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平成17年度
地域におけるインターネット・パソコンを利用した
障害者情報支援に関する調査研究事業報告書

サポートと心の問題

望月 優
株式会社アメディア代表取締役

皆さん、こんにちは。望月です。私は株式会社アメディアと言いまして、視覚障害者向けのコンピュータソフトとか機器を開発・販売している会社の経営者なんですけれども、全盲の視覚障害者です。

時間が10分なので二つの話をさせていただきます。一つは有料サポートというか、うちは会社ですのでお客様のサポートなどは基本的に有料で行っております。電話のサポートとかは無料でやっていますよ。ただお客様の家にお邪魔してちゃんとサポートしたりするというのは有料です。あと、畠山先生がおっしゃった心の問題の話もちょっとしたいと思います。

まず一つ、有料サポートなんですが、お客様の自宅に行って、サポートと言ってもいろいろあって、トラブルを直すだけの場合もあるし、あるいはちゃんと教える。サポートと言っても講習的なサポートの場合もあります。講習的なサポートのほうの話をしますけれども。基本的には行く場所とかによって、算定交通費とかいろいろ違いますので、すっぱりとは言えないんですけれども、だいたい1時間3,000円くらいでやっています。1時間3,000円と言うと、どうでしょう皆さん、安いとはなかなか感じないと思いますけれども、どう感じますでしょうか。ちなみに床屋さん、いくらでしょうか。3,000円くらいですよね。だいたい1時間ぐらいで3,000円。マッサージとかにかかったらいくらぐらいでしょうか。わりと3,000円くらいが標準ですよね。高級なところに行くと4,000円、5,000円になりますけど。安いところで3,000円くらい。つまり人が動いて、例えば1時間くらい人がサービスをしてその人の人件費も考慮してなおかつ全体の収益、個人経営の場合もあるでしょうけど、会社とか経営全体の収益まで考えると、1時間3,000円というのは高くないというか、妥当な線なんですよね。

ちなみにお勤めの方、会社勤めの方、それから公務員の方。皆さん給料が違うから同じ時給じゃないんですけど、でもものすごくざっくり言って、比較的安い人でも時給2,000円なんですよ。時給2,000円。比較的安い人でですよ。高い人は3,000円、4,000円の人がいますから。時給2,000円と換算したときに3,000円とってやったらぎりぎりだと思いませんか?

いろんなことを考えると。つまり1時間3,000円というのは高くないんですよね、決して。その1時間3,000円で私どもアメディアにサポートを頼むお客さんがどのくらいいるかと言いますと、とても少ないです。

わりと常連化するんですけどね。これはそれぞれ自分の経済状態とか、あるいは自分のニーズとかに応じて頼むかやめようかというのを決めると思うんですが、常連化します。つまり1時間3,000円を高くないと思う人はずっと使うんですよね。そういう傾向になります。

ちなみに1時間3,000円くらいでお客さんがどんどん増えた場合アメディアはどうなるかと言うと、アメディアは苦しくなります。なぜかと言うと他のところの収益率がもっといいからです。だから逆に言うとこの価格は高いか安いかは別にして、あまり増えないでほしというのが、経営的には3,000円でもそういう事情なんですね。一応これは現状をお話しさせていただきました。

さて、それから先ほど畠山先生が非常にいいお話をされました。例えばIT、パソコンを習得するかどうかというのも、すごくモチベーションによるんですよね。その人がやりたいという、やるぞというやる気があれば、例えばその人が本当に初心者でパソコンのことは全く知識がなくても、あるいは現段階ではキーボードが全く打てなくても、その人は間違いなくできるようになるんですね。もちろんちゃんと指導というか、その人のモチベーションに見合ったやり方で教えられるような場合ですけどね。

私は、今、障害者の一番の障害は何だろうと実は考えているんです。それは、障害を、できないことの理由にするのが一番の障害なんです。

つまり、実は昨日私はあるインターネット塾―私、インターネット塾に今通っているんですけども―これはもちろん晴眼者も混じってインターネットでどうやったら稼ごうかという人たちがぞろぞろ集まっている塾なんですけれど。そこでの一人の講師の話の中ですごく私、感銘したことがあって。話を聞いている塾生の中にはすごく稼いでいる人もいるし全然稼げていない人もいるわけですね。そういうことに対して、例えば寺島さんがすごく稼いでいて私が稼いでいないとしますね。そうすると、「寺島さんは特別だから、これができるから稼げてるんだ。僕はこれができないから難しい」。そう思ったらダメなんですね。つまりAさんは特別だと。自分はその域には到底達しないから自分には苦しいと、思った瞬間にできなくなるんです。今の話は晴眼者同士の話をしているんですよ、インターネット塾の話ですから。全部が健常者の聴衆の中でそういう話をしているんです。

私は、「あ、これだ」とピンと思いました。つまり障害者は、障害をものすごく理由にしやすいんです。すごく強い味方なんですよ。「私は障害があるからできない」って、言ったら皆が納得してくれるじゃないですか。こんないい武器はないんですね、自分ができないことの理由付けにこんなにいい武器はない。私から言わせると、障害を自分のできないことの理由にしないメンタリティを我々障害者自身はどう身につけるかということが、すごく大切なんじゃないかな。

さっきの畠山先生の発言は、健常者側のモチベーションの低い障害者をどう勇気づけるかという、すごく温かいお心遣いの発言だったんです。もちろんそれはありがたいし、そういうスタンスをどんどんパソボラの方にも磨いていただきたいと思うんだけど、逆に私は自分が障害者ですから、障害者自身の立場から言うと、自分の障害をできないことの理由にしない。

ここがすごく大事なんだと。この二つの方向性がマッチングしたときに初めて大きく胎動していくんじゃないかというふうに感じます。

ありがとうございました。