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報告書 イタリアソーシャルファーム実態調査報告会

講演要旨

1 はじめに

トリエステでは、かつては、県立精神病院があったが、フランコ・バザーリアによって精神病院解体への改革が行われ、患者による初めての労働協同組合が誕生した土地、そして現在も社会的に不利な立場にある人々を支える社会的協同組合の活動拠点となっているサンジョバンニ公園に通い、主として社会的協同組合について調査をした。ここでは、今回の訪問先とトリエステにおいてここ数年社会的協同組合としては最大となった団体「ラコリーナ」を中心に社会的協同組合の活動内容に焦点をあてて報告する。

2 サンジョバンニ公園内の見学

1908年のオーストリア・ハンガリー帝国時代に、当時のサンジョバンニ地区周辺の丘陵斜面にヨーロッパで一番美しい「精神障害者のための精神病院」が建てられた。敷地は、24万平方メートルに及んだ。1970年代には、精神病院が閉鎖、現在は、サンジョバンニ公園として社会協同組合の活動拠点、教会、シアター、カフェ、レストラン、地域サービスセンター、トリエステ大学の学部、市役所の事務所、ラジオ放送局、カルチャーセンター協会、育成コースセンター、ヨーロッパ最大のバラ園、共同菜園、サマースクールセンターなどがある。

3 社会的協同組合:ラコリーナ/La Collina

  • 「社会的に不利な立場にある人を、労働を通してケアし、再び社会の一員として仲間入りができるようにする」というミッションを持つ
  • 「ビジョンは、最初から変わらないが、社会の変化に伴い、事業内容においては、臨機応変に変わらざるを得なかった。」という。

4 企業活動:フラゴラ/Il Postro delle Fragole(野いちごレストランとカフェ)とイベント企画(フェステバルなど)

「野いちご」という名前の由来は、1957年のイングマール・ベルイマンの映画「野いちご」からきている。

5 企業活動:ラジオフラゴラ(野いちごラジオ放送局)

1984年からサンジョバンニ公園のなかのパビリオンMからラジオ放送が始まる。

放送の内容は、市民や各協会、社会芸術運動、ボランティア活動、特に「精神保健をテーマにイベントなどにあてられるという。多言語放送なども行っている。そしてスティグマと闘うこと、インクルージョン、社会参加が基本目標となっている。

6 企業活動:ホテルトリトーネ

1987年、ペンショントリトーネは、協同組合「野いちご」により、引き継がれ、1992年には、ホテルトリトーネに生まれ変わった。2015年からは、ラコリーナがその経営を引き継ぐことになったが、同11月、今後の組合員の雇用を確実なものにするために購入した。総組合員数が10人で、そのうち4人が障害者である。また5人は無期限の雇用である。

7 社会的協同組合:リスター(Lister Sartoria Sociale)

ここは、リサイクル繊維を使用して作品を製作する工房である。最初は、ラコリーナのプロジェクトとして始まったが、2009年に社会的協同組合となった。尚、ラコリーナのネットワークには入っている。

8 社会的協同組合:アグリコーラモンテサンパンタレオーネ(庭師協同組合)

この社会協同組合が設立した当時は、12人の組合員が働いており、そのうちのほとんどが障害者であった。サンジョバンニ公園内の広大なバラ園の手入れを業務としている。

9 社会貢献協会:カイロス/KAIROS a.p.s

トリエステ市のバルコラ地区の精神保健センターの利用者の声を聞くために2016年に誕生した。若者を対象とした協会で、エンパワメントできるプロジェクトを必要とする人に提供し、彼らが社会的協同組合や一般の民間企業での仕事を見つける手助けをしている。

10 おわりに