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報告書 ドイツソーシャルファームの実地調査報告会

序文

炭谷 茂

社会福祉法人 恩賜財団済生会 理事長
公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会 会長
ソーシャルファームジャパン 理事長

ソーシャルファームづくりは、全国各地で着実に進んでいる。

ソーシャルファームは、障害者をはじめ引きこもりの若者、高齢者、刑務所出所者、ホームレスなど一般の労働市場では適当な仕事を見つけることが困難な人のため、就業の場を作るものである。仕事の種類は、農業、酪農、製造業、サービス業など幅広い。社会的に孤立し、また、社会的排除を受けている人を社会の一員とし、人間としての尊厳の向上に大きく貢献している。これは、世界の社会政策の基本理念となっているソーシャルインクルージョンの具現化に貢献している。

ソーシャルファームは、一般の民間企業と同様のビジネス手法で経営をする。従業者は、社会的なハンディキャップを有するだけに経営を軌道に乗せることは容易ではない。競争力ある商品やサービスの開発、販売先の開拓、経営資金の確保など沢山の高い壁にぶつかる。ソーシャルファームジャパンでは、ソーシャルファーム経営者、研究者、民間企業OBなどが集まり、克服方法を研究している。

ソーシャルファームは、ヨーロッパで生まれ、発展を続けている。イタリア、ドイツ、イギリス、オランダ、フィンランド、スウェーデン、ギリシャ、ポーランドなどヨーロッパ全体に設立されている。1万社を超え、今や障害者等の就労の場としては不可欠な存在になっている。

そこで日本において我々が直面している課題の解決のためには、これらの諸国の経験が大変有益であると考え、昨年7月のイギリスでの調査に続いて、今年6月にドイツのソーシャルファームを訪問、ソーシャルファームの専門家と意見交換を行った。ドイツは、世界の中でも最もソーシャルファームが成功している国であるが、その背景、理由、仕組み、国民の意識などを詳細に把握することができ、今後日本がソーシャルファームを推進するために大変参考となる情報を得ることができた。ソーシャルファームに取り組もうとしている人たちの参考になれば、幸いである。

終わりに、今回の調査に当たって助成をいただいた教職員共済生活協同組合、大阪府民共済生活協同組合に厚くお礼を申し上げたい。