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2013年ソーシャル・エンタープライズ状況調査:エグゼクティブサマリー(要旨)

本報告書は、英国におけるソーシャル・エンタープライズに関する最大の調査、2013年ソーシャル・エンタープライズ状況調査(the State of Social Enterprise Survey 2013)の結果を示すものである。この結果は、ソーシャル・エンタープライズ幹部に対する878件の電話およびインターネットによる聞き取り調査から得られた。

背景

ソーシャル・エンタープライズ部門は成長しつつある。政府による最近の推定では、英国には約7万社1)のソーシャル・エンタープライズがあり、およそ100万人が雇用されている2)。また、この部門の経済貢献は240億ポンドを超えると見られている3)。英国は、ソーシャル・エンタープライズと、これに資金提供を行う社会的投資に関して先駆者であり、世界の実践家および政策立案者の注目を集めている。ソーシャル・エンタープライズ部門の経済的および社会的貢献も、政府、企業および個人によってますます認められつつあり、ソーシャル・エンタープライズへの投資を対象とした税制上の優遇措置を大蔵省が発表したことに始まり、民間部門のサプライチェーンにおいてソーシャル・エンタープライズを調達先とすることが増加している。

調査結果要約

英国のソーシャル・エンタープライズ部門は、新規開業率が非常に高く、成長への期待も大きく、好調である。ソーシャル・エンタープライズは主流の企業よりも、女性のリーダーと、黒人、アジア人および少数民族のコミュニティ出身のリーダーから注目されている。

主流の企業と比較してソーシャル・エンタープライズでは、成長性、楽観傾向および革新性などの、事業の成功を示す一般的な指標が非常に健全である。ソーシャル・エンタープライズは中小企業よりも、前年度の売上高が増加したと報告している率が高い。

当然のことだが、ソーシャル・エンタープライズ部門が国内の経済問題の影響を受けないわけではない。調査結果は、この部門の売上高中央値が過去2年間で全体的に減少していることを示している。

成長と持続可能性を妨げている重要な障壁の一つとして、ソーシャル・エンタープライズが共通して挙げているのが、公共調達政策である。今年度の調査では、これを主要な障壁として挙げているソーシャル・エンタープライズの数が著しく増加していた。

全体として調査から読み取れる重要なことは、英国で注目に値するソーシャル・エンタープライズ部門は、その規模を拡大していく可能性が高いということである。2年前の調査では、新規開業の爆発的増加が認められた。以来、新規開業率は、さらに劇的な増加を見せている。

これは、事業と市民の義務に対する若者の考え方に関連した世代的な理由4) 、経済の衰退という原因(新規開業は従来、不況時に増加する)、さらには英国経済を支えるプレートの変化(従来の民間、公共および非営利部門の境界があいまいになってきている)によるものと考えられる。だが、この境界はあいまいにならなければならないのだ。英国が今後待ち受けている課題に立ち向かわなければならず、そのために、革新的かつ弾力的であろうとするならば。

重要な調査結果

  • ソーシャル・エンタープライズ部門における新規開業率は驚くほど高い。すべてのソーシャル・エンタープライズの3分の1近くは、設立から3年以内であり、新規開業率は従来型の中小企業の3倍にのぼる。これは、2011年の調査以来、増加傾向にある。
  • 新規開業したソーシャル・エンタープライズは、旧来のソーシャル・エンタープライズと比較して、医療に携わる可能性が3倍(15%対5%)、社会ケアに携わる可能性が2倍(16%対8%)であり、教育に携わる可能性も高い(23%対14%)。
  • ソーシャル・エンタープライズは、英国で最も貧しいコミュニティに極めて集中している。従来型の中小企業の12%に対し、すべてのソーシャル・エンタープライズの38%が、英国で最も貧しい20%のコミュニティで活動している。
  • ソーシャル・エンタープライズは、主流の企業に比べて、女性をリーダーとしている率がはるかに高い。ソーシャル・エンタープライズの38%で女性がリーダーであるのに対し、中小企業では19%、FTSE100企業では3%となっている。ソーシャル・エンタープライズの91%は、少なくとも1人の女性を首脳陣に迎えている。これに対し、主流の中小企業の49%で、取締役が全員男性となっている。
  • 中小企業の43%に対し、ソーシャル・エンタープライズの56%が、過去12カ月間で新しい製品やサービスを開発している。新製品または新サービスの開発は、しばしば事業革新の代理指標として使用される。
  • ソーシャル・エンタープライズのリーダーの15%は、黒人、アジア人および少数民族(BAME)のコミュニティの出身である。ソーシャル・エンタープライズの首脳陣の28%にBAME出身の取締役がいる。中小企業では、BAME出身の取締役がいるのは11%に過ぎないと報告されている5)
  • 2011年の調査以降、企業の楽観傾向には改善が見られ、回答者の63%が、今後2~3年の間に売上高が増加すると期待している(2年前は57%)。中小企業で売上高の増加を期待しているのは、37%に過ぎない。
  • ソーシャル・エンタープライズの11%は、輸出や海外におけるライセンス供与を行っている。新規開業したソーシャル・エンタープライズほど、既存のソーシャル・エンタープライズに比べて、輸出に携わる可能性が高い。
  • 昨年度、ソーシャル・エンタープライズの38%は売上高の増加を見たが、中小企業では29%であった6)。これは、昨年度、中小企業に比べて割合にして約3分の1多くのソーシャル・エンタープライズが、売上高を伸ばしたことを意味する。
  • 昨年度、中小企業の31%に対してソーシャル・エンタープライズの22%が、売上高の減少を経験した。
  • 2011年の調査では、おもに公共部門で活動しているソーシャル・エンタープライズの25%が、その持続性を阻む主要な障壁として調達政策を挙げ、この問題に対する断固たる行動が求められた。2013年には、この数字は34%に達している。
  • ソーシャル・エンタープライズのおもな収入源として最も一般的(32%)なのは、一般の人々との取引である。すべてのソーシャル・エンタープライズの半分近くが、現在、民間部門とも取引している。
  • 公共部門と取引しているソーシャル・エンタープライズの割合は増加しつつあり、特に、新規開業したソーシャル・エンタープライズの間でこの割合が高まっている。ソーシャル・エンタープライズの半分以上(52%)が、公共部門と何らかの取引を行っており、これは中小企業(26%)の2倍である。
  • ソーシャル・エンタープライズの48%が、過去12カ月間に、外部(補助金、融資、貸越および株式の発行などさまざまな選択肢)からの資金調達を求めていた。これは中小企業の2倍に当たる。また、39%が自社の成長と持続可能性を阻む唯一最大の障壁として、資金へのアクセスを挙げた。これは、ソーシャル・エンタープライズが経験する最も一般的な障壁であった。
  • ソーシャル・エンタープライズが求めている資金額の中央値は58,000ポンドで、これは多くの社会的投資専門の投資商品の最低額を下回っている。

1) 『ビジネス・イノベーション・職業技能省(BIS)2012年中小企業調査(BIS Small Business survey 2012)』に基づくBMG研究所(BMG Research)による『ソーシャル・エンタープライズ:市場動向(Social Enterprise: Market Trends)』(内閣府2013年5月)における「定義に非常に合致している」ソーシャル・エンタープライズに関する政府による推定。

2) BMG研究所『ソーシャル・エンタープライズ:市場動向(Social Enterprise: Market Trends)』(内閣府2013年5月)によれば973,000人。

3) 政府による粗付加価値(GVA)の推定値は、『2005年中小企業年次調査(Annual Small Business Survey 2005)』(貿易産業省:DTI)、『2006/2007年中小企業年次調査に関する見解(The Annual Survey of Small Businesses' Opinions 2006/2007)』(ビジネス・企業・規制改革省:BERR 2008年2月)、『2007/2008年中小企業年次調査(Annual Small Business Survey 2007/2008)』(BERR 2009年)および『2008年企業年次調査(Annual Business Inquiry 2008)』国家統計局(ONS 2010年)から引用。DTIおよびBERRは、現在、ビジネス・イノベーション・職業技能省(BIS)として知られる。

4) 「若者は一般の人々よりも、ソーシャル・エンタープライズを立ち上げたいと考える可能性が高く(一般の人々の20%に対し27%)、社会的大義の支持を検討する可能性が高い(一般の人々の63%に対し70%)。」ポピュラス社(Populus)とUnLtdとの共同による『王立スコットランド銀行(RBS)企業調査(RBS Enterprise Tracker)』(2013年第2四半期)。

5) BMG研究所『2012年中小企業調査:中小企業雇用主―データ表(Small Business Survey 2012: SME Employers - Data Tables)』(ビジネス・イノベーション・職業技能省2013年3月) www.gov.uk/government/publications/small-business-survey-2012-sme-employersより入手可能。

6) 同上


original:
Social Enterprise UK
Executive summary
"The People' s Business :State of Social Enterprise Survey 2013"
http://www.socialenterprise.org.uk/uploads/files/2013/07/the_peoples_business.pdf