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アメリカ 第20回「テクノロジーと障害者」会議(CSUN2005)より

有田由子
(財)日本障害者リハビリテーション協会 情報センター

項目 内容
発表年月日 2005年

会場の様子の写真

カリフォルニア州立大学ノースリッジ校障害センター主催の第20回「テクノロジーと障害者」会議が、3月14日から19日までロスアンジェルスで開催された。2005年は20カ国以上から175のブースと400以上のセッション、海外からの参加者も含め約4500人が参加する過去最大の会議となった。
 基調講演でアルバータ大学リハビリテーション学部長アルバート・クック氏は、支援技術の発展について1980年代前半、1985年~1995年、1995年~現在と3つの段階を経て進化し続けていると指摘した。支援技術の原則は、当初から変化していないが、ツールやフィーチャーが変化し、また障害者だけの技術というよりユニバーサルデザインにシフトしてきている現状があり、未来の支援技術は個々のニーズにより近づき、また同じツールに誰でもアクセスし利用できるとの予測を述べた。
 このような支援技術の発展の下支えをしているのは、ADA(障害をもつアメリカ人法)、リハビリテーション法501条、504条、508条などアメリカの数々の実際的な法律やスタンダードである。多くのセッションでも発表者は技術開発の基礎となる法律についてふれることが多かった。

セッション

デモンストレーションの様子の写真

印象に残ったセッションのひとつは、「Making Electronic Books to Engage Students with Autism」(自閉症の生徒の教育のための電子本)である。自閉症や重度重複障害の子供たちの先生によるプレゼンテーションで、My Own Bookshelfというソフトを使って、音声や歌、画像を作り、一人一人の子供たちの好みや特性に合わせた教材を作成することにより、子供たちに文字に対する興味を起こさせることに成功した例の発表だった。子供たちの心をとらえる教材を作ることができるのは、先生や関係者の方々が一人一人の子供たちをよく観察し、個人の特性を理解し、個々のゴールを設定し、成長を期待するという真摯な願いがそこにあるからだと感じた。それは支援技術の発達でどんなにハードやソフトが充実しても、人を心から愛するという基本的姿勢がなければ成し遂げることができないと非常に学ばされた。

 また、「Challenges with e-text at the California Community colleges Alternate Text Production Center」(電子テキストへの挑戦:カリフォルニア・コミュニティ・カレッジ・代替テキスト製作センター)のセッションも興味深かった。カリフォルニア・コミュニティ・カレッジのAlternate Text Production Center(代替テキスト製作センター)では、印刷字を読むことに障害のある学生からリクエストがあれば出版社に要請し教科書を代替テキストで提供する試みを2001年から始めている。カリフォルニアにはAB422という州法があり、要請があれば出版社は教材を障害のある学生に読める形(点字、拡大文字、録音図書、電子メディア)で提供しなくてはならない。センターでは、2004年の秋には1200件のリクエストを出版社に出した。しかし出版社別のファイルも多岐にわたり、アクセシブルな形でのファイルの提供には、まだまだ課題がたくさんあり非常に苦労しているということである。

デイジーのセッションの写真

また、「DAISY Hardware and Software Players: A Hands-On Experience」のセッションでは、2時間半を費やしパソコンを数多く用意して様々なDAISYプレイヤーを参加者が実際に体験できるようになっていた。一度にいろいろなプレイヤーを試してみることができるので、視覚障害者の参加が非常に多かった。アメリカではDAISYは視覚障害のある方々の中では確実に定着していると感じた。

全てのセッションの要約はこちらで見れます。http://www.csun.edu/cod/conf/2005/proceedings/csun05.htm

展示

 拡大文字関連の機器が非常に多く、各メーカーとも工夫してユーザーの使いやすさを追求していた。その理由には、高齢化社会の影響があり、拡大機器を使う人口が増加していることを反映していると考えられる。また、アメリカではパソコンを利用する高齢者の方が日本に比べてかなり多い現状がうかがえた。

点字プリンターの写真

また、点字プリンターで、目の見える人も一緒に使えるように印刷字もプリントされるものがあり、珍しいと思った。グラフや表もカラーでプリントすることができるようになっていた。

 今年の傾向としては、障害者と障害を持たない人が同じツールを利用できるものが増えていると感じた。それは企業が現在ユニバーサルデザインに非常に力を入れている結果が去年よりもさらに現われているのではないかと考えられる。

 昨年も感じたことだが、障害を持つ方の参加が大変多く、展示会場でも自分がどんなものを探しているかはっきりとしていて、ブースではスタッフに製品の特性を細かく聞いている姿を多くみかけた。自分自身の生活の質だけでなく仕事の効率を高めるために、支援機器は障害者の方々に必要不可欠で、また障害を持つ方からの意見は製品のバージョンアップにもつながり、そのような意味でもCSUNは企業にとっても大きなチャンスとなっていると感じた。