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障害者とメディア 「マスメディアと障害者」ヨーロッパ大会

全体会議Ⅴ(マスメディアおよびその新技術へのアクセス)

Mr. Marcel Bobeldijk
-ヨーロッパ難聴者連盟(EFHOH)会長

Bobeldijk氏は、マスメディアのアクセシビリティについての聴覚障害者およびその家族の視点を紹介し、特に字幕その他の支援手段がないことで生じる問題を論じました。

Bobeldijk氏はまず、2005年までにヨーロッパには、約8,200万人の聴覚障害者がいると述べました。この数は2015年には9,100万人(うち17,4000人が子供)に達する見込みです。これは、7人に1人の割合です。つまり、非常に多くの視聴者が、適切な対応によりテレビから排除されなくてすむということです。従って字の読めない子供向けには手話が、また、それ以外の人々には字幕が欠かせないものになります。ところがヨーロッパの一部の国では、このような手段が決定的に不足しています。なぜでしょうか?英国以外でこの分野に関する法律を制定している国はありません。これはEUレベルでも同様であり、感覚障害者へのサービスについて加盟国の義務を定めた法規は存在しないのです。字幕を付けることは簡単ではなく、費用がかかるわりには、利用者はごく一部の人々に限られるという意見がよく聞かれますが、字幕の費用はテレビ番組制作費のわずか1%であり、規模の経済性も得られます。重要なのは各国の放送局が協力体制を築くことです。例えば、ベルギーでフラマン語の字幕付テレビ番組が放送開始された後、オランダでも同じ番組が放送されたのですが、オランダでは字幕が付いていなかったのです!

英国は字幕放送の導入が最も進んだ国で、全ての放送番組(民放チャンネルも含めて)に字幕を付けることが法律で義務付けられています。字幕付きのコマーシャルも珍しくありません。2002年英国では字幕導入キャンペーンが展開され、大成功を遂げました。スウェーデンでも同様でした。オランダでは公共放送チャンネルの75%が字幕付きですが、民放の7チャンネルはまだ字幕を導入していません。

デジタルテレビも字幕の導入を大いに後押しすることでしょう。読みやすいフォント、鮮明な画像、コンピュータ・グラフィックスの可能性もあります。2002年のセヴィル大会では、デジタルテレビは情報社会の主要な媒体となると結論されました。

2003年にCenelecが提出した、デジタルテレビ利用の標準化協定に関する報告書では、障害者への双方向サービスの可能性について随所で触れています。まだ解決されていない問題として、字幕、音声解説、手話の不適切な使い方、記号や用語の複雑さ、そして、最大の問題は、一つのメニューから別のメニューに移る方法の難解さがあります。

難聴者が、文字のサイズや色を選択できたり、字幕付映画をダウンロードしたり、字幕付双方向テレビを使えたり、ボイスコマンドなどの最新のデジタルテレビ技術を使えなければなりません。そして、適切な字幕を利用できるようにする必要があります。字幕は非常に重要なものです。字幕のないテレビ放送は価値が大きく失われます。テレビはニュース、教育、スポーツそして政治を知るための最も重要な媒体です。政治家のディベートや選挙運動等は通常テレビで行われますが、字幕が付いていない場合がほとんどです。選挙での難聴者の投票率が非常に低いのもうなづけます。

最後にBobeldijk氏は、字幕は8,100万人の難聴者にとって不可欠であるのみならず、障害を持つ子供たち、また字を覚えようとする子供たち、第2外国語を学ぶ人々、高齢者等にとっても非常に有益な手段であることを指摘しました。「私たちには明確な目標があります。2010年までに全ての放送を字幕付とすることです。」