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報告書 英国ソーシャルファームの実地調査報告会

報告2「ウェルズを中心としたソーシャルファームの状況」

上野 容子
東京家政大学文学部 教授
社会福祉法人豊芯会 理事長

講演

スライド1
上野容子氏 スライド1(スライド1の内容)

皆さま、こんにちは。だいぶお疲れではないかと思いますが、もう少しの辛抱ですのでお付き合いください。

まず、私は自費で英国に行ったとご紹介いただきました。改めまして、日本障害者リハビリテーション協会会長の炭谷先生はじめ、寺島先生が参与でいらして、野村さんにもお声がけいただきまして、協会の関係者の皆さまのご厚意で、このたび無理についていったという感じで同行させていただけたことを、改めてお礼申し上げたいと思います。

スライド2
上野容子氏 スライド2(スライド2の内容)

ロンドンから1時間半くらい電車に乗って行くとウェルズというところがあります。そこを中心に見てきたところをお話ししたいと思います。

ウェルズはこんな所です。私は英国に行ったのは初めてです。先生方は皆さん、何回か行ってらっしゃって、炭谷先生は2~3年滞在なさっていたこともあります。私なりに勉強して行ったのですが、皆さんの知識にはなかなかついていけず、それから、東京から風邪を持っていきまして、向こうにいる間に大きなマスクをかけっぱなしで、先生方にはご心配やご迷惑をかけてしまいました。それもお詫びをしなければいけないところです。

スライド3
上野容子氏 スライド3(スライド3の内容)

これがウェルズのカーディフというところの駅です。降りたところで、駅前です。

スライド4
上野容子氏 スライド4(スライド4の内容)

スケジュールはこのようになっています。これから説明するところは、3箇所です。

スライド5
上野容子氏 スライド5(スライド5の内容)

これがトラック2000リソースハウスです。こちらは、ソーシャルファームと言っていいのかどうかと思うのですが、ただ、ソーシャルファームウェルズという関係ネットワークの中の1つに入っているので、その理念や考え方はそういうものもあるのかなと思っています。

スライド6
上野容子氏 スライド6(スライド6の内容)

トラック2000は、1991年に、テリー・ハリーさんとトニー・クロッカーさんという方が共同で立ち上げ、カーディフや近隣の地域、貧しい地域なのですけれども、貧困対策として設立したチャリティー団体として登録していると説明がありました。

3つの目的があります。

1つ目は、事業内容としては不要な家具、洗濯機や家の中にあるもの、それをリサイクルではなくて、修繕をして新品同様にして使っていただくリユースのお仕事を主にしていました。

2つ目は、低所得者が仕事につけるようにリユースとリサイクルの仕事を通して、トレーニングをして一般の企業にいく人もいれば、そこでしばらく仕事をする方もいます。日本で言えば、障害者の就労継続支援B型に近いかと思います。

3つ目は、埋め立てゴミ処理工場への廃棄物の量を減らすことを目的としており、環境を良くしていくこともサポートしているという説明がありました。

この2人が、テリー・ハリーさんとトニー・クロッカーさんです。もともとウェルズという地域は、炭鉱の町として歴史を持っています。今は衰退していて、失業した方々がなかなか仕事にありつけない状況もあります。このお二方が、ものすごいご苦労をされてトラック2000を設立しました。ブレア政権時代は非常に順調に進んできて、先ほど炭谷先生の説明にもありましたように、壁に賞状や記念品が飾ってあります。とても盛んに事業をしていた時代もありました。しかし、2012年にいろいろな助成金もなくなってしまい、今は、今後に向けて試行錯誤している状態なのかなと思いました。

スライド7
上野容子氏 スライド7(スライド7の内容)

これは作業風景です。こういうものの修理をして、使えるようにするというお仕事をしています。

スライド8
上野容子氏 スライド8(スライド8の内容)

これは洗濯機です。洗濯機が一番多かったかなと思います。

スライド9
上野容子氏 スライド9(スライド9の内容)

それから、同じトラック2000の中で、ソーシャルファームウェルズ関係者の方々が集まってくださいまして、お昼を食べながら、情報交換会をさせていただきました。

先ほども先生方からご説明がありましたが、英国のソーシャルファームの対象者は、あまりきちんとした基準、EUの基準どおりではなさそうです。でも、だいたい障害者が50%くらい働いています。

今後は障害者も含めて社会的に不利な立場の人たちに少数民族も含まれてくるのではと言っていました。現に、EUが既に対象に含めているという説明がありました。

スライド10
上野容子氏 スライド10(スライド10の内容)

ソーシャルファームウェルズの方々は、何人かいらっしゃいますが、皆さん何らかのお仕事をしていまして、規模が非常に小さいです。それから、ソーシャルファームウェルズという事務所をかまえているわけではなく、現在スタッフは6名だとおっしゃっていました。

ソーシャルファームにはいろんな助成金がないという話がありましたが、ソーシャルファームウェルズでは、金額は伺えなかったのですが、ソーシャルファームに対して少し資金的援助があるとおっしゃっていました。

ただ、政権が交代したあと、障害者の手当てなどの上限金額が定められたというお話がありましたけれども、見直しがいろいろ行われていまして、1年間雇用すれば、雇用している方にも手当がつくのだそうですが、2年目からはなくなってしまうとか、1年後の保障は何もないということです。それをペイメントバイリゾルトと言っていました。

トラック2000の方が盛んに言っていたのですが、4つの大きな企業に、障害者の方々をトレーニングするのを委託して、委託された4つの企業は全員をトレーニングできるわけではないので、その下請けのような形でさらに小さな組織に、大企業でトレーニングの対象にならない人たちを回していきます。そしてトラック2000のようなところに来るのだという説明がありました。トラック2000のトニーさんたちは、自分たちのほうが、支援が難しい人たちを受け持つとおっしゃっていました。

スライド11
上野容子氏 スライド11(スライド11の内容)

ここからは、リバーサイド・コミュニティ・マーケット、いわゆる農業をやっているソーシャルファームです。

1998年にスタートして、2004年に社会的企業として設立しております。地産地消、これは日本の農業の考え方がヨーロッパにも普及したわけですが、ローカルな食べ物をローカルな人たちに提供するということです。コミュ二ティで活動することがとても重要だということです。小さな農家で、そこで生産しているものを住民の人達に直接食べていただくことをとても大事にしているそうです。

これからお見せするものは、ホームページを開いて頂きますと出てくるものです。もっとたくさんあります。ホームページを後でご覧下さい。

スライド12
上野容子氏 スライド12(スライド12の内容)

最初は地元の公園で1998年にこのような市場を開きました。

スライド13
上野容子氏 スライド13(スライド13の内容)

リバーサイドは結構広いです、農園を借りたり、土地を持っていたりします。

スライド14
上野容子氏 スライド14(スライド14の内容)

1月に社会事業経営は株式会社として発展し、人がだんだん集まってきて、多くなってきます。

スライド15
上野容子氏 スライド15(スライド15の内容)

カーディフの近くの5エーカーの土地を借りて耕作しています。

スライド16
上野容子氏 スライド16(スライド16の内容)

毎週日曜日にはマーケットを開いています。

スライド17
上野容子氏 スライド17(スライド17の内容)

スライド18
上野容子氏 スライド18(スライド18の内容)

できたお野菜を本当に手頃な値段で、小規模生産者が直販売をしています。

スライド19
上野容子氏 スライド19(スライド19の内容)

子どもへの教育についてもおっしゃっておりました。農場や牧場で子どもさんに遊びに来てもらい、乳搾りをしたり、農作物に触れてもらったりすることを教育の一環として行っていると言っていました。

スライド20
上野容子氏 スライド20(スライド20の内容)

それから地元の学校の、給食と言っていいのか、子どもさんたちのお食事にも使わせていただいているそうです。

スライド21
上野容子氏 スライド21(スライド21の内容)

学校が地元の農家を訪問するイベント、こういうコーディネートもしているとおっしゃっていました。

スライド22
上野容子氏 スライド22(スライド22の内容)

説明してくれた方はスティーブ・ギャレットさんで、ホームページのアドレスを紹介いただきました。

スライド23
上野容子氏 スライド23(スライド23の内容)

最後に、ブリストル・トゥギャザーのお話です。これがポール・ハロッドさんで、先ほど炭谷先生がご説明された新聞記事です。どういうことをしているかというと、古い家、住んでいない家を安く買い、修繕して新しくして、その家を売ります。その利ざやで事業収益を生み出します。14%の利益を生み出します。新たな倫理的投資という表現をしています。2011年秋に創設です。ここで働いている方は主に刑務所の出所者で、そういう方の雇用を中心に進めています。建築というのはいろいろな作業工程、技術がありまして、それを習得することによって、それを生かしてまた仕事に就くというトレーニングの場所にもなっています。公的な援助は受けていないとおっしゃっておりました。ただ先ほどのように、ファイナンス、こういう事業に賛同する企業さんからお金を投資していただき、それに対して3%のお金をペイバックする、還元するということをしているそうです。それプラス、そこに利息がつくので、銀行にすごく低い率でお金を預けているよりも、社会的にも意味があるので、「ぜひご協力を」ということでお金を募っているそうです。

スライド24
上野容子氏 スライド24

チェックのシャツの方、アップの写真がなくて残念なのですが、本当にイケメンでした。というか目がキラッキラしていて、オックスフォード大を卒業なさっているのですが、本当にこの仕事に真剣に取り組んでいます。やはり人間は誰でも一生懸命何かに取り組み、真摯に向き合っている人はすてきだなと思います。本当にすてきな若者でした。

スライド25
上野容子氏 スライド25(スライド25の内容)

最後です。「Bristol」というのは大きなリカバリーカンパニーという意味合いだそうです。

「カンパニー」というのは、調べたところ、「パンをともにする仲間」という意味もあるそうです。ソーシャルファームもこれが基本的な理念かなと思います。先ほど、炭谷先生がおっしゃいましたが、障害をお持ちの方や何らかの理由で社会的に弱い立場でお仕事を失っている方が仕事を通して人間としての尊厳を回復していく、リカバリーですね。よく使われる言葉ではありますが、奥の深い言葉だと思っています。それを彼は刑余者を対象に今のところ、この事業を進めているということです。

先ほど寺島先生がおっしゃいましたが、ソーシャルファームに対する助成金はありませんが、刑余者が生活保護のような制度を活用するとか、住宅がないときに、住宅の補助を受けるとか、あと雇用に関して、障害者の方が雇用されると、雇用に対する助成金があり、ソーシャルファーム自体の助成金ではないですが、そういう助成制度がいくつか英国にはありまして、それを上手にみなさん活用していると思いました。

ソーシャルファームの日本の今後のあり方を考えていくわけですが、私としては、今、社会的事業所とか共同連とか、いろんな活動があり、制度化をかなり強く推し進めています。確かに施策が、助成制度があるといいなとは思いますが、それにあまり縛られてしまって、本来、私たちは何を目指すのかという理念が損なわれたり、進めていく事業そのものがうまく進まないような助成制度であったりしてはいけないというか、困るので、やはり自分たちが、私は現場の人間でもあるので、やはり日々、どういう人たちと何をしていくのかというところのソーシャルファームとしての理念を失わないようなやり方を進めていく、日本独自のものになることもあるかもしれません。そして時としていろいろな団体と、必要なときに連携をしていくということを考えながら、進めていけたらと思っています。

どうもありがとうございました。