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日本型ソーシャルファームの推進に向けて

報告1「フィンランドのソーシャルファームの現状と課題」

ユッカ・リンドバーグ バテス財団 開発部長

皆さん、おはようございます。私はフィンランドからきましたユッカ・リンドバーグと申します。私はバテス財団を代表して今日、ここに来させていただきました。

私たちはソーシャルファームというよりは、障害のある人たちに対して均等な機会を促進するために、どのようにそれを実現するかという専門家集団です。今回この場に来られたことを非常にうれしく思います。また、今日ここでプレゼンをするのは、本当に炭谷さんのすばらしいプレゼンの後だとちょっとプレッシャーを感じます。

それでは、フィンランドで、過去12、13年間で行われたことについてお話させていただきたいと思います。そしてまた今現在どうなっているのか。そして、どのような成功事例があったか、そしてどういったことを学んだか。あまりいい学びはなかったかもしれませんけれども、そういったことにつきましても皆様と共有できればと思います。

まず、とても重要な使命についてお話したいと思います。その次には法的枠組み、実際にはあまりうまく機能してはいないのですけれども、それについてお話するとともに、モデルの発展、また、その後はグッドプラクティス、優良実践について、うまくいったものやそうでなかったものについてもご紹介したいと思います。もちろん課題と可能性もありますので、そうしたお話もしたいと思います。どのように私たちが今後進んでいこうと思っているのかについてです。

それではまずソーシャルファームのミッション、使命についてです。

これは、炭谷さんがおっしゃったことに本当に多く賛同するのですが、社会的雇用ということについて、やはり幅広く持つべきだというふうに思っております。法律を作成するにあたって、障害のある人たちについてということでしたけれども、それだけではなくて例えば1年以上の長期失業者に向けても雇用の機会を提供すること、労働市場において、こういう弱い立場にいる人たちをターゲットとして、同じように機会を提供するということは大事です。けれどもこのように多様なグループになりますと、やはり異なるグループの問題を1つのソリューションで解決しようとするのは大変なことになります。

また、法律が実際に恒久的な雇用を促進するためにどれだけ整備されているのかということについて、またどのようなモデルを民間企業に対して提供することができるのか、そしてソーシャルファームから一般労働市場への移行をどのように促進するのかということについて、明確ではありませんでした。

その移行を促進する1つの成功した事例としてはジョブコーチがあります。焦点はどちらかというとそちらの方向になっています。つまり、企業が障害者に対して恒久的な仕事や困難な仕事を提供していたのですが、その後発展せず、政府の後押しもありませんでした。一方、ソーシャルファームは、障害者を一般労働市場へどのように移行させるか、雇用した人たちを一般労働市場へ移行させ、代わりに他の失業者や障害者に仕事を提供するというソリューションを見出すために、ずいぶん力を入れてきました。

今お話したことの繰り返しとなりますが、こちらがターゲットグループとなります。まずは長期失業者です。そして障害のある人。また、長期にわたる疾患のある人となりますけれども、その場合は医師による診断が必要となります。

次に法的枠組みですが、2004年からあまり大きく変わっておりません。2003年に草案が作られ、2004年に施行されました。こちら他の国と比べますと、フィンランドにおけるソーシャルファームというのは少し違っていて、会社でなければなりません。ということは、数が限られています。つまり、財団もしくは協会という形をとっていて、法的な立場を変えない、または形式も変えず、会社を設立しないのであれば、この法的枠組みの外にいる、ということになるのです。と言うことは、ソーシャルファームになるには、有限会社か法人でなければならないのです。ですので、もし財団法人で同じようなサービスや仕事を提供しているとしても、企業として登録していなければ、ソーシャルファームとして登録できないということになります。そうしたことからソーシャルファームの数が増えないということがあります。また、従業員の30%以上がターゲットグループの人でなければならず、これはヨーロッパでは一般的ですけれども、実際にはもっと高いと見られています。中には60%いるところもあるかと思います。

また、通常の所定の労働時間の中での勤労ということになります。ですので、雇用者と被雇用者の間の一般的な労働条件と大幅に変わるようなことがあってはなりません。雇用経済省が記録をとっていまして、そこが登録簿の管理をしていますので、申請が承認されれば、ソーシャルファーム登録簿に登録をすることによって、ソーシャルファームとして認められることになります。そうしましたら例えばホームページなどに、ソーシャルファームのロゴ、この蝶のマークですが、をつけてちゃんと名乗ることができます。

ソーシャルファームになりましたら、2種類の補助金を受けることができます。

1つは雇用政策補助金です。これは、事業を開始するときに受けられるものです。これは2004年から2008年、フィンランドにおけるソーシャルファームが、本当にそのとき0から240まで増えたほどとても大きな影響力のあるものでした。残念ながら、法律自体は変わってないのですけれども、ジョブセンターにおきまして、資金不足から、実際には最近では補助金を受け取ることが非常に難しくなってきているということがあります。

もう1つさらに重要な補助金は、賃金補助金です。こちらは、ソーシャルファームだけに適用されるものではありません。その資格のあるすべての会社に対して支払われます。この賃金補助金をもらうためにはソーシャルファームである必要はありません。賃金補助金というのは全体の給料の50%まで提供されることがあります。これは従業員に対する給料だけではなくて他のコストに対しても適用されたりもします。ですので、中にはソーシャルファームの障害者たちに対してですと、全体のコストの75%が払われるということもあります。実際にはソーシャルファームの方が一般の企業よりもこの賃金補助金の恩恵を受けており、また障害のある人が雇用された場合、ソーシャルファームは3年間賃金補助金を受け取ることができ、その後繰り返し受け取ることについても制限がありません。

これはとてもすばらしいコンセプトだと私は思っているのですが、財源が不足してきているということから、縮小傾向にあります。つまり法律とコンセプトは別物ということになるわけです。これら補助金はすべて雇用経済開発局を通るものですが、国内に15ありますジョブセンターへの補助金は、大幅に削減されました。また、そうしたセンターのリソース自体も減ってきています。実はつい数週間前に知ったのですが、現在、フィンランドには37万人の失業者がいるのですが、ジョブセンターには2,800人しかいません。つまり、ジョブセンターを利用したいと思っている会社と失業者の間をこの人数で対応しているのです。スウェーデンでも失業者の数は同じようなものですが、多分、ジョブセンターには1万4,000人がいると見られていますので、我々はなぜこのようにジョブセンターにいる人の数が5倍も違うのか、ということについて考えています。スウェーデンとしましても私たちがやったようになんとか全体の失業者の数を減らそうとしているとは思いますけれども、枠組みにいいものが多少あったとしても、やはり問題はお金であるということになります。

さて、それではこのコンセプトの発展ですが、まず2003年に草案がまとめられ、2004年に施行されました。その後、随分と時間が、13年もたちました。その当時の目標は、障害のある方や長期疾患のある方、さらには長期失業者に雇用を提供しようというものでした。そして一般労働市場への移行を支援しようというものでした。サポートとしては非常によかったと思います。また、スタート段階ではヨーロッパのソーシャルファンド=社会的な基金といったものからの資金援助もありました。

2008年、2009年までには250~60くらいのソーシャルファームができました。この8年から10年を振り返りますと、徐々にですが随分と状況が変わってきました。例えばベネフィットの支給など、いろいろな支援金を提供されるのを待つというよりも、もう少しソーシャルファームを自分たちで自立して回していこうというビジネス的なアプローチになっています。

また、先ほどお話ししましたように、財団や協会がソーシャルファームとして登録できないため、現在公的に登録されているソーシャルファームの数は、残念ながら随分減っています。ただし一方で、こういった組織のニーズが減っているかというとそうではない。ですから今でもソーシャルファーム、あるいはそれと同様のものというのは数としてはある。けれども正式な登録数としては減ってしまっている、また登録自体が面倒に感じられている、という状況があります。

やはりそういう意味では私たちの仕事はまだまだ山積しています。ソーシャルファームとして登録できないグループもありますが、今では受けられる恩恵もさほど魅力的でなくなってきましたので、登録しなくてもソーシャルファームのコンセプトを発展させる方法を考える必要があると思っています。これまでとは違う資金調達の方法や、ビジネスを開発する方法なども今、検討はしています。もはや国の法律に頼るのでなく、何かないかと模索をしているところです。

では、グッドプラクティスというか、サクセスストーリーをご紹介したいと思います。

この数週間で実はいろいろと変化がありました。2~3週間前に今回のプレゼンの準備をし始めました。ですが、それから今までの間に実はフィンランドの政治環境も変わってきているので、本当にこの数週間はいろいろな話し合いがなされています。私自身も当局の方たち、それから関係者の方たちの会合に呼ばれていろいろ議論を行っているところなんですけれども、とりあえず今までのところでグッドプラクティスとして紹介できるものがここに書いてあります。

例えば、アクセシブルな職場環境、通常は自宅になるわけですけれども、障害のある方の特別なスキルを活用しようという試みがあります。それから、一般労働市場への移行に対する報奨金を出すというケースもあれば、一般労働市場における親会社の1つへの就労移行を支援するジョブコーチングといったものも行われています。それから、特に若い人向けですが、学歴がほとんどない、あるいはまったくない人の能力水準に応じた、あるいは雇用可能性と意欲の向上のために、部分的能力に基づく試験を利用しているところもあります。その人のレベルに合わせた雇用試験を行うことによって、その人により適した職場を提供できるという考えです。

1つの例をご紹介しましょう。アンナンプラという会社、フィンランド視覚障害者連盟が経営するソーシャルファームです。ここで働いている人のほとんどは視覚障害者です。多くの人たちは家で仕事をしています。視覚障害者連盟はヘルシンキにすばらしい本社というかオフィスを持っているのですけれども、連盟の目的に応じて作られた建物である上に、その他の障害を持った人たちが集まるのにもとてもいい場所で、おそらく私が訪ねた建物の中でもっともアクセシブルなすばらしい建物だと思います。いろいろなアクセシビリティのサポートをしていますので、さまざまな団体が会合を開くのに最適な場所です。ここを本社として、実際に視覚障害者は在宅で勤務をする。ウェブサイトのアクセシビリティの検証や、研究データの文字起こしのサービスを行っています。アンナンプラは、いろいろな作業に必要な材料や援助を行います。そして視覚障害者が普通に雇用されて自宅で働けるようにするという形をとっています。

もう1つの例はこちらです。もう8年やっている試みなんですけれども、あまり細かいところに入るのは避けたいのですが、実は社会福祉保健省と社会雇用省というのがあり、障害者あるいは失業者のサポートに関して、どの省が何を担当しているのか、時としてごっちゃになるところもあるのです。基本的には、失業保険などに関しては社会福祉保険省が、賃金の助成金やジョブトライアルに関しては社会雇用省が担当します。ジョブバンクに関しての試みについてですが、これは、賃金のもらえる仕事で、人々はソーシャルファームであるジョブバンクに登録し、契約を交わして労働時間や賃金を確保するというものです。ジョブバンクは一般労働市場での仕事を探し出し、そちらに人を送り出すことによってさらに人を雇います。どういうわけか、この試みを実践したのは社会福祉保健省でした。が、今ではこうした試みはほかの省にも広がっています。

ある意味こういったジョブバンクがもっとあればと思っています。以前は20社以上がこのジョブバンクに参加していましたが、中には参加をやめた、または機能していなくてやめさせられたという会社もあります。今では14のジョブバンクがありますが、これ以上増やさないようにしています。

これらの会社は、今現在、約1万人を雇用しています。その3分の1、つまり3,500人くらいはターゲットグループから雇用された人です。

これはまさにソーシャルファームとして機能しているということでして、念頭に入れていただきたいのは、私たちの国フィンランドは、面積は日本とほぼ同じですが、東京の半分くらいの人口しかいません。少ないですから、例えば1万人という数字をさっき言いましたけれども、これがどれだけの規模なのかというのは、相当なものだとご理解いただければと思います。フィンランドの1万人というのは、日本で言ったら25万人に相当するような数だとお考えください。

このコンセプトですけれども、ソーシャルファームとしての登録は必要ありませんが、ソーシャルファームとしての基準をすべてクリアしていなければなりません。

例えばスタッフの30%以上はターゲットグループから採用してくださいとか、公的補助金に関しては制限がありますし、適切なビジネスプランを設定しておかなければいけない。そして、事業においてはちゃんとビジネスプランがあって、利益があって、十分な売上高がなければいけない。また、通常の市場から得られる売上高を確保しなければいけないという基準もあります。

さらに、ジョブバンクであるためには、自分たちの独自の生産を行わなければいけません。商品でもサービスでもよいのです。どこかの会社に委託するというケースもあるでしょうけれども、いずれにしても、例えばカフェテリアサービスや、物を製造するなど、何でもいいのですけれども、いずれにしても自分たちの製品、あるいは自分たちのサービスというのがなければいけません。

さらに、人材派遣のサービスを有していなければなりません。そして短期雇用とジョブコーチのサポートを結び付けて、長期雇用を求めている人のために、その機会を作り上げる。例えば2、3週間誰かを一般労働市場の会社に派遣する。ジョブコーチングを行って教育、トレーニングをしているので、2、3週間だったらOK、という企業に派遣してみる。そしてうまく仕事をしましたということであれば、きちんとその人に賃金を払い、さらにもっと長期の雇用にたえられるということであれば、その契約をまた延ばすということもできる、というものです。

こうして、ジョブバンクは繰り返し人材を求める企業にとってのルートになりました。最初に2~3週間、誰かを雇い、可能であればそのまま同じ人を雇ったり、別の人を提供してもらったり。もし空いているポジションがあれば、外に求人募集を行うのではなく、直接ジョブバンクにお薦めの人材がいるか、聞くようになりました。クライアント企業とパートナーシップを組んで何年もやっているところもあります。これはとてもよいことで、ジョブバンクに参加する人は障害者に限らず失業者ですが、精神疾患をかかえた人もいれば、刑余者、薬物乱用者もいます。それらすべての人たちを受け入れ、インタビューを実施し、ジョブコーチがそれぞれ理解することによって、その人が一般労働市場で働ける、とコーチが確信したタイミングで派遣され、万が一うまくいかなかった場合は、その人を再度受け入れ、他の人を派遣するということをやっています。

もともと政府はこの動きを援助していました。コーチングや仕事探しのプロセスもサポートしていました。軌道に乗るようになってからは、支援のための資金が徐々に減らされてしまいましたが、一方では一般労働市場で仕事が見つかった人への報奨金は増えました。

これはポイント制に基づいています。例えば仕事を失った人がいる、この人が1年以上失業をしている、特にバックグラウンドに問題はないというケースの場合、例えば賃金の補助をもらって仕事を得たとしても、この人の場合には低いポイントしか与えられません。一方、政府からの賃金援助をもらわずに仕事を見つけた障害者の場合には、その3、4倍のポイントが与えられる。つまり、一般労働市場で雇用される機会が少なければ少ないほど、その人をサポートするための補助金が受けられる、ということです。状況によってもちろん違いますが、今までの補助金としての最高額は、2.5から3千ユーロです。

一般労働市場でどのように仕事を見つけるかということについてのもう1つの例です。今度はポシヴィレ社を見てみたいと思います。去年、日本からの皆さんが訪問した会社になります。こちらはヘルシンキ市、ヘルシンキウーシマ病院地区や不動産管理会社のカーペリタロ社が経営するソーシャルファームです。

全体の考え方としては、ヘルシンキウーシマ病院地区というのは、とても大きな場所でして、この病院における雇用というのはとても大きなものがあります。一般労働市場で障害のある人たちが働けるような仕事を探し、身体障害や薬物中毒症の人たちなどと、その人に合った仕事をマッチングするわけです。この人が、これとこれとこれができるのであればこの仕事という形でテーラリングをします。

例えばこのソーシャルファームのオフィスですが、近くにはヘルシンキ市の歯医者さんがあります。ヘルシンキ大学が経営しているところです。私も2回ほど訪問しましたけれども、そこには知的障害のある人たちが2名フルタイムで働いています。そこで器具のメンテナンスをしています。どういうことかと言いますと、既に使われた器具を集めて、洗ってきれいになったものをまた配っていくという作業をしています。彼らは時間通りに効率よく仕事をしていまして、迷子になることもありません。建物自体は非常に大きくて、私自身も2か月経ってもきっと建物の中で迷ったりすると思いますが、そこで働いている人たちは1回も迷うことなく、ちゃんと時間どおりに正確に回収して、そして配っていきます。そのようにすばらしいマッチングをして仕事を提供しているわけです。ここでもまた、ジョブコーチングがカギとなっています。

現在、ポシヴィレ社では50人以上を雇用しています。その人が長期的に働くことができるだろうというふうになりましたら、ポシヴィレ社が雇用するのではなくて、実際に仕事をしている会社で雇用契約を結んでもらうということをしています。

そして今までの実績は、なかなかよいものとなっています。例えば病欠する人は全国平均をはるかに下回り、従業員のわずか2%でしかありません。全従業員と比べてもわずか2%の人しか病欠しません。仕事に対しても満足していますし、継続率も高い。つまり、多くの人たちが仕事を休みませんし、与えられた仕事をしっかりこなしているわけです。また、就労することによって従業員の自尊心がさらに向上し、中にはさらに他の仕事を求めるために勉強を始める人もいます。

こちらはポシヴィレ社のコーチング手法です。

例えばサポートする人、フィンランドではジョブコーチと呼んでいますけれども、このような構造がありましたら、長期間にわたる関係を築けるということが大事なわけです。つまり、サポートを受ける人とジョブコーチの間の関係です。そうすることによって、ポシヴィレ社のケースで言いますと、とても困難な状況にある人であっても、ジョブコーチからの実際のサポートは比較的最小限になっています。どういうことかと言いますと、ジョブコーチがその人の障害や背景を理解していて、その人がコーチを信頼していれば、何か必要なとき、すぐに駆けつけて支援をしてくれる、ということを、支援を必要とする人が知っているということが大事なのです。この、きちんとサポートしてくれる、という認識、特に精神障害のある人たちにとっては、ただ、サポートが存在することを認識しているだけで、実際はサポートが必要ではない、とわかることが大事なようです。中には、ジョブコーチが何度も変わった、というケースもあります。数年前、私たちの組織でも、ある大学卒業を1年後に控えた、若い車いすに乗った方がいたのですが、ジョブコーチが彼に恒久的な仕事を探そうとしていた時に、実はそのジョブコーチが彼にとっての10人目のジョブコーチであることがわかりました。その人は26歳だったんですけれども、既に9人のジョブコーチを経験していました。これは正しいやり方ではないと思います。ポシヴィレ社が成功しているのは、もっと恒久的な長期間な関係性を築くという点にあると思います。ポシヴィレ社では、当事者がポシヴィレ社を去ってからもサポートしているのです。

そしてもう1つのソーシャルファームですけれども、フィンランドのソーシャルファームは通常、国や市町村が運営しています。けれども次にご紹介するラウマン・タイトクント社は、比較的最近のソーシャルファームですが、民間人が経営し、社長を務めるソーシャルファームです。ジョブバンク事業のコンセプトにも着手していますけれども、公式なトライアルには、企業数を制限してしまったので、参加していません。彼らも一般労働市場の仕事を求め、大きなネットワークを常に築きつつ、さまざまな背景を持った人たちが働ける場を探しています。また、さまざまな異なる背景を持つ人たちに対応するためのスキルを持ち合わせていない部分に関しては、サポートを提供してくれる組織のネットワークを作って補っています。

例えば第三セクター機関に、ラウマン・カトゥラヘティスというところがありますけれども、元はキリスト教に基づく団体でしたが、今では精神問題を抱えている人、薬物中毒、アルコール中毒、あるいは刑余者など、そういったさまざまな立場の弱い人たちに主に対応しています。ここが、人生の道から外れてしまった人たちをサポートするために、部分的能力に基づく試験というコンセプトを開発しました。こういった立場の弱い人たちが、持っている知識や受けた教育をつなぎ合わせ、さらに大きく成長し、いずれは何かの資格を取得することができるにすることを目的としています。

ここでどういったことをしているかというと、まずトレーニングやトライアルを行い、その人が前進する可能性があることがわかりましたら、その人に合った仕事を探して、賃金補助金を申請し、恒久的な仕事に就けるようにします。こちらは今、非常に急速に成長しています。私個人もこれに協力していて、こちらをもっと全国的なレベルに発展させていきたい、コンセプトを広げていきたいと考えています。

次に、課題と前進への道です。日本で行われていることに関して何かアドバイスができるかどうかわかりませんが。どちらかというと私も学んでいる状況です。

長期的な雇用を提供することに関して、あまり注意が払われてきませんでしたが、前に述べました通り、私たちは、政府が作った枠組みではなくて、何か新しいものがないかと模索しているところです。

私は8月半ばにこのプレゼンテーションを作ったころから本日までの間に、3つの異なるグループのミーティングに参加してきました。いずれもヘルシンキで、さまざまなソーシャルファームに資金援助をすることを考えている団体です。

どのグループも、メインのターゲットグループとして、精神障害者をあてています。1つのグループはスウェーデン語を話す人たちのグループです。後の2つはフィンランド語を話す人たちのグループです。

政府は一般労働市場への移行ということにより焦点を当てています。けれどもフィンランドにおいて課題となっているのは、一般労働市場だけではなく、あらゆる労働サービスに対する資金援助です。来年、フィンランドにおいての賃金援助の予算は1億ユーロ未満です。同じくらいの人口のデンマークでは約500万ユーロで、1.7倍の人口を有するスウェーデンにおきましては15億ユーロです。ということは、もはや限られた予算に頼るわけにはいかないということです。他の方法を見出さないといけない状況に来ているのです。

今、ヘルシンキにおきましては少なくとも3つのイニシアティブがあります。今、4つ目も出ようとしています。ソーシャルエンタープライズの動きとして、ソーシャルエンタープライズのほかにWISE(Work Integration Social Enterprise:雇用統合型ソーシャルエンタープライズ)と呼ばれるものがあり、ソーシャルエンタープライズやソーシャルファームとともに何とかうまく融合させながらマーケットにおいて私たちの立場を推進していきたいと思っています。

そしてフィンランドにおきましてソーシャルファームの動きで欠けているのは、全体の連合がないというところがあります。つまりソーシャルエンタープライズとか、そうした中で何かうまく連携をとるということをしていませんので、うまくお互い学びあいながら協力体制を作るということが1つの大きなカギだと思っています。

また、企業の動きも最近成長してきました。今まではフィンランドではこれがなかなかできないものでしたが。何十年にもわたって企業は経済の骨組みを作ってきました。私自身は社会的な雇用については2010年まであまり入っていない分野でしたのでよくわからないのですが、社会的な企業というのがどんどん今、立ち上げられてきています。

また、障害者の起業という新しいイニシアティブについても支援が進められています。これもまた、同じ傘下にありますが、私たちは、さまざまなターゲットの中の異なる人たちにそれぞれの対応をしていかなければなりません。

いくつかのコメントを申し上げたいと思います。炭谷さんのプレゼンテーションのテキストを読みましての感想になります。炭谷さんのプレゼンテーションは本当にまとまっていたと思います。構造的にそして組織的にとても重要な点を述べていらっしゃったと思います。私は今朝、打ち合わせのときにも話していたのですけれども、私たちは法的なシステム、例えば税制免除や割当制度とか、日本では割当制度があり、我々にはありませんが、登録制などの制度的なものがある一方、社会保障の制度もあり、これら社会保障が年金のスキームとどのようにつながっていくかということも考えていったりもしています。そして、3つ目の側面として、ビジネスの観点から何か保護的な状況というのもあるかと思います。いくつかのソーシャルファームを日本に来て訪問いたしましたけれども、政府から多くの補助を受けていないと聞いていました。大きな儲けを作らなくても、自分たちで独立採算できるものであればいいわけです。ソーシャルファームとしましては自分たちがどのように生きていけるか、生存していけるかということを考えることが大事だと思います。

また、財政ということについても考えていかなければいけませんが、ソーシャルファームは、まず会社なわけです。ですので、まずビジネスあってのことになります。ビジネスのアイディアがあって、競争できるような状況でなければいけません。特別な配慮が必要なので、保護も必要ですが、自分たちが今後発展させていこうと思っているビジネスがなければいけません。政府やクラウドファンディングなど、いろいろな財政援助の財源があるかと思いますが、フィンランドにおきましてもクラウドファンディングでお金を集めるところが増えてきています。全体のスタッフの60%が知的障害のある人たちという団体がありましたけれども、そこがクラウドファンディングで資金を集めました。そういうケースもありますし、あとはイギリスにおいて投資を呼び込むというものもありました。そのようにさまざまな資金調達の方法があると思います。いくつかヨーロッパの事例、失敗事例なども見た上でいろいろ学んでいただければと思います。

皆さま、ご清聴ありがとうございました。