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報告書 イタリアソーシャルファーム実態調査報告会

関連資料

ホテルトリトーネ概要

1987年、協同組合野いちごは、民宿トリトーネの経営を引き継いだ。同組合はそれまでに他の分野の市場に参入すべく実験的な企業活動を行っていた。例えば、皮や布以外にも代替素材を使用したバッグや洋服のプレタポルテを製造販売するショップ兼工房の「カルタ・ダ・ズッケロ」(落ち着いた青系の色の意)iや、トリエステの歴史地区にある、伝統料理のレストラン、「レ・バルベッティーネ」(髭おじさんの意)iiの経営である。民宿トリトーネは、もとはオーナーである老齢のルスティアさん夫婦が経営しており、我々野いちごの組合員はホテル経営に関するすべてを彼らから学んだ。彼らの長年にわたるホテル業に対する情熱と、お客様に対して育まれたおもてなしの心は、匠の技と同じように深いものであり、我々が企業活動モデルとして学ぶ姿勢も、師匠から技と伝統を受け継ぐ弟子と何ら変わらなかった。民宿トリトーネを1年間試験的に経営したのちの1988年、建築物保存規定により、民宿トリトーネは大規模修繕の必要性があることが判明した。1992年、4年の歳月を経て工事が完了し、民宿トリトーネはホテルトリトーネに生まれ変わり、オープニングパーティは盛大に行われた。

2015年2月、協同組合ラコリーナは、経営難に陥った野いちごより、ホテルトリトーネのホテル部門とカフェレストラン部門を買収した。iiiこのようにして、ラコリーナはトリエステのミラマーレ大通りに位置するホテルトリトーネの経営を引き継ぐことになったのである。同年11月には、先買権を利用し、ホテルトリトーネに隣接するユニクレジット銀行が所有し、売りに出していた不動産を購入、ホテル事業を確固たるものにすることによって、すでにそこで働いていた組合員や従業員の仕事を維持する意思を示した。

ホテルトリトーネは、全16室、2食付で海の見える広々したテラスを有しており、交通の便が良いなど2000年初頭までは、立地的にも規模的にも地元客がトリエステ観光の際に滞在するのにふさわしいホテルとしての位置づけを保っていた。しかしその後、それまでの顧客層を維持することが困難となり始め、一方で新しい顧客を開拓することもままならない状態に陥った。その理由としては、飛躍的に増加した同業者の出現で競争が激化したことや、ホテルそのものや家具の老朽化で、新築ホテルには到底太刀打ちできなくなったことが挙げられる。状況は厳しくなる一方であり、時代の変化にともない、新しい品質基準に則ったホテルの近代化・改築の計画を実行しない限り、新しい戦略を練ることさえできないというのが現状である。

ホテルトリトーネは季節により、かなり経営が左右される。秋・冬の時期は主にトリエステで行われるセミナーなどへの参加が目的の専門職の宿泊客に、春・夏の美しい季節は休暇のために訪れる人に利用されているが、現在、特に冬期に損失を被っており、その分を夏期に取り戻すには部屋数が限られているため、非常に難しい状況にある。宿泊客を取り込むには、閑散期に公的機関や企業の会議等を開催してもらうよう働きかけを行い、夏期はホテルの広告宣伝を増やしつつ、サービスとホテル内の環境向上に力を注ぐ必要がある。

ホテルトリトーネのビジネスは、以下の3つの主要な点を分析した。

  • 宿泊客の獲得戦略
  • サービス(チェックインからチェックアウトまで)
  • 固定客の維持

その結果、それぞれの点につき、改善が図られた。

宿泊客の獲得戦略

全体的な目的を達成するために、以下の3つの具体的な目標が定められた。

  1. ホテルの存在を実質的にも、バーチャルでもさらに目につきやすくする
  2. 新規の宿泊客を獲得するために新しい独自のツールを見出す
  3. 価値あるサービスで競争力を高める

そのためにさらに5つの主題を特定した。

  • メディアを活用して知度を上げる(広告、宣伝、インターネットなど)
  • 物理的に目につきやすくする(外観、内装)
  • サービス(チェックインからチェックアウトまで)
  • 固定客の維持
  • 競争力のある戦略

ホテルトリトーネの利点

立地

ホテルトリトーネの最大の利点はその立地にある。ホテルはリゾート地であるバルコラの近くの海岸通り沿いに位置し、トリエステ市街へのアクセスも良く、緑に囲まれた心地の良い環境にある。また、カルスト高原にも、ベニスや隣国スロベニアにも、トリエステ市の中心に行くのと同じくらい簡単にたどり着くことができる。夏の間、宿泊客はミラマーレ城へと続く遊歩道沿いにある海水浴場で泳ぐことができ、バルコラは昔からトリエステ市民にとって心のよりどころであり、朝から晩まで散歩を楽しむ人でにぎわっている。先に述べたように、残念ながら看板が小さいからか、位置が引きすぎて見えにくいからか、または位置を示す矢印がないからか、目立たず、改善の余地がある。ホテル内には、宿泊客だけが利用できる落ち着いたカフェレストランもある。

ホテルトリトーネの課題

ホテルトリトーネの最も大きな問題は、トリップアドバイザーやBooking.comのようなホテル予約サイトのコメントにも記載されるように、ホテルの老朽化や内装、家具が古びている点である。この観点から、ホテルトリトーネは新しく建てられた他のホテルとは競合できない。地理的な観点から見ると、隣国スロベニアからの観光客は、トリエステの中心地に滞在することを好むため、ホテルトリトーネには泊まらない傾向がある。これらの分析結果に基づき今後の改善戦略をホテルのプロジェクトに反映する。

ホテルトリトーネ 職員の内訳

労働組合員合計 10名(うち4名が法律381号法による障害者認定を受けた者)
無期限雇用 5名
有期雇用 5名

職務別職員数

責任者 1名
フロント係 5名
清掃スタッフ 2名
補助スタッフ 2名

i 現在は閉鎖。

ii 現在は閉鎖。

iii 野いちごとラコリーナは精神科医バザーリアの思想の下で同時期に生まれた協同組合である。