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知的障害者の雇用創出 -さをり織り企業組合―

(財)日本障害者リハビリテーション協会

項目 内容
備考 Webマガジン ディスアビリティー・ワールド 2001年8月号掲載

さをり織りとは

 「さをり織り」という手織りの手法がある。
1968年に大阪で城みさをによって創始されたもので、簡素な木製織機に張った数百本の縦糸に横糸を丁寧に織り込むことによって、さをりの布ができる。その布は、ポーチやペンケース、マフラー、衣服等に仕上げられる。その制作方法の単純さと、多様な色彩や造形力から産み出される美しさによって、日本では、現在5万人を超えるさをり愛好者がいる。海外にも広まりつつある。

企業組合のメリット

 このさをり織りを使って、知的障害者の雇用創出の動きがある。
知的障害者を組合員とする企業組合の設立である。
企業組合というのは、1949年に制定された中小企業等協同組合法に定められた組合制度の一つである。4人以上の個人または事業者で結成することができ、組合自体が企業体となって活動するのが特色である。多額な資本が必要な株式会社や有限会社とは違って、出資金に制限がなく、設立が容易であるし、社会的信用も得やすい。労災も適用されるし、中小企業向けの補助金や融資を活用できるなど利点が多い。
従来、知的障害者の雇用の場であった福祉作業所や授産所では、一ヶ月働いても一万円にも満たないような低賃金しか得られない。仕事の内容も、タオル詰め、箱折りなどの単純労働であり、それは知的障害者の知的能力には見合ったものなのかも知れないが、必ずしも知的障害者の自己実現を支援するものではないだろう。軽度の障害で一般企業に就労が可能な場合であっても、人間関係等の悩みで、長続きしない場合が多いという。

さをり織り企業組合の設立とその取り組み

 そうした袋小路で選ばれたのが、このさをり織り企業組合である。
この組合は2000年4月に大阪で設立され、組合員は知的障害者が5人、その母親が5人、さをり織りの普及に努めるNPO「さをりひろば」代表の城英二氏の11人である。城氏がその設立活動の中心となった。仕事は、5人の知的障害者がさをりの布を織り、それを母親たちが財布やコースター、ランチョンマットなど、商品化するための仕上げをするという役割分担でこなしている。

知的障害者も納税者に

 設立趣意書には「この組合は知的障害を持つ人々の素晴らしい感力を生かし、それに資金力のある人や営業力のある人、企画力のある人が加わって経営の安定化を図ってゆく」とある。
社会的自立や心理的自立は要請されても、経済的自立はあまり求められなかった知的障害者に、企業組合はそのきっかけを与えた。昨年度の事業実績は、仕上げが追いつかなかったため、売上予定額の1000万円には達せず赤字に終わった。
しかしながら、イベントの記念品の受注や、展示会の販売等で、知的障害者の組合員たちは、2001年4月、見事納税者となった。現在も大阪、愛知など3つの県で、これと同様の企業組合を設立する動きが進行中である。

さをりワークショップの風景。

*さをりひろば:


さらに詳しい情報はこちらへ:
さをりのホームページhttp://www.saori.co.jp/
さをりひろばへのメールhiroba@saori.co.jp