音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

日英セミナー「障害者のための社会的な仕事と雇用の創出」

参考資料1

「ソーシャル・ファームについて」

ソーシャル・ファームの定義
ソーシャル・ファームはソーシャル・エンタープライズの一種である。エンタープライズについては英国の貿易産業省(Department of Trade and Industry)の社会企業ユニットが発行した「社会企業―成功への戦略」の中で次のような説明がある。

ソーシャル・エンタープライズとは、基本的に社会的な目的を持ったビジネスで、事業で得られた利益は、株主や事業主の利益を最大限に増やすためではなく、主にその社会的な目的のために、ビジネス或いはコミュニティーに再投資される。
ソーシャル・エンタープライズは、幅広い社会問題及び環境問題に取り組むことで、あらゆる経済分野に影響を及ぼす。ソーシャル・エンタープライズは、強力かつ持続可能な、そしてインクルーシブな経済の創造において明確かつ重要な役割を果たす。
社会企業は多種多様であり, 地方のコミュニティ・ビジネス、ソーシャル・ファーム、共同組合のような共済団体、国内および国外で活動する大規模な団体を含んでいる。
社会企業に法的な基準はなく、有限会社、産業節約組合注、株式会社を含み、非営利または公認慈善事業の団体もある。

ソーシャル・ファームとは障害者に雇用創出のために特に作られたビジネスである。このソーシャル・ファームについて、ソーシャル・ファームスコットランドは次のように定義している。

ソーシャル・ファームとは、ソーシャル・エンタープライズの一種であり、障害者或いは労働市場で不利な立場にある人々のために、仕事を生み出し、また支援付き雇用の機会を提供することに焦点をおいている。ソーシャル・ファームとは、障害者或いは労働市場で不利な立場にある人々の雇用のために作られたビジネスである。

・ ソーシャル・ファームは、その社会的任務を遂行するために市場志向の商品の製造及びサービスを提供するビジネスである。
・ ソーシャル・ファームに雇用されているかなりの数の人々は、障害者或いはその他の労働市場において不利な立場にある人々である。
・ 各労働者は、各自の生産能力に関わらず、仕事に応じた賃金や給料を、市場の相場によって支払われる。
・ 労働の機会は、不利な立場にある従業員と、不利な立場にはない従業員とに、平等に与えられる。すべての従業員は同じ権利と義務を持つ。

1. ソーシャル・ファームとしてその収入の少なくとも50%は売上から得られている(つまり、公的資金、民間資金による援助、或いは寄付金にはよらない。)

2. 従業員の少なくとも25%は障害者或いは不利な立場にある人々で、他の障害のないスタッフと同じ権利と義務を持ち、同等の条件でスタッフとして参加し、雇用される。

ソーシャル・ファームの始まり
ソーシャル・ファームは、1980年代にオランダ、ドイツおよびイタリアで始まった。仕事を通じてのリハビリテーション、つまり職業リハビリテーションの延長として出現した。福祉作業所との違いは、作業所は、社会的に保護された環境の中で仕事を提供するが、ソーシャル・ファームは、それより更に進んで、市場の相場にあった賃金を得るために仕事を提供することにある。イギリスでは1980年代後半からソーシャル・ファームとして認知されるようになった。

ソーシャル・ファームの法的な立場
1997年のソーシャル・ファーム・ハンドブックによれば、英国においてはソーシャル・ファームの法的な仕組みに言及すると選択肢がある。法的には慈善事業法人の商業部門としてあるいは公認慈善団体として有限会社を設立することができる。あるいは公認の協同組合を設立することができる。

ソーシャル・ファームUK
( http://www.socialfirms.co.uk
1998年 スコットランドを含む、地域ネットワークが設立された。このネットワークにより、人事管理についてアドバイスを提供する、あるいは支援する人が現れた。このソーシャル・ファームUKはEUから助成を受けている非営利の団体である。2004年10月現在、ソーシャル・ファームUK は361名の会員数を誇り、ソーシャル・ファームの数は51、そして現在発展段階にあるソーシャル・ファームは126に上っている。
英国においては現存するソーシャル・ファームの60パーセントが精神障害者、30パーセントが知的障害者、そして10パーセントが身体的、あるいは感覚障害を持つ人たちに雇用の機会を提供している。

ソーシャル・ファームUKの会員の業種
製造、貸し自転車と修理、出版、観賞魚リース、配食、園芸、印刷、旅行代理業、クリーニング、イベント業、リサイクル、ウェブデザイン、陶芸、ダイレクトメール、繊維業、内装、組立て、畜産、カフェ、衣料製造など。

2004年4月から画期的な試みとして、成功している業種を「フラッグシップ・ファーム」としてフランチャイズ化した。
以下が「フラッグシップ・ファーム」として展開している事業である。

●Aquamacs(アクアマクス)
熱帯魚、水槽のレンタル事業。企業、公共団体、個人に貸し出しとメンテナンス。2002年にコーンウォールで始まり、170ヶ所に貸し出している。
http://www.aquamacs.co.uk
●Cafe Nova(カフェ・ノバ)
Cafe Novaはヘルシー感覚のカフェで、ロンドンのショッピングセンターに拠点を置く。Cafe Novaのライセンスを取得するとオペレーションマニュアルとともに、全てのサポートがパッケージとなって与えられる。
●Computer Recycling (コンピューター・リサイクリング)
非常に成功を収めているコンピューターのリサイクル。ルトンに拠点を置く。
http://www.recycle-it.ltd.uk
●Eco Store(エコ・ストア)
環境にやさしい製品の販売。1980年に始まり、年間1700万ポンドの売り上げがある。http://www.dailybread.co.uk/camb http://www.dailybread.co.uk/north
●Homecare(ホームケア)
8年前に始まり、150名雇用。150万ポンドの売り上げがある。
●Pack-IT
パッケージ、配達、貸し倉庫業。http://www.pack-it.com
●Social Firm Hotel(ソーシャル・ファーム・ホテル)
エジンバラのSix Mary's Place Hotelと提携。http://www.sixmarysplace.co.uk
●The Soap Co.
高品質のハンドメイドのソープ、ヘア、バス、シャワー用品の販売。
http://www.thesoapco.co.uk
●Wood Plastic Composite (WPC) Fencing & Decking
放射線強化木材(WPC)を使ったフェンスとデッキの製造。

全国及び地域的ネットワーク
ソーシャル・ファームUKは実際的な支援を行なうために全国及び地域的ネットワークを展開している。

参考文献

・英国政府の小規模ビジネスサービスのウェブサイト:http://www.sbs.gov.uk/
・Social Firms UK: http://www.socialfirms.co.uk/
・Social Firms Scotland: http://www.socialfirms.org.uk
・Social Firms Handbook: authors Bob Grove, Michael Freudenberg, Anne Harding, David O Flynn, Pavilion Publishing Ltd, 1997
・FEAT エンタープライズウェブサイトhttp://www.burghlodge.co.uk/about_feat/

注:作業節約組合―共同組合として、あるいは、地域の利益のために事業やビジネスを行い、1965年の産業節約組合法の元で登録されている団体である。協同組合は会員の相互利益のために運営され、その余剰金より良いサービスと施設を提供するために使われる。地域のために運営される組合は、会員以外にもサービスを提供する。組合が会社として登録されない特別な理由がある。