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知的障害者、痴呆性高齢者、精神障害者等に対する権利擁護サービス

大阪府健康福祉部地域保健福祉室地域福祉課

項目 内容
備考 Webマガジン ディスアビリティー・ワールド 2004年7月号掲載

はじめに

厚生労働省は、平成11年10月に「地域福祉権利擁護事業」を制度化しました。この制度は、知的障害者、痴呆性高齢者、精神障害者等の権利擁護を図ることを目的としています。

大阪府は独自の取組みとして、平成9年10月、すでにこの制度の原型となる「大阪後見支援センター」を開設し、相談事業や経済生活支援サービス事業等による支援を始めていました。

大阪後見支援センターの設立

大阪後見支援センター所長の大國美智子氏によれば、かなり以前から現場で相談業務に関わるケースワーカーや保健師などの間で、痴呆のある高齢者や知的あるいは精神障害を持つ方々の財産や権利をいかに守るかということが問題となっていたということです。昭和50年代に、寝たきりの高齢者を保健師さんたちと一緒に訪問すると、痴呆にまつわるさまざまな問題に直面され、特に財産に関する問題は深刻であったということです。

例えば、「よく面倒を見てくれるから」と娘にどんどんお金を渡していた。ところが痴呆が出たとたんに行方をくらませてしまい、世話をする人もお金もない高齢者が一人取り残されてしまう。一方で、知的あるいは精神障害をもつ人の親御さんは「親亡き後」を思うと夜も眠れない。責任を放棄する人、責任を感じて苦しむ人。立場は違っても「親子」「財産」という問題は共通項です。年々、切実な声が多く上がってくるようになり、大阪府では全国に先駆けて1997年度より大阪後見支援センター「あいあいねっと」が開設されました。

「大阪後見支援センター」では、府内の各市町村社会福祉協議会と連携し、地域福祉権利擁護事業の展開に取り組むとともに、センターにおいても、ケースワーカーや弁護士が、知的障害者、痴呆性高齢者、精神障害者等の方々からの、さまざまな権利侵害や、生活上の不安、困りごとに関する相談に対応しています。

事業の具体的内容

《相談事業》 

知的障害、痴呆性高齢、精神障害などのために判断能力が不十分な方を対象に権利擁護の相談をしています。相談事業は、2段階で、まず電話による相談。週5日、午前10時~午後4時の時間帯で行なっています。次の段階が専門相談となります。電話相談のうち、必要なものについて、弁護士、社会福祉士が面接により相談を行います。予約制で週2回実施しています。平成15年度専門相談の件数は95件でした。

《地域福祉権利擁護事業》

知的障害、痴呆、精神障害など(施設入所者や入院患者等についても本事業の援助対象となる)で判断能力が不十分な方で、自分ひとりで契約など判断をするのが不安な方やお金の管理に困っているときなどの支援を行ないます。具体的には、3つのサービスがあります。

  1. 福祉サービスの利用援助サービス(介護保険などの福祉サービスで、なにが利用できるかわからない。福祉サービスを利用したくても、手続きが複雑でひとりでは難しい。)
  2. 日常的金銭管理サ-ビス(自分で銀行や郵便局にいって、生活費を引き出すのが難しい。生活費が計画的に使えないので、だれかに管理をしてほしい。)
  3. 通帳や証書類、はんこ等の預かりサービス(通帳や印鑑などどこに置いたか忘れてしまう。大事な貯金や家の権利書などが誰かに取られないかと心配だ。)
  4. この他に、 知的障害者、痴呆性高齢者、精神障害者などの方々の権利擁護についてよく知ってもらうための啓発や情報提供しています。

3.地域福祉権利擁護事業および相談事業の実績(大阪市を除く) 

平成15年度、地域福祉権利擁護事業は523件の利用がありました。内訳としては、痴呆性高齢者等への支援が最も多く、次いで知的障害者等、精神障害者等の順になっています。事業のスタート以来、利用者数は年々増加傾向にあり、今後、福祉サービス利用者の権利意識の高まりや高齢化の進展等に伴い、さらに増加していくことが見込まれます。 

相談は、ご本人、ご家族のほかヘルパーやケースワーカーがご本人から相談を受け、この窓口へつなぐことがあります。まず電話での相談を受け付けます。これは簡単な悩み相談や不安を聞いてもらいたいなど、ほとんどの場合がこの電話相談の段階で終わっています。平成15年度の相談件数は、1,457件でした。

電話相談のうち、専門家の対応が必要なケースは弁護士、社会福祉士が面接して相談を行います。平成15年度相談件数は95件でした。このうち知的障害者が34件、精神障害者が31件と、電話相談に比べてその割合が高くなっています。

具体的な相談内容としては、財産等の権利侵害、財産管理の問題、金融・消費・契約等の問題が全体の約3割を占めています。例えば、知的障害者の場合本人の障害年金を親或いは兄弟が使っている。本人名義で借金をしている。キャッチセールスや訪問販売などの被害が挙げられます。精神障害者の場合も借金などの問題が多く、この他に自分の病状に対する不安を訴えるケースもあります。このように、争い事やサラ金などの問題で早急に法的対応が必要となる場合は、最終的には専門の弁護士を紹介し、継続的な問題解決にあたってもらうこととなります。

現場で問題解決に当たる際、非常に難しいのはご本人の意思がはっきりしない場合です。例えば家族が年金を使い込んでいることをヘルパーなどに訴えて、センターの相談につながったとしても、いざ相談の段階になると「やはり身内のことだからしかたがない。」とあいまいな意思表示しかできずに解決に至らない場合があります。金銭と親子、兄弟などの家族関係が複雑にからみあった問題の対応が現場での課題といえます。

4.今後の方向

今後、利用者数のさらなる増加が見込まれ、それに見合った専門員や生活支援員の確保といった適切な実施体制の確保が課題となっていくものと考えられます。このため、利用者数の増加に柔軟に対応可能な実施体制の確保を図るため、登録型(非常勤)の生活支援員の配置などを積極的に進める必要性があります。また、地域コミュニティにおける地域福祉権利擁護事業に関する連携強化の仕組みを構築するため、公的機関をはじめ、地域において福祉活動を行う当事者団体、NPO等で構成する「事業推進会議」を実施機関ごとの設置を進めていく必要があります。そのための大阪府独自の取組みとして、「連携強化事業」を実施しています。この事業を受けて各地域において実施される会議において、対象者のニーズ把握、ケースの検討や情報交換等を行っていきます。

大阪後見支援センターのURL:http://www.osakafusyakyo.or.jp/kouken/koukentop.htm