音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

  

報告書 ドイツソーシャルファームの実地調査報告会

報告2「ドイツのソーシャルファーム訪問調査報告」

寺島 彰

浦和大学総合福祉学部 教授

皆さんこんにちは。平日にもかかわらずたくさんの方にいらしていただき、ありがとうございました。

私の報告は、本当に報告です。お話する内容はほぼレジメにありますので、写真を見ていただくことを中心にしたいと思います。今日は視覚障害の方も来られていますので写真を言葉で説明したりするかもしれませんがご容赦いただきたいと思います。

スライド1
寺島彰氏 スライド1(スライド1の内容)

最初にドイツのソーシャルファームの制度についてご紹介させていただきます。これはレジュメにはありません。また報告書の中に書かせていただきますので参考にしていただければと思います。

スライド2
寺島彰氏 スライド2(スライド2の内容)

炭谷先生のお話の中にも出てきましたように、ドイツのソーシャルファームの発展を非常に簡単にまとめますと、つぎのようになります。ドイツにはもともと6つの大きな福祉団体がありました。1980年代からこの福祉団体が労働市場に関わるプロジェクトに参入し始めました。その結果、1990年くらいには、社会的企業が400~500できていたと言われています。これは、ソーシャルファームではなく、社会的企業です。そういった状況を受けて、行政が社会的企業を取り込んだ政策を展開していった。炭谷先生が先ほど説明されたのはそういうことなのだろうと思います。

スライド3
寺島彰氏 スライド3(スライド3の内容)

具体的にどのような政策が行われたのかというと、2001年に社会法典が重度障害者法という法律を取り込んだ形で改正されました。重度障害者法は、障害者のリハビリテーションや障害認定について規定した法律でしたが、それにソーシャルファームの規定を追加しています。実際にはドイツでは、「ソーシャルファーム」は「社会統合企業」という名前で呼ばれていますが、そのような企業が国の主導で作られたということです。

スライド4
寺島彰氏 スライド4(スライド4の内容)

社会法典の第9編、第132条に、「統合プロジェクト」が規定されています。そこでは、統合プロジェクトは、一般市場においてプロジェクト以外の就業への参画が、障害の種類もしくは程度又はそれ以外の事情により、おそらくあらゆる助成可能性を駆使し、統合専門サービスが努力しても特に難しいような重度障害者を、一般労働市場で就業させるための法的及び経済的に独立した企業(統合企業)又は企業内もしくは第71条3項の趣旨による公的な雇用主により経営される事業所(統合事業所)もしくは部門(統合部門)である。」と定義されています。これが「統合企業」の定義です。

また、社会法典第9編第133条で、「統合プロジェクトは、重度障害者に対して就業及び労働に付随するケアを提供し、必要ならば、職業継続教育措置又はしかるべき企業外措置に参画する機会及び一般労働市場の事業所又は官公署でのその他の就業を仲介する際の支援、並びに統合プロジェクトへの就業準備を行わせるための適切な措置も提供する。」としています。

難しい条文ですが、要は個々で統合企業というのを作りなさいと。作れば公的支援を行いますよといっています。これが根拠になって、ソーシャルファーム、すなわち社会統合企業がドイツで発展していったという経過があります。

2007年の統計では、700ぐらいのソーシャルファームができています。この大きな福祉団体に対して行政が圧力をかけて作りなさいと指導した結果だと思われます。日本でいえば、大きな社会福祉法人はソーシャルファームを作りなさいという指導をしたようなイメージかもしれません。

実はドイツの福祉団体は日本の社会福祉法人よりも規模的にはずっと大きいものです。かなり量のメリットというか、数のメリットがあります。

こういう福祉団体がソーシャルファームを作るというのは、小さな企業がそういうものを作るよりもたやすかったのではないかと思います。

スライド5
寺島彰氏 スライド5(スライド5の内容)

この規定の中で重度障害者という言葉が出てきます。重度障害の定義は以前の重度障害者法と同じで、「身体的機能、知的能力又は精神状態が、6ヵ月以上にわたり、その年齢に典型的な状態とは異なる確率が高く、そのため社会生活への参画が侵害されている」となっています。ドイツの障害の定義の特徴は、障害度が定められているということです。10から100まで10刻みになっています。100が一番重いわけです。50以上だと重度障害者となります。この認定方法については、高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)の資料シリーズに紹介されています。ネットで検索できますので見ていただければと思います。日本の身体障害者福祉法の定義と似ています。そういった認定基準を用いて障害の程度を決定しているわけです。日本と同じように、市役所などに申請することで障害程度が判定されるという制度になっています。

独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター
「資料シリーズ 73の2
欧米における障害者雇用差別禁止法制度 第2分冊:ドイツ・フランス・EU編」
http://www.nivr.jeed.or.jp/research/report/shiryou/shiryou73.html

スライド6
寺島彰氏 スライド6(スライド6の内容)

ただし、この社会法典にはもう一つ定義がありまして、「障害度が30以上50未満で重度障害者と同等扱いがなければ適切な職場を得られない場合」も社会法典の重度障害者と同等扱いをするとされています。これは私の見解ですけれども、日本の身体障害者福祉法というのは、ドイツの障害度50くらいの人は身体障害者とはなっていません。ドイツの基準を用いると60程度以上が対象になっている。ドイツでは、さらに障害度を30まで下げて対象にしているので、ドイツで重度障害に相当する障害者でも日本の感覚ではかなり軽度の人たちが含まれています。

もう一つ、社会統合企業、ソーシャルファームのことですけれども、その企業は少なくとも25%は重度障害者を雇用しないといけない。ただし50%を超えてはいけない。ゲロルドさんは55%と言っていましたが、これを拡大する通知があるのかも知れませんが、社会法典では25~50%になっています。この50%について今回の調査でもけっこう問題視していました。50%を超えないということは、要は重い障害のある人をたくさん雇用できないということです。日本ではそんなことはない。いくら重くても就労している人はたくさんおられます。

スライド7
寺島彰氏 スライド7(スライド7の内容)

法律で上限は決めていないわけです。この50%を超えてはいけないというところについて、もっと人を雇いたいのだけれど雇えないというのがどうも問題だと、今回の調査では言っている人がおられました。

それから統合プロジェクト、いわゆるソーシャルファーム、社会統合企業の実施主体はどこが多いかということですけれども、公益有限会社が主体になっています。税の優遇を受けている、受けてないという二つの種類の公益有限会社があるようですが、両方合わせると68%ですので7割近くのソーシャルファーム、社会統合企業が公益有限会社であるということになります。それ以外に社団法人の特定目的事業所が30%ありますが、公的な機関も若干ながらあります。ソーシャルファームは会社ですので、基本は収益を求めています。有限会社が当然、一番多くなっているということになっています。

そういう前提を知っていただき、それぞれ訪問したソーシャルファームについてご紹介いたします。

最初はサルド ジャーナル サービス サービスです。

今、ビルが映っていますが、このビル全体ではなく、このビルの1フロアの一部がサルド ジャーナル サービスです。非常に小さなソーシャルファームです。玄関もなく部屋だけがいくつかあるという小さなソーシャルファームです。右の方にGmbHと書いてあります。これが公益有限会社のことです。フロアの一角に部屋を借りているわけです。

この企業は、会計事務所をやっていて、社長さんは自分でソーシャルファームを立ち上げた方です。会計事務所といっても公認会計士はいないそうです。従業員は8名、そのうち4名は精神障害の重度障害者であるということです。先ほど申し上げましたように、見た目、ほとんどわからない感じです。重度といってもそんなに重い感じはしませんでした。

スライド8
寺島彰氏 スライド8(スライド8の内容)

スライド9
寺島彰氏 スライド9(スライド9の内容)

スライド10
寺島彰氏 スライド10(スライド10の内容)
サルド ジャーナル サービスの事務所の前

それから、障害者を雇用することによる助成金を得ておられまして、収入の8%が助成金に頼っているということです。その結果、会社は黒字だということです。8%ぐらいの助成金だけで黒字なので、それがなくても黒字なのかもしれません。障害者を雇っている企業であるということはネガティブな印象を持たれることもあるので、それをアピールすることはない、よいサービスを提供することに心がけているとのことです。

具体的な仕事では、契約している企業の賃金や給料の計算、管理、決算報告の準備、公認会計士の方に渡す前の資料を作成したり、事業所に従業員を派遣したりということを行っているそうです。

派遣の場合、休憩時間、給与などは、派遣先の従業員と区別されないよう配慮しているとのことです。引き抜きがあったりするので、それを恐れているということですが、優秀な方を雇っているそうです。精神障害の方です。この人は社長さんです。

スライド11
寺島彰氏 スライド11
サルド ジャーナル サービスの社長

2番目、グレンツファールホテル。これは私たちが泊まったホテルなんですが、これもソーシャルファームが経営しています。部屋数は37。会議室、レストラン、ビストロ。小さなビジネスホテルという感じですけれど、レストランは洒落た内装になっていまして、テーブル数も30あり、庭にはテーブルが置かれていて、天気がよければ外で食事もできます。バーカウンターがあり、アルコールも提供されます。

スライド12
寺島彰氏 スライド12(スライド12の内容)

スライド13
寺島彰氏 スライド13
グレンツファールホテルの入口

この写真には入口が映っています。ビジネスホテルっぽい入り口です。入口には、ソーシャルファームだということは少し掲示してありますけれども、大々的にPRしているということはありません。

屋外レストランのようなものもある。これは屋内のレストラン。すごくきれいな感じでソーシャルファームだからといって貧しい感じは全然しません。会議場もあります。

スライド14
寺島彰氏 スライド14
グレンツファールホテルのレストラン

従業員37名。そのうち31名が障害者程度50%以上の重度障害者。聴覚障害者は7人でベッドメイキングを担当しています。視覚障害者、この方は弱視ですが、1人、レセプションで働いている。学習障害者がウェイトレスで働いている。リネンも内部で行っています。障害の有無にかかわらず同じ契約を結んでいる。採用の条件として職業学校を卒業していなければならない。先ほどお話がありましたように、職業教育を経ていないと採用できない場合があるそうです。

社会統合局からの補助金をもらっていて人件費の30%をまかなっている。その状態で収支はトントンである。先ほど、炭谷先生からありましたように、37の部屋で37人は多すぎるということからも、人件費の30%を賄ってもらって収支がとんとんである。収益が出れば従業員に支払うことにしているとのことです。

顧客はどういう理由でこのホテルを選ぶのかということですけれども、25%の利用客はソーシャルファームを経営するホテルだから選んでくれている。例えば、ドイツ鉄道、IBMなどの大企業が出張先として契約しているそうです。

母体になっているのは宗教団体でその関連の非営利団体が経営している。その非営利団体はもともと1880年に、増加した失業者を救済するために創設されたけれども、現在ではいろいろな福祉事業を実施しているとのことです。このホテルの建物はその非営利団体が所有している。以前は老人ホームだったものを2008年にホテルにした。マネージャーの話によると、補助金をもらっているけれども一般のホテルであって、ライバルは一般のホテルであるとのことです。チェックアウトの2日後にEメールで利用者の満足度を確かめており、5段階評価でその平均値は4.5、おすすめ度も100%評価を得ていて、よい結果を得ているとのことでした。

この職場に働いている従業員は、他の職場で働いていた時、障害のために不快な思いを経験している人が多いので、障害があっても居心地のよい職場にして、従業員のモチベーションを高めるのを大きな目的にしている。マネージャーはビジネス出身で福祉とは関係ない。非営利団体に雇われています。やはりビジネスの手法が必要だということのようです。

次はインテグラです。

これも非営利の有限会社です。表現がばらばらになっているのですが、これを書いたのが若干古くて、通訳さんが言ったのをそのまま書いている部分がありますので若干、用語の統一がされていませんけれども、非営利の有限会社は正しいのですが、公益有限会社ということです。

スライド15
寺島彰氏 スライド15(スライド15の内容)

パーティー用品のレンタル、清掃サービスを実施している。母体は社会福祉団体で、第2次世界大戦後、戦傷軍人、戦争未亡人、児童を雇用するためにこの会社は設立された。2002年からソーシャルファームになった。このマネージャーの方もおっしゃっていましたのですが、2001年に社会法典ができ、地方政府から圧力がかかったみたいですね。

レンタルサービスの顧客はケータリング会社です。食器などを貸し出して、返却されたものを洗浄して再び貸し出すという仕事です。

今写っている写真は、説明を聞いている部屋の中の写真ですが、右奥の社長さんが説明をされていて、その隣は通訳の女性です。

スライド16
寺島彰氏 スライド16

次の写真は、ケータリングのコップやお皿を高く積み上げている、まるで工場の中のような写真です。フォークリフトなどを使って食器などを積み上げているわけです。そうでないと大量に保管できないということです。

スライド17
寺島彰氏 スライド17
インテグラの倉庫①

同じ倉庫の写真です。手前の方にテーブルがあります。テーブルを貸し出すわけです。食器なんかもあります。

その次の写真も同じところです。

スライド18
寺島彰氏 スライド18
インテグラの倉庫②

スライド19
寺島彰氏 スライド19
インテグラの倉庫③

次の写真は、自動で皿洗いやコップ洗いをする機械です。こういう機械を使わないとやっていけないといことです。こういうところで聴覚障害者の方などが働いていると言っていました。この写真も同じ部屋です。

スライド20
寺島彰氏 スライド20
インテグラの作業場

ライバルは一般企業である。競争が激しい。今は食器だけでなく、テーブルやイス、家具とかAV機器も貸し出せるように事業内容を見直していると言っていました。また、それだけではなく、清掃サービスも行っている。清掃サービスの要員は、朝、直接、清掃場所に行くそうです。この事務所には来ません。企業などの事務所の清掃が多い。清掃要員が事務所の鍵を持っていて140カ所を30人でやっている。ベルリンには300社の清掃会社があるため仕事の奪い合いになっている。

現状では利益が出ていないために、ビジネスモデルを再構築中しているところである。

従業員は65名で半数が障害者である。精神障害者が多く、食器の洗浄、運転手、経理事務などを担当している。総収入における補助金の割合は10~12%で、人件費の22%に当たる。マネージャーは障害の種別程度など彼らに合った仕事を探すのが自分たちの使命であると語っていました。

次はエルコテック。

電子部品を製作している企業ですけれども、26年前に設立されました。すごく儲かっているらしくて非常に忙しいそうです。24時間態勢で生産しているそうです。なかなか会ってくれなくて、30分だけという約束で会ってくれました。車いすの社長さんです。医療機器やいろいろな部品を作っているということです。

スライド21
寺島彰氏 スライド21(スライド21の内容)

この写真は、電子部品を組み立てている部屋です。例えば左の奥の方に黒い箱のような機械がありますが、それはICチップを自動的に貼り付ける機械です。機械でできないところを人がやっているという形で、機械を止めますと収益が下がるので24時間稼働しているということらしいです。

スライド22
寺島彰氏 スライド22
電子部品を組み立てている部屋①

従業員23名のうち40%が重度障害者で精神障害者が多い。それ以外の方は、障害者ではできない作業を補助する人である。例えば、夜なんかはそういう人がやっているそうです。障害者に対する補助金をもらっているけれども収入に占める割合は1%以下である。従業員の給料は同じ仕事をしている人の平均値と同じくらい。同業者の賃金と同じぐらいだそうです。

優先してソーシャルファームに仕事をくれる時代はもう終って、製品の質が問われているとのことです。

スライド23
寺島彰氏 スライド23
電子部品を組み立てている部屋②

同社の製品は、顧客からは障害者が作ったものとはわからないほど質の高いものだそうです。

社長はご本人が車いすの障害者ですので、通常の企業が自動化により人件費を減らそうとするが、ここでは障害のある従業員が働きやすくなるように機械を導入するのだとおっしゃっていました。

次の写真は、同じように機械の置いてある部屋です。右の方に、本当は手作業でいろいろな組み立てをしている人がいましたが、写真を撮るのははばかれましたので撮っておりません。説明を受けているところの写真が写っていますが、車いすの人が社長さんです。

スライド24
寺島彰氏 スライド24
機械の置いてある部屋

次にハウス5です。

ハンブルクにあります。これまで紹介した社会統合企業はベルリンにありますが、これはハンブルクにありレストランを経営しています。プロテスタントの宗教団体が運営する公益団体。従業員数が5,500人で、病院や住宅経営をしている北ドイツ最大の団体だそうです。そこが母体となって10年前に設立されました。

スライド25
寺島彰氏 スライド25(スライド25の内容)

州によって違うということですけれども、ハンブルクは州であり市だそうですが、ハンブルグ市から障害者の職場を作るためにやってくれと言われたから社会統合企業を始めたとのことです。日本の社会福祉法人とよく似た感じがありますね。障害者の職場を作ってくれということで事業委託されたそうです。80万ユーロの助成金をもらって8人から始めて20人を採用するという契約でこの事業を始めたそうです。ケータリングと食堂を2つ経営しているけれども、2年前から清掃サービスも始めた。また、同じく2年前、市からの委託で精神障害者用の小規模福祉作業所も作った。これは社会統合企業ではありませんけれども。通常の作業所では3時間以上働かないといけないということですが、ここではそれ以下の労働時間でも働けるそうです。時給1.6ユーロを払っている。利用者は385ユーロプラス家賃を生活保護としてもらっているのだそうです。レストランは景気に左右されるので清掃サービスを始めた。

この写真は建物内の部屋です。すごく明るい、イタリアンレストランといった感じです。昼食時にはたくさんの人が並ぶほどお客が来ていましたが、ソーシャルファームかどうかというのはあまり知らないとのことでした。厨房では知的障害のある方たちも働いている。

スライド26
寺島彰氏 スライド26
ハウス5のレストラン

ソーシャルファーム全体の従業員、食堂とケータリングと清掃を合わせて、従業員は100人。そのうち80人は障害者である。障害の種別程度はさまざまである。収入の70%が売り上げで30%が市の補助金。プロジェクト全体としては黒字になっている。従業員とはもちろん労働契約をしている。

ハンブルク州は、重度障害者を雇用することをそれほど強く言っていません。また、独立採算にもこだわっていない。州から助成金が1人当たり350ユーロあって、給料として支払う額の30%を負担してくれているそうです。

写真は厨房の様子。きれいな広い厨房です。

スライド27
寺島彰氏 スライド27
レストランの厨房

外から見たハウス5の外観です。

スライド28
寺島彰氏 スライド28
レストランの外観

もう一つレストランを持っていると言っていましたが、これがそのレストランの写真です。ここはセルフサービスになっていて、近所がビジネス街で、たくさんビジネスマンが来たり、老人ホームのお年寄りなんかも来るということです。

スライド29
寺島彰氏 スライド29
レストラン

これが反対側の写真です。

スライド30
寺島彰氏 スライド30
レストラン

次がまたベルリンにあるモザイクという社会統合企業に行きました。写真には美術館のような立派な、歴史的建造物のようなものが写っています。これはベルリンのコンサートホールです。コンサートホールの下にモザイクが経営しているカフェがあります。この写真は遠景です。コンサートホールを出たところの広い石畳にはいくつかこういう建物が並んでいますけれども、その間に、外でコーヒーなどを飲めるように机が置かれています。

スライド31
寺島彰氏 スライド31(スライド31の内容)

この写真はカフェの中の様子です。壁は暗い赤。壁にはいろいろな額が飾ってあって、コンサートホール付属のカフェのような雰囲気です。右側に女の人がいるんですけれども、このカフェの経営者で、この方はもともと福祉の人ですが経営感覚に優れていたらしく、ここの経営を任されているということだそうです。食事のメニューもアダージョとかバッハとか、いちいち音楽関係の名称がついていて、なかなか感じのいいコーヒーショップでした。

スライド32
寺島彰氏 スライド32
モザイク カフェの様子

モザイクはもともと49年前に裁縫の作業所として発足した公益法人です。現在は庭仕事、クリーニング、家具作り、梱包の下請け、ろうそく作り等さまざまな仕事を行う多くの作業所を運営している。作業所があるのですが、作業所以外に農場やソーシャルファームを経営していて、ここがそのソーシャルファームが経営しているカフェの一つです。職員、利用者を含め全体で2,400人が働いている。ソーシャルファームであるモザイク・サービスは、飲食店、清掃業、室内外装飾業を行っている。従業員数は187人で60%が障害者である。精神障害者がほとんどである。清掃部門に聴覚障害者が多い。今回訪問したのはモザイク・サービスの運営するカフェと事務部門である。ベルリンのコンサートハウスと同じビル内にあります。コンサートハウスのカフェテリアらしく、コンサートに来た観客が訪れるのに違和感のない雰囲気を演出している。壁にはコンサートの写真が貼られていたり、カフェのメニューには、アダージョ、バッハなど音楽関係の名称が用いられている。料理もそれらしいものが用意されている。

スライド33
寺島彰氏 スライド33
モザイクのカフェ

モザイク・サービスは、このカフェ以外にもコンサートハウスの中のレストランや音楽家専用の飲み物のサービス、また、別の場所にある博物館のレストラン、こども広場のカフェ等も経営している。収入の10%が補助金である。どうしてこんないいロケーションをソーシャルファームが借りられたのかということでは、やはり選ばれた根拠の一つには、ソーシャルファームだということがあるんだそうです。市が選んだ理由の一つにはそれもあるとのことでした。

説明してくれたマネージャーは、この方は飲食部門のマネージャーですが、カフェ、レストラン、清掃、装飾業などいろいろな事業を行うことでその人の障害にあった仕事を探すことができる、企業経営は簡単ではないけれども、本当のインクルージョンは人間を人間と認知することであり、まちの中心地にこのようなカフェを開くことが本当のインクルージョンだと考えると述べていました。

スライド34
寺島彰氏 スライド34
モザイクの事務所

その後、モザイクの事務部門を訪問しました。訪問した事務部門では、清掃業と室内外装飾業の事務のみをやっている。領収書を発行したり、郵便物を配送したりしている。作業所がすぐそばにあって、作業所からの支援クライエントが6人いて、コーヒーを入れたり、コピーをしたり、コピーの紙の補填したりしているとのことで作業所との交流が深いそうです。

ソーシャルファームは、非営利の有限会社なのでサービスには消費税が7%かかります。通常は19%なので、消費税を必要経費にできない個人の客には魅力があるとのことです。それだったらみんなこの企業に来ませんかと聞いたら、そうでもないと言っていました。消費税には19%と7%があり、この分野に限らずいろんな分野でそういう優遇が行われているとのことで、消費税が安いからといってこういう企業に注文が集中することはないそうです。非営利だから自動的に7%になるというわけではないそうです。会社の目的は社会貢献であり、得た利益を目的に明記された事業に再投資する、バリアフリーにするなどを証明しなければならないんだそうです。

写真は事務部門の中の廊下です。非常に広いですね。車いすの人たちも移動できるように。同じ事務室が写っています。すごくきれいな建物です。

まとめです。

ドイツのソーシャルファームは、社会統合企業と呼ばれています。イギリスのソーシャルファームとは違い、政府からの補助金を活用していることや、母体に大きな福祉団体があることが多いというところに特徴があります。しかし障害者など労働市場において雇用されることにおいて不利がある人を雇用することを目的としている点や、企業として経営を重視している点は共通している。ドイツの特色としてこういうことがあると考えております。

以上で終わらせていただきます。

スライド35
寺島彰氏 スライド35(スライド35の内容)