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障害者とメディア 「マスメディアと障害者」ヨーロッパ大会

全体会議Ⅰ(マスメディアにおける障害者の描写)

Mr. Peter Radtke
-EUCREAインターナショナル書記長(ABM、ドイツ)

Radtke氏はあるテレビ会社のゼネラル・ディレクター兼編集主任で、主として障害に関する取り組みを担当しています。彼は、障害者を表現する主要な媒体であるマスメディアは、障害者の不完全さや障害そのものに注目しすぎていると指摘します。このような描写の仕方は、「宿命を全うするヒーロー」という印象を受け手に植え付けることになります。これらはどれも一方的な見方であり、社会の一員である障害者の実際の生活とは全く違うものです。

Radtke氏によれば、「マスメディアにおける障害者の描写」というのは複雑な問題です。「メディアに登場する自分たちのイメージは正しくない」という障害者の苦情をしばしば耳にしますが、「正しくない」というより「偏っている」とRadtke氏は考えます。

マスメディアというのは私たちの社会の産物であり、消費者に非常に近いものです。障害者に対するメディアの態度の源を探る前に、社会に蔓延する障害者についての固定観念と偏見をリストアップし、これらの現実と虚構が社会に及ぼす影響について考察する必要があります。

何世紀もの間、障害者は生まれつき「正常ではない人」と見なされてきました。これには様々な実例があります。時代は変わりつつあるものの、出産前診断と中絶に関する近年の議論は、時代は変わっても世論は大して変化していないことを証明しています。私たちはこの観点から、メディアの役割およびその責任の範囲を考察する必要があります。

メディアは障害者と健常者の関係において非常に重要な役割を果たします。実際にはこれら2つのグループが接触することはめったにありません。ヨーロッパ諸国の多くがその統合(もしくは「インクルージョン」)を目指した取り組みを進めていますが、障害者は依然として隔離された組織の中で生きています。これら2つのグループの接触は、無知と恐れにより阻害されています。

マスメディアは、健常者集団が、人口の10%を占める他方の集団に関する情報を得るための唯一の経路なのです。マスメディアこそ、障害者のイメージを他者に伝えるものです。

かつてメディアは障害者に対して著しく否定的な見方をしていました。映画の世界でも同様でした。映画に登場する障害者は、からかいと嘲笑の的でした。映画の中の暗殺者はしばしば何らかの障害を持っていました。第二次世界大戦後、メディアは障害者を新しい方法で捉えるようになりました。この新しいアプローチにおける障害者の描写は、2種類に分けられます。一つは観客や読み手の同情を引くため、障害者を大いなる関心あるいは注意を必要とする人として描く手法です。もう一つは受け手の関心を集めるために、彼らを「不具者を装った物乞い」として賛美する、扇動主義的な手法です。

このような描写は、障害者に資するものではありません。残念なことに、マスメディアが重視するのは視聴率です。読者や観客の確保が保証されている場合のみ、メディアは責任ある報道を行う贅沢を享受することができるのです。

従って過去数十年間、マスメディアに登場する障害者は、物乞いかバットマンかのどちらかでした。ここで言う物乞いとは他者の助けなしでは生きていけない人々であり、バットマンとは常人にはない能力を持った障害者ヒーローのことです。

これらのイメージは全く間違いとはいえないものの、各人の持つ様々な側面の一部だけを描いているという意味で、歪曲されたイメージです。障害者の一面だけを伝えるのは危険なことです。与えられた情報が単純すぎるとき、障害とは何か理解することは不可能になります。間違った情報を与えられた一般市民は、それを修正することができません。障害者が一個人と見なされることは稀です。世間にとって個々の障害者とは、障害者コミュニティ全体の代表者なのです。

この解決策とは、障害者のプラスのイメージを提供することでしょうか?Radtke氏はそうは思いません。「障害は簡単に売買できる商品ではありません。それに洒落たラベルをつけて売り込もうとすれば、私たちは信頼を失います。私たちは障害者の生活の良い面と悪い面の両方を伝える、客観的で公平な情報を確保しなければなりません。さもなければ、過去の間違いを繰り返すことになるでしょう。」

障害者の描写が近年改善されたことを示す例がいくつかあります。これは特に映画界で顕著になっています。障害者を取り上げた映画には、彼らに対する社会の態度が変わったことを示唆するものがいくつかあります。そして障害者自身が役者を務めるケースも多くなりました。

これは一般の人々にとっても、楽しみながら自然に情報を得ることができる点で望ましいと言えます。しかし私たちが今必要としているのは、障害者の日常生活を描いた映画です。このような映画は退屈だという人々もいますが、Radtke氏によれば、「障害者の日常生活は、多くの人にとって目新しく、新鮮なもの」なのです。