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講演会「障害児に豊かな読書体験を」

意見交換
報告1

山内 薫氏
東京都墨田区立緑図書館 / 日本図書館協会障害者サービス委員会委員

皆さんこんにちは、緑図書館の山内と申します。

私は、現在勤務しております緑図書館で、いろいろな障害にある子ども、あるいは知的障害の若い人たちにサービスをしている現場の様子を見ていただこうと思い、パワーポイントの映像を持ってきました。

結局私の言いたいことは、どんなに優れた資料があっても、利用者に資料を手渡す人間の働きがなければ駄目とは言い切れませんが、資料を手渡す人間の働きというものが非常に重要だということを言いたいだけです。

今「赤いハイヒール」というマルチメディアDAISYが紹介されましたが、それを実際に見てもらっている現場の写真をこれから見ていただこうと思います。

それでは、最初は図書館の近くにあります障害児学級に2003年から毎月1回ずつ訪問していろいろなことをしてきていますが、その様子を見ていただこうと思います。これが最初に訪問し、授業を見学させていただいたときです。

スライドタイトル1:はじめての見学(2003年4月)

ちょうど音楽の授業をやっていたので、職員がその授業に参加しているところです。これは大型絵本を読んでいます。

スライドタイトル2:第1回目の訪問

絵本を見てもらうだけではなくて、一緒に歌を歌ったりもします。これはトイレットペーパーの芯を使った鯉のぼりで、両側を引くと鯉が昇っていくような仕掛けになっていて、歌を歌いながら鯉のぼりを上げているところです。

手遊びもよくやります。

スライドタイトル3:2回目の訪問手遊び

ここで読んでいるのはこれは落語絵本です。次は、「おおきくおおきくおおきくなあれ」という紙芝居をやっているところです。これは「くろずみこたろう」という紙芝居ですが、太鼓を叩きながら紙芝居を上演しているところです。大型絵本の「きかんしゃトーマス」ですけれど、一番奥にいる男の子が「きかんしゃトーマス」がものすごく好きなので、持っていって演っているところです。

それから絵描き歌なんかもやって遊びます。これは、ここに在籍する子どもたちの名前、さゆりちゃんだったら「さ」のつくものをみんなに言ってもらって、それで言葉遊びをやっているところです。

スライドタイトル4:ことば遊び

「ふしぎなポケット」という歌がありますけれども、それをみんなで歌いながら、実際にポケットからビスケットやチョコレートを出したりしています。

スライドタイトル5:歌を歌う「ふしぎなポケット」

それから、これはミルクの缶の中に氷を入れて塩を入れ、アイスクリームの素を入れて、15分間転がしてアイスクリームを作っているところです。それでできたアイスクリームをみんなで食べているところです。

今のは「みどり学級」という近くの小学校の障害児学級ですが、次のステップ学級というのは不登校の子どもたちが通っている施設です。

スライドタイトル6:ステップ学級の外観

スライドタイトル7:ステップ学級の入り口

この2階にステップ学級があり1日5時限のうち1時間だけ自分の好きな時間に出席すればいいということで、子どもたち、いっても中学生が通っています。このステップ学級に団体貸出をするようになりました。「ミカコーナー」と書いてあるのですが、この学級に在籍する中学生でとても本を読むのが好きな女の子がいて、そのミカちゃんが推薦する「バッテリー」とかいろいろの本が左側の書架に納めてあります。

スライドタイトル8:書架と美佳コーナー

今まで、2回くらいこのステップ学級に訪問してブックトークをやったことがあります。このときは実際に不登校の中学生6人と先生4人が聞いてくれています。

スライドタイトル9:「ブックトーク」参加者は中学生6人、先生4人

これは「年とったワニの話」という本を紙芝居にして上演しています。

スライドタイトル10:紙芝居「年をとったワニの話」

次は「頭山(あたまやま)」という絵本を読み聞かせています。

スライドタイトル11:絵本「あたまやま」

「年とったワニの話」と「頭山」の共通のコンセプトというのは、山村というアニメーション作家の人が、最初「頭山」という作品を作って、国際的なアニメーションの大会でグランプリをとったのですが、その人が次に手がけたのが「年をとったワニの話」なのです。

スライドタイトル12:「年をとったワニの話」と「頭山」のコンセプトは?

それから、手品なんかもやっています。

スライドタイトル13:ステップ学級での手品1

今のような場所で、普通の本をただ読むだけではなく、いろいろな工夫をして、なるべく子どもと本が結びつくようなことを考えています。それをちょっとご紹介します。

これは巻紙芝居です。「おおきな おおきな おいも」という絵本があるのですが、それを障子紙に描きましてやっているところです。これを作ったのは本が出たときで30年前なのですが、障子紙なんて未だに持っています。千回以上はやっているのではないでしょうか。それから赤羽末吉という画家本人から、電話でですけれど、こういうものを作っていいかという許可はもらっています。ちょうど、大きいお芋が長くなるというところだけがミソなのですけれど。

スライドタイトル14:巻紙芝居「おおきなおおきなおいも」2

スライドタイトル15:巻紙芝居「おおきなおおきなおいも」3

それからこれは、四角い箱を回しながら展開していくカラクリ絵本というものです。

スライドタイトル16:からくり絵本「たんたんのぼうし」

演じている場所は特別養護老人ホームです。それから、「かいじゅうたちのいるところ」のジグソーパズルを十数種類作って、この学級に持っていきました。

スライドタイトル17:「かいじゅうたちのいるといころ」のパズルを選ぶ

本を見ながらその場面のパズルを組み立てているところです。だいたい30ピースくらいのもので、廃棄した絵本のページそのものを使って作ります。それを厚手のボール紙でできた本の箱に貼り付けてカッターで切って作ったものです。これはすごく評判がいい。

これは「つきのぼうや」という縦長の絵本を読んでいるところですが、「つきのぼうや」のパタパタというのを作りました。お月さまが、池に自分の姿が映っているのを見て、つきのぼうやに「月を取ってこい」というのがこの絵本のストーリーなのですが、その一部分、つきのぼうやが空からずうっと降りてきて、海の底に行くところの途中だけを、縦長の絵本を切り取って、このように自動的にパタパタパタパタと降りるように作りました。本を読んだ後そのパタパタをみんなにやってもらっているところです。

「かがくのとも」の「ほね」という本があるのですが、同じパタパタを作って、男の子の海水着の姿がパタっとひっくり返すと、骨になってしまいます。その骨をまたひっくり返すと男の子になるというのをやっています。

スライドタイトル18:「ほね」のパタパタを始めます

スライドタイトル19:「ほね」のパタパタ、表は人体

それから、トミー・ウンゲラーの「ヘビのクリクター」という絵本を読んだ後で、長いぬいぐるみのヘビを持って行き、子どもたちに、Sの字を作ってもらっているところです。これは数字の2を作っているところです。「ヘビのクリクター」の原本の中に、主人公のヘビが、こういう形で数字やアルファベットを作るというの場面が出てきます。この長いヘビのぬいぐるみは、ちょうど巳年のお正月のお話会で使ったもので、長いヘビをしっぽから子どもたちにどんどん引っ張ってもらって、最後にヘビの頭が出てきてパクっというようなことをやったので、それをみどり学級に持っていって使いました。

スライドタイトル20:数字の「2」を作る

これは、「ありこのおつかい」という絵本を大小の筒で演じるもので、大きい丸い筒を小さい円い筒にかぶせて、アリのありこをカマキリが食べ、カマキリはまた大きな動物に食べられるというようにどんどん大きなものが小さいものを筒をかぶせて食べます。クマまでいくと逆に小さい動物をはき出していきます。

次の見ていただくのは知的障害の利用者とマルチメディアDAISYについてです。現在緑図書館を利用してくれている知的障害の利用者の方がすごくたくさんいます。今日も午前中3人の方が図書館に来ています。普段は授産施設などで貸出をしているのですが、直接図書館にも来てくれます。これは緑図書館の事務室で、日曜日などに出かける相談をしているところです。休みの日などは仲間同士何人かで連れ立っていろいろなところに出かけていきます。

それぞれ違う授産施設で働いている人なのですが、二人が図書館で出会ったところです。

これはマルチメディアDAISY「赤いくつをみる」と書いてあるのですが、先ほど紹介された「赤いハイヒール」は最近翻訳しなおされたもので、この写真は2002年ですから、試験的に「赤いくつ」というタイトルで同じ本が紹介されていたものです。

スライドタイトル21:マルチメディア・デイジー(赤いくつ)を見る1

図書館に来ている主に知的障害の方たちに、時間があればマルチメディアDAISYを見てもらっています。

これは「蜘蛛の糸」というリハ協で作ったものを見ているところです。

スライドタイトル22:新しいマルチメディア・デイジー蜘蛛の糸

これは縦書きなんですね。これは「さんびきのこぶた」だったと思いますが、文字を拡大すると、この時代のマルチメディアDAISYは、画面が切れちゃうんですね。さっきの「赤いくつ」は、ちゃんと絵の端のところに読んでいる部分のテキストが来るようになっているのですが、この時代のものはまだ不具合があって、「絵が消えちゃう」って文句を言われました。

スライドタイトル23:文字を拡大すると挿絵が消えてしまう

これは「3匹のこぶた」ですね。

これは最近の「はなさかじい」です。

これは「ねずみのよめいり」で、これは国際情報社から出ている絵本といっしょに見ているところです。彼は仮名も含めて普通の文字を読むのがちょっと苦手なんですね。ですから、マルチメディアDAISYで彼が1冊の本を読んだというのは、彼にとって生まれて初めて1冊の本を読むという経験だったと思います。

これは、新しくできた「赤いハイヒール」で、本が一緒になっているので、本と一緒に見てもらっているところです。

もう一つ、さっきのみどり学級で公開授業というのがありました。その公開授業が行われたときに、私たち図書館員とみどり学級の先生がたと共同で授業を展開しました。今年の2月14日で、「ガラスのうさぎと私」と書いてあって、高木敏子さんが出た学校なんですよ。ちょうどNHKテレビの番組「ようこそ先輩」に高木さんが出たあのころなのですが、公開授業に合わせて講演がありました。大阪など全国からたくさんの先生が見学に来ていました。

スライドタイトル24:いよいよ、がらがらどん

みどり学級の公開授業のテーマは「かいじゅう」にしようということで、設定しました。

スライドタイトル25:劇遊びのセリフの確認

最初に15分間「かいじゅうたちのいるところ」のパズルを作る時間に当てました。これは1週間前に予行演習をやっているところです。予行演習で「3匹のやぎのがらがらどん」を読んでいますが、「3匹のやぎのがらがらどん」の人形劇をやるというのが大きな課題です。「がらがらどんのうた」というのを作ったのですが、それを歌っているところです。

スライドタイトル26:ちいさいやぎが橋を渡りにやってきました

これは予行演習のときです。奥がトロルの橋で、右側の積み木を渡って左側に戻ってくるという設定で、6人の子どもたちがいるので、2人ずつが小さいヤギと中くらいのヤギと大きいヤギになりました。

スライドタイトル27:ちゅうくらいのやぎ「がたごと、がたごと」

スライドタイトル28:おおきいやぎのがらがらどんとトロル

これは当日です。1時30分から45分がブックタイムなので、ジグソーパズルをやっています。

緑図書館の職員4人で行きましたので、我々が紹介されて、始めに「かいじゅうたちのいるところ」を読みました。

スライドタイトル29:それぞれのやぎとセリフの確認

それから、「かいじゅう」がテーマなので長新太の「つきよのかいじゅう」を読みました。ひとり、この本が大好きな子がいるので選びました。それから「くいしんぼうのあおむしくん」というのを読み、いよいよ「がらがらどん」ですが、事前に台詞の確認をしました。それから、小さいヤギの音と、中くらいのヤギの音と、太鼓を使った大きいヤギの音を確認しました。

子どもが作ったヤギの帽子をかぶって、まず歌を歌い、小さいヤギの二人が橋を渡りにやってきて、中くらいのヤギも橋を渡りにやってきます。これはトロルです。

スライドタイトル30:とうとう粉砕されるT先生

図書館で作った着ぐるみなのですが、先生が着ています。それで最後に大きいヤギのがらがらどんがやってきて、トロルを粉砕したところです。そうして最後にがらがらどんの歌を歌って、おしまい。生徒の父兄の方もみえていました。

全部が終わった後にもう一度、担任の先生がこの本を読みました。すごく良かったですね。みんなすごくのっていました。絵本の最後のページを先生が読んでいるところです。これで終わりました。

授業の様子

以上です。