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平成20年度 国際セミナー報告書
障害者の一般就労を成功に導くパートナーシップ

Report on International Seminar
Success through partnership to promote open employment of persons with disabilities

パネルディスカッション

ファシリテーター:

  • 山内 繁(早稲田大学人間科学部特任教授)

パネリスト:

  • 炭谷 茂(社会福祉法人恩賜財団済生会理事長)
  • フィリーダ・パービス(リンクス・ジャパン会長)
  • ゲーロルド・シュワルツ(国際移住機関(IOM)経済開発局プログラムマネージャー)
  • キャシー・ベイカー(ソーシャル・ファームUK クオリティ開発部長)
  • 寺島 彰(浦和大学総合福祉学部学部長・教授)
  • 上野 容子(東京家政大学文学部教授)
  • 河村 宏(国立障害者リハビリテーションセンター研究所 特別研究員)

パネルディスカッションの様子

山内: 炭谷先生、追加あるいは後の方に対するコメント、その他ありましたら、炭谷先生からお願いします。

炭谷: どうもありがとうございます。私自身、これまでの説明を聞いて大変有益なことでございました。特にこれからソーシャルファームジャパンを運営していくに当たって、有益な情報をたくさんいただき、大変感謝いたしております。
その中で、いくつか申し述べること、もう一度述べたいことがたくさんありますが、ポイントを絞りまして、3点ほど申し上げたいと思っています。

一つは、今日皆さん方お気づきになりましたけれども、ソーシャル・ファームを運営するに当たって、ネットワークの重要性、これはゲロルドさんもキャシーさんもおっしゃったのですけれども、これがどうもソーシャル・ファームをうまくやっていくためには必須なのかな、と思いました。そのために昨年12月7日にソーシャル・ファーム・ジャパンを作ったことは正しかったのかな、ということで確信を持ちました。特にネットワークにおいては、いろいろなネットワークが必要なのですけれども、一つは私どもソーシャルファームジャパンの場合、やや弱いのは企業との関係ではないかと思います。これは、キャシーさんもゲロルドさんも同じように、大変よく、うまくやっていらっしゃる。たぶん長い年月の成果だと思いますが、うまく企業から力を引き出していらっしゃる。そこでもし時間があればぜひお聞きしたいのですが、これはキャシーさんにお聞きしたほうがいいかと思いますが、キャシーさんはプレゼンテーションの中で、カルチャー・シフトと英語で言われたのでしょうか、それはどういうことが、企業におけるカルチャー・シフトをやらなければならない。そのカルチャーというのは具体的にどういうことを意味されているのか、それを教えていただければ大変参考になるかと思いました。

それとともに、例えば特に、ゲロルドさんが強調された、政府からいかにお金をとってくるか。これは大変苦労されたと聞いておりますので、どういうふうにうまく国から支援を受けるような方法があったのか、私どもは今何も国から支援をうけることができていませんが、何か参考になる方法があればご教示いただくとありがたく思います。

それとともに、ネットワークというのは一方国、また企業、それからむしろボランティアとのネットワークというのも、これはソーシャル・ファームならではのことだろうと思います。例えば、純粋な企業であればボランティアなんて参加しませんよね。金儲けをしている企業に対してボランティアなんかは参加しない。ソーシャル・ファームであるが故に、同じようなことをやるのだけれども、ボランティアが参加してくれる。それを活用していかなければいけないのではないか、それが非常に強み。ボランティアを集めた、ボランティアの方々とのネットワーク、これも強めていかなければならないと思いました。
それとともに、他のソーシャル・ファームとの連携です。つまり企業というのは競争していますから、連携なんてありません。普通のプライベートな企業というのは互いに競争していて、お互いに連携しようというのはむしろ、公正取引の独占禁止法の違反になりますね。お互いに談合したりするとけしからんということで、むしろ刑罰が来るわけですが、ソーシャル・ファームはそうではなくて、一緒になってソーシャル・ファームが手と手を携えてやっている。だから伸び得る、そこに強みがあるのだと思います。
こういうネットワークをそれぞれ作っていく。できれば、さらに海外とのネットワークにも広げて行くといいかな、と思いました。それに大変強く印象を持ったのが第一点ですね。

第二点は、これはソーシャル・ファームというのを運営していくのにはいろいろな工夫、ノウハウというのがあるのかな、と思いました。今日もたくさんありましたので皆さん方それぞれ頭の中に入られたのではないかと思いますが、例えばこれはキャシーさんもゲロルドさんもおっしゃいましたけれども、ソーシャル・アカウントというもの。これは日本にはまだないな、これはぜひソーシャルファームジャパンでイギリスやドイツの例を参考にしながら、ソーシャルファームジャパン、あるいは日本的なソーシャル・アカウントというものを作ってみたいと思いました。また、これもぜひ日本でも実現したらいいと思うのですが、ソーシャル・クローズですね。ソーシャル・クローズというのは、たぶん僕の理解ですと、政府が物品を購入するときの決まりの中に、こういう社会貢献的なものも配慮しなければいけないというような条項が入っているのだと思うのですね。日本の場合にはそういうものは入っておらなくて、障害者が作ったものであろうがなんであろうが、本当のゼロベースで競争しろというのが日本の政府調達だと思うのですが、ドイツやイギリスはすでにソーシャル・クローズというものが入っている。大変素晴らしいなと思いました。こういうものを入れていくことによって、ソーシャル・ファームが伸びていくのだろうと思います。

それから、ビジネス・コンサルタントもゲロルドさんはドイツに育てていらっしゃる。そういう、むしろゲロルドさんにできれば説明していただきたいのですけれども、ソーシャル・ファームの専門のコンサルタントというのはどんな人なのだろうか。日本には誰もいらっしゃらないのですが、しかし日本でもこの中にもけっこうできる人がいらっしゃるだろうと思うのですね。そういうものも日本で育てていったらいいのかな、と思いました。これが第二点です。

第三点は、これは実は新しい国づくり、社会づくりにつながっていくということをさらに確信しました。一般企業、有名企業に入ってガツガツ競争しながら生きていく、生産、労働していくこと、それももちろんそれも尊いことですけれども、このソーシャル・ファームというのは、これは上野さんがおっしゃったのですけれども、多様な生き方、他の生き方もあるのではないか、という新しい生き方というものを示してくれる。そういう人たちが、そういう場が日本の中でも育ってくれば、大変日本も住みやすい世の中になるのではないかと思いました。単に一般企業以外にも、もう一つ大きい分野ですね、私はその分野というのは、2,000万人くらいはそういう分野で働いてもいいのではないかと思っているのですが、そういう分野を育てている。たぶんこれが、僕の理解だとキャシーさんがおっしゃったカルチャー・シフトというのはそういうものも含んでおっしゃったのではないかと思っています。もしコメントがあればいただきたいと思っています。

以上、ネットワークの重要性、それから実際ソーシャル・ファームをやる場合にはこういう工夫をしなければならないということが第二番目、また三番目は、それは日本だけではなくて世界の、おそらく途上国も先進国も含めて、新しい社会構造を作っていく。もしかしたらイギリスもドイツも、そういう新しい社会がもうだんだん形成されているのではないか。残念ながら日本はあいかわらず一般企業の競争社会でお互いに蹴り落としあっている。そんな社会でいいのかな、と思っております。以上三つです。

山内:どうもありがとうございました。

続いて、順番からいってキャシーさんにお願いしたいのですが、今炭谷先生からいくつかキャシーさんに注文がありましたので、それも含めてキャシーさんのコメントをお願いしたいと思います。

ベイカー:ありがとうございます。それでは、最初のカルチャー・シフトからお話をさせていただきたいと思いますが、炭谷さんがおっしゃった通りです。つまり社会というのはもうすでに収益を求めることだけに関心を持っているわけではないということです。例えば環境問題にも、それからフェアな貿易にも関心を持っています。倫理的な行動というものにも関心を持っているわけで、いわゆるソーシャル・エンタープライズ、ソーシャル・ファームができてきたそもそもの発端というのは、人々がただお金儲けをするだけではなく、慈善的なことにお金が使われるということに関心を持ち始めたからだと思います。金融危機が発生して経済が不況になってきました。こういう中で、新しい社会、先生が先ほどおっしゃったような社会に移っていくためのチャンスだと思います。

シュワルツ:それでは、いくつかの質問をいただいたのですが、それにお答えする前に簡単に申し上げたいことがあるのですけれども、ドイツにいる同僚に日本にソーシャル・ファームの話をしに行くのだと言いましたら同僚が非常に関心を持ってくれまして、とても素晴らしいではないかと言ってくれました。それと同時に、一体日本ではどういうことになっているのか、障害を持っている人たちの雇用、それからソーシャル・ファームの活動はどのように行われているのだろうかと、関心を示してくれました。そこで私は今回日本にまいりまして感じたことは、そういう情報をいただくことができれば、もちろんいろいろ皆さん情報を持っていらっしゃると思いますし、今日もいろいろと聞かせていただいたわけですが、コーヒーショップのこともうかがいました。日本のソーシャルファームジャパンが例えば日本ですでに行われていることについて情報をまとめて、それを英語になおしてくださると海外にいる人たちも直接コンタクトをとることができるのではないかと思います。もしかしたらビジネス機会もありますよね。私たちがやっているホテルのように、つながりをどこかと作って、例えばドイツに皆さんがおいでくださるときには私たちのソーシャル・ファームがやっているホテルを使ってくださるというようなこともできるようになるのではないかと思います。いろいろと日本の新しい組織においても活動が行われているのではないかと思います。そこでそれについて、海外の人も学べるような、情報を入手できるようにしてくださるとうれしく思います。

さて、先ほどの質問に戻りますけれども、政府からの資金を獲得するということなのですが、私たちはいろいろやってみて駄目だった20年間という経験があります。ですから、店もうまくいかなくなったというようなこともありますし、また政府に対して諸々見てくださいと言っても関心を持ってくれないようなこともあります。ドイツにおいては非常にクリエイティブに資金の機会を求めてきたと思います。民間の企業のための資金、あるいはトレーニング・プログラムとか授産施設、半授産施設のためのファンドなどにも注目しました。ですから、ソーシャル・ファームはこれらの資金を使ってやってきました。そして実績を示してやっと政府から資金を得られるようになりました。ソーシャル・ファームが成長するのに実に18年、20年くらいの時間がかかりました。やっと今頃になって政府にとって平等のパートナーとして認められるようになりました。その間に私たちはいろいろな形で機会を見つけるように努力しました。そして、どのような資金が使えるのか、いろいろ研究いたしました。皆さんにとってそれはオプションにはならないかもしれませんが、今は基本的なソーシャル・ファームのための資金というのはないかもしれませんが、何かモデル事業のための資金も使えるかもしれません。ですから、それを利用するというのも一つの可能性かもしれません。

それから、社会会計ということなのですが、これはとても重要な役割を演じていると思います。かつては非常に単純なモデルしかありませんでした。直接的にコストを、いろいろなモデルを比較して納税者のためにそのデータを提供していましたが、しかしながら非常に単純な計算でありました。どれくらい、一人の人を雇うのにお金がかかるのか、このモデルはこう、あのモデルはこうというような比較をしたくなります。

それからもう一つ、実験として、ソーシャル・ファームとしての計算だけでなく、ホスピタライゼーション・データも調べました。これは非常に興味深いものでした。例えば特に精神障害者の場合には入院することもあり、そういうコストなども導入し、リスクの計算もしました。再入院した場合にはどうなるのか。しかしながら、例えば1年間の間にどれくらいの日にちを再入院するのか、そしてそれは授産施設とどれくらい違うのかということも調べました。実際にどれくらいコストがかかるのか、いわゆる間接費として計上してもみました。こういうモデルを作り、たぶん全く問題はないということになってきたのだと思います。おそらく、皆さんのご参考になるのであればお使いいただいて全く問題ないと思います。

それから社会条項ということなのですが、ベイカーさんが語ったわけですが、この社会条項というのは比較的新しくできたものです。まず、EUのレベルで最初に導入されました。ヨーロッパの組織は、協同組合が活発に社会条項を導入すべきだというロビー活動をしました。EUの法律に必要だと言ったわけです。そして実際に数年前に実現しました。EU法として成立して、それが各国に広がっていきました。ということで、ドイツでも実施されることになりました。その結果はまだわかりませんが、今それは義務づけされましたので、例えば市とか公共組織が今後入札をするときには、この社会条項を考慮しなければならなくなりました。これがどのような作用を示すのかということについては次の2年間くらい観察しようと思いますが、このおかげでドイツのソーシャル・ファームは有利になりました。例えば何か特殊な分野で活動しているようなソーシャル・ファームにとっては、こういう社会条項のおかげで有利にビジネスを進めることができるようになったと思います。

確かに、ソーシャル・ファーム運動というようなものを展開していくことが重要だと思います。それについてはずいぶん時間をかけて話し合う必要があると思います。それぞれのセクター別に、どういう成功が収められているのかというモデルの検討もしておりますし、他の国では別のモデルを使っているところもあります。例えばマーケット・コンサルタント、もうマーケットにいる人を使っていたりします。ドイツの場合には、確かに我々のアプローチがなければこういうふうにはやってこられなかったと確信しております。それでは、ベイカーさん、どうぞ。

ベイカー:ありがとうございます。そうですね、先ほどおっしゃったこと、それから他の方もおっしゃったことなのですが、炭谷さんがボランティアについて訊いていらっしゃいました。これはとても重要な問題だと思います。ぜひ検討しなければなりません。

いわゆる雇用登録ということですが、UKにおきましてはとても重要です。組織の中にボランティアがいるということが重要なのです。ボランティアの人たちは雇用形態に入っている、その体制に入っている人とは違うことをします。つまり、あるグループの人たちは有償で、別の人たちは無償である、こういう人たちが全く同じ仕事をしていると問題が起こります。それで、イギリスにおいてはボランティアの協定を必ず結ぶようにと言われております。つまり、そのあたりで異なった業務をしてもらうのだということで、そこをはっきりわかってもらって参加してもらうようにしています。そうすることによって、雇用に対して何らかのマイナスの影響が起こらないようにしています。
というのは、ソーシャル・ファームというのは雇用を生み出すために作られたものですので、無償のボランティアを使うというのは非常に矛盾しているように思います。でも、ボランティアを受け入れているというのは自信をつけてほしいからです。ですから、もうすでに知識のあるようなところに雇用されるというのはとてもいいと思いますので、実際に雇用してもらう前にボランティアとして活動がある。それは一つの進歩の過程だと思います。ですからソーシャル・ファームにとってはとても重要です。つまり、はっきりと、ボランティアの仕事と有償の人たちの仕事を分けています。それはとても重要です。

それから、共同といいますかネットワーク化ということですが、ソーシャル・ファームというのは一つの協同組合のようなものでありまして、お互いに協力し合っております。ネットワーク化もしております。そして1年に1回は会議を開いています。一堂に会してオープンに、正直に自分たちの事業について話をし、今どうなのか、これからどうするのか、どういう問題があるのかということを話し合っていますが、ソーシャル・ファーム、ある業界のソーシャル・ファームがそういう情報を共有したくないという場合もあるかと思います。つまり、自分たちの生産性であるとか、仕事をもらえるかどうかということに影響が出てくる可能性があります。もちろんいわゆるcorpetitionという状況がいいのではないかと思います。つまり、協力しつつ競争力も持っていくということです。そのビジネスを共有していく、協力的に共有していくということも最終的には一つの目標だと思っております。

また、社会会計ということなのですが、私はドイツのシステムに大変興味を持っております。非常にシンプルな社会会計をやっているということなのですが、EUに帰ったらすぐに社会会計というのはドイツの場合はとても単純なのだということを他の人にEメールでお知らせしたいと思っているからです。本当にこの社会会計というのは、そのビジネスを立ち上げた早期に考えるべきだと思います。ソーシャル・ファームのマネージャーは、時間がとられるような、そういう形であってはいけないと思います。この社会条項というのは、これは義務的なものではないのですが、しかしイギリスの場合、ウェールズで始まったということなのですが、それが別のところに広がっていったということです。こういうことが、ウェールズでは起こっている。そしてみんなが自分たちもやりたいと思う、それでそれぞれの議員に働きかけて、地方議会に働きかけるということが行われています。ですからそういうふうに広がる効果があります。社会条項があればそれで作られると別のところに広がっていくということです。例えばバーミンガムやリードにおいては、市議会がはっきりと、少なくとも10%の調達はソーシャル・エンタープライズにいかなければいけないというようなことを定めています。ですからこれからもっと、社会条項というのは増えていると思いますし、その調達、政府関係の調達という面でソーシャル・ファームがさらに増えていくのではないかと思います。また、そういうときに、いわゆるクオリティ基準が重要になってくると思います。つまり自信を持ってここと取り引きしても大丈夫というのが大事だと思います。

それからビジネス・コンサルタントですが、ソーシャル・ファーム・セクターというのはまだイギリスの場合、小さすぎますよね。ですから、完全にソーシャル・ファーム・セクターだけのビジネス・コンサルタントというのはなかなか育たないので、ビジネス・コンサルタントというとソーシャル・エンタープライズの人を使うということになると思います。ソーシャル・エンタープライズ用の特殊な訓練を受けたようなコンサルタントが生まれつつあります。
そして、そうすることでいわゆる資格承認というようなものにつながっていくのではないかと思います。たぶん今、第一世代が生まれつつあるのではないかと思います。そのコースですが、非常にさまざまなことが訓練されています。普通のビジネスのコンサルタントは学ばないようなことを学んでいます。以上です。

山内:ではあともう一人、コメンター。ゲロルドさん、他にコメントはありますか。

シュワルツ:先ほどソーシャル・エンタープライズの話をするという話があったと思います。戦後、コソボの情勢について聞かれたと思います。それをやるにはもう一回会議を開催していただきたいくらいなのですが、いろいろ申し上げたいこともありますが、私にとってこの経験は、この後ドイツに戻りますが、いろいろなことを学んできたと思います。ここで話し合われたような問題以外にも、コソボなどにおいてはもっともっといろいろな問題があります。もっと問題は複雑です。一方で、いろいろなモチベーション、そして人々のコミットメントというものがあります。一緒にやっている仲間は本当に懸命に働いています。
ですので、ごく簡単に申し上げますと、例えば今コソボにいますけれども、その後先進国に戻ったならば、いろいろな経験、知識を持って帰ることになると思います。これはいずれも私にとってはプラスになると思います。
残念ながらいろいろな問題があって、全部はお話できないのでこのへんにしたいと思います。

山内:ありがとうございました。時間がだいぶ押してきましたので、フィリーダさんから河村先生まで一言ずつ、皆さんお願いできますか。

パービス:コメントではなく質問なのですが、ドイツではお金を、つまり企業が雇用率を未達に終わってしまったところが納めた罰金を使ってこのような支援をしているというのは素晴らしいことだと思います。例えばソーシャル・ファームを立ち上げる資金にあてているのは素晴らしいと思います。日本においても、その種の罰金を納めていると思います。法律を遵守しなければ罰金を納めることになっています。本来であればこれは雇用創出のために使われるべきなのですが、ただお金がいったいどこにいっているのかはっきりしません。したがって、ソーシャルファームジャパンでぜひ、そこをきちんと押さえていただいて、ソーシャル・ファームの立ち上げにあてるように働きかけていただきたいと思います。そのことをお願いして、私のコメントとします。

山内:寺島さん、一言お願いします。

寺島:もうほとんど言ってしまったのですが、新しい企業という形が求められていると思います。それぞれの従業員に着目して、その能力開発でありますとか、従業員を大切にするとか、そういう企業が求められていて、その一つの形態としてソーシャル・ファームが期待されているのではないか、ということをソーシャル・ファームの意義の一つとして考えております。以上です。

上野:ソーシャル・ファームを目指していくときに、イギリスのようなUKの基準というのを満たさなければそうではないということではなくて、ソーシャルファームジャパンの総会のときにも炭谷さんからご発言があったのですが、緩やかな、要するに理念を大事にしてネットワークを作っていこうというお話もあったかと思っております。
補助金や助成金を受けているということ自体が私はいけないとか、そういうことではなくて、ただ依存するのはどうかと思います。依存するのではなく、先に補助金ありきではなく、それを活用して自分たちがどういうものを目指すのかということ。これは、私は長い間福祉職なのでこのへんにもう垢がついているのですが、福祉に携わってきた人たちにやはりちょっと欠けているかと思います。自己反省も含めてです。ここもやはり意識は改革していく必要があるかと思います。
それから、今日の大きなテーマではないのですが、やはり日本の就労に対する考え方ですね。これをやはり私たちは価値観を転換させていく必要があるだろうと、先ほどの文化というところに入るのかもしれません。それと同時に、やはり支援する私たちもやはり訓練して仕事についてという考え方だけではなくて、お仕事そのものに生き甲斐を感じるような仕事興しというものをどうしていったらいいのかということも、やはり考えていきたいと思っております。以上です。

山内:ありがとうございました。では、お待たせしました、河村さん、お願いします。

河村:文化ということもさっき出てきたのですが、15年ほど前かなり真剣に取り組んでいるある企業の人事担当の方と、ある重度の障害の方の就職について相談したことがありまして、人事担当者が大変申し訳ないけれどと言ったのは、この方は能力がありすぎると言ったのですね。それは、その企業としては法定雇用率を満たしたいというのが目的であって、能力の高い方だといずれ昇進をさせなければいけない。そのためには、その当時の企業の文化ですと、あちこちぐるぐる回さなければならない。回して次に上がる、それができない。だから、ある特定のところでずっと満足してくれる人であれば採用できるのだけれど、と言われて私は愕然としたのですね。

私はその頃のその企業の文化から、今の企業の文化はもう変わっていてほしいと思うのですが、やはりともすれば、今ある仕事に、あるいは今ある訓練コースにその人をはめて指導するのだという、受け皿のほうの都合で就労とか将来の設計というのをどうも考えがちな、これは日本だけではないと思うのですけれども、傾向があるので、やはりそこを文化というか考え方というか、それをとにかくあらゆる面で変えて、一人一人の持っている、ずっとゲロルドさんもおっしゃっていたしキャシーさんもおっしゃっていた、一人一人の持っている強みを生かしていくのだ、それを伸ばしていくのだという、enabling environmentというものを本格的に日本でも教育から訓練、そして企業の中の人事に、全体の文化の中にきちんと反映させていくということが必要でしょうし、イギリスで、あるいはドイツでそういう模索がソーシャル・ファームの中で行われてかなりの成功を収めているというのは大変心強いことだと思いました。

山内:ありがとうございました。フロアのほうからご質問、あるいはコメントされたい方がいらっしゃると思うので、それではどうぞ。

会場:参考になりました。ドイツのゲロルド・シュワルツさんに聞きたいのですけれど、ドイツの障害者雇用法というのがありまして、雇用義務がある。日本にもあるのですけれど、炭谷先生はあまり守られていないと。ドイツには罰金がある。日本にもあるのでしょうけれど。
そこでこういった提案をしたいのですが、企業とソーシャル・ファームの関係の中で、町の道具なんですが、ソーシャル・ウェルフェア・トレード、あるいはソーシャル・ウェルフェア・スワップ、そういったカーボン・トレードと同じようなシステムを導入できないかなと。これは企業にもかなりメリットがあるし、ソーシャル・ファームにもかなりメリットがあるのではないかと思って、もっと面白いシステム、仕組みをそういったウェルフェア・トレードあるいはウェルフェア・スワップというシステムを取り入れたらもっと面白い部分に行くのではないかと思うのですが、どうでしょうか。

山内:いかがでしょう。

シュワルツ:そういったものはすでにあるのですが、ただ残念ながら例えば雇用率を達成しない企業、それは例えば福祉作業所への受注、委託をすることでそれを相殺することもできます。これもまたソーシャル・ファームと政府の間で決まっていることですが、例えばソーシャル・ファームをそういった取引の中に組み込むという働きかけもあります。ただ、今おっしゃったスワップという考え方も非常に面白いと思います。ですから政府への働きかけは続けたいと思いますし、こういったものもあるのだという、制度を改善する一つの措置としてぜひ私どもも考えていきたいと思います。もっとそういったソーシャル・ファームが開かれることを期待したいと思います。

会場:実は、請負とか人材派遣とか、アウトソーシングではなくてソーシャル・ファームというのはもともと企業から独立、あるいは自立したものであると規定しています。その中で、企業のアウトソーシングではない、人材派遣でもなんでもない。ソーシャル・ファームそのものが自立した企業体だということで、取引が成立するのではないかと思うのですね。そういう支援をやっていきたい、できるようなシステムをもっとしたら面白いのではないかと思っています。一言付け加えます。

山内:ありがとうございました。はい、ではこちらの方、お願いします。

会場:インターンシップデザインオフィスということで、社会起業家を支援する海外研修に取り組んでいます。
質問は、炭谷先生のお話にもあったのですが、大学はソーシャル・ファームを支援するような取り組みをどのような形で行っていらっしゃるかというところで、シュワルツさんの話にちょっとだけあったのですが、加えていただければと思います。社会企業の分野で学生の人がけっこう関心を持っていますが、ソーシャル・ファームはあまりまだ知られていないかもしれませんので、ぜひお聞きしたいと思いました。
あともう一つ、可能であれば。フェア・トレードという話がキャシーさんから出ましたが、フェア・トレードが例えばフェア・トレード・タウンとか、そういう取り組みで自治体が率先して取り組むところがありますが、ソーシャル・ファームの分野での支援ということで、先ほど二つの都市が出ましたが、そういうことに前面に取り組んでいる町などあれば教えていただきたく思いました。

山内:ありがとうございます。では、シュワルツさん、大学がソーシャル・ファームを支援しているという例についてご存知の部分をご紹介をお願いしたいのですが。

シュワルツ:そうですね、最初にソーシャル・ファームができたとき、これはずいぶん昔の話になりますけれども、当初の考え方は、1968年度の運動の一環でありました。その当時の考え方、私は当時心理学を勉強していたのですが、狙いは新しい働き方、新しい生産の仕方、いわゆる資本主義社会における搾取に代わる方法の模索でした。ところが状況は大きく変わっております。全く違っています。私はMBAを数年前に終えたのですが、これは大変なことだったのですが、そこでソーシャル・エンタープライズの勉強をしていました。当時ソーシャル・エンタープライズと言っても誰もわかってくれませんでした。フォルクスワーゲン等の企業の人たちは非常に関心を示してくれたのですが、まだよくわかっておりませんでした。ところがここ数年間、最初はイギリス、アメリカ、今はドイツにおいてもそうなのですが、かなりのビジネス・スクールにおいて学生がいろいろなキャリアを求めるようになっています。ですから必ずしも利益追求型ではなく、人のために役立つことをしたいということを考えるようになっています。お金だけではなくなっております。それがずいぶんいろいろなところで起きていると思います。特に欧米の大学ではそういう傾向があると思いますが、キャシーさんのほうからそのあたりのお話をしていただけると思いますけれども、おそらくこういったことが今トレンドとして、傾向として出てきていると思いますし、これだけ関心があるということはうれしいと思います。ソーシャル・エンタープライズ全体に対し、全体のセクターに対して関心が高まっているのはいいことだと思います。

ベイカー:そうですね、ソーシャル・エンタープライズで、イギリスではMBAも取れるようになりましたね、いくつかの大学で。非常に関心も高まっておりまして、大学レベルの研究も進んでいます。それから、フェア・トレード・シティについてですが、ちょっとそのご質問にお答えすることはできないのですが、いろいろな個々の地方自治体の中でフェア・トレードという政策をとっているところがありまして、イギリスではもうかなりいろいろなところで行われています。大型の小売業者などが、例えばフェア・トレードだというような製品を販売する。全ての販売している製品がフェア・トレードで作られたものですよ、というようなことを言っているところはあります。それでご質問のお答えになったかどうかはわからないのですが。

会場:フェア・トレードのことではなくて、ソーシャル・ファームの支援を熱心に取り組んでいるような町づくりが進行していますか、という質問だったのですが。時間がないので。

ベイカー:すみません。バーミンガム・シティの自治体は確かに、例えば10%条項というのを設けていまして、積極的にソーシャル・ファームを推進しています。バーミンガムではしたがって、ソーシャル・ファームが便益を受けているということがあります。私のプレゼンテーションの中でウェールズについてもお話をいたしましたが、ウェールズというのはもちろんUKの中でも大きな地域なのですが、農村地域でもあります。そこで社会条項を実施することは非常に重要なことなんです。ウェルシュの議会、地方議会ですが、ここでは非常に積極的に、ウェールズ語でキルスという組織があります。この組織においては、リサイクリングをしているソーシャル・エンタープライズをまとめて、より効率的に活動する、そしてネットワークを作ることができるように活動しています。いわゆるリサイクリングの活動をしていますが、さらにそれを推進するような支援をしています。このウェールズにおいてはリサイクリングビジネスと、それから廃棄物をリサイクルする、もう一つは家具をリサイクルする、それからガラスをリサイクルするという三つのリサイクルの企業が成功しています。

山内:次の方お待たせしました、どうぞ。

会場:今日は大変勉強になりましたけれど、ネットワークが大事だと聞いたのですが、我々の会では4団体の当事者グループがありますが、いろいろ、足立の、墨田のほうにも当事者が代表してやっている会もありますが、墨田の代表の方はそれぞれの会が別々でもいいのではないかという意見もありまして、足立の4団体では僕の考えでは別々の独立したような感じになっているので、そのへんをどうしたらネットワークがうまく組めるかというのを、ちょっと頭を痛めているところなのですけれど、価値観というか目的観はみんな、4団体とも一緒だと思うのですが、どうしてもうまくいかなくて困っています。

山内:さて、どなたが。炭谷さん、お願いできますか。

炭谷:それでは、いろいろなソーシャル・ファームを目指そう、福祉系のNPOを目指す、行っていらっしゃる団体はいろいろあると思います。それらのネットワークというのは重要だというのは今日、ずいぶん理解が進みました。私自身が進みました。問題はネットワークの作り方ですね。それがご質問ですけれども、私自身は一番重要なのは、いくつかありますが、第一には理念を明確にする。何を目指すんだ、何を我々は目指すんだと。ですからその理念を明確に示して、これで鳩合を集める。昔のような、同じ町にあるからというだけでは、ネットワークというのは作れないと思います。それが第一ですね。

第二は、やはりネットワークがうまくいっているところは、共通して言えることがあります。これは何かと言えば、そういうネットワークを作ろうとする強力なコーディネーターといいますか、それで動いてくれる人が一人いるのですね。いないところにはまずできません。ですから、そういう団体をうまくつなげてくれる能力の、そういうふうに動いてくれる人ですね、そういう人が必須だと思います。

その二つがあれば、ネットワークというのはできてくる。必ず理念を明確に示し、そして活動的に動いてくれる、自分の利害を超えて動いてくれる人がいれば、ネットワークは形成されてくるのではないかと、私自身の経験からそう思っております。

会場:ありがとうございました。

山内:他に。では、後ろの方。

会場:すみません。厚生労働省の高齢障害者雇用対策部から来ました長門です。
今日は個人的に参加しましたので発言するつもりはなかったのですが、先ほどフィリーダさんからドイツの納付金制度と同じような制度があることについてのご質問があったので、誤解があるといけないと思いますので一点だけ申し述べたいと思います。

まず、そのことをご説明する前に、今日はキャシー・ベイカーさんとゲロルド・シュワルツさん、非常に参考になるお話を聞かせていただいて、ありがとうございました。

我が国には、一般の民間企業が障害のある方に適した仕事を切り出して会社を作る特例子会社という形で障害者を多数雇う制度がございます。わが国はこれまでも、雇用保険の保険料で中小企業が障害者を雇い上げる場合の助成金を支給する制度がありましたが、今回の経済危機に対してはその助成額を増額するとともに、特例子会社の設立に当たっては最初の3年間、立上げ費用の助成を行うなどの助成を新しく打ち出したりしております。そういう中で、先ほど我が国でも法定の雇用率というものがありまして、それを満たさない企業から費用を徴収して、お金を集めるという制度がございます。

我が国の場合は、ドイツと少し考え方が違いますのは、法定の雇用率を達成しない企業、ここから集めるお金はペナルティという性格ではございません。障害者を多数雇う企業とそうでない企業との間で費用負担に差が出るであろうということで、基準に満たない企業から、基準を超えて雇っている企業に費用負担の調整をするということでお金を集めております。ですから集めましたお金は法定雇用率を超えました企業、大企業の場合には基準を満たしていればそのまま支給されます。それから中小企業の場合はこれまで費用負担の義務が免除されていましたので、特に雇用率の高い企業だけ報奨的な形で費用を支給しておりましたが、そういう形で、基準を満たしていない企業から集めて、基準を超えた企業に費用補填をする、そういう費用調整に使っております。

それから、残りました金額につきましては、障害のある方を受け入れるためには企業環境の改善、そういったことを行う必要がありますが、そういった取り組みをされた事業主に対する助成金等として使っております。ですから、雇用保険の保険料を財源とする雇入れ費用の助成を含めまして、我が国におきましてもドイツにおけるのと同じような取組みをして、今雇用率の引き上げを努力しているという状況ですので、この機会に情報提供させていただきます。

山内:どうもありがとうございました。

会場:共働学舎から参りました。北海道で牛を飼ってチーズを作ってやっております。炭谷先生にはずいぶん宣伝していただきましてありがとうございましたということと、今日はお三方の話、ヨーロッパからの話を聞いてとても参考になりました。

最後なので言いたいのは、キャシーさんもおっしゃっていましたし河村先生もおっしゃっていましたが、いろいろな負担を抱えた人たちの能力を引き出して、その人に一番合った仕事を見つけてもらうということを、僕自身はずっと30年やってきまして、その方法が、毎朝、今日はどうやって生きるの、何をするの、と本人に聞くわけです。やりたいことはやるわけです。それでうちの牧場は全部成り立っていまして、牛を飼い、糞掃除をして、野菜を作り、チーズを作って、それが高く評価されて売って、ほとんど毎日使う経費、生活に必要なものは稼いでいます。ただし、土地が買えない。新しい施設を作ろうとなったとき、その資金までは稼げないのですね。それで、福祉関係の資金をいただこうと、借りようと思ったときに、福祉からの、行政からの援助は一切なしでずっとやってきています。ですから、個人の寄付に頼らざるを得なかったということになります。

そのときに、今までの行政とのやりとりの中で、自分のやりたいことをやっているのでしょう、と。それが一番個人の能力を引き出すのにいい。でもそれは自分のいきたい方がやっているのだから、それはあなたの勝手でしょう、だから福祉行政の対象になりません、ということなのですよね。

そうすると、本人にとっては一番いいと思ってやってきていることが、日本の行政には取り上げられないという形でずっときて、ずっと変わってきているなとは思うのだけれども、まだ、それに対してではこうしたらいいですよ、ということが明確に示されないでいるのですね。そこに手が届きそうで、まだそこにきていないということで、これから先、どういうふうにしたら、そこにもうヨーロッパのほうではなんとなく、ゲロルドさんの話を聞くと政府がとても援助しているのだなという感じは受けるのですが、そういう方向に行くかどうか。行ってほしいと思うのだけれども、その個人が持っている、今まで社会参加できなかった人たちの本当の思いと、その隠された能力を引き出す。それが自由な発想のもとにできるのではないかと僕は思っているのですが、社会的に何かそれを蓋されてしまうのですね。

そこのところをぜひなんとか表に出して、それをサポートするシステムができたらいいなと、これは希望ですね。別に答えをどうのこうのではないのですが、そういう思いを持っています。よろしくお願いします。

会場:せっかくなので、もう時間が過ぎていて申し訳ないのですが発言させていただきますと、私は実は厚生省に入りました。そういう意味では福祉関係をやっている省でした。その厚生省は今から数年前に労働省と一緒になって、今は厚生労働省になっています。

私は今、そういう意味では昔労働省がやっていた高齢者・障害者の雇用対策の仕事をしています。厚生労働省はそうやって一緒になりましたが、今日のお話をうかがっていても、まだまだ福祉分野で活躍されている皆さん方は、福祉の部局に足を運んでおられるような感じがいたしました。今日はキャシー・ベイカーさんのお話だったでしょうか、ソーシャル・ファームの担い手が必ずしも福祉・医療の専門家ではなくて、むしろ経営に通じた方、そういう人材を得て進展しているというお話があったかと思いますが、行政も福祉部局だけではなくて、ソーシャル・ファームを進めていこうと思えばそれは地域の町づくりの行政でもありますし、雇用・労働行政の部局の問題でもありますし、経済産業省の産業を興す部局の仕事かもしれません。

ですから、たまたま福祉部局では過去残念ながらそういう形でお手伝いできるところがなかったのかもしれませんが、今行政は、福祉部局をはじめとして、障害のある方も、ごく普通に経済活動の担い手として社会に活動場所を見つけていくという、そういう考え方の転換をはかって取り組みをしていますので、おそらく探していただく、それはなかなか難しいのかもしれませんが、探していただければ必ず共感を持っていただける部局が出てくるであろう。またそういう部局が他の部局にも波を広げて行けるのではないかと思っていますので、今日ここでの議論のようなことを踏まえて役所のほうでもまたいろいろ考えていきたいと思いますが、皆さん方でもまた足を向ける部局というのを福祉一途ではなくて、それも大事なのですけれども、いろいろな目線で取り組みをしていただけると助かると思います。

山内:はい、どうもありがとうございました。まだまだ議論したいのですが、やむを得ずここでクローズしたいと思いますが、その前に一言、炭谷さん。総括をお願いいたします。

炭谷:ありがとうございます。今日、遅くまでお付き合いいただきましてありがとうございます。

たぶん、そうなれば私どもが発足させましたソーシャルファームジャパンに、それであれば、自分もそれではなにかやれることがあるのではないか、と思っていただいた人もいらっしゃるのではないかと思います。
私どものソーシャルファームジャパン、さきほど上野さんが紹介してくださいましたように、ゆるやかな、あらゆる人をつつみ込む、ゆるやかな集まりでございます。ですから、会費とかそういうものは一切ございません。そういう希望のある方、もしいらっしゃいましたら。まだインターネット上はソーシャルファームジャパンにアプローチできないということですが、近くできるようになりますので、それを見てまたご検討いただければありがたいと思います。

それと、ゲロルドさんがおっしゃいましたように、現在のドイツのような立派な制度にできるためには、まずソーシャル・ファームというのはこういうものだという実績を残して初めてできた、とおっしゃいました。まず何か国の制度ができてからソーシャル・ファームができる、それは順序が逆だということはゲロルドさんもはっきりとおっしゃったように、まず我々がこういうふうになった、立派なものにできた、ということをまず実証しなければ政治の世界や行政の世界は動かないというのは、日本も同様だろうと思います。

そういう形で、今日ご出席いただいた方々が、ソーシャル・ファームに何らかの形でいろいろとご協力いただければ、大変今日このような会を催した価値は十分にあったのだろうと思っております。

山内:どうも皆さま、ありがとうございました。