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CBR公開研究会in名古屋「CBRマトリックスを使って考える」報告書

◆プレゼンテーション1
「CDD(開発における障害センター)の経験:
バングラデシュにおける障害の主流化(メインストリーミング)」

開発における障害センター(CDD)所長
ナズムル・バリ

上野 それではお待たせしました。バングラデシュから来てくださいましたナズムル・バリさんをご紹介いたします。

ナズムル・バリさんはCDD(開発における障害センター)の所長をしておられます。そこでは開発の中に障害を組み入れていく研修、啓発活動、教材の開発などをしています。31ページに詳しいプロフィールを載せてありますので、ご興味のある方はご覧いただければと思います。バリさんはCDDでの活動以外にも、国際的なコンサルタントとして世界を飛び回っていらっしゃいます。

今日はバリさんのお話をお聞きする時に、先ほどのCBRマトリックスをお手元に置き、バリさんの今のお話しはマトリックスでいうとどこに当たるのか、と考えながらご覧いただければと思います。お配りした資料の自分の人生の充足度の次をめくっていただきますと、右上のほうに「バリさんのお話しから」と書いたものがありますので、それを開いてお話を聞いてみてください。なお、本日の通訳はアジア保健研修所の林かぐみさんが担当してくださいます。

ではバリさん、よろしくお願いします。

バリ 日本に来るのは3度目ですが、その度にとても嬉しい気分になります。来るたびに日本が随分発展している、進んでいることに驚きます。バングラデシュとは大変違う状況です。何もかもがきちんと組織立っていて、皆さん正しく振る舞われる。それから1箇所から次の所に行くのに非常に速く行けます。昨日は半田市を訪れましたが、行きは電車で、帰りは車でした。ちょっとうたた寝をしている間に100キロぐらい行ってしまいます。ダッカですと道は悪くて混んでいますので、例えば寝ていてもまだ3キロぐらいしか進んでいないというような状況です。車も多く、混んでいますし、人も多いです。

これからプレゼンテーションを始めますが、その前に、これまで発表された皆さんに感謝を述べたいと思います。先ほどからCBRマトリックスを使って皆さんに作業していただいています。上野さんがおっしゃったように、皆さんが行っている様々な活動のどれがどんなふうにCBRマトリックスの項目に当てはまるのか、ということを考えていただければと思います。

CBRは一つの団体、一人の人によって行われているのではありません。様々なアクターがかかわっています。バングラデシュではどう行われているか、私たちがどのようにコミュニティに手を伸ばそうとしているのかについてお話しします。

バングラデシュの概要

(図1)
図1(図1の内容)

まずは私の国、バングラデシュについて少し触れます(図1)。先ほど人が多いと言いましたが、人口は1億5,250万人です。1平方キロメートル当たりの人口密度は1,015人です。首都ダッカの人口密度はその約8倍、8,000人以上です。人口は増加しており、しかも加速しています。人は農村から都市部、特にダッカに移動しており、農村部の人口の流出が起こっています。1世帯の平均規模は4.4人です。統計によると32%の人々が貧困線以下の生活をしています。少なくとも人口の70%が農村に住んでいます。バングラデシュの縫製産業について聞かれたことがあるとは思いますが、労働人口の66%はいまなお農業に従事しています。私たちにとって食糧の安全保障は大きな課題です。貧しい人たちの1日当たりの収入の6割は食べ物に費やされます。

15歳で読み書きができる人たちは56%です。平均寿命は68歳です。安全な飲み水の確保は大きな課題ですが、いまなお20%の人たちが手に入れられません。人口の50%は衛生的な環境で暮らすことができません。井戸水がヒ素に汚染されているという問題もあります。海の水面が上がり、海水が内陸部に入って来るという状況が起こっており、塩害も問題になっています。私たちの国にはいろいろな災害があります。ただし、雪に関してはありませんが。まるで災害のレストランのようなものです。ひとたび大きな洪水が起これば国土の7割が冠水してしまいます。水浸しの状態になった時は、道路は車で混雑するのではなく、ボートで混雑します。

障害の現状

それでは障害について話を進めていきます。私たちにはあまり信頼できる統計データがありません。最新の国勢調査によると障害をもっている人は人口の1.4%といわれています。人口の1.4%というのは国勢調査から上がってきた数字ですが、障害者団体はこんなに低いはずはないと申し立てています。2005年にNGOが調べた調査では5.6%でした。障害の種類による内訳は、視覚障害が一番多くて32.2%、身体障害が27.8%です。ただ、私たちはもっと広く他の統計に当たる必要があります。例えば「World Disability Report(障害に関する世界報告書)」では人口の15%が障害をもった人としています。

障害分野の現状について他のことも述べたいと思います。最初は政策と法的な枠組みです。バングラデシュは選択議定書を含む障害者権利条約を批准した最初の国の一つです。バングラデシュではこの条約に基づいて障害者の権利に関する法律を制定する過程にあります。内閣は通りましたが、まだ国会には上程されていませんので、今のところ、この先どうなるかはわかりません。1995年以来、バングラデシュには障害者政策があり、2001年には障害者福祉法ができました。しかし、それを守らなくても罰則がある訳ではありません。ですから障害当事者、あるいは障害者団体はそれでは効果がないと言っています。

バングラデシュでは障害分野は社会福祉省の管轄になります。また「Disability Rights Watch Group」という市民団体のグループがあり、障害をもった人たちのための権利擁護の状況ついて調査しています。国会にも障害分野に取り組む議員から成る障害委員会があります。障害分野のための予算割り当てが始まりましたが、その割合はごくわずかで年間予算の0.09%だけでした。障害手当など障害者のためのセーフティネット・プログラムもいくつかあります。障害手当は月額は300タカ(約400円ぐらい)です。他にも、障害をもった人への優遇策として、例えば、金利ゼロのマイクロクレジット(小規模融資)もあります。でも問題は、非常に多くのことが求められていても、一方でそれに充てられるものはごくわずかだということです。そのギャップがあまりにも大きいのです。

障害をもっている人たちのためのリハビリテーション・サービス、療養施設などもほとんどありません。サービスの大半は都市部に限られており、農村部の人たちは受けることができません。大病院であっても障害をもっている人たちが受けられるような治療や他のサービスがありません。そのほかにも様々なものへのアクセシビリティが大きな問題です。例えば建築物に入るための利便性が悪い、交通手段が利用できない、コミュニケーション手段が手に入らないなどという状況にあります。教育の問題も非常に大きな課題です。特に聴覚障害をもっている人たちにとって教育は大きな問題です。障害をもった女性は周辺に追いやられている状況にあります。また、障害をもった人たちに対する虐待もよくあります。

CDDの概要

今までとてもネガティブなことばかりお話ししましたが、ポジティブなこともいろいろあります。まずはCDDについて話しましょう。CDDは1996年に設立されました。私たちの団体の目的は障害をもった人たちのインクルージョンを実現していくために、能力を強化していくことです。135名の職員がいて、そのうち9%は何らかの障害をもつ人たちです。CDDはNGO、障害者団体、企業、政府など様々な機関と連携を組み、3つの大きな分野で協力しています。1つは障害をメインストリーム化(主流化)すること、2つ目は障害をもった人のためのリハビリテーション・サービス。そして3つ目は障害をもった人たちや家族をエンパワーすることです。私たちが目指しているのはインクルーシブな社会であり、インクルーシブな開発です。そのためにはこれら3つを組み合わせて取り組んでいかなければならないと考えています。

CDDは幅広い活動をしていますので、それについてお話しします。まずどんなふうに始まったか。先ほどからお話ししているように、バングラデシュには障害をもった人たちが数多くいますが、貧困が大きな問題になっています。人口の大半が農村に住んでおり、その人たちにはどのようなサービスも届きません。障害者団体の数が限られており、障害分野に活用できる国内の資源も限定されています。では、一体どんなふうにこれらの課題に対応していけばいいのか。大きな問題です。それを自分自身に問いかけてみたところ、2つの疑問が出てきました。まず、なぜ障害をもった人たちは除外されるのか。2つ目、開発活動に関わっている人たち(アクター)は全ての人の開発のために働きながら、どうして障害をもっている人たちを含めないのか。私が開発組織について以前話していたことですが、開発組織は障害をもった人たちについての全く敏感ではなく、訓練を受けたリソース・パーソンもおらず、知識もありません。これは彼らの問題の一つです。

障害をもった人も皆さんや私と同じ権利を持っているということについて、皆さんも同意されると思います。教育、雇用・仕事、安全、健康について、あるいは考えつくことは何であれ、障害をもっていても誰もが同じような権利を持っているのです。しかし、私が既にお話ししているように、障害をもった人たちの状況はそれほど期待が持てるものではありません。

なぜ除外されるのか

なぜ障害をもった人たちが除外されてしまうのかということについては、3つの要因があると思います。1つはリハビリテーション・サービスの不足です。治療が受けられないのです。2つ目は、社会が障壁を作ってしまったことです。壁があるのでその人たちを受け入れようとしないのです。環境面での障壁、物理的な障壁、交通の問題などです。ここ日本は大変アクセスが良いのですが、バングラデシュのような途上国ではそうはいきません。制度や政策もまた障害をもった人たちにとって障壁になっている場合もあります。例を挙げてみましょう。子どもたちが学校に行くということを考えてみても、「もちろん私たちはどんな子供でも受け入れる」と言いますが、実際はその子どもが自分で学校に来ることができる場合に限られるのです。また、小規模融資もその方針はあまり励みになるようなものではないことがあります。

3つ目の要因は、障害をもった人たちが自分自身を無力だと感じてしまうことです。自尊心、自分への誇りが持てない、モティベーションが高まらないのです。なぜなのだろうという疑問が出てきますが、考えてみれば障害をもっている人たちはあまりに長い間除外されてきました。社会が除外してきたのです。社会が自信をなくさせる一因になっていたのです。全ての要因が、除外へとつながっているのです。

NGOとの連携

次に出てくる問題は、このままでいいのか、あるいはそれを変えていくのかということです。そして自分自身に問いかけるのです。このような状況を変えようとするなら、誰に対象を絞って働きかけるのか。人口の15%の障害をもった人たちに働きかけるのか、あるいは残りの85%に働きかけるのか。障壁は社会の中にあるのですから、人口の85%のほうに働きかけなければなりません。もちろん障害をもった人たちにも働きかける必要があります。具体的には開発に取り組んでいるアクターすべてと協力して、この問題に関わっていくべきだと考えています。その次に、開発に携わっているすべての関係者、NGOと政府が挙げられます。

(図2)
図2(図2の内容)

このような理解のもと、CDDは社会に変化を起こすことを目的に1996年に組織として出発しました。私たちの重要な目的はNGO(図2)との連携でした。NGOが行っている開発プログラムを見ますと、グループ作り、啓発、動員、教育、保健、ジェンダー、災害などの問題に取り組んでいます。ですから、このようにさまざまなプログラムを持っているNGOに、障害分野についての感度を高めさせるという観点から能力強化を図れば、インクルージョンが始まる可能性があるのです。国内で活動しているNGOの大多数は同じような性質と活動内容を持っています。

(図3)
図3(図3の内容)

NGOの持つ人的資源(図3)を見ますと、まず、管理者など責任者クラスの人たちが障害問題について研修を受け、次にソーシャルコミュニケーター(社会への発信者)や啓発に関わる人たちが障害分野の研修を受け、障害問題に関する自らの意識を向上させることが出来ます。

次に、ほかの分野の活動に携わっている人たち、先ほどの話に出た学校の先生たちも、障害をもった人をインクルージョンするように研修を受けることが出来ます。先ほどリハビリテーションのことを話しましたが、バングラデシュでは理学療法士の数がそれほど多くはないので、リハビリテーションの訓練を受けた人も必要です。

(図4)
図4(図4の内容)

これまで、なぜ除外(エクスクルージョン、exclusion)されているのかについての原因を話してきましたが、今述べた方法を実行出来るなら、インクルージョン(inclusion)に向かって進むことができるのです。開発分野及び障害をもった人、その家族に具体的に求められているのは、ここ(図4)に示されている通りです。左側半分は開発組織への、右側半分は障害をもった人たちへの働きかけを示しています。

障害のメインストリーム化

障害をもった人たちに働きかける上で、障害のメインストリーム化は必要な側面の一つです。ですから、幸せな社会を見たいのであれば、メインストリーム化、エンパワメント、リハビリテーション・サービス、これらすべてに取り組む必要があります。先ほどお話ししたように、メインストリーム化のためには、社会の中にある様々な障壁を無くして、人の姿勢を変える必要があるでしょう。スライド(図5)の絵の一番上ですが、物理的な障壁があって、この3人の態度はあまり嬉しそうではありません。それからここでは政策にも触れていますが、必ずしもインクルーシブではない。メインストリーム化のためにはこれらの分野を変えなければならない。エンパワメントのためには、工夫して自信を付けるようにしなければならない。このメインストリーム化とエンパワメントの2つのことが取り組まれていく中で、私たちの目標であるインクルージョンが達成されていくのです。

(図5)
図5(図5の内容)

NGO及び行政関係者への研修

次に、CDDの活動についてですが、私たちが働きかけの対象にまず行っているのは、啓発活動です。その組織の気づきの鋭敏化を図り、管理職に組織内で障害のインクルージョンに取り組んでもらうのです。多くの団体が連携を求めてきますが、それに全部応えることはできませんので、ある一定の基準に従って審査します。そして数を絞り込んで協力関係に入ります。

私たちの主な活動の一つはNGOや行政関係者への研修です。参加者はコミュニティ・レベルからやってきますので、研修終了後は、それぞれのコミュニティに戻り、障害をもった人やその家族へのサービス提供者となります。研修内容は、障害予防、療法の行い方、福祉機器、教育、生計、防災、ジェンダーなど非常に多岐に渡っています。研修を担当するファシリテーターには障害をもっている人もいるので、参加者に非常に大きな影響を与えています。研修には国際的な組織から草の根レベルの団体まで参加しており、マネージャークラスの人もいます。

啓発研修のために音声、ビデオ、印刷物、CDなど様々な教材も作成しています。コミュニティでは、訓練・研修を受けたワーカーが様々な方法で啓発活動を推進しています。会合、ロールプレイ、ストレートシアターといわれるものをしたり、ディスカッションしたりしながら、いろいろな方法で人々にそのことを伝え、考える場を作ります。ここでも障害をもった人たち自身がファシリテーターとして活躍しています。訓練を受けたリハビリテーション・ワーカーが障害をもっている人たちの自宅に出かけて行き、療法を実施することもあります。彼らは介助者やパーソナル・アシスタントにスキル訓練をすることもありますが、子供の場合は、母親や祖母がその役割を果たしていることがほとんどです。

CDDの様々な活動

バングラデシュでは船を使ってしか行けない所もあります。欧州委員会の支援を得て、船を使って各地を回り、リハビリテーションなどを実施する活動もしています。この船(写真1)の中で理学療法、作業療法、目の検査などあらゆるサービスを行っています。

(写真1)
写真1(写真1の内容)

また、車の中に様々な設備を取り付けて、巡回活動を行っています。私たちの研修を受けた団体をパートナー団体と呼んでいますが、パートナー団体の所に行ったり、その地元の自治体と連携したりして活動を行っています。私たちが始めた活動ですが、現在は政府がこうしたことを行い国中に広めようとしています。私たちは同じことをする必要はないと思いますので、これは終了しました。

CDDでは福祉機器を製作するためのナショナル・リソース・センターも持っています。車いす、三輪車、義肢、コーナーチェア、松葉杖など、様々な福祉機器がここで作られています。障害をもった人がここで訓練を受け、就職するということもあります。ここでは外科の手術も行われています。口唇口蓋裂という障害をもつ子どもが毎年5000人生まれるといわれていますが、私たちはそのうち1200人の子どもに手術を行っています。

最近は教育プログラムも提供しています。政府の教育制度に協力する場合もあれば、他のNGOと連携する場合もあります。また、先生に対する研修も行っています。学校におけるアクセシビリティの問題や先生たちが障害を持つ子供に教える際の教材開発などにも取り組んでいます。私たちは学校教育とノンフォーマル教育の両方に対応しており、初等教育から中等教育、大学院に至るまでカバーする教育プログラムがあります。また、来年からになりますが、小児期早期発育に関するプロジェクトを開発しようと考えています。

さらに、障害をもった人たちもきちんと生活ができるように生計の手段を確保するための訓練もしています。商売を始めたり、必要なものを購入するための小規模融資を利用できるようにしています。また、障害をもった人たちが何らかの支援を受けられるように様々なセーフティネット・プログラムもあります。また、大学教育を受けた人たちが仕事や雇用機会を得られるように、企業との橋渡しも行っています。

サイクロン、洪水、地滑り、河川浸食など、災害は非常に大きな問題です。政府に対して強く働きかけて、災害対策には障害をもつ人たちを視野に入れるようにと要請しています。シェルターも建設されてはいるのですが、障害をもっていると使えない状況でした。どのようなものであれ、災害時の計画を立てる時は障害をもつ人たちの声が反映され、それが政策に取り入れられなければなりません。そして計画はすべてインクルーシブなものになるべきです。また、私たちは国際的な政策提言も行い、国際的な枠組みに障害をもつ人たちに対する災害対応を含めることを求めています。

さらに、障害をもつ人たちに必要なのはリーダーシップ、スキル訓練、自助グループ、障害者団体の支援であることから、エンパワメントにも熱心に取り組んでいます。

以前は障害をもっている人で投票したり、政治活動に参加する人は限られていました。しかし鋭敏化活動の結果かもしれませんが、今は投票に行くようになりました。更には障害をもっている人が候補者になり、選挙に出るというケースや、あるいは選挙に当選して政治家になるというようなケースも出てきています。

障害をもつ人たちが集まって、障害をもつ子どもや女性への虐待・暴力に反対を訴えていこうという動きもみられます。さらに、視覚障害と聴覚障害を同時にもった人たちへの対応も大きな課題です。この問題については、どんなことであれ可能な支援をしていくつもりです。

バングラデシュでは統一された手話がまだありません。いくつかの関連団体が手話の標準化に取り組んでいるところです。視覚障害の人たちへの点字については、子どもたちが教材を点字で学べるように支援しています。以前は点字を打つための点字板を輸入していたのですが、かなり高価でしたので国内で作り始めたところ、以前の3分の1の価格にすることが出来ました。

アクセシビリティは大きな課題であると言ってきましたが、こんなふうにできるというデモンストレーションをすると、それが広がっていきます(写真2)。

(写真2)
写真2(写真2の内容)

(写真3)
写真3(写真3の内容)

この写真(写真3)は国際的な災害対策についての権利擁護活動の集まりですが、グローバルなレベルだけではなく、草の根レベルでも権利擁護活動を行っています。

マグサイサイ賞受賞

私たちのこれまでの活動が評価されました(写真4)。2010年、CDDと代表者ノーマン・カーン氏(写真右側の人物)がアジア版ノーベル賞であるマグサイサイ賞を受賞しました。これが示すように、バングラデシュにおける私たちの活動・取り組みは、障害のメインストリーム化を進めるように開発アクター(NGO)に関心を持たせることです。これで、様々なリハビリテーションのサービスが障害をもっている人たちの近くに届けられるようになりました。障害をもった人自身やグループ、団体が、スキルを持ち、組織づくりをし、自分たちの声をあげて問題提起をするようになりました。

(写真4)
写真4(写真4の内容)

NGOとの連携

NGOとの連携の成果として挙げられるのは、まず1つ目はNGOが活動対象グループに、障害をもつ人たちを含めるようになったということです。それから、建物は、少なくとも1階は車椅子でも入れるようになってきています。障害をもっている人たちがNGOのスタッフとして働くようにもなりました。またNGO自身が自分たちの方針として障害をもった人たちをインクルージョンすることを制度化して規約に入れているところもあります。このような団体は開発団体として教育委員会、就労委員会などの委員になっており、障害についてすでに十分鋭敏化されていることから、委員会に出席するときは基本的には障害のインクルージョンを提唱しています。

また、NGOの所に障害をもつ人たちがやって来て、自分たちの意見を述べ、それをNGO側がマニュアルに取り入れることもあります。NGOは更に地方自治体に働きかけて、「地方自治体は地域の開発計画の立案と実施に責任をもっているのだから、そこに障害を含めてください」と申し入れをしています。

国際的な団体が関心を示しています。時間の関係で個々の詳しいことはお話しできませんが、国内には少なくとも300の団体があり、その多くがインクルージョンの取り組みをしています。NGOの連合体もあります。私たちは食糧安全保障の課題に取り組む連合体の一員です。メインストリームの食糧安全保障の団体がプロジェクトを実施していますが、そこに障害のインクルージョンを図るようにと技術的な支援を提供しています。その連合体は4万の女性のグループに働きかけていますが、そのうちの5000グループは障害をもった人たちを含まなければならないとしています。例えばBRAC(ブラック)など大型NGOも関心を持つようになっていますし、地方行政についてはすでに申し上げました。またいくつかの省庁にも動きが見られます。それからワールドビジョン、カリタスなど、大きな国際NGOも関心を示しています。CBRの一環として大変すばらしいプロジェクトがあって、中央政府、地方自治体、障害者団体、NGOがこのプロジェクトを実施しようとしています。

学んだこと

最後に私たちが得た教訓(図6)をお話ししたいと思います。まず、能力構築は非常に重要です。また、メインストリーム化とは完全な組織変革を意味します。変化のペースは遅々としているので、忍耐強くなる必要があります。

(図6)
図(図6の内容)

それから、様々な機関と連携すること、利用可能な資源を活用することが重要です。組織には多くの人がいますが、その中で一番関心をもって動いてくれそう人を見つけてその人を支援し、協力し合うのはとても重要です。

最後に、重要なのは、何を行うにしても、障害をもつ人を計画に含めること、プロセスに含めること、そして彼らの声に耳を傾けることです。全体の状況について一番よい判断をし、障害のインクルージョンのプロセスについて適切なアドバイスができるのは、障害をもっている人たちです。

今お話ししたのは、組織内の画期的な変革のサイクルについて私たちが考えていることについてでしたが、実施のプロセスについては時間がないのでここで終わりにしたいと思います。これに関心がおありの方は後程お声をかけてください。それから個別に必要なものがあれば、おっしゃっていただけば、eメールを送るなどの対応をすることもできます。

3つの重要な要素

私たちは障害をもつ人たちや多様な人たちを含めた包摂的な社会、インクルーシブな社会を目指しています。そのためには今からお話しする3つの要素が不可欠です。まず1つはメインストリーム化です。これは社会の中にある様々な障壁を取り除いていくことです。2つ目はリハビリテーションです。障害をもった人たちは多様なニーズがあり、技術的な支援を必要としますが、これを提供することです。3つ目がエンパワメントです。障害をもつ人たち、あるいは家族の人たちを組織化し、その人たちの能力を向上させ、彼らが様々な意思決定に関与できるようにするためにはエンパワメントが必要です。

私たちが信じていることを最後にお話ししたいと思います。障害をもつ人たちと手を取り合うことによって、全ての人たちのためのインクルーシブな社会を作ることができると信じています(写真5)。

(写真5)
写真5(写真5の内容)

忍耐強く聞いていただいてありがとうございました。ぜひ私たちのウェブサイトに来ていただいて、詳しくご覧いただければと思います。

上野 バリさん、本当にありがとうございました。力強いメッセージを私たちは受け取ることができたと思います。それではこれで午前の部を終えたいと思います。バリさんと通訳をしてくださった林さんに大きな拍手をお願いいたします。