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報告書 イタリアソーシャルファーム実態調査報告会

講演要旨

イタリア・トリエステ調査を踏まえた日本型ソーシャルファームのあり方の考察

Ⅰ イタリア・トリエステ調査に至るまで

1 日英高齢者・障害者ケア開発協力機構の活動から

2000年1月、訪英、貴族院議員レーミング卿等からヨーロッパでソーシャルインクルージョンの理念を知る。

そこで、ソーシャルインクルージョンの理念の追求を始める。

イギリスのCANとの出会い(平成14年)

2 2003年11月 M.ハワード女史(英国社会政策アナリスト)

ソーシャルファームの存在を知る。

以降 イギリス、ドイツ、イタリア、フィンランド等から専門家を招いてソーシャルファームの研究

3 日本障害者リハビリテーション協会としてイギリス、ドイツ、フィンランドを訪問し、調査

4 平成20年、ソーシャルファームジャパンを設立し、日本でのソーシャルファームの設置を推進して今日に至る。

各地でソーシャルファームの設立が進み、成果を出す。

平成26年北海道新得町、27年大津市、28年つくば市、29年横浜市でソーシャルファームジャパンサミットを開催

5 昨年4月、超党派のソーシャルファーム推進議員連盟発足

会長に小池百合子衆議院議員

現在は田村憲久前厚労大臣

事務局長 木村やよい衆議院議員

ソーシャルファーム推進基本法の制定を目指す。

6 昨年9月、小池百合子都知事都議会での所信表明演説で東京都としてソーシャルファームの推進を明言

7 イタリア・トリエステ調査の目的

・今後の日本におけるソーシャルファームの制度設計と発展に役立たせるため、ソーシャルファームの発祥地であるイタリア・トリエステの現状を調査する。

「ソーシャルファームの原点」の確認

・一つのソーシャルファーム(ラコリーナ社会的協同組合)に特定して調査

経営者、従事者の考えや思いを直接綿密に把握することに重点

説明者は、大半が当事者で、所属している仕事について限定して説明、聴取したので、イタリアのソーシャルファーム全体の調査には限界

精神障害者対象のソーシャルファームが中心

不十分の部分は、日本で利用できる既存文献等で補完

すでに沢山の日本の研究者等による優れた研究がなされている。

制度の改変、地域の独自の制度があるため、正確な最新のファクトの把握は、困難だった。今後インターネット等による情報の取得が必要

Ⅱ トリエステのソーシャルファームの概要

1 トリエステの特徴

・イタリア北東部の人口20万人の基礎自治体(コムーネ)

フリウリ=ジェネツィア・ジュリア州

トリエステ県

・アドリア海に接する港湾都市、軍港、スロベニアと接する。

・第1次大戦終了までオーストリア・ハンガリー帝国の統治下

1920年にイタリアに併合

→オーストリア、イタリア、スロベニア等多様な文化が混じる。

自由性、多様性、先進性を促進する。

→トリエステの精神保健改革、ソーシャルファームに影響

地方自治体の自主性を重視するイタリアの政治制度によりトリエステの独自性

2 ソーシャルファームの哲学・理念

(1)1972年 F.バザーリア 精神疾患の入院患者の仕事づくりのためCLU(フランコバザーリア労働協同組合)を設立

精神疾患患者は無賃労働ではなく一人の労働者として働くため

しかし、登記が保留に

精神疾患患者は、労働者となりえないとして裁判で設立が認められる。

1971年 サンジョバンニのトリエステ県立精神病院の院長に着任

トリエステ県知事は、共産党

1908年 同病院はオーストリア・ハンガリー帝国によってヨーロッパ一の立派な精神病院を建設する目的で建設

当時のオーストリアは、世界をリードする精神医学の水準

芸術的な建築物(様式、彫刻、壁面の色彩等)

入所者に圧迫を与えないような構造(低層等)

病状別単位の居住棟

教会、ホール等の設置

植樹等豊かな自然環境の整備

20万㎡

→ 現在はサンジョバンニ公園として市民に開放・大勢の市民が利用

建物は、社会的協同組合、トリエステ大学、トリエステ市役所事務所等に活用

トリエステのイタリア併合(1920年)に伴いイタリアの行政機関に移管

劣悪な療養環境に

患者の尊厳性、人間性、市民権の否定

隔離施設

(2)国際的潮流

・1963年2月 ケネディ大統領 議会で「精神疾患および知的障害に関する特別教書」(ケネディ教書)

精神病院の医療環境の深刻な問題

地域精神保健システムの改革

地域精神保健センターの建設

・1960年代の欧米での反精神医学の動き

従来の精神医学の強制性,拘禁性への異議

バザーリアのほか、イギリスのR.D.レイン、D.クーパー、アメリカのT.サズ

・障害者、マイノリティの世界的な人権確立運動

ノーマライゼーション

公民権法制定運動

各地での学生運動の激化

さらにソーシャルインクルージョンへ発展

・ヨーロッパの研究者、医師、学生等がバザーリアに集結

バザーリアの行動力、カリスマ性

(3)1971年 バザーリア、病院の改革に着手

1,200人の入院患者

患者の退院の促進

グループホーム、アパートの整備

地域精神保健センターの設置

1972年、協同組合を精神疾患患者の「一人の労働者」として就労する場として設置

イタリアにはすでに協同組合が普及していた。

(4)1978年 180号法(バザーリア法)の成立

・トリエステの実践が全国に拡大

・キリスト教民主党とイタリア共産党との協力で

1970年代の政治的経済的危機の中で両政党の歴史的妥協が成立

1976年第3次アンドレオッティ政権発足

1978年第4次アンドレオッティ政権

社会経済政策の改革の推進

・精神病院の新設の禁止、新入院・再入院の禁止

地域精神保健サービスセンターが予防、治療、リハビリを実施

一般総合病院に15床を上限に精神科ベットを設置

患者の自主的意思を基本

治療の強制には別個の医師の判断。7日間限度。延長の必要な場合は同様な手続き

1977年 サンジョバンニ病院の廃止

解散時130名の入院患者

(5)現在の状況

設立時の理念・哲学の継承

CLUは、4つの社会的協同組合(ラコリーナなど)に分化・発展

今回の当事者である説明者は、バザーリアの精神・理念を強く信奉していると感じる。

一般企業は、現在も精神障害者雇用に不熱心

(6)社会的協同組合は、イタリア全体に普及

1991年 社会的協同組合法の成立

精神障害者以外の障害者、受刑者等も対象に

理念・哲学は、拡大変化しているとみるべき

これらの者を社会の一員に(ソーシャルインクルージョン)

(7)日本への示唆

病院や施設に入院・入居する精神障害者、知的障害者等について地域への生活に移行する手段としてソーシャルファームは、CLUと同様に大きな機能が期待できる。

日本ではソーシャルインクルージョンの理念が大きな意義を有する。

3 協同組合の法人形式を採用

(1)イタリアにおける協同組合の発展

勝田由美「宗教的慈善から世俗的博愛へ」(近代ヨーロッパの探求15 福祉)等を参考

・中世以来教会、名望家、職業団体等による援助と相互扶助システムが発展

近代以降も公的援助とともに福祉の担い手に

1890年公的慈恵団体法(クリスピ法)

公的枠組みに組み入れる。

協同組合の設立を促す。

19世紀半ばイギリスを発祥とする協同組合運動

労働者の経済的・精神的向上や社会教育のため

金融活動

教育活動

共同購入・販売

職業紹介

親睦・娯楽サークル

生産活動 等

協同組合数 5千(1905年)

・公的制度が整備された現在でも民間組織や半民間組織が重要な担い手(イタリアの福祉構造の特色)

1913年 全国保険機構設立(老齢年金、障害年金の運営)

一方で民間・半民間団体の役割も大きい。

カトリック教会

労働組合

ボランティア組織

社会的協同組合

(2)このような歴史的な基盤の上でバザーリアは、精神疾患患者のために協同組合の仕組みを活用した。

イタリア憲法45条 協同組合を規定

現在、膨大な設置数

2005年 7,363組合 労働者 223,000人 ボランティア31,000人

(3)1991年「社会的協同組合法」成立

バザーリアの活動がどの程度この法律の制定に大きな影響

A型 社会的援助の必要な人への援助

社会・医療サービス 教育サービス

組合員 従事組合員

利用組合員

ボランティア組合員

B型 社会的に不利な人たちの労働統合

多様な事業を営む。

社会的に不利な立場の人が労働者の30%以上

組合員 従事組合員(健常者、不利な立場の人)

経営参画の保証

就労意欲、経営責任

ボランティア組合員(最大 50%)

「障害保険と雇用保険が保証されている」と述べる日本語文献があるが、勤務中の事故、病気については給付される。

2001年 1,827組合数 労働者36,986人(うち障害者等18,692人)

2005年 2,419組合数 労働者54,330人(うち障害者等30,141人)

2010年 2,491組合数 労働者73,600人(うち障害者等31,400人)

C型 小規模な社会的協同組合の連合体

入札等に参加するため

2006年から

(4)現在多数の社会的協同組合の設立と活動

・イタリアの経済・社会構造で一定の位置

社会的に不利な立場の人のソーシャルインクルージョンに貢献

2006年法改正により協同組合以外の法人がソーシャルファームを設立できるようになった。

・イタリアの社会的協同組合の特色

小規模

設置数が多い。

事業内容は多種多様

・フランス(2001年法制化)等に影響を与える。

(5)日本への示唆

・日本で現在活発な活動をしている協同労働組合(ワーカーズコープ)と類似

・協同組合での法人格でのソーシャルファームも期待できる。

当事者の参加意識、責任感の醸成

出資による資金確保

4 B型社会的協同組合の制度と実態

(1)「社会的に不利な立場の人」を労働社会に取り込むため(法の目的に規定)

就業面のソーシャルインクルージョンを目的とする。

身体障害者、精神障害者、感覚器障害者

精神疾患施設退院者

精神疾患治療中の者

受刑者 出所後6か月以内の者

アルコール依存症、薬物依存症の者

家庭的事情による労働する未成年

一定の手続きで追加できる。

DV被害者も対象になっているという説明があったが、この規定の適用か?

日本語文献では、移民も対象に

要件の該当の適否は、公的な証明書類による。

(2)事業内容

レストラン、カフェ、給食受託

ホテル

造園業

地域清掃業、ビル清掃業

建設業

農業

リサイクル(皮革製品、古本、携帯電話やパソコンの分解)

木工、家具

放送局、演劇、映画

職業紹介

情報処理

など

時代の変化に応じて事業が変化

→変化しなければ敗退

かって理髪業を行っていた。

生産技術の向上

デザイン

仕事の進め方

当事者の特性を踏まえ作業単位を工夫(庭師組合)

人事・労務管理

給料の支給日の順守

勤務時間

使い込み等の犯罪行為は発生

企業の支援

資金

本業の技術で

住民参加

(3)給料等

健常者、当事者とも労働の内容に応じて一般労働市場と同様の給料

一般労働市場では「労働協約」によって決定される。

全国レベルの経営側と労働組合の代表間で締結

3年ごとに改定

社会的協同組合にも同様な労働協約(CCNL)が制定されている。

平均年収は、一般企業と遜色がない。

一般労働市場の給料水準は、組織間の協約によって決定

したがって今回調査した当事者は、いずれも給料の額に満足し、仕事にもやりがいを持っていた。

(4)公的支援

「公益性」、「非営利性」に着目

本来協同組合は、「共益性」であるが。

社会保険料の事業主負担分の免除

法人税の減免

地方自治体による優先購入・発注(随意契約)

以前はあったが、94年EU指令により1996年に廃止

公募での一般企業との競争

収入が年度ごとに変動

20万ユーロ未満の契約は、継続している。

福田レポートではローマ市では植物の手入れの5%分の仕事は社会 的協同組合に発注、入札に当たって不利な立場の人の割合に応じてポイントを加算と紹介

障害者の労働参入を支援する労働奨励金

一般企業にも適用

社会的協同組合は職業訓練で工夫

州、県から運営費の財政援助は、著しく減少傾向

現在は全体の収入に占める割合は極めて低くなっている。

→民間企業と競争

政治家の力に依存することの是非

ラコリーナは、2001~2003 市長との良好な関係で急成長

2003年 市長交代

経営危機

職員50人が5人に

(5)行政監査

州が実施(2014年まで県)

6か月おき

要件の形式的該当性をチェック

(6)経営実態

ラコリーナ

140人うち56人? 社会的立場の不利な者

2016年 総収入300万ユーロ?(3億9千万円)
利益 5万ユーロ? (650万円)
累積繰越額 120万ユーロ?(1億5千万円)

レストラン(バール)やホテルは、一時経営難に

一流ホテルのソムリエがレストランの責任者に着任して再建

(7)設立数

1991年以来設立が進む

理由

・協同組合の伝統

・公的福祉サービスの後退

・活発な市民活動

・バザーリア改革の推進

(8)日本への示唆

・根拠法の制定の必要

ソーシャルファームの設立を促進

・対象者

法人格の認定、公的支援のためには一定の基準が必要

・公的支援

税制上の援助は効果的

・経営

卓抜な経営力が必要

ラコリーナの理事長

公依存でなくニーズの変化に応じた経営が必須

収支のバランスを取ることは十分できる。

5 社会的協同組合を支援する中間組織

(1)協同組合のための連合組織

約200

社会的協同組合間の情報交換

加入組合のための仕事の獲得

市場調査 など

(2)社会的協同組合のための連合組織

経営の支援

Ⅲ これからの「日本型ソーシャルファーム」の方向

今回のトリエステの調査を始めこれまでの調査・経験を踏まえて

1 ソーシャルファームの必要性

今日の状況から一層強くなっている。

単に障害者等に仕事を作ることだけから超えて

日本の社会政策、経済政策等に大きな影響

イタリアはバザーリア改革(精神病院の全廃)にはソーシャルファームが必須条件だった。

ソーシャルファームは、「日本の国家のあり方」を変える。

ソーシャルファーム制度は、国によって差異があるので、日本の条件にあった制度を構築すべき

(1)経済・社会分野におけるソーシャルファームの意義

① ソーシャルインクルージョンの実現

イ)増大する社会的弱者

日本社会の激変により現代の社会で「生きづらさ」を感じる。

適切な解決策が講じられない。

・障害者

精神障害、発達障害等障害の範囲の拡大

すべての国が対象

範囲が国によって差異

イタリアでは薬物依存症、アルコール依存症を特記

・難病患者、慢性病患者

高齢者

引きこもりの若者

長期間のニート

これらは他国では対象にしていない場合が大半であるが、日本では必要性が強い。

・刑務所出所者

再犯率の増大

イタリア、フィンランド、フランスなど対象になっている。必要性が強い。

・長期失業者

ドイツ、フィンランド等では対象になっているが、日本では必要性が薄い。

・ホームレス

野宿生活者は減少しているが、高齢化、長期化等により必要性が強い。

野宿しないホームレスにも留意

・その他

DVの被害者など

イタリアでは移民を対象

ロ)社会的排除・孤立が進行

家族・親族、地域社会等の相互援助の脆弱化

貧困層の増大・長期化

情報化社会の到来による人間関係の疎遠が進行

ハ)就労条件の悪化

グローバル化による企業間の競争の激化

効率化の要求

非正規雇用の増大

企業に余裕がない。

要求される技術・技能が高度化、変化

即戦力を要求

社内教育の弱体

このため一般企業の就労に適合できない者の増大

ニ)一般市場では就労の機会を得ることが困難な社会的弱者が増大

→ 社会的排除・孤立が一層進む。

ホ)このためソーシャルファームを設立し、イに掲げた人に就労の機会を与え、「ソーシャルインクルージョン」を実現させる。

イタリア社会的協同組合の目的として明記

先進事例では成果を上げている。

社会的排除・孤立対策には、教育とともに最も効果のある手段

このため一般の労働者とともに働くことが必要

多様性のある当事者がともに働くことも効果的

イタリアの場合

日本の社会福祉事業では自治体が認めていないところが多い。

単に障害者等の就労の場を作ることとは異なる。

「一人の労働者」として働く(バザーリナ改革の神髄)

→ 一人の市民としての地位

ボランティアも参加

一般企業との比較

② 日本における経済・社会構造における機能

イ)企業と競争できる存在

企業と同様な経営

利潤を目的とする企業への牽制

従業員、消費者、住民の利益を重視

イタリアでは「社会経済」(ソーシャルエコノミー)としての位置づけ

現在の食品販売分野の購買生協と同様な力量になることは可能

ロ)富の創造

経済への貢献

一般雇用の創設

イタリアではソーシャルファームで通常の労働者の雇用の意義が大

韓国では「生産型福祉」の概念

すでに1,700社以上の社会的企業の設立

ハ)地域の振興

衰退する地域においても容易に設立できる。

地域資源の活用、労働力

公的・地域の支援

イタリアでもこの成果が出ている。

③ 社会サービスの多元化

公的サービスの限界と硬直化

官僚的運営、財源の制約

企業による福祉の制約

イタリアは公的とソーシャルファームの2元体制

次の時代の国家像の核に

(2)社会サービスとしてのソーシャルファームの機能

リハビリ機能、生活・職業訓練機能を持つ。

フィンランド、ドイツでは強調

対象者の大半に必要

就労に従事しつつ可能

2 ソーシャルファームの対象者

① 上記イ)に掲げる者

できるだけ広く対象にすべきだが、

支援策との関連

要件の定め方、認定の方法 

イタリアは他国に比べてかなり広い。

形式上対象にしない社会的弱者を積極的に通常の労働者として雇用することも必要

地方の実情によって個別に認める方法も

ドイツ、イタリアで採用

② 対象者の割合

イタリア等ヨーロッパの例から見て下限は、30%が妥当

上限は設けない。

③ 要件の該当性の判断

既存の制度を可能な限り活用する。

例えば障害者手帳の所持者

3 事業主体

① 既存の法人格による

社会福祉法人、NPO,公益法人、一般法人、営利法人等

個人は除外

② ソーシャルファームの認定

助成措置を設けるために必要

都道府県が妥当か?

イタリア、ドイツ、フィンランドは認定制度がある。

イギリスにはない。

これとは別に民間の組織が独自に会員制度を設け、公的な認定は受けずに活動している団体も含め、ソーシャルファームの活性化を図ることも必要

4 ソーシャルファームの経営

① 一般企業と同様な経営手法により利潤を挙げつつ成長することが必要

経営には好不調があった。

イタリアでは経営危機になり、他のソーシャルファームが支援

② 事業内容

需要の増大する分野

ほとんどの産業分野に及ぶ。

従事者の適性に合致する事業

市場競争の中で成立すること

随意契約、優先的購入制度は、ソーシャルファームの成長とともに縮小傾向

EUの指令

質と価格が基本

充分な職業訓練

情報処理業

独自性

演劇

放送

デザイン

古家の修繕販売

レストラン

ホテル

労働集約的

有機農法

園芸

ビル清掃

ニッチな分野

競争が少ない分野

市中の清掃事業

リサイクル(皮革、衣類、本、自転車)

③ 人事管理

適正な労働時間、給料等一般の企業と同様に

5 労働条件

基本的に一般の労働法規が適用

労働契約、給料、労働時間等

イタリアで当事者の給料は、一般の労働者と遜色ない。

労働にも満足

6 公的支援

ソーシャルファームは、自立的な経営を目指すが、ソーシャルファームの状況、必要性から見て一定の公的支援が望ましい。

特に設立時

障害者雇用に係る企業等に適用される一般的な助成制度は、ソーシャルファームにも当然に適用

しかし、民間企業と同様な「自立的な経営」「ビジネスマインド」が中核になければならない。

(1)税制

法人税

イタリアは、減額

消費税

ドイツ ソーシャルファームの事業は減額

(2)社会保険料

イタリアは、当事者にかかる事業主負担を免除

(3)人件費補助

ドイツ、フィンランドは一部補助

他の主体(民間企業等)に対しても障害者雇用に係る人件費補助がなされ、これを適用

(4)運営費補助等

ドイツ 設立に当たってのコンサル費用等

イタリア 運営費の補助はあるが、近年減少

(5)研修、経営指導、情報提供等

イギリスの中心的な支援策

7 今後「日本型ソーシャルファーム」を発展させるために必要なこと

(1)日本型ソーシャルファームの概念の確立

(2)法的、財政措置の整備

ソーシャルファーム推進基本法の早急な制定

(3)ソーシャルファームの普及拡大

商品・サービスの開発

販路の拡大

経営力の向上

広報

(4)ソーシャルファーム従事者の研修

(5)ソーシャルファームを支援するソーシャルファイナンスの検討 等


(主要参考文献)

この分野の文献は、優れた文献が膨大にあるが、報告者が参考にしたもののみに限定した。

1 イタリア全般

伊藤武「イタリア現代史」中公新書 2016年

2 イタリアの福祉

勝田由美ほか「近代ヨーロッパの探求15福祉」ミネルヴァ書房 2012年

3 イタリアの精神保健改革

大熊一夫「精神病院を捨てたイタリア 捨てない日本」岩波書店 2009年

公益社団法人沖縄県精神保健福祉連合会「イタリアの地域精神保健に学ぶ」2016年

日本精神保健福祉士養成校協会「精神保健学」中央法規 2009年

「現代精神医学事典」弘文堂 2011年

4 イタリアの社会的協同組合

生活クラブ運動グループ福祉協議会「イタリア社会協同組合B型をたずねて」同時代社 2006年

森田洋司「イタリアの社会的経済制度としての社会的協同組合」平成15年度~17年度科学研究費補助金研究成果補助金 2006年

田中夏子「イタリアの非営利セクターの動向と課題」「所報協同の発見2010年5月号 掲載」

福田詩織「中間的就労のあり方を考える~イタリア・イギリスの事例を参考に~」みずほ情報総研レポート vol 9 2015年

わっぱの会「旅するわっぱ イタリア社会的協同組合を探ねて」(VTR)

日本障害者協議会「やれば、できるさ!」(DVD 2015年)