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コミュニケーションに障害がある人を支援するJIS規格制定

(財)日本障害者リハビリテーション協会

項目 内容
備考 Webマガジン ディスアビリティー・ワールド 2005年7月号掲載

経済産業省は、2005年4月20日、「コミュニケーション支援用絵記号デザイン原則(JIS T0103)」規格を制定した。言葉(文字と話し言葉)による人とのコミュニケーションが困難な高齢者、障害者、そして教育に携わる人、支援者、一般の人々に役立ててもらうのがねらいだ。

養護学校の教育現場や地域では、知的障害者の方々にわかりやすいように工夫した絵記号を作り、コミュニケーションの支援や教育に利用してきたが、学校や地域ごとにデザインが違うのは不便だという声があり、統一された記号を作りたいという願いがあった。10年余りにわたる研究により視覚的な絵(シンボル)が知的障害者(児)の教育に効果があることは確認されていたが、デザインを作るには専門的な知識が必要であり、実現に至らなかった。

デザインの画像:台風

このような背景から、国の委託事業としてコミュニケーション支援用絵記号のJIS規格を作成するため2000年から3年間、経済産業省で原案作りが始まった。その後2003年6月から最終的な作成に向けて財団法人日本規格協会にコミュニケーション支援用絵記号JIS原案作成委員会が設置された。委員会はデザイン、教育、政府、工学、産業など様々な専門分野のメンバーで構成され、2ヶ月に1度のペースで話し合いが行われた。日本には全くない規格だったためカナダ、オーストラリア、スウェーデンを訪れ、デザインのみならず、障害者の権利や絵記号がどのように利用されているかなどを学んだ。中でも誰でも自由に使うことができるスウェーデンのシステムを参考にし、日本に適応できる形を模索していった。今回の規格の付属書に収められている約300種類の絵記号集はあくまでも参考情報とし、作図方法そのものを規格とした。

デザインの画像:あげる

絵記号の作成するために、まず“生活重要度”調査の結果にもとづき、JISに収録する絵記号の項目を選定した。デザインについては非常に活発な議論が交わされた。デザイン案はいくつかの養護学校で生徒に理解されるかどうか検証された。それでもコンセンサスを得るのは難しく、比較的多くの人にわかりやすいデザインが採用された。名称(家族、顔、交差点など)、感情(好き、つまらない、悲しいなど)、動作(顔を洗う、走る、捨てる)などひとつひとつの項目の表現方法について、細かく吟味された。伝えたい絵記号の意味を知的障害者(児)が正しく理解するために、特に顔の表情は注意力をそらすデザインにならないよう配慮された。

デザインの画像:鍵をあける(閉める)

この規格の次なるステップについて経済産業省環境生活標準化推進室の 佐藤昌浩氏は次のように話す。「生活に必要なコミュニケーションの絵記号は300項目では不十分なので、今後はさらに絵記号を増やしていくことが必要。また、規格の普及啓発のためのネットワーク作りをしていく必要があり、メディアのような間接的な方法だけではなく、使ってもらえる場所に直接的に働きかけていくことが重要であると考えています。今回制定されたJIS規格を国際的にアピールし、ISOとして採用されるよう働きかけていく予定です。」

コミュニケーション支援用絵記号デザイン原則は(財)共用品推進機構のウェブサイトからダウンロードすることができる。同機構によるとこの規格が制定されて以来、流通、教育、自治体、障害のあるお子さんをもつご家族などから絵記号に関して問い合わせがあるという。行政、教育、福祉関係者、民間企業などが連携して普及のために取り組んでいくことが今後は必要になりそうだ。

コミュニケーション支援用絵記号デザイン原則(JIS T0103)は以下URLからダウンロードできます。

(財)共用品推進機構
http://kyoyohin.org/JIS.html
お問い合わせ
jimukyoku@kyoyohin.org

参考文献

JIS T0103 コミュニケーション支援用絵記号デザイン原則 財団法人日本規格協会 2005