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インド スラム住人によるスラム住人のためのマガジン発行

ハビブ・ベアリ
英国放送協会(BBC)、バンガロール特派員

項目 内容
転載元 BBCニュース(2004年7月)より抄訳

彼らの誇りは間違いなく回復した。

スラムからかき集められた”チーム”は、インドで初めてのスラムの住人についてのニュースマガジン運営に成功した。

”スラム世界”は過密状態で誰からも顧りみられることのないインドの都市の貧困生活に焦点をあてた月刊誌である。

「これはスラム住人によるスラムの住人のためのユニークなプロジェクトです。単なる雑誌ではなく、スラムの住人の生への叫び声がこだましているのです。」こう語るのは編集長兼発行人のイサク・アラル・セルバ氏だ。自身も学校をドロップアウトしている。

セルバ氏は、8人兄弟で、生きていくことが最優先で、教育を受けることができなかった。掘っ立て小屋での生活は想像を絶するものだった。風変わりな仕事を経て、4年前30代前半でバンガロールの南部の町で非営利のマガジンの発行を始めた。

その土地の言語であるカンナダ語で書かれた白黒の月刊誌はスラムの若者や老人の心をとらえたばかりではなく、マイソール、マンディヤ、ダバンゲール、ホスペットなどの街にも共感を与えた。発行部数は2500部に達し、反応も良い。

最新号ではインドで有名な経営研究所でオフィスアシスタントとして勤務することができたハヌマンサパ氏の成功について特集している。「私は医療廃棄物や動物の死骸が捨てられるスラム街に住んでいました。どん底だったが私たちはあきらめませんでした。」とハヌマンサパ氏は語る。

また、たばこを売って1日わずか40ルピー(1ドル以下)のかせぎで家族のみならず、毎日たくさんのストリートチルドレンに食べ物を与えている清掃人女性のパパマを特集した。

編集補佐のサレシュ氏は、父親の収入が少なく家族を養うことができなかったため、辛い学校生活を送った。しかし、意志の強いサレシュ氏は屈することなく、非常に良い成績を収めた。奨学金を得て、街で有名な国立大学を卒業した。

しかし、学位だけでは満足せず、インドのシリコンバレーを誇るその街で「コンピュータが使えない人」というレッテルを貼られるのを恐れ、熱意を持ってコンピュータープログラミングに没頭した。

”スラム世界”はスラムでの人権侵害からスラムの開発プログラムに対する政府の無関心まで様々な問題を扱っている。

「政府の援助プロジェクトやスラム開発の予算割当てなどについてスラムの住人に情報を与えたいのです。」とサレシュ氏。

マガジンは奴隷になったり、搾取されたくないという想いから、どの団体からも経済的援助を求めてはいない。

サレシュ氏らは、贅沢な高層マンションでゆったりと暮らす何百人という大富豪を増殖させているこの都市のソフトウェア産業の「我関せず」という態度に怒りを感じている。このハイテク都市は700以上のスラムをかかえる街でもあるのだ。

スラムに住む人たちにもインターネットアクセスは手に届くようなった。

IT世界ではこのマガジンのことは無名であるが、セルバ氏は国中のスラムの人たちに情報をいち早く広めるためにテクノロジーを使い、マガジンをオンラインで配信する計画である。