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障害者対策に関する新長期計画推進国際セミナー報告書

シンポジウム(東京):障害者プランを地域でどのように実現するか

司会:八 代 英 太 (Eita Yashiro, Japan)

山梨県生まれ。タレントとして公演中にステージから転落し、脊髄損傷の障害を受ける。 1977年より初の「車椅子議員」として参議院を3期務め、障害者基本法成立に中心的役割を果たす。現在も、衆議院議員を務めながら国際的なリーダーとして活躍中。著書・受賞多数。

八代

 どうも皆さんこんにちは。今日は大変中身の濃い、素晴らしい国際セミナーになりま して、関係者の皆さんに心から御礼を申し上げます。

 とにかくヨーロッパの障害者問題のスーパースターのベンクト・リンドクビストさん と、アメリカの、いまやもうクリントン政権の中枢におられ、教育省で頑張っておられ るジュディ・ヒューマンさんがお見えいただいているだけで、何か世界がこの会場に注 目しそうな、そんな錯覚にもとらわれてしまいます。

 私もいままでこういう国際セミナーには随分参加をさせていただきましたが、今日こ れからのひとときは、私たちの日本で、昨年(1995年)12月15日に発表されました「障害 者プラン7カ年戦略」について、ご一緒に考えていきたいと思います。この「障害者プ ラン」の英訳を、今日のシンポジストの皆さんにお渡ししてありますので、コテンパン にご批判もしていただきたいと思いますし、これから7カ年の障害者プランを、地域で どのように活かしていったらいいのか、皆さんの考え方を参考にしながら、ご一緒に考 えていきたいと思っております。

 この7カ年戦略は今年が初年度ですので、2002年に終了することになりますが、「アジ ア太平洋障害者の十年」が終わるのも2002年です。その第2の十年のラストに合わせて、 できるだけ我々のプランが100%近い目標達成になるように、今日を1つのきっかけとし て、このプランを皆さんで一緒に吟味していただきたいと思っております。

 このプランが、絵に描いた餅で終わるのか、おいしい餅になるのかは、一に我々自身 の力にかかることも多いと思いますし、したがって、それを推進するのが障害者運動の あるべき姿だと思いますので、その辺を大いに皆さん方も勉強し、ご発言をいただきた いと思っております。

 まず最初にシンポジストの皆さんをご紹介したいと思います。皆さん拍手をお願いい たします。まずベンクト・リンドクビストさん。そのお隣のジュディ・ヒューマンさん。 そしてビヤタ・メリングさん。そして日本とデンマークの福祉の掛け橋をもう26年間も やっていただいております、千葉忠夫さんです。

指定発言 八代

 まず、今日は会場から早くも提言をしたいという方がお2人、名乗りを上げておられ ます。障害者プランをじっくりとご検討されたうえでのご提言を、まずお2人から伺い ます。最初に、日本障害者協議会の政策副委員長の、太田修平さんです。どうぞ。

太田

 太田です。今日は皆さんの力強いメッセージをいただき、改めて日本で運動を推進し ていく勇気が沸いてきたところです。そして、希望と強い確信を持つことができました。 ありがとうございます。

 ところで障害者プランが昨年末、政府から発表されました。私たちはそのプランに期 待を寄せるとともに、まだまだ不十分な点を感じをざるを得ません。

 先ほどからの論議にもあるように、まだまだ日本においては差別があり、障害者は権 利を侵害されております。私たちはまず障害者の権利、市民としての権利をきちんと確 立することが、重要だと考えております。地域で生きる権利、コミュニティの中で生き る権利、公共交通機関を当たり前の市民として使う権利、公共住宅、あるいは民間住宅 に住む権利、働く権利等々のきちんとした権利が保障されなければならないと考えてお ります。

 しかし、残念ながら、まだ多くの仲間たちは雇用の権利を侵害され、私たちは差別に 直面せざるを得ません。

 鉄道やバス、私鉄には階段や段差があり、使えるものほんのわずかです。障害者プラ ンにもバリアフリー化の促進が規定されておりますが、私たちはそれを権利規定、差別 禁止規定として、まず日本の法律の中にきちんと明確に位置付けていく必要があると、今 日のお話を伺って考えました。そのための運動の重要性と、運動の勝利に向けた確信を 得ることができました。

 第2に、障害者プランは事実上ノーマリゼーションを考え方の基本としています。地 域で生きるためのホームヘルプ・サービスも、重点施策として取り上げられています。し かし、障害者のために7年間で4万5,000人という人数が増やせるといっても、すべての 障害者、それを要望している人たちが、地域で生きるに足りる数だとは、必ずしも思え ません。私たちは社会の中でそれぞれが活動し、働くために介助が必要だという認識に 立っており、もっともっと多くの介助者、ヘルパーが必要だと感じています。また、現 実に行政から派遣されるホームヘルパーと、障害者とのトラブルも続いています。

 私たちは、日本でも、デンマークやアメリカのように介助者を自分自身で雇う姿勢を きちっと取っていくべきだと考えています。ごくごく一部ではそういうことが行われて います。私もパーソナルケア・アシスタントの手によって介助を24時間受けています。 でも、それはまだまだごく一部の人であり、地域によって介助サービスを受けられる時 間も違います。また、当事者自体による自立生活センターも、今後それが役立つことが 認められれば、もっと増えていかなければならないと思いますし、そのための国や自治 体の補助が必要だと思われます。

 そのように、私たちはそれぞれ地域で生きることを目標として、取り組みを行ってい ます。ヘルパーさんとのトラブルについての具体的なご意見も含め、ご指導いただけれ ばと思います。以上です。

八代

 どうもありがとうございました。太田さんからは、差別禁止規定のようなものを、しっ かりと法制化するために運動を展開したいという決意と、特にこの障害者プランの中で、 障害者のホームヘルパーという1つの制度の導入について、いろいろなご意見をいただ きました。この辺については、後ほどベンクト・リンドクビストさんのご意見や、デン マークの現状なども、もう一度おさらいとして伺うことにしましょう。

 続いてもうお一方、ご提言がございます。東京都身体障害者団体連合会会長の兒玉明 さんです。

兒玉

 兒玉でございます。2点ございます。我が国の現実を見ますときに、ノーマライゼー ションの達成への道筋は、非常に厳しいものがあるのではないかと思います。多くの重 度の障害をもつ人たちは、いまだに施設や病院の中で管理された生活を強いられており ます。例えば何時に起きなさいとか、何を食べるのだとか、いつどこに行くのですかと いうようなことも、なかなか自分では決められない環境に置かれています。障害者プラ ンの中では施設の増設が謳われておりますが、地域で生活できる環境作りに、もっと力 を注がなければ、施設をうんと増やしていっても意味はないのではないでしょうか。そ の辺の皆さん方のお考えをお聞きしたいと思います。

 2番目でございますが、日本の大きな問題点といたしまして、扶養義務、世帯単位で 福祉が供給されることが挙げられます。障害者プランによりまして、障害者は地方の時 代、地域の時代を迎えるわけでございますが、日本の社会そのものが、家族による介助、 介護を前提として組み立てていられるのではないでしょうか。障害者本人も家族も、日 本のこの長い伝統みたいな習慣に苦しむようなことになるわけでございます。この点の 皆様方のご意見を聞かせていただきたいと思います。ありがとうございました。

八代

 どうもありがとうございました。兒玉さんからは、障害者プランは施設の増設ばかり 謳っているけれども、やっぱり地域で生活できる環境作りを進めるために、施設を作る よりも、より自立する方向を模索すべきではないかというご提言でした。それから日本 にはいろいろな福祉制度がありますが、どうしても所得制限問題があって、扶養義務者、 あるいは世帯単位などいろいろな問題があり、障害者がいつまで経っても子供から大人 に脱し切れない。そういう意味では、日本の家族形態そのもの、日本の慣習そのものも 変えていかなければならないのではないかと、ご提言いただきました。

 これから、シンポジストの皆さんにお話を伺っていきますけれども、実は皆さんもご 案内だと思いますが、この障害者プランには7つの大きな標題がございます。1つは「地 域で共に生活するために」というテーマ。それから「社会的自立を促進するために」と いうこと。「バリアフリー化を促進するために」。「生活の質(QOL)の向上を目指して」。 5つ目として「安全な暮らしを確保するため」、これは特に災害ということに主力を置い た政策です。その次、6つ目として差別の問題を中心とした「心のバリアを取り除くた めに」。そして、もう1つが今日のセミナーのように、日本は欧米先進国から学ぶと同時 に、アジアの一員であることも忘れずに、国際協力を続けながら、日本の存在にふさわ しい国際交流をやっていこうという「我が国にふさわしい国際協力・国際交流を」。この 7つのプランに分かれております。

 また、それぞれのプランの詳細については、皆さん方のご質問にお答えするといたし まして、こういう7つのプランに基づきまして、今日のシンポジストの皆さんから、そ れぞれの立場で参考意見、あるいは提言をいただき、またそれぞれのお国でやっておら れる政策と、この障害者プランとの違いなどについて、伺っていきたいと思っておりま す。

 最初にベンクト・リンドクビストさんにお伺いします。先ほど太田さんから法制度に 関するご提言がありました。また先ほどの基調講演の中では、障害者の人権条約の提言 が頓挫したいきさつについてお話がありましたが、各国を回りながら、今世紀中にはこ ういうものもできるであろうという、明るい見通しにも若干触れられたように思うので すが、その辺を含めてお話いただければと思います。どうぞ。

ベンクト・リンドクビスト

 ありがとうございます。まず最初にこのようなプランができたことは、とてもよかっ たと思います。政府が何をしようとしているか明らかに示したことにより、政府の努力 が測定可能になるという意味で、大変意義があります。そのためには、まずプランの内 容自体が十分であるかどうか見ていくこと、それからプランに対してどのくらいの進展 があったかを今後見ていくことが大切です。また、地域での取り組みが重要視されてい るかどうかも大事だと思います。実際に住んでいる所で、これらのプランが実行されな ければならないからです。

 マイナスの面といってもよろしいかと思いますが、私の考えでは、法律的な基盤が、少 し弱いように見受けられます。「障害者基本法」が93年に改正された、それはいいことだ と思います。けれども、それだけでは、まだ本当の意味での進歩には十分ではないと思 います。地方自治体はこれから7カ年にわたって、果たしてこの7項目について、達成 できるかどうかを示すことになります。どのような進捗状況になるのか、非常に興味深 いと思います。

 それからもう1つ、成功するための大変重要な前提条件があると私は思います。特に 日本の環境の中では重要だと思われるのですが、それは何かといいますと、障害をもつ 人自身の果たすべき役割です。この件については、ヒューマンさんから非常に力強いご 講演がありましたが、障害をもつ人たち自身が、地域レベル、県レベル、そして国レベ ルで発言権を増さなければいけない、成功するためにはそれが前提条件であると思いま す。

 私は実際に自分の国で障害者運動に携わった経験もありますし、また大臣を経験した こともありますから、両方の立場から話ができると思いますが、長期的かつ組織的に条 件を改善しようという圧力をかけなければ、ほかの問題が優先課題に擦り替えられてし まいます。そのためには法律が明確でないと、効果的な活動ができない場合もあります。 また政府には、障害をもつ人たちの組織を十分に支援してほしいと思います。これらの 組織は日本の社会を変えるために非常に重要な存在です。これらの組織を強化し、メン バーのトレーニング、リーダーシップを養成するためのトレーニングを行ったり、自分 たちの権利のためにロビー活動ができるように支援すべきです。これらの組織は、日本 の社会にとって財産であることを忘れてはなりません。

 また障害者組織の側でも、十分に力が得られないまま、地域レベル、県レベル、国レ ベルで発言権がない状態にあまんじては決してならないと思います。

 事実関係を十分に把握しているわけではありませんが、日本では、まだ十分な組織の 力がないように思います。組織をもっともっと強化をし、対政府の話し合いで、より強 い発言権を持つことが重要だと思います。

八代

 リンドクビストさんからは、やはり障害者自身が組織をしっかりまとめ上げて、力を 付けていくことが大切であり、そしてこのようなプランができたときには、それをどう 私たちがアレンジしていくかが重要であるというご指摘をいただきました。

 では続きまして、ジュディ・ヒューマンさんに伺います。ジュディさんはたびたび日 本にもお見えになっておられますし、日本の障害者団体、大きな団体から小さな団体、あ るいは1人、2人のグループに至るまで、小まめ訪問され、随分サポートもしていただ いております。そこで、まず障害者の力を付けるために何が大切か、あるいは障害者が 組織化していくためには、どういう経過が必要かをお伺いします。また障害者プランの 中では、ジュディさんのお得意な分野である教育についても若干謳われてはいるのです が、単なる交流教育の程度に留まっております。障害をもった子供ともたない子供が一 緒に教育を受けるという統合の方向が、世界の流れでありますけれども、どうも日本に はかたくなに養護学校の義務化と申しますか、障害をもった子供は障害をもった子供同 士で教育するという流れがあります。そういう1つの流れが何となく、実は障害者が成 長してからの力を阻害していたり、すでに子供の時代に力を抜き取られているような思 いもないわけではありません。そんなことも含めて、まとめていただければありがたい と思います。

ジュディ・ヒューマン

 まず私のほうから質問させてください。(いま手元「障害者基本法」の英訳があります が、)この文書は、実際に実施できるものなのですか。

八代

 実施しなければならないと思っております。

ジュディ・ヒューマン

 そう聞いてうれしく思いました。この文書をお持ちの方もいらっしゃると思いますけ れども、第二章「障害者の福祉に関する基本的な施策」というところでは、教育に関す る文言がかなり強くなっています。国、それから地方自治体は、これこれこういう施策 を講じなければならない。そして、それを通じて、教育の質、教育の方法を改善し、障 害をもつ人が十分な教育を受けられるようにしなければならない。その年齢、能力、障 害の程度に合った教育を受けられるようにしなければならないと、少なくとも英訳では かなり強い文言で書かれています。

 私の質問は一体誰が、これを現実のものにするためのルールや、規則を作るのかとい うことなのです。この文書のほかのところでは、こういうことを「努めなければならな い」などと書いてある部分も多いのですが、「努めなければならない」というような表現 は、かなり弱いものでありまして、それは「できなければしょうがない」という意味に も受け取れます。ところが教育のところは「しなければならない」と強い意味になって いる。

 それから第一六条の「判定と相談」も、かなり文言は強くなっています。「国及び地方 自治体は、……各種の判定及び相談業務が総合的に行われ……るよう必要な施策を講じ なければならない」とあります。ですから、もしも教育の分野で、この文章に対応する 強力な規則を実際に作ることができれば、本当の意味でのしっかりとした闘いを展開す ることが可能になると思います。

 アメリカの場合もそうですし、それからほかの国でも多少共通するところがあると思 うのですが、もともと別々にサービスを行う形であったのに、それを統合していくとな りますと、なかなか困難が多いところもあると思います。日本でも同様の問題があると 思うのですが、障害をもつ人、もたない人の間に全く別個にシステムを作るというのは 問題であります。欧米ではそういったことがよく行われてきました。住宅などについて も別個のものにする、その他のサービスについても障害をもつ人、もたない人の2本立 てにするというようなことが行われてきましたけれども、それは望ましくないと思いま す。

 それから基調報告の中でも申し上げたことですが、現在ある制度が、誤りであると思っ たなら、家族、校長、教師など、「この制度は誤っている」と考えている人たちと連携を して、闘いを展開していくべきだと思います。

 それからまた、八代さんのように議員を経験された方が、公共の場ではっきりと立場 を述べてくださることは重要です。自分の国の問題点をきちんと述べて、障害をもつ人 は自分より劣る人、違う人であると捕らえる国は間違っているのだと、訴えかけていく 必要があると思います。

 ですから教育ですとか、その他の制度でおかしいと思うところは直していかなければ なりません。

 しかし、こういった法律やプランができることは、いいことだと思います。これが出 発点になるからです。非常に明確な文言が使われているところもあれば、弱いと思うと ころもありますけれども、この文書がどれぐらい成功するのかは、実際の地域のレベル にいる人たち、また国レベルの人たちが、この文書を実施することに、どれぐらい熱意 を向けるかにかかっています。

 ですから、政府がまだ実施していないようであれば、今度は予算面もきちんと行って、 障害をもつ人たちが地域で集まって、この文書について十分な話し合いができるような 機会を設けることが、重要であると思います。そして、この文書に基づいて、さまざま な地域レベルでの原則を打ち立てていくことが必要であると思います。

 それから、障害者の組織、発言権を強化するにはどうしたらいいかということですが、 やはり政府機関がNGOを十分に支援して、組織強化の手伝いをすることが大事だと思 います。それに加えて、NGOでさまざまな活動をしている経験のある者たちが、途上 国でどういう活動をやっているかを見て、そこから学ぶことも必要だと思います。資金 に乏しい組織であっても、非常に独創的な仕事をしている所もあります。実際に事業を 始めたあと、最終的に自立を達成した所もあります。アメリカでは、経済的な依存度が どれぐらいか、あるいは独立性がどれぐらいかということが重要になっています。もし も政府への依存度が高ければ、政府の一存によってその組織の存続が決められてしまう ことになります。政府の運営形態が変わってしまえば、予算がつかなくなり、組織が存 続できなくなるという問題もあります。日本のみならず、アメリカにおいても資金源を できるだけ多様化することが、組織を強くする際にもう1つ重要なことではないかと思 います。

八代

 ありがとうございました。ジュディさんからは、障害者基本法についていくつかご指 摘をいただきました。大変なお誉めの言葉と、ちょっと表現が軽すぎるというご指摘も いただきました。

 障害者基本法は議員立法でございます。つまり政府が作った法律ではなく、私たち当 事者も含めた、特に障害者福祉に理解のある議員たちが作り上げたものですから、いつ でも変えていくことができる法律であります。5年ごとに見直しをするという約束事も ありますので、もうあと2年後ぐらいには、中身を変えるべきは変えていくことも、私 たちは考えております。この中で、特に教育のところで大変強い強制力があるような節 回しになっているとのことでありますが、だからといって、それを違反したり、そのと おりに実施しなくても、ADAとは違って、基本法には罰則規定が盛り込まれておりま せん。罰則規定がありませんし、理念法でありますから、そういう具合に努力したけれ ども、駄目だったと言われてしまえば、はい、それまでよ、というところがないわけで はありません。しかし、障害者基本法成立後の推移によって、「障害者プラン」が生まれ たり、建築基準に関しては「ハートビル法」が生まれたり、あるいは障害者の補装具法 が生まれたり、情報に関する法律が生まれたり、いろいろな枝葉が出てきていることは 間違いありません。今度はその枝葉の部分である「障害者プラン」が、今後7カ年にど う形になっていくかを見ることができます。言ってみれば、障害者基本法に基づいて、こ の「障害者プラン」が誕生したわけで、そういうことを思うと、基本法の意味するとこ ろは、また一面大いに評価のできるところではないかと思います。また、特に教育に関 するところは、文部省の大変な抵抗があったということを申し添えます。今後の見直し のときには、さらに踏み込んでいくべきだと思っております。

 それから組織のことにつきましてですが、日本には大体800から900ぐらい組織がある だろうと思います。2人、3人でも組織という団体もありましょうし、あるいは何万、何 十万という巨大な組織もありますけれども、なかなかこれが統合できない悩みもござい ます。

 そこで、デンマークは人口が約500万、北海道の人口ぐらいの国だと思いますが、日本 の福祉もデンマークの福祉をモデルにしているところもあります。かつて私が「ノーマ ライゼーション」について、国会の代表質問で取り上げさせていただいたのも、このデ ンマークの考え方が、日本に非常にふさわしいのではないかという思いに立ってのこと でございます。

 そこでビヤタさんにお伺いします。ビヤタさんも政治への参加を2度挑戦されていま すが、それには当然組織を作って、障害者団体の力はもとより、いろいろな人を巻き込 む戦略を立てていると思いますので、デンマークの障害者の組織の作り方などについて、 お話しいただければと思います。

ビヤタ・メリング

 デンマークにもいろいろな障害種別の組織があります。そして、その組織の連合会の ようなものが中央にありまして、その連合会は政府に、ある意味で強力な圧力をかけら れる組織となっております。それがデンマーク国内で障害をもつ人の生活をより充実し たものしていくための中央政府に対する圧力のかけ方です。

 私は地方議員に立候補したのですが、その理由は2つあります。1つは女性と男性の 同権ということで、女性を代表して、さまざまな意見を市政に反映したいということで す。もう1つの理由は、当然私自身が障害をもっておりますので、障害をもつ人の生活 条件をより充実したものにしたいという願いから立候補しました。そのほか進行性筋ジ ストロフィーの協会にも所属し、また政党は社会民主党に所属しておりますので、その 社会民主党からも支援を受けて立候補をしております。

八代

 どうもありがとうございました。障害者自身が団体を作り、いろいろ活動していくと、 自ずと政治で解決すべき問題が出てまいりますし、政治で解決しなければならないとき には、やはりそこに障害者自身も挑戦していくという、絶えず挑戦するということが大 変重要だと思います。

 そこで、先ほどもヘルパーの話が出ましたが、この7つのプランの中にも、やはり障 害者介護という問題が出ております。今日はビヤタさんが介護の問題について基調講演 をなさいましたが、スウェーデン、そしてアメリカの場合の介護問題についてもちょっ と伺ってみたいと思いますが、いかがでしょうか。スウェーデンの障害者の介護の問題 は、いまどういう状況にあるのか、あるいはジュディさんのアメリカでは、公的介護を 含めた介護が、どのようにいま行われているのか、伺いたいと思います。

ベンクト・リンドクビスト

 スウェーデンにおきましては、ちょうど2年前に、新しい障害者の権利の法律ができ ました。これは差別を防止するものではなく、権利に関するものです。すなわちどのよ うな社会的権利があるのかリストアップしたもので、重度障害者の権利を規定している ものです。その中でも大変重要な権利は、パーソナル・アシスタント・サービス(PA S)に関する権利です。これはかつては地方自治体といいますか、地域で提供されてき たものですが、大規模で経済基盤の強い都市では、非常にいいサービスが提供できる一 方、小さな町や村などでは、そうはいかない状況がありました。しかし、この新しい法 律ができ、パーソナル・アシスタントに関わる権利や、そのほかの権利は、1つの社会 保障であるとされました。すなわち全国で同じサービスが提供され、それを受ける権利 があるということです。それぞれの個人的なニーズに従って、パーソナル・アシスタン トを受けられるようになり、例えば1週間に何時間というような形で規定されることに なったわけです。それはその人の権利なのです。もちろんまだ始まったばかりですし、保 険制度にも関わる問題ですので、何時間にすべきかというような議論はまだあるのです が、一般的に言いまして、これは革命的な変化です。特に、介助が必要である人にとっ ては、非常に大きな前進になりました。本人のニーズに従って、さまざまなサービスを 受けることができ、そしてその権利が認められたわけであります。そのサービスが受け られないのであれば、法律に訴えてもそれを獲得する権利が付与されることになったか らです。

 もう1つは、障害をもつ人たちが強い発言をしていくという問題です。強い発言をし ていくことによって、まず教育を受けられるようになり、社会において前進することが でき、自分たちの声を聞いてもらえる状態は生まれてくると思いますが、そのためには、 移動の自由のようなさまざまな前提条件が重要です。それを実現するために、私たちは 闘わなければならないのですが、しかしいまは法律があるおかげで、より実現されやす くなっており、それについては誇りに思います。

 もう1つ申し上げたいのは、地方分権を進めれば進めるほど、強い法律が必要である ことです。そうでなければ、我々のような人間のニーズを満たすことはできません。分 権が進みますと、スウェーデンのような国では、強い法律がなければそれを実施してい くことができないことになってしまいます。

ジュディ・ヒューマン

 アメリカにおきましては、新聞でお読みになっていらっしゃるかもしれませんが、政 治的にいま非常に大きな問題が発生しております。私自身、アメリカの議会における保 守的な動きについて懸念を持っています。保守的な動きというのは、地方分権を進める 過程で、いろいろな人々の社会的な権利を取り除こうとしていることです。分権化する ということになりますと、やはり社会保障の権利を強化する必要があります。

 私は木曜日に国を出たのですが、そのとき我が国におきまして非常に大きな闘いが行 われていました。連邦政府のメディケードという制度についての闘いです。貧しい子供 や障害をもつ人たち、また老人、あるいは成人でもいいのですが、貧しい人たちに対す る低所得者向けの医療保険制度がメディケードというものですが、このメディケードの 対象となる人たちは、連邦政府が州にお金を出して、そしてそこから医療サービスを受 けられることになっているのです。ところがいま保守的な流れがありまして、ただ単に、 とにかく連邦政府のお金を地方政府に渡せ、そしてそれに要件を付けるなということが 言われています。つまり、一固まりの助成金として地方政府にそのお金を出して、それ についてはどのように使わなければならないのかという、規制は付けないというもので あります。したがって、ここで障害のはっきりとした定義をしなければならないという ことになります。それぞれの州政府において、障害についての定義をしろといっている わけです。

 ということになりますと、50の州がありますから、50の別々の定義が生まれてきてし まうことになります。ですから州によっては非常に良い、広い意味での障害についての 定義が生まれるかもしれません。定義は広いほうがいいわけです。しかし、それと同時 に、誰が障害者であるか、誰がこのサービスを受けることができるかという問題が出て くるわけです。

 またそれとは別の議論もあります。それは社会保障で保障されている権利を縮小する ということです。すなわち特定のサービスはもはや提供される必要はないということに なってしまうわけです。

 さらに、連邦政府が州に対して出す助成金の額を少なくしようという動きがあります。 アメリカではこのことについてのさまざまな議論が行われているのですが、クリントン 大統領は、この社会保障と障害者の定義について、これから先どうなるかはわかりませ んが、いま一生懸命に最善の努力をしているところです。

 パーソナル・アシスタント・サービスというのは、メディケードのプログラムの下で は1つのオプションであると考えられています。ということは、州によってはこのサー ビスを提供する、別の州では提供しない、そして、サービスの中身にも統一した法律が ありませんから、いろいろな種類のサービスが提供されるということになります。パー ソナル・アシスタントに関しては、現在さまざまな作業が行われています。世界障害者 研究所でもいろいろな研究が行われていまして、アメリカのさまざまなグループの人た ち、あるいはスウェーデンやノルウェー、フィンランド、デンマーク、ドイツといった ような所から代表が来まして、パーソナル・アシスタントについての研究をしておりま す。

 アメリカでは、パーソナル・アシスタントに関しまして、全国的な基準を作ろうとい う動きがあります。そうすることによって、例えば個人的に政府からお金を得て、個人 的にパーソナル・アシスタントを雇ってトレーニングをすることも可能になるわけです。 ただし、実際にそれがどうなるかはわかりません。例えば、私は政府からは資金援助は 一切受けておりません。税金を納めるときに、医療費として控除してもらう部分はある のですが、大したものではありません。例えば補聴器でありますとか、いろいろなもの にお金がかかりますと、保険ではとても賄えないことになります。ですから、仕事をし ていますと、保険のほかに、完全に自分の懐から払わなければならない場合もあります。 ところがメディケードを受けていますと、ある程度のお金がそこから支給されて、いろ いろと必要な補助器具を買うこともできることになっています。今朝もお話ししました ように、アメリカでは非常に強い市民権法があるのです。しかし大きな問題もあります。 それは国民皆保険制度ではないこと、パーソナル・アシスタントを受けられるような制 度がないこと、それから耐久性の高い医療機器が得られないことです。私たちが必要と しているのはその両方です。保険もあるし、いろいろな制度も受けられるということで す。

八代

 ありがとうございました。介護一つを取りましても、スウェーデンやデンマークのよ うに法制化されているところ、アメリカのようにまだ法制化されていないところもあり ます。いま日本ではいよいよこれを法制化しようということで、介護システムについて 今国会に提出するかしないかという議論が行われています。そのプロジェクトの中に私 も入っているのですが、日本の介護保険というのは65歳にならなければ対象にならない という議論が行われておりまして、若年における障害者の介護は、違う体系の社会保障 だという議論があります。障害者プランの中にも実は介護サービスという項目が入って おりますが、これからの7カ年戦略の中で、障害者の介護に関しては4万5,000人体制で 万全を機していこうという別枠になっています。ただし、保険者になることと、被保険 者になることの権利が生じてまいりますと、いろいろトラブルが起きると思います。保 険料は取られる、しかし介護保険の中のサービスは受けられない。今後の議論の中で、障 害者がこの問題に若干冷やかであり、またあまり意見が出ていないことを、私は実は不 思議に思っているのですが、これからの介護保険というものは、日本における大変重要 な議論になっていくだろうと思いますので、先ほど太田さんから提言のあったヘルパー 制度を、法律としてどう公的に位置づけていくか、この介護保険制度の中で、障害者の 介護はどうなるかということも、しっかりと今後の運動の中ではとらえていただくこと が大切だと思います。

 そこで千葉先生にお伺いしますが、26年間デンマークと日本をいろいろ比較されてお られると思いますが、日本の福祉が国から地域の福祉へと移行していること、これもデ ンマークがいわば1歩先んじていました。ノーマライゼーションの理念、発想も、日本 ではポピュラーになりましたが、これもデンマークの1つの考え方です。そこで北欧全 体を見つめまして、このノーマライゼーションについてさらに今後考えていくべきもの があるのか、あるいは諸々の障害者の法律制度ができていく中で、さまざまな問題が併 せて起きていないのか。あるいは地域福祉へ転換していく中でメリット、デメリットは どのようにあるのか、まとめていただければありがたいと思います。

千葉

 それでは地方分権のことをちょっとお話しさせていただきますが、その前に先ほどフ ロアの太田さん、兒玉さんから2つずつご質問いただきましたので、最初にそのことに 触れさせていただきます。

 まず太田さんの「どうしたら差別をこの社会からなくすことができるか」というご質 問ですが、先ほど基調講演でもお話しさせていただきましたが、やはり日本では障害の 有無に関わらず、「他人より自分が」と差を付けていく教育が行われていますので、あれ をまずは排除しない限りは、なかなか差別をなくせないと思います。ですから教育の中 で、「他人よりも自分が」という発想を是非やめて、そして本当の教育を受けられる国に したい、していきたいと思います。そうすれば、差別が早くなくなるのではないかと思 います。

 それから兒玉さんの脱施設化についてのご質問ですが、やはり施設というのは、家庭 でうまくいかない場合に、施設入所を余儀なくされる、そういうものであったから、お そらく存在したのだと思います。以前デンマークでは、例えば知的障害者、あるいは精 神障害者の方を1,000人も2,000人も収容していたことがありました。これはもうさすが になくなりまして、脱施設化により小規模施設、小舎制が引かれました。しかし、やは りどうしても不可能な場合、医療面、治療面で施設入所のほうが、その本人にいいとい う場合に限って、施設は存在し続けます。

 それから扶養の義務についてですが、障害の有無に関係なく、別居ということがデン マークでは行われています。実際ビヤタさんが親元を離れるときに、お互いにもっと家 にいたいとか、いてほしいとかいうことがあったか、その辺のいきさつをビヤタさんに ちょっと伺ってよろしいですか。その後に、地方分権について短くコメントさせていた だきます。

ビヤタ・メリング

 家庭において5歳ぐらいから障害が始まり、障害がだんだんひどくなりますと、親が 面倒を見ていくのではなくて、障害の程度に応じて、ヘルパーが地方自治体から家庭に 派遣され、支援していきます。そして成人に達した18歳を機に、親のほうからは自分は 面倒を見ないと、いかにも冷たいようなのですが、18歳はもう大人なのだから、自分で やりなさいと言います。そして障害をもつ自分自身ももう大人なのだから、親から離れ るわと、案外あっさり言えます。親から離れても、社会が社会的に不利な条件にある人 たちを保障するということが確立されていますので、そういうことが言えるのだと思い ます。障害をもつ人、もたない人に関わらず、親離れ、子離れが行われているのが現状 です。

千葉

 それでは地方分権制度についてですが、デンマークでは、先ほどの基調講演のときに も述べさせていただきましたが、非常に進んでいます。国、県、そして地方自治体の役 割が非常にはっきりしていまして、もう1度繰り返しますと、国は枠組み、ガイドライ ンを作って、国は地方自治体ができないような大規模な施設、病院、医療関係、あるい は障害者の入所施設、学校といったものを担当します。そして県は通所施設、保育園、幼 稚園、あるいは障害者の住宅といったものを担当することになっています。

 ただ、ここでデンマークの社会福祉国家というものの特徴をご説明しないといけない と思うのですが、社会福祉、あるいは保障、サービスを受ける権利は、労働市場に参加 するしないに関係なく、みんなが持っているということが1つです。全国民に与えられ る普遍主義が貫かれているのです。

 それからこの保障の裏付けになるものは、国民が納めている直接税、間接税によると いうのが2つ目の特徴です。それから、3つ目はこの社会福祉、社会サービスを行うこ とによって、所得の再配分がなされるということです。ですから、そこでいろいろなこ とが均等化、特に経済面では均等化が行われていると思います。この地方分権にあたっ ては、国、県は権限を委譲するときに、ただ権限だけを与えるのではなくて、お金を付 けて、これを好きなように使いなさいという方法を取ります。

 例えば地方自治体が学校、あるいは特別養護老人ホームを持っているとします。そう すると、地方自治体は学校に「はい、あなたの学校の年間の予算はこれだけです」といっ て予算を付けます。そうすると、学校には学校運営委員会、理事会があり、その理事会 は親の代表、教師の代表、生徒の代表で構成されているのですが、その理事会が運営に 責任を持ちます。そして、自治体から与えられたお金を自由に使うわけです。特別養護 老人ホームもしかり、そして保育園、幼稚園も自分たちで予算を自由に使って運営しま す。

 さらに最先端をいくのが、ここにおられるビヤタさんのように、自分でヘルパーを採 用して、自分の生活を保障していく方法です。そこまで分権制度が発達しているという ところが、デンマークの現状です。

八代

 いま千葉先生からお話を伺っておわかりのように、日本は多分にデンマークの考え方 を福祉に取り入れていると思います。グループホームというのが最近非常に話題になっ ておりますが、これもいわばデンマークが先駆けて、日本でのグループホーム化が実践 されていった経緯がございます。まさに国の福祉から地方の福祉へと、千葉先生のお話 しされたこが、そのままどこかの国でも行われているなという感じを、皆さんも持たれ ただろうと思います。もちろん厚さ薄さは違いますが、ただ、デンマークの負担率は、日 本よりもかなり高いのですが、それでもスウェーデンよりも低く、そして日本よりも高 く、北欧4カ国の中でも、より日本に近い負担率はデンマークではないかという思いが いたします。

 さて、この7カ年のノーマライゼーション・プランの中で、最も重要なのが、今日も いくつかご指摘がありました「移動」の問題です。これは交通アクセスの問題です。バ リアフリーの中でも、日本は特にこの交通アクセスの問題が今後の7カ年プランの中で も重要な役割を占めてくるだろうと思っています。昨年出された障害者白書にも「バリ アフリー」が強く謳われています。

 そこで、バリアフリー化について、アメリカのADAではかなり強力な罰則規定を伴 う改善命令なども出ているのですが、そうしたことによってトラブルはないのか、また スウェーデン、デンマークではどうなのか、お3方に伺いたいと思います。それではま ず、ビヤタさんからどうぞ。

ビヤタ・メリング

 デンマークでは障害をもつ人の輸送についての新しい法律がありまして、年額300ク ローマですから約5,000円強を納めますと、障害をもつ人が自分の玄関から行きたい所へ 自由に行って帰ってくるまで、自治体はその輸送を保障しなければなりません。ただし、 輸送を依頼した場合に、1回ごとに約400円を支払うと、自由にどこへでも輸送してもら えるのです。距離に関係ありません。

八代

 ありがとうございます。あとは諸々の交通機関はもうアクセシブルになっているとい う前提に立ってですね。

千葉

 社会福祉国家ですから、公共の輸送機関が障害者に便利かというと、実のところ、サ ポートはしますが、自由に乗り降りできるようにはあまりなっていません。例えばタク シー会社がものすごい数のリフト付きバスを持っていまして、そういうものを自由に障 害者が頼めるようになっています。そのようなシステムのほうがより発達している感じ です。

 公共交通機関ももちろん不便ではありませんが、より障害者はタクシーを利用してい るというのが現状です。

八代

 ありがとうございました。次に、ジュディさん、ADA以来、アメリカは移動やバリ アフリーについては大きく変わったと思いますがいかがですか。

ジュディ・ヒューマン

 まず交通について先に話をさせてください。ADAはこれまで504条の対象でなかっ た交通手段を対象としたのですが、これは今朝もご説明したとおり、いくつか法律がで きて、それが影響をもたらした結果です。そして交通の面でもアメリカの交通当局が連 邦政府から予算を受けます。1973年のリハビリテーション法504条というのは、連邦 政府から予算をもらっている場合には、障害をもつ人を差別をしてはならないというも のですが、70年代の初めから75~76年にかけて、実際には多くの都市が誰でも乗れる バスを導入しなかったのです。

 私はカリフォルニアに住んでいました。いろいろ会合が繰り返され、訴訟を繰り返し て、4~5年かかりましたが、ようやくカリフォルニア州がアクセシブルなバスを導入 したのです。これはカリフォルニアの州法によるもので、連邦法だけでなく州法でもそ うしたアクセシブルなバスが義務付けられたのです。現在のアメリカでは、公共の都市 バスが改善され、誰でもが乗れるようになりました。70年代から80年ぐらいにかけてい ろいろ訴訟が繰り返されまして、ニューヨーク州では新型のバスはすべてアクセシブル なものになりました。

 また、ニューヨークでは地下鉄も乗り降りができるようになりました。しかし、まだ まだ問題が残って、進んでいない街もありますが、いずれアメリカ中、バスに関しては アクセスが確保されると思います。サンフランシスコやニューヨークといった大都市で は、多数の市営バスがありますが、バスがなければ身動きが取れない所なので、アクセ シブルなバスが導入されます。

 それからワシントンの地下鉄や、サンフランシスコの電車についても、504条の前 に州法だけでやっていた時代は、いろいろな訴訟がありました。サンフランシスコもワ シントンも、電車や地下鉄の建設が始まった段階ではアクセスがなかったのですが、裁 判所が判断して、アクセスを確保するよう命令しました。したがって、こういった大都 市では、地下鉄とバスの両方に、アクセスが確保されています。

 また、アムトラックという、州を越えた長距離鉄道がありますが、ここはADAの規 定ににいま抵抗していまして、ギリギリ最小限のアクセスはあるのですが、ADAが義 務付けている内容に関しては、抵抗しています。したがって数年は改善を先送りにする ことになるかもしれません。しかし、そのようなアクセスの問題も間もなく解消されて いくと思います。

 アメリカというのは大きな国ですから、結局輸送の問題は各地域が決定します。料金 や補助金なども地方政府が決めます。タクシーに関してはアクセスを確保する義務はあ りません。残念ですがADAにもタクシーは含まれていません。しかし、タクシーも自 発的にアクセスを改善しており、徐々に乗れるようになっています。時間はかかるかも しれませんが、向こう10年、20年で、タクシーももっと乗りやすくなっていくと思いま す。

 それからいろいろな建造物の設計上の問題ですが、自治体、州、連邦政府の努力もあ りまして、例えばマンションなどの新しい建物や、ショッピングセンター、映画館、レ ストラン、ホテル、モテル、スタジアム、劇場などもアクセスが改善されてきています。 劇的な変化だといえます。

 古い住宅、古い建物も改修が進んでいます。例えば改修・改築をする際、一定の規模 以上の改修に関しては、必ず一部アクセスを確保しなければならないという義務がある からです。それが必ずしも最適な方法でなされない場合も、一応法律が味方しているの です。そういう意味で大きな変化が起こっています。ただ問題なのは民間の住宅です。民 間の住宅に住む人も多いわけですが、法律上民間の家々についてのアクセスは規定され ていませんので、個人の家やアパートなどはまだ対応が徹底されていません。しかし、マ ンションなどの公共住宅に関しては、アクセスが徐々に改善されています。

総括質疑

八代

 さて、それでは質疑応答に入ります。障害者プランということを離れてもかまいませ んので、どうぞ挙手をしてお願いをしたいと思います。