音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

平成20年度 国際セミナー報告書
障害者の一般就労を成功に導くパートナーシップ

Report on International Seminar
Success through partnership to promote open employment of persons with disabilities

2部パネルディスカッション 話題提供1

フィリーダ・パービス リンクス・ジャパン会長

フィリーダ・パービス氏の写真

本日のテーマはパートナーシップでありますので、まず少し国際パートナーシップについてお話をしたいと思います。山内先生が言われたように、私はそれが専門です。その後で、これまでの二人のスピーカーのブレゼンテーションについて感想など述べたいと思います。

まず、国際的な交流の重要性ということですが、最も社会的に排除された人々の生活を高めたいというのであれば、自分たちの地域、また他の地域においても、まずはこのようなグローバル化されデジタル化された世界においては、一緒になって活動することが必要でしょう。政府、企業等が設定しているフォーマルなセクターを離れて協力すべきでしょう。それぞれ孤立して活動した限りにおいては、改善は見られません。したがって、新しいものの考え方をいろいろなところから学ぶべきでしょう。

本日は、このセミナーの主催者は、私のほうからこれらの国際交流、共有の重要性について発言する場を提供してくださいましたし、リンクス・ジャパンの話をする機会も頂戴しました。しかしその前に、イギリス、ヨーロッパとの交流に関してお話したいと思います。今回の主催者、日英高齢者障害者ケア開発協力機構、そして日本障害者リハビリテーション協会は、炭谷先生の素晴らしいビジョンのもと、2000年からセミナーを開催してこられました。ほとんど毎年、このような二国間、あるいは国際的なセミナーを今日のように開催してこられました。その他、双方向における訪問等を企画されました。日本、英国、その他の国々の専門家、高齢化、障害、テクノロジーの専門家、また市、地域の再活性化の専門家がこれらの運動を先導してまいりましたし、多くの人たちが参加してまいりました。さまざまなことを学習し、インスピレーションを得、パートナーシップを構築し、友情を育むことが大変重要であったということで、炭谷先生にその英知に感謝申し上げたいと思いますし、このように大変大きな課題でありましたコミュニケーションに取り組んでくださった方々に感謝申し上げたいと思います。

ここでいくつか、私どもがこれまで交流してきましたテーマについてお話したいと思います。そして、いかに我々が幅広い分野において交流してきたかというお話をしたいと思います。そこで、少しリンクス・ジャパンのお話もしていきたいと思います。

イギリスにおいては、このような組織の長年の歴史がありますし、日本ともその点、交流してまいりました。私たちはできるだけソーシャル・セクターの独立が必要であると思っております。適切な規制、そして透明性を獲得し、一人一人がこのようなさまざまな収入源の一つとして寄付をすることが必要であると同時に、またさまざまな収入を得ることが必要でしょう。また、社会からの信頼、理解を得ることも必要です。その中にはメディアの利用も視野に入れるべきでしょう。また、市民社会も健全な民主主義には不可欠です。つまりロビー活動やキャンペーン活動、政府への働きかけを行うこと。また、その目的を果たす支援をし、このセクターのさまざまな声を代弁し、同時に資金の流れを促進し、さらに効果的な公共サービスの提供と、スタッフの研修および専門化に重点的に取り組むこと。これはいずれも重要であり、我々はこの分野において交流してまいりました。

10年以上にわたりリンクス・ジャパンはボランタリーセクターの専門家を集め、ボランティア活動、市民教育、青少年交流、資金調達、寄付、助成金調達、Compact、これは政府とボランタリー・コミュニティ・セクターの協約です。また、地方政府および企業の参加、企業における社会投資、二重の地方分権、つまり中央政府から中央自治体、また中央自治体から地域コミュニティ、住民への分権、またコミュニティ再生、社会革新、社会企業、ソーシャル・ファーム、そして国際開発協力、これは先進国と途上国の間です。そして地域密着型の連携、権利擁護、ホームレス、障害者の権利、男女の平等等々、数限りないさまざまなテーマについてこれまで研究、議論を進めてまいりました。

このような両国でのソーシャル・セクターの交流に参加してきた方々は、世界のどこにいるにせよ、人々は皆市民として同じ願い、権利、さらに義務を持ち、また似通ったニーズを持っていることを学んできたと思います。文化や社会構造の違いは、私たちが直面する同じような問題に対し異なった視点を示すのに役立ってきました。

このような交流を可能にしてくださったのは、主に三つの出資団体です。大和日英基金、英国笹川基金、そして国際交流基金です。これらの団体の出資により最近実施されたソーシャル・セクターに関するその他の日英共同研究は興味深い内容となっています。

ごく簡単にご紹介しますと、例えば大学における障害学生のインクルージョンの構造、引き籠もり現象、学校でのいじめへの対応、また女性限定の施設に対する社会の認識、特にこれはいわゆる痴漢などの問題を受けての動きです。また、コミュニティ、家族および職場の比較分析、地方自治に関する見解、ソーシャル・インクルージョンの確立と地域サービスの提供、中学生の読み書き障害などです。

例えば、青少年の犯罪、人間の安全保障などもあります。イギリスとの今の交流は必ずや為替にも影響されると思います。今ポンドはわずか110円です、1ポンド110円です。したがって、皆さん、イギリスは今お得です。ぜひイギリスへいらっしゃってください、お安いです。

いつも私はうらやましく感じるのですけれども、国際交流基金の日米センターから多大なる資金援助を受けている方々が多いと思います。リンクス・ジャパンが日本とイギリスの間でやっているプロジェクトに対しても資金援助をいただいております。例えば、青少年慈善活動教育、世代間研究、企業ボランティアプログラム、災害ボランティア管理、サービス・ラーニング、また農村部での自立生活、HIV・AIDS、環境問題等々のテーマ、これも私たちもイギリスといろいろな面で交流ができると思っているテーマです。

今お話したのはごく一部の例です。さまざま、多岐にわたるソーシャル・セクターのテーマに基づいてヨーロッパ、アメリカ等と交流が重ねられておりますし、この先まだこれが続くことを期待したいと思います。

では、私からこれまでのお二人の発表について感想を述べさせていただきたいと思います。

大変興味深く拝聴いたしました。ヨーロッパ、私たちはドイツとかなり近い関係にありますけれども、我々の歴史を見ますと、私どもの社会の構造はずいぶん違っていると思います。英国においては慈善団体の歴史は非常に長いと思います。400年近い歴史があります。そういう意味で、イギリスにおける第三セクターは国以前から存在しておりました。その後、国が従来第三セクターで行ってきた活動、いわゆる慈善活動を引き継ぐ形となりました。

特に福祉国家、また国の保険制度ができる中で、そういった動きが出てきました。私たちの公共サービスの提供の多くは、福祉に依存する体質を作ってしまったと思いますし、また提供する側も縦割りであります。ですので、ここでは一人一人の草の根レベルの人たちのニーズを満たすことは、二の次になってしまっています。ソーシャル・エンタープライズの運動は、イギリスにおいてはそういう意味で、もう一度この問題を直視し、欠陥を正すことを試みております。特に不利な立場にある人たち、コミュニティの中で不利な立場にあるコミュニティに働きかけ、そして変化をもたらすことが狙いです。ソーシャル・エンタープライズの一部としてソーシャル・ファームが出来、ここでは雇用の機会を提供することが中心です。すでにお話を聞かれた通りです。

ドイツにおいては一方では、さきほどシュワルツさんがおっしゃった内容からもわかりましたが、長年国が福祉の責任を担ってきました。これは、こういった違いがあるからこそ、さまざまな交渉を通じて、例えば福祉セクターとの交渉を通じて政府はソーシャル・ファームを育てようという非常に前向きな姿勢をとっているのだと思います。イギリスの立場から見ますと、このようなさまざまなソーシャル・ファームの立ち上げに当たって補助金が出されていること、またさまざまな低生産率に対する保障がなされているということは驚きです。

また、他のヨーロッパの国々においてもおそらく、こういったモデルが多いのではないでしょうか。例えばフィンランドでソーシャル・エンタープライズ法という法律ができたとき、このような給与に対する補助などを提供しております。ここでのソーシャル・エンタープライズ法は主に雇用の機会をもたらすことを目指しています。

同様に、ギリシャではコイスペといういわゆる社会協同組合、これは精神障害者を助けるためのものであり、そういったメンバーによって構成されています。これはイタリアの社会協同組合の動きとかなり近いと思います。

日本では、私の理解する限りにおいては、上野先生からもっと詳しくお話があると思いますけれども、しかしながら日本の場合、雇用、そして研修のニーズを組織の中で行う際の支援がありますが、ドイツ、イギリスの場合福祉ニーズ、こういった不利な立場にある人たちの福祉的なニーズは企業以外のところで主に提供されています。したがって、そこでは企業としてまず競争力をつける必要があります。しかし、例えば日本において組織の中で福祉的なニーズがあった場合、まず企業として成功することが大切だと思います。先ほどキャシーさんが言われた通り、福祉のマネージャーの人たちは必ずしも企業、事業に長けているとは限りません。したがって日本の場合は、いかに企業を経営するかがソーシャル・ファームにおいての課題になると思います。

それから、二人の演者からネットワーク組織の醸成が強調されました。ドイツのほうがこの点では歴史が長いと思います。

また、コミュニティという意識。ネットワークを通じてコミュニティという意識が生まれ、自助、使命感、情熱というものが生まれたと思います。イギリスはどうしても福祉に頼るという傾向があったがために、そういった面においては遅れていました。ソーシャル・ファームUKはそういった中で今非常に活躍しています。ソーシャル・ファームをなんとか推進しようと努力しております。

ネットワークがもたらすことは、主に三つだと思います。人と人をつなぐということ、それからもう一つは能力を育てる、そして三つ目は彼らを代表するということです。ソーシャル・ファーム・ジャパンもまたそのような声になっていっていただきたいと思います。特に、政府に対し折衝、接点となっていただきたいと思います。日本政府、そして日本の人々が、ソーシャル・ファームが何を日本で達成しようとしているのか、しっかり理解できるようにしていただきたいと思います。

例えば税控除。イギリス、ソーシャル・ファームUKは税控除を強く働きかけていますが、これもまた日本において重要になってくると思います。それからもう一つ、大手企業との連携の話も出ました。ドイツにおいては、ソーシャル・ファームは言わばさまざまなドイツの大手メーカーの下請けになっています。そしてこれは、単に慈善活動の一環としてではなく、きちんとビジネスとして受注をしているというのは素晴らしいことだと思います。キャシーさんが挙げられた例ですが、いかに大手企業から契約を取るかということを言われましたが、例えばシューシャインの話がありましたが、これもいろいろな可能性を秘めていると思います。日本においてはオフィス・マッサージ、「手がたり」というものがあります。これもソーシャル・ファームでして、日本の企業に行って、そして日本のマッサージをするのですね。職場において、視覚障害者がマッサージをします。日本の企業というのは今の景気後退期にあってCSR活動を削減しようとしているというということを聞きましたが、そしてもっと従業員のニーズ、特にストレスに苦しんでいる従業員のための活動に力を入れているということを聞きました。したがって、この「手がたり」にとってはいいチャンスではないでしょうか。こういった企業に対しマッサージをする、そして社員の方々を少しでもリラックスしていただけるようにするということで、チャンスがあると思いますし、各企業に対しいろいろなサービスを提供する機会が今後出てくると思います。

さて、ソーシャル・ファーム、例えば大きなイベントが企画されているような場合、キャシーさんも先ほどオリンピックの話をしました。ロンドン五輪の話が出ましたが、例えばソーシャル・エンタープライズからいろいろなロビー活動がなされ、できるだけソーシャル・エンタープライズがオリンピックの場でのサービス提供をさせてほしいと働きかけております。これはコミュニティにおける重要な遺産、歴史になると思いますし、またあまりお金がかかりません。したがって例えばソーシャルファームジャパンも日本における大きなイベントの際にはこのようなことができるのではないでしょうか。そして、同時に社会条項、契約を例えば大阪のように取る努力も必要だと思います。

以上が私の感想です。

いろいろな国によって状況は違うと思いますが、皆さんが目指しているものは同じだと思います。働き甲斐のある仕事を雇用市場において不利な立場にある人たちに提供するというものです。そういう意味では我々が共有できるものはたくさんあると思います。交流の場はたくさんあると思いますので、引き続き皆さんとこのような交流を続けられればと思います。ありがとうございました。