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平成17年度
地域におけるインターネット・パソコンを利用した
障害者情報支援に関する調査研究事業報告書

パソコンボランティアと障害者IT支援の展望
全盲者の特性と文化

望月 優
株式会社アメディア 代表取締役

1.見えないこととパソコン

N88BASICの商用スクリーンリーダーを最初に開発したのは全盲の人でした。

彼は全く音声のない状態で、まずビープ音でモールス符号を出力するプログラムを作り、モールスで画面を読ませました。

このように、全く画面表示のない状態でも、パソコンを使うことは可能なのです。

パソコンが情報を画面に表示するというスタイルで作られているから音声で画面を読むという必要が出てくるのであって、仮にこの世に目の見える人がいなかったとしたら、人類は全く別の出力形式のパソコンを開発したことでしょう。

2.CUIとGUI

CUIは文字列のコマンドによるインタフェースです。

これに対して、GUIは、画面の表示に対応する形で人間が操作する方式です。

CUIは自らの意思でパソコンに動作させる方式、GUIはパソコンから選択肢が提示されて、そのメニューの中から行いたい操作を選ぶ方式です。

ですから、CUIの方がGUIよりもより自立した操作方式だといえます。

そして、目の見えない人にとっては、元来CUIの方が自分の能力通りに活動できるという性質があります。

3.一望方と手探り方

GUIを使う場合、目の見える人は画面を一望できるので、その中から判断する「一望方」です。

目の見えない人は、タブキーやカーソルキーを使って一つ一つの項目を辿りながら目的とするものを探していく「手探り方」です。

このことからも、GUIにおいては、見える人と見えない人とで大きな効率差が出ることが容易に想像できます。

4.ショートカットの有効性

スタートメニューを表示させた状態でPのキーを押すと、たいてい「Program files」のところにポンとジャンプします。

このように、キー操作一発で目的とする位置にジャンプしたり、目的の操作を実行したりすることを「ショートカット」と呼びます。

元来手探り方でしか操作できない全盲者にとって、このショートカットは作業効率を上げる上で実に大切なものです。

5.全盲文化の理解

パソコンボランティアが全盲者をサポートするとき、上で書いたような全盲者の文化をよく理解し、本人にとってより快適なやり方を伝える必要があります。

トラブルで困っている全盲者の自宅に行き、画面を見たら原因がすぐにわかり、マウスを数回かちかちやって「はい直りました」というのは簡単です。

でも、このまま帰ってしまうと、その全盲者は、また同じ状態に陥って困るかも知れません。

できれば、「その困った状態」になる要因を探り出し、且つその状態をもう一度作り出して、本人がキー操作でそれを解決するための方法を一緒に模索する、そんなスタンスがパソコンボランティアには望まれます。

このような操作文化を理解するためにも、パソコンボランティアの養成講習会では、画面を消して全盲としてパソコンをある程度操作できるまでやって見ることをお勧めします。 これは、点字の習得と比較すれば、はるかに容易です。