようなことがある。このような周波数の有効利用ということがあります。

また、各分野にもいろいろな波及効果というものが期待できると思っております。教育界でも、学校教育においてデジタル放送を活用するであるとか。あるいは、もちろん家電メーカーにとりましてはデジタル対応テレビの需要が非常に大きくなるということ。それだけではなく、いろんな活用の可能性ということで情報家電というものも出てくると思います。

それから様々なサービスというようなことも可能になってきます。関連業界にも波及効果がある。その結果、国民一人ひとりが高度情報通信技術のメリットをうまく享受できるようになると私どもは考えているところでございます。

それから、今申し上げましたより豊かな放送サービスが実現するということは、高画質・高音質の放送であるとか、あるいは新たなサービスとしてのデータ放送やワンセグといったこともあろうかと思います。

特に字幕放送につきまして、これまでは特別なチューナーが必要だったわけですが、特別なアダプターなしで受信機の標準装備としていただけることで、オン・オフによって字幕放送を見ることができるということでございます。よく言われますが、字幕のメリットについて障害者だけでなくもちろん高齢者、あるいは外国人にとってもそのメリットが分かち合えるのではないか。字幕放送の理解増進や周知普及にも期待できるのではないかと思っております。

それから、地デジ化につきまして、地デジ化を進めるためには受信側の課題、あるいは送信側の課題といったように、それぞれの対応が必要だということから、国としてどういうふうに取り組んでいったらいいかということを議論されています。昨年6月には情報通信審議会から中間答申が出され、その普及に向けて行政が果たすべきことについて提言が出されました。

三つございます。国民の理解醸成をまず図る必要があるといったようなこと。これは周知広報といったことになるだろうと思います。国、地方公共団体においてきめ細かな周知広報をするということ。また放送事業者も番組等を通じまして周知広報をするということ。

また、これも後ほど話そうと思っておりますが、昨年秋には全国 11カ所にテレビ受信者支援センターというものができまして、さらに先月2月末にはさらに 40カ所、テレビ受信者支援センター、「デジサポ」と言うそうですが、それを設置して情報提供に努めているところでございます。

それから受信側の課題といたしまして、やはり受信する側にもテレビあるいはチューナーを対応する必要がございますし、またアンテナ工事の対応も求められるというようなことから、各種の施策が講じられています。来年夏までに 5,000円以下の簡易チューナーの開発といったことを民間に今、働きかけているところでございます。あるいは必要なところ、後ほどご説明しますが、チューナーやアンテナを無償で現物給付する。必要のある方に現物給付ということも考えております。

また、送信側の課題としては全国をカバーしなければならないということで、難視聴世帯解消のため施策も講じているというものでございます。

現在行っています情報提供活動につきまして簡単にご説明いたします。

地上デジタル化の意義やメリットを周知しようということで、あるいはアナログ放送がいつ終了するかという周知が遅れていたということもありましたのでそれの周知であるとか、どうやったら具体的に地デジを見られるのかといったようなことについてリーフレット、ポスター、チラシといったものを配布したり、アナログ放送の告知シールを受信機へ貼るといったような、きめ細かな情報提供を行っているところでございます。先ほど申し上げましたように、各都道府県に1カ所以上は受信機相談センターといったものを設置しまして個別にご相談に応じているところでございます。

それから、デジタル放送への移行が困難な方への支援も必要だということで、特に 21年度の予算から本格的に計上しているところでございますが、各種の施策を行っております。一つには外付けのチューナーの低廉化への働きかけ。先ほども申し上げましたが5,000円以下を目標にしておりまして、これも大分市場価格が下がっているとは聞いておりまして、当初は9,000円前後だったように記憶していますが、徐々に低廉化してきています。それから二つ目として、直接的に受信機器の購入について支援しようということで、21年度の予算案に現在計上しているところでございます。対象となる世帯についてはNHKの受信料全額免除世帯、最大で260万世帯になりますけれども、そちらを対象にして簡易なチューナーの無償給付であるとか、必要な場合にはアンテナの無償改修といったことも行おうということで、170億円。これは今年度負担も含めてですけれども、計上しているところでございます。

二つ目には個別にサポートや相談に応じていこうということで、デジサポというセンターを設置するということ。当初は21年度からということでしたが、前倒しいたしまして平成21年2月には 40カ所をさらに設置して、現在では全国51カ所においてこのセンターを設置して個別相談等に応じているところでございます。

さらに高齢者・障害者につきましては、きめ細かなサポートをしていこうということで、個別訪問をやっていこうということも考えております。

以上、地デジ化は非常に大きな事柄でございます。

最後のページは、世界における放送方式の比較ということでご覧いただければと思います。

地デジ化は国民生活にも大変大きな影響を及ぼす事柄でございます。ぜひとも皆様のご理解とご協力をお願いしたいと思いますし、また、私が担当している課に関連しては、これを機に字幕放送等の普及を期待したいと考えているところでございます。皆さん方のご理解をお願いしたいと思います。

以上、簡単ではございますが、私からの話を終わりたいと思います。どうも皆さん、ありがとうございました。