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2015年国際障害者デー
パネルディスカッション「アクセシブルな新たな都市アジェンダと障害者のインクルージョン」

移動の自由に向けた位置認識技術

石川 准

ご紹介ありがとうございます。参考までですが、私は、来年のCPRD委員会に立候補しています。

吉川大使もおっしゃった通り、日本は1回目のオリンピックを1964年に招致しました。我が国にとって、このオリンピックは、戦後の奇跡の復興、高度経済成長、人々の未来への夢と希望を象徴するイベントであり、日本が社会的そして技術的に勢いがあることを見せる場でもありました。

しかし当時日本にはインクルーシブな社会という考え方はどこにもありませんでした。その時の多くのオリンピック開催者にとって、パラリンピックはオリンピック開催の補足的なコストのようなものとみなされていたのでしょう。メディアに取り上げられることもなく、ひっそりと開催され、社会にインパクトを与えることはありませんでした。

日本は2020年に2回目のオリンピックとパラリンピックを開催します。いかに時代が変わったことでしょう。この機会を障害、言語、文化、宗教などの多様性を含めたインクルーシブな都市作りの絶好のチャンスと捉える人々が至るところにいます。

今日は、移動の自由に向けた位置認識技術についてお話しします。移動の自由は、最低条件として、どこにいたとしても自分のいる位置を知れることが必要です。

これを果たすためには、正確な位置情報が取得できなければなりません。インクルーシブなデジタル地図とナビゲーション情報がアクセシブルでなければいけません。

視覚障害者や知的障害者に対する同行サービスといった人的支援システムが適切に機能する必要があります。言うまでもなく、物理的障壁も取り除かなければいけません。

最近では、天空率が良好なら誰もがGPS衛星からの電波を使って、ほぼ正確な位置情報を取得することができます。しかし、GPS衛星電波は建物の中では受信できず、谷間効果(マルチパス誤差)を引き起こす高層ビル街では役にたちません。このような問題を解決するために、東京のような大都市ではビーコンなどのローカルデバイスを設置する必要があります。

正確な位置情報を提供するには、このようなデバイスが、重要な全ての位置を網羅されるように細かく設置する必要があります。

そして今は、これから誰が行うのか、誰が行うべきなのか、ということが課題です。民間が設置するのか、公的機関が設置するのか。恐らく両方でしょう。

同時に移動の自由に向けた位置認識技術は、インクルーシブなデジタル地図を必要としています。これは、正確な位置情報を大都会で供給するより更にもっと困難なことです。

大抵、地図データにおいて施設データ(Point of interest)は点データとして記録されます。視覚障害者はPOIの入り口を知りたいわけですが、POI情報は必ずしも各々のPOIの入り口を指し示してはくれません。車いすの人は、目的地に向かう最短ルートより、どこがアクセシブルな道なのか知りたいと思うでしょう。

一回のパイロットプロジェクトなら限定された場所で、インクルーシブな地図やナビゲーションシステムを構築することはある程度簡単です。ですが、都市全体を網羅するインクルーシブな地図の構築、更新、維持はとても難しいです。

こうした困難の克服は、オープン・ストリート・マップのような共創的なマッピングプロジェクトや、グーグルのようなグローバルな企業が提供している独自のアクセシブルな地図や、支援技術機器と、インクルーシブな生活基盤の設置や、オープンデータ、同行サービスといった政府や地方自治体の政策とを連携・統合することで可能になるかもしれません。このようなことに障害者が関わることは必須条件です。

位置認識技術というトピックにしぼってお話しましたが、これだけでもとてもやりがいのあることですし、とても面白い課題です。ご清聴ありがとうございました。


原文はこちら(英語)
junishikawa-speech_Eng.html

石川准ウェブサイト.
http://ir.u-shizuoka-ken.ac.jp/ishikawa/