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国際連合と障害者問題- 重要関連決議・文書集 -

2.人的資源開発の行動ガイドライン等

中野善達 編
エンパワメント研究所


2.人的資源開発の行動ガイドライン等

 1989年3月に開かれた社会開発委員会では、事務総長から提出された報告書:国連障害者の10年後半期に、障害者に関する世界行動計画の実施をモニターし、評価するさいにみられた進歩{1)}、を審議した。そこでは、①障害者の10年促進のための事務総長特別代表の歓迎、②1988年から取り組まれている、ヨーロッパ経済共同体による障害者に関する第二期行動計画「HELIOS」の説明と質疑(これは障害者の社会的・経済的統合やリハビリテーション、職業教育の促進をめざしたもの。)、③10年後半の最大の課題は機会均等化であり、社会開発委員会が特別作業部会を設定して検討すべきこと、その他が論じられた。
 3月21日、フィンランドを代表とし、13か国が決議案「国連障害者の10年」を提出した。これにはさらに8か国が加わった。5月22日、この決議案が採択された。項目数12のものであった{2)}。
 経済社会理事会も、この決議案をもとに、「障害者に関する世界行動計画の実施と国連障害者の10年」という決議案を採択し、総会に送付した。
 総会への事務総長の報告{3)}では、その冒頭に次のような憂うべき状況が指摘されている。すなわち、前年の総会決議43/98の第20項で、「本決議の実施に関し、事務総長が第44回総会に報告することを要請し」とあるのを受け、事務総長は各国に対し、1989年5月31日までに実施状況に関する報告の提出を要請した。しかし、期限までに報告を出したのはフランス、スウェーデンなど22か国(日本は入っていない)でしかなかった。その後、エジプト、フィンランドなど15か国(ここにも日本は入っていない)が提出したが、国連加盟国全体からみると5分の1以下でしかなく、各国の熱意のさめ方が如実に反映されている。
 世界行動計画の主要な目標、すなわち、予防、リハビリテーション、機会均等化の進展は、とりわけ開発途上国において緩慢である。すでに7年目になっているのに、障害者の10年は国際社会、なかんずく障害者自身の期待に応えられていない。今後の活動には、前年決議の付属文書にある優先事項への取り組みがとりわけ重要である。また、決議43/98にある、障害者の10年の終結を記念する方法の検討も眼前にある。また、WHOを中心とする、インペアメント、ディスアビリティ、ハンディキャップの概念明確化の作業も重要で、作業完了が急がれる。
 総会決議案には、1989年8月14~22日にわたってエストニアのタリンで開催された国際会議でまとめられた、「障害分野における人的資源開発に関するタリン行動ガイドライン」が付属文書として付加された。総会の第3委員会にはフィリピンを代表とした32か国の共同提案(日本も入っている)が提出され、11月2日から11月9日までの間に審議がおこなわれた。その間に3か国が提案国に加わり、35か国の共同提案となった{4)}{5)}。この決議案は11月9日に無投票採択となり、総会でも無投票で44/70が、12月8日に採択された。
 第3委員会でスウェーデン代表(Lindqvist)は、障害者の権利に関する現存の国際的諸文書の完全実施を保障するためには、法的拘束力のある国際的な規約を設ける必要がある。障害者のためのこうした文書の検討が必要と主張した{6)}。これに対しデンマーク代表(Kallehauge)は、障害者のためという特別なものには問題が多い。特殊学校とか特別な輸送とか保護雇用といった特殊な手段による解決は、有用な場合もたしかにあることを認めはするが、可能な限りそれは避けるべきである。なぜかと言うと、それは経費もかかるし、障害のない人たちに提供されるのと同質のサービスであることはめったにないからである。条約とか規約の場合も同じであると反対意見を述べている{7)}。
 タリン行動ガイドラインは妥当なものとして、人材開発指針として歓迎された。

国連総会決議44/70 1989年12月8日
障害者に関する世界行動計画の実施と国連障害者の10年

 国連総会は、
 障害者に関する世界行動計画{50)}を採択した1982年12月3日の決議37/52および、とりわけ1983年から1992年の期間を国連障害者の10年と宣言した、1982年12月3日の決議37/53を含め、あらゆる関連する決議を想起し、
 また、1988年12月8日の決議43/98を想起し、さらに、そこに含まれた関連するあらゆる諸規定、とりわけ決議付属文書に示された国連障害者の10年後半のグローバルな活動や計画の優先事項のリストを再確認し、
 1989年5月24日の経済社会理事会決議1989/52、とりわけ理事会が加盟各国、国連システムとの機関や組織および政府間・非政府組織に、障害者の10年にはずみをつけるため意識高揚と基金増大へのキャンペーンにあらゆる可能な支援を与えることを求めたことに留意し、
 人権と基本的自由の享受を障害者に保障する持続的努力に有用な基礎として役立つ、人権と障害に関するマイノリティへの差別予防と保護に関する小委員会が現に着手しつつある重要な活意に意を留め、
 加盟各国が、世界行動計画の実施に最終的責任をもつこと、また、この点に関し国内障害委員会もしくは類似の調整組織が決定的役割を演ずることに心を留め、
 障害者の地位や福祉を前進させるのにいっそう効果的な方略や方針に向けて、情報・経験・専門的知見の交換および、より密接な地域や地域間の協力を促進するにあたっての国連の中軸的役割を認識し、
 事務局の社会開発・人道問題センターが、世界行動計画の実施とモニターにとって国連内での中心的組織であることを強調し、
 いくつかの政府の寛大な財政的支援による、センターの障害者部の強化に満足の念をもって留意し、
 国連障害者の10年のための任意拠出基金額が、著しく減じ続けてきており、この傾向が逆転し、任意拠出基金の資金額が増大されないかぎり、多くの優先事項がその要請を満たされず、世界行動計画の実施が重大な影響を受けることを懸念し、
 開発途上国は資源を活性化するのに困難に出くわしているのであるから、世界行動計画を実施し、10年の諸目的を達成するのに国内努力を支援するため、国際協力が奨励されるべきであることを心に留め、
 とりわけ開発途上国における障害者の参加・訓練・雇用を促進する9点方略を採択した、1989年8月14日から22日までソビエト社会主義連邦共和国、エストニア社会主義共和国のタリンで開催された、障害分野における人的資源に関する国際会議に留意し、
 障害者に関する世界行動計画の実施と国連障害者の10年に関する事務総長の報告{66)}を検討し、
1.障害者に関する世界行動計画の妥当性を再確認し;
2.国連障害者の10年の後半において、障害者の機会均等化に特別な強調が置かれるべきであることを繰り返し;
3.加盟各国、政府間組織や非政府組織が、国連総会決議43/98の付属文書に示された10年の後半におけるグローバルな活動や計画に対する優先事項を、適切に、あらゆるレベルで行動に移すことを求め;
4.あらゆる加盟国に、障害者団体を強化するための財政的支援と同じく、双務的支援の枠組み内で、障害の予防、リハビリテーションおよび障害者に対する機会の平等に関するプロジェクトに、高い優先順位を与えることの提唱を再び新たにおこない;
5.各政府に、リハビリテーションや機会の均等化のさまざまな側面で、退職している人の実際的知見を含め、専門家とりわけ障害者を励ますことによって、障害者の生活条件を改善する視点での国際協力に積極的に参加することを求め;
6.事務総長に、加盟各国が障害問題に関する国内委員会や類似した調整組織の設置や強化、さらに、強力な国内障害者団体の設置を促進したり奨励したりするのを支援するよう要請し;
7.また、障害者の特有のニーズを計画や操作活動に考慮することを、地域委員会、国際組織、専門機関を含め国連組織のあらゆる機関や団体を勧奨するよう事務総長に要請し;
8.国連総会決議43/98で要求された、1992年の国連障害者の10年終了を記念し取るべき他の手段の実質的・財政的・運営面での含意に関する実現可能性の研究をおこなうこととの関連で、1990年5月にヘルシンキで開かれる専門家会議で討議される背景ドキュメ ントに含むため、1990年2月28日までに加盟各国が障害者団体と協議の上でコメントを事務総長に提出するよう要請することを、事務総長に求め;
9.技術協力活動および、人材養成、情報交換、方針や計画の開発、研究、障害者の参加について国内資源を配分することの促進を可能とするよう、地域委員会を強化するよう事務総長に要請し;
10.事務総長および加盟各国に、雇用機会の提供を含め、国連の計画や活動にかなりなまで障害者を関与させること、また、世界行動計画の中で概説された特別なグループの事態を改善することに格別の注意を払い、社会正義と社会のあらゆる面でのこうしたグループの参加へのニーズを強調することを求め;
11.社会開発・人道問題センターが、障害分野において政府間組織や非政府組織とりわけ障害者団体と密接な協力を拡大し、障害者の10年の結果が有意味で継続されるものになることを保障する観点から、世界行動計画の実施に関する問題に関し、定期的・組織的に彼らと協議することを求め;
12.国連障害者の10年促進のために、事務総長の特別代表事務局によってなされた進歩{67)}に、満足の念をもって留意し;
13.加盟各国、国内委員会、国連組織および非政府組織とりわけ障害者の団体、あらゆる適切な手段を通じ、障害者の10年を宣伝するグローバルな情報キャンペーンおよび基金増大キャンペーンを支援することを要求し;
14.世界行動計画の効果的実施や、障害者問題への国際的な意識の高揚や、障害者の10年の期間中に達成する進歩をモニターし、評価するさいに、非政府組織とりわけ障害者を代表する団体の重要な役割を認識し;
15.現金なり他の形でなり、障害者の10年に関連してなされた貢献は、国連障害者の10年のための任意拠出による基金に組み込まれること、かかる貢献は、寄付をする組織なり個人によって、特別な目的のためだけに使途が限定されるかもしれないことを保障するよう事務総長に要請し;
16.任意拠出基金の資源は、低開発途上国の計画やプロジェクトに、適切に、優先順位に従い、障害者の10年の枠組み内で、世界行動計画の諸目的をさらに実現するための、触媒的・革新的活動を支援するために使用されるべきであることを再確認し;
17.政府および非政府組織が任意拠出基金への貢献を維持することを依頼し、また、まだ検討していない政府や非政府組織に、増大しつつある支援要求に効果的に応じられるよう任意拠出基金へ寄与することを求め;
18.事務総長に、本決議の付属文書である、障害分野における人的資源開発に関するタリン行動ガイドラインを、加盟各国、障害分野における国内調整組織、障害に関係する国連システムの諸組織、他の政府間組織や非政府組織が注意を向けるようにすることを要請し;
19.事務総長に、本決議の実施に関し、第45回総会に報告するよう要請し;
20.第45回総会の暫定議題に、「障害者に関する世界行動計画の実施と国連障害者の10年」と題された項目を含めることを決定する。
 50)A/37/351/Add. 1 and Add. 1/Coor. 1, annex.
 66)A/44/406/Rev. 1.
 67)Ibid., paras. 50 and 51.

付属文書
障害分野における人的資源開発に関するタリン行動ガイドライン

1.1989年8月14日から22日にかけ、ソビエト社会主義共和国連邦、エストニア社会主義共和国、タリンで開催された障害分野における人的資源に関する国際会議は、障害分野とりわけ開発途上国における人的資源開発の状況を検討し、障害者の今後の発展と継続的進歩を促進するために、新しいまた革新的な行動と同じく、現存の行動の強化が必要なことを確信する。
2.1982年12月3日の国連総会決議37/52による、障害者に関する世界行動計画の採択に続いて、障害者の人的資源の開発とりわけ教育、訓練、雇用、科学、技術分野における人的資源の開発に与えられる高度の優先性に対するニーズが増大してきている。これに関連し、国連総会はまた、1982年12月3日の決議37/53において、国連障害者の10年(1983-1992年)を宣言し、加盟各国に、世界行動計画を実施する手段の一つとしてこの期間を活用するよう奨励した。
3.世界行動計画の主要な目的は、障害の予防、リハビリテーション、障害をもつ人びとに対する完全参加と平等の目的の実現に向けての効果的手段を促進することである。こうした目標を達成するためには、教育、訓練、労働の機会へ特別な配慮がなされなければならない。
4.開発途上国における一般の人びとの生活状態が、緊急に改善される必要のあることを認識しながらも、世界行動計画の目的は、障害者の10年の残余期間およびその後の期間に、障害者の状態に特別な関心が向けられることを要求している。世界行動計画の効果 的実施は、より多くの人的資源の運用を通して、社会の発展過程に重要な寄与をおこなう筈である。
5.多数の国々が、すでに世界行動計画の枠組みの中で行動をはじめたり、遂行してきていることを認識しながらも、国家レベルのセクター間の計画立案に障害者の人的資源開発を統合するための、いっそうの努力がなされなければならない。

  指導理念

6.人的資源開発は、人間の豊かな潜在力と可能性を確実なものとするために研究し求める、人間中心の過程といえる。世界行動計画の目標ともなっている機会均等化の概念にとって、この過程は基本的なものなのである。
7.人的資源開発を通して、障害者は完全な市民としての権利を効果的に行使することが可能となる。完全な市民として、彼らは生存する権利を含め、国際的な人権諸文書に宣言された、社会の他のメンバーと同等の権利と責任を有している。彼らはまた、地域社会での社会的、文化的、経済的、政治的生活において、他の市民と同等の選択可能性をもっている。
8.障害をもつ人びとは、ケアの対象というよりも、むしろ彼ら自身の運命の執行者なのであるから、政府や諸組織は政策や計画にこうした認識を反映する必要がある。このことは、個人として、また組織の一員として、障害者が同等のパートナーとして決定過程に参画すべきであることを意味している。
9.障害者およびその家族の諸能力は、政府および非政府組織によって提供される、地域に根ざした補助的サービスを通じて強化されるべきである。これらのサービスは自己決定を促し、障害者を社会開発に参加させる筈である。政府は、障害をもつ人びとが彼ら自身の生活の責任がもてるようにするための障害者団体の役割を認識し、支援すべきである。

  方略

 A.障害をもつ人びとの参加

10.障害者が完全な市民として、政策や計画の立案、実施、モニター、評価のあらゆるレベルでの決定に参加可能であるための法的基礎が要請される。
11.障害者の完全参加を促進し、市民としての権利行使を可能にするためには、情報へのアクセスが必須である。この目的のためにあらゆる情報が適切なフォーマットに調整される必要がある。これら情報フォーマットには、点字、拡大文字、視聴覚メディアおよび手話通訳が含まれる。情報チャンネルには、テレビ、ラジオ、新聞および郵便が含まれるべきである。政府は、適切なフォーマットや、障害をもつ市民に到達するチャンネルを認定するさい、障害者団体と協力すべきである。
12.政府は、建物、街路ならびに路上、海上および空中輸送が、構造上も、他のあらゆる面でも障壁のないことを保障するため、障害をもつ人びとに対するアクセスを促進する、法的に規定された基準や規則を採り入れ、施行し、基金支出をすべきである。また、コミュニケーション・システムと安全性および保安手段が、障害をもつ市民のニーズに合致するよう開発され、採用される必要がある。
13.障害者の新規雇用を促進するため、また、彼らを雇用する私企業を援助するために、全国的、地域的レベル、国連を含む国際的レベルの組織が有資格障害求職者を認定し、そのリストを保持すべきである。

 B.草の根の団体の率先性の強化

14.地方社会の率先性が特別に促進される必要がある。障害者とその家族は、草の根の団体を形成するよう奨励されるべきである。そのさい、政府がその重要性を認識し、財政面と訓練面で支援する必要がある。
15.政府および障害問題に関係する非政府組織は、障害者が対等のパートナーとして参加することを認めるべきである。
16.政府および障害問題に関係する非政府組織の効果的機能化には、組織としての、また、管理の技能の訓練が必要である。

 C.統合アプローチの促進

17.支援する立法を伴った、全体的な全国的政策の枠組みが開発される必要がある。
18.統合アプローチの本質は、あらゆる閣僚の職務の中に、また、政府の政策や計画立案のすべてのレベルに、障害の問題を組み込むことである。地域レベルや地域間レベルで地方と結びつきながら、全国的協力組織が設立されるか、強化される必要がある。これら組織のメンバーには、すべての政府閣僚、法的委員会、非政府組織、とりわけ障害者団体が含まれるべきである。この協力組織は、現存の政策、プラン、計画をレヴューし、現存するまた計画中のリソースを明確にし、国としての政策実施をモニターし、評価するべきである。
19.国としての開発計画には、障害に関する事柄を含めなければならない。
20.障害をもつ女性のことが、女性を対象とする現存の国家ならびに地方の計画に含まれなければならない。
21.サービス提供のレベルで、統合アプローチは協力が必要であり、教育的・職業的・保健面の、また社会サービスを提供する組織の場で働く専門家への紹介が必要となる。

 D.教育および訓練の促進

22.障害児の全体的発達においても、また、障害児に対する肯定的態度の形成においても、人生の早い時期は、決定的に重要な時期である。この形成期である幼児・就学前期に、こうしたニーズに応ずる特別な計画や訓練材料が開発される必要がある。
23.初等・中等レベルおよび、より高次のレベルの教育が、職業訓練プログラムの場合と同じく、通常の教育制度内で、通常の学校の場で障害者に利用可能にされるべきである。こうした教育が聾生徒に準備されるさいは、従来から用いられている手話に熟達している教師や通訳者が提供されなければならない。
24.従来から用いられている手話および、これまで継承されてきている聾文化を促進する特殊教育プログラムや特殊教育学校が聾者に利用可能でなければならない。こうしたプログラムや学校に、聾者が雇用されるべきである。
25.分離型の学校施設に代替可能な、経費のあまりかからない代替するものに、通常学校内で通常の教育を分担している教師のコンサルタントとしての特殊教育教師、専門家や特別な教材を備えたリソースルーム、特殊学級および聾生徒のための通訳者が含まれる。
26.障害児の教育は、教師や親たちと同じく、保健サービスや社会サービスの協力と関心のある努力が注ぎ込まれなければならない。それは技術援助、とりわけ調整された教育的アプローチ、教師に対する奨励といった支援手段が提供される必要がある。
27.教育・訓練の内容と質は、経済的に実行可能で、労働への参加を準備する技能の獲得を保障するものである必要がある。職業教育と職業訓練計画は、障害生徒を経済的主流の中に移行させるのを保障するのに役立つものであるべきである。
28.正式の技術訓練・教育がおこなわれるのに加え、自立生活を準備するための社会的技能や自助技能の訓練が障害者に提供される必要がある。都市でも農村でも、障害をもつ少女や女性に対する教育や技能訓練を促進することに特別な配慮が必要である。
29.一般の教育養成カリキュラムには、通常学校内で障害児童・青年を指導する技能に関する教育課程を含む必要がある。
30.各国政府は、適切な人数の保健や教育の専門家、リハビリテーションにおける職業専門家を養成し、雇用するための国家的プランをもつべきである。こうした養成や雇用には、障害をもつ人びとも参入するべきである。
31.しばしばリハビリテーションのさまざまな側面に関与する教育、労働、保健・社会サービス、法律、建築や技術開発といった分野においては、専門家養成のさい、障害者の権利やニーズに関する教育を包含する必要がある。また、これら分野の専門家は、適切に関与したり、サービスを提供できるよう、障害者に役立つリソースに認識をもつ必要がある。
32.役に立つリソースの活用にとって、適切な技術にこそ必須とみなされるべきである。これには、コンピューター技術と同じく、簡単で、普遍的に利用できる設備も含まれる。

 E.雇用の促進

33.障害者は通常の労働の場で、同等に訓練され、働く権利をもっている。地域に根ざしたリハビリテーション計画は、開発途上国でのより望ましい職業機会の提供を奨励する必要がある。一般労働者のためにすでに存在している職業サービス、ガイダンスと訓練、配置、雇用および関連サービスの活用がなされるべきである。また、伝統的な訓練よりも、仕事に従事しながらの訓練の方がより効果的であるかもしれない。
34.所得招来活動に対するローン、訓練や設備を提供する一般開発計画には、障害者も含むべきである。
35.雇用機会は、一次的に、あらゆる労働者に適用する雇用・俸酬基準に関連する手段によって、二次的に、特別な支援と刺激を与える手段によって促進可能である。正式な雇用に加え、自己雇用、協力的・他グループ所得招来計画といったさまざまな機会が拡大される必要がある。青年や未雇用者のために特別な国家雇用計画が展開されるさいは、そこに障害者も含められるべきである。障害者は積極的に新規採用されるべきであり、障害をもつ応募者と障害をもたない応募者が同じように適任であるさいは、障害をもつ応募者が選ばれるべきである。
36.使用者団体と労働者団体とは、障害者団体と協力し、障害をもつ女性を含め、障害者と障害をもたない者が平等の基盤で訓練と雇用を促進する方針を採用することが必要である。
37.障害をもつ女性の雇用を増加させるための積極的行動をとる方針が立てられ、実施されるべきである。政府および非政府組織は、障害をもつ女性を含む所得招来プロジェクトの創出を支援する必要がある。

 F.基金の準備

38.一般に、基金は通常の予算システムを通じて、配分されるべきである。障害者の雇用もしくは自己雇用を促進するため、国としてのリハビリテーション基金が設立される必要がある。この基金は訓練、設備および最初の資金支出をカヴァーするのに活用されるものである。
39.同様に、草の根レベルでの小規模試行プロジェクトのローンに対しても基金が設立されるべきである。こうした基金は簡便な手続きで、地域で管理するようにする。

 G.地域社会の意識高揚の促進

40.障害者の権利、ニーズおよび潜在的可能性に関する地域社会の理解を増大させるために、マス・メディアとりわけ映画、テレビ、ラジオおよび活字メディアを利用した情報の流通を開発し、促進するための、障害者やその団体との共同による努力が要請される。特に、障害をもって生活するあらゆる側面に関し、障害者とその家族への情報が、できるだけ明確で複雑でない形で提供されるべきである。
41.地域社会の意識高揚計画には、障害予防に関する特別な方略が含められる必要がある。早期発見、早期からの働きかけや予防を目指した政府の努力が、障害に関する計画内の地域社会の意識高揚や地域社会の関与を通じて強化される必要がある。
42.精神的障害(精神遅滞もしくは精神疾患)もしくは重複障害をもつ人びとは、最も汚名をきせられてきた市民グループの中に入っている。彼らは、選択し、リスクを担い、彼ら自身の生活を取りしきり、地域社会で生活する権利をもっている。彼らの成人の状 態、能力と願望が尊重され、また、多くが明確に理解されるには個々の権益擁護を必要とするであろうが、決定過程への彼らの参入によって強化されるべきである。
43.精神的障害や重複障害をもつ人びとは、教育、技能の訓練および労働の機会から利益を得ることを認識する必要がある。こうした人びとの多くは、さまざまな機会が個別化される必要がある。彼らやその家族が積極的な生活スタイルを確立し、維持することを助力する支援が要請される。
44.世界行動計画は政府の行動を通して、あらゆる国の言語に翻訳されるべきである。点字、拡大文字によるものや簡約版が、障害者、彼らの家族、非政府組織や政府組織を含め、あらゆる市民にできるだけ幅広い配布を保障するため、適切なメディアによって役立てられるべきである。 

 H.人的資源開発のための方法の改善

45.障害者に関する人的資源開発のための方針や計画は、障害者のニーズに合致するための現存の開発計画やサービスの潜在力についてと同じく、彼らのニーズやリソースのアセスメントに基づかなければならない。こうした方針や計画の実施は、効果的な実施を保障するための調整と共に、定期的なモニターがなされる必要がある。
46.政策目的を達成するための全般的効率を査定する評価が、立案段階で計画に組み込まれるべきである。また、障害をもつ人びとが、モニタリングと評価のための基準作成のさい、積極的な役割を演ずる必要がある。
47.聴覚障害、言語障害、精神障害、知的障害もしくは重複障害をもつ人びとに対するサービスに、いっそうの配慮がなされる必要がある。
48.また、障害児、障害をもつ女性、高齢障害者、障害をもつ移民や難民といった特定グループの要求が認識され、満たされる必要がある。
49.政府および非政府組織は、障害分野における人的資源開発の適切な方法であるとみなされ、遠隔教育として知られているコミュニケーション・メディアを通じての教育における最近の進展を活用すべきである。
50.聴覚や視覚の補助具と同じく、車椅子、整形外科的装置や移動補助具などを生産するための適切な技術の地方での利用は、とりわけその社会での技術的・社会経済的、文化的状態を考慮に入れる必要がある。各国は、リハビリテーション補助具の提供のための全国システムをもつべきである。

 I.地方および国際協力

51.障害分野の人的資源開発における養成・訓練計画は、地方レベルで、また、さらに細分化されたレベルでの協力的努力で強化される必要がある。こうした計画は、障害者団体を含む、現存の政府間および地方組織を通じて調整される必要がある。
52.国際的な開発援助プロジェクトには、障害者の支援組織やその成員の訓練に焦点を絞った部分を含む必要がある。さらに、これらプロジェクト内に、障害者個々人に役立つ雇用機会が設けられるべきである。
53.農業や教育におけるような、マクロなレベルでの計画立案や開発に向けられたあらゆる国際開発援助計画は、その中に障害者の参加を保障する特別な部分を含むべきである。
54.国家レベルと地方間レベルで、政府はサービスの調整を保障し、サービスの重複を防ぐために、障害の特定の領域において、非政府機関との協力を強力に支援すべきである。
55.先進工業国と開発途上国の諸組織間の提携が強化される必要がある。このことは、情報の交換、訓練を通じて、さらに、方略アプローチに関する経験を分かちあうためのフォーラムを準備する会議を通じてなされうる。また、ワークショップと現地調査・研究 が、訓練担当者の養成や、障害者団体の管理者養成・訓練のため組織される必要がある。
56.これらガイドラインの実施は、国家レベルでの効果的行動に依存している。こうした行動は、国際的レベル、関連組織や専門機関と同じく、とりわけ国連の側の、障害者に関する世界行動計画の実施に焦点を当てた努力によって補われる必要がある。この実施には、国家組織および国際的非政府組織、とりわけ障害者の団体が十分に関与すべきである。

 

 1989年には、社会開発・人道問題センターがまとめた「障害者の機会均等化のための国内法制に関する報告:22の国・地域の例(Report on National Legislation for The Equalization of Opportunities for People with Disabilities : Examples from 22 Countries and Areas)」が発行された。これは1985年、同センターがリハビリテーション・インターナショナルに対し、機会均等化に関する国内法および国際法に関する予備的研究を委嘱し、インターナショナルがメンバー組織に質問紙を送って得た応答に基づくものである。応答したのはオーストラリア、オーストリア、カナダ、チリ、デンマーク、ドイツ民主共和国、ドイツ連邦共和国、香港、ハンガリー、日本、ケニヤ、リビア・アラブ、ニュージーランド、パキスタン、フィリピン、ポーランド、ポルトガル、韓国、スペイン、ソビエト、アメリカ、ベネズエラである。また、既発行の国連関係の印刷物(3種)も基本資料として活用された。
 1990年には重要な2つの国際的会議が開かれた。1つは5月7~11日にフィンランドのヤルヴェンパーで開かれた、国連障害者の10年終結を記念しておこなわれるべき事柄に関する障害者問題専門家会議である。この報告には、①1993年に障害者問題に関する世界閣僚級会議の開催、②10年終結までの優先的行動項目、③2000年まで、さらにそれ以降も「障害者に関する世界行動計画」を実現するための長期方略大綱が載せられている{8)}。
 もう1つは、1990年11月5~11日にわたり北京で開催された、「開発途上国における国内障害者問題調整委員会の役割と機能に関する国際会議(International Meeting on the Roles and Functions of National Coordinating Committees on Disability in Developing Countries)」である。このとき採択された「国内障害問題調整委員会もしくは類似組織の設立と発展のためのガイドライン(Guidelines for the Establishment and Development of National Coordinating Committees on Disability or Similar Bodies)」
 この会議の報告に基づき、経済社会理事会は1991年5月30日、決議1991/8国内障害問題調整委員会もしくは類似組織の設立と発展を採択している。
 1990年の国連総会には、国連障害者の10年終結までの行動課題および、2000年までおよびそれ以降の長期方略に関する事務総長の報告{9)}が提出された。ここでは、長期方略のスローガン「万人のための社会(a society for all)」の実現、障害者の権利やニーズに関する意識の高揚から行動への移行といったことが主張されている。総会第3委員会では事務総長報告への支持表明が多く、また5月に採択された経済社会理事会の決議(機会均等化の基準原則策定に向けてのもの)に関する論議も活発であった。若干の発言例{10)}を示しておこう。
 ノルウェー代表(Onarheim):事務総長報告を了承する。社会開発委員会で制限明示のない特別作業部会を設定し、障害者の機会均等化に関する基準原則をつくり上げるというスウェーデンの提案を支持する。日本代表(Sezaki):障害に直接関連した国際的法的文書の策定は慎重であるべきである。これは各国政府が取り組むべき問題と思われる。オーストラリア代表(Brownhill):スウェーデン提案を支持する。フィンランド代表(Hamalainen):スウェーデン提案は経済社会理事会で満場一致で採択されており、強く支持する。デンマーク代表(Kallehauge):障害者の機会均等化を強力に推進する必要あり。北欧障害者団体協議会は、機会均等化の国際的な最低限基準原則策定を支持している。その他、多くの国が支持表明をしている。
 フィリピンを代表とする45か国共同提案(日本は入っていない)の決議案が11月9日に採択され、12月14日、総会で決議45/91が無投票で採択された。 

国連総会決議45/91 1990年12月14日
障害者に関する世界行動計画の実施と国連障害者の10年

 国連総会は、
 障害者に関する世界行動計画を採択した1982年12月3日の決議37/52、とりわけ長期行動プランとして1983年から1992年の期間を国連障害者の10年と宣言した1982年12月3日の決議37/53を含む、あらゆる関連する決議を想起し、
 また、加盟各国、関連する政府間組織や非政府組織が、決議43/98の付属文書に設定された障害者の10年後半の間のグローバルな活動や計画に対する優先事項を、適切に、あらゆるレベルで行動に移すことを求めた1988年12月8日の決議43/98を想起し、
 さらに、障害者の10年の間に到達されたグローバルな進歩と遭遇した妨害のレヴューを含み、2000年までとそれ以後に必要とされる行動を準備する機構を提供する、1992年の国連障害者の10年の終了を記念し取るべき他の手段の実質的・財政的・運営面での含意に関する実現可能性の研究をおこなうよう、決議43/98でなされた事務総長への要請を想起し、
 経済社会理事会が、実現可能性の研究の準備と連結して、障害者の10年の終了を記念する最善の可能な方法に関してアドヴァイスするため、1990年に専門家会議を開くよう事務総長に求めた1989年5月24日の理事会決議1989/25を想起し、
 フィンランド政府による寛大な提唱と財政的支援で、1990年5月7日から11日にかけてフィンランドのヤルヴェンパーで開かれた専門家会議の結果に基づいた、障害者の10年の終了を記念し取るべき他の手段に関する実現可能性の研究についての事務総長の報告{29)}を関心と感謝の念をもって考慮し、
 事務総長の報告に含まれていた、障害者の10年終了を記念する閣僚級世界会議開催の提案を検討することの示唆{30)}に留意し、
 経済社会理事会が社会開発委員会に対し、委員会の第32会期に、任意拠出基金に基づき、障害児童・青年・成人の機会均等化に関する基準原則を練り上げるため、政府諸専門家による制限明示のない特別作業部会の設置をする権限を与えた、障害者の機会均等化に関する1990年5月24日の理事会決議1990/26を考慮し、
 国際障害者年および障害者の10年がおこなわれた1980年代は、障害者の権利やニーズに関して世界的に目を向けさせ、意識を高揚させる努力がなされた期間であったことに満足しながら留意し、
 この意識を行動に移行する必要性を確信し、
 いくつかの開発途上国の経済的・社会的状況が、障害者を含む傷つきやすいグループにマイナスの影響を及ぼすほど悪化しつつあることに懸念しながら留意し、
 障害者の10年の諸目的を達成するため、あらゆるレベルで、新しくまた、力を合わせた努力、いっそう活発で幅広い行動や手段が必要なことを承知し、
 障害者の状態と福祉を改善するため、障害者の10年の間に払った多くの加盟各国の努力および、障害者とその団体が彼らに関係する問題に関与することへの加盟各国の積極性に感謝の念を表明し、
 世界行動計画で使用されている「インペアメント(impairment)」、「ディスアビリティ(disability)」、「ハンディキャップ(handicap)」および「障害者(disabled person)」という用語の翻訳に関連し、いくつかの国で生じている問題を承知し、
 任意の貢献を通しての、いくつかの政府によって提供された国連障害者の10年に対する任意拠出基金への寛大な支持を感謝をもって留意し、
 世界行動計画をさらに進めるにあたって演じられる、国内委員会の重要な役割を承知し、
 世界のいくつかの地方での障害者団体の出現と、それが障害をもつ人びとのイメージや状態に及ぼすプラスの影響によって励まされ、
 障害者の10年の終了を記念することを助ける重要な活動として、1992年に開催が予定されているリハビリテーション・インターナショナルの世界会議、障害者インターナショナル世界会議、世界盲人連合総会、自立92年(Independence '92)およびこうした他の重要な行事を認識し、
 障害者の地位改善のため、他の非政府組織によってなされつつある重要な貢献に留意し、
 障害者の10年以後も世界行動計画を持続し、実質的な実施の奨励を希望し、
1.国連障害者の10年の終了までおよびそれ以後の行動課題(agenda of action)中に設定された諸目的{31)}ならびに、障害者の10年の終了を記念して取るべき他の手段に関する実行可能性の研究についての事務総長の報告に含まれている、2000年までおよびそれ以後への長期方略「万人のための社会(a society for all)」の予備的概要{32)}を達成する必要性を強調し;
2.加盟各国、国連システムの専門機関や諸組織、政府間・非政府組織に、行動課題および予備的概要を実施すること、ならびに、以下のことを準備するさいにそれらをガイドラインや刺激として活用することを求め;
 (a)各国の文化、慣習、伝統、経済-社会開発のレベルおよび資源の制約状況に合致した方法で、障害をもつ人びとの利益になるよう、あらゆるレベルできちんと焦点が合わされた活動を設定する目的の国内、地域および国際行動課題;
 (b)2000年までに予防、リハビリテーションおよび機会の平等という分野で、到達されるべき正確な対象をもった長期方略プラン;
3.行動課題の実施のさいは、開発途上国の障害者に特別な配慮が払われるべきであることを確信し;
4.障害に関する国連の計画の焦点を、2010年までに万人のための社会を達成し、援助と助言サービスに対する多くの要請により適切に応じる目的をもって、意識の高揚から行動へと転換することを事務総長に要請し;
5.現存の資源の範囲内で、世界行動計画の実施に関する国際的合意を、障害者の10年以後も継承するよう更新し、また、加盟各国によって承認された政治的関与を引き出す行動中心型の計画に優先性を与えること、さらに、障害者の状況の持続的改善を保障することの必要性を強調し;
6.事務総長が加盟各国に対し、障害問題に関する国内委員会や類似の調整機関を設立したり、強化することについて支援すること、さらに、さまざまな団体を含む障害者団体の効果的な国内組織の設立を促進したり、支持することについて支援することを要請し;
7.また、事務総長に、世界行動計画の中で使用された「インペアメント」、「ディスアビリティ」、「ハンディキャップ」および「障害者」という用語を国連の公用語に翻訳するさいの問題点をレヴューすることを要請し;
8.障害者の10年の諸目的を実施することを可能にさせるため、事務局の社会開発・人道問題センターの障害者班(Disabled Persons Unit)を、現存の資源の範囲内で強化する特別な手段を見出す必要性を力説し;
9.国連障害者の10年のための任意拠出基金に対し、いくつかの国によってすでにおこなわれた支援を歓迎し、また、障害者班を強化し、その中心的な機能を果たせるようにするため、任意拠出による貢献をさらにおこなうよう訴え;
10.任意拠出基金の資源は、低開発途上国の計画やプロジェクトに、適切に、優先順位に従い、障害者の10年の枠組みの内で、世界行動計画の諸目的をさらに実現するための、触媒的・革新的活動を支援するために使用されるべきであることを再確認し;
11.政府および非政府組織が任意拠出基金への寄与を継続することを依頼し、また、まだ検討していない政府や非政府組織に、増大しつつある支援要求に効果的に応じられるよう任意拠出基金へ寄与することを要求し;
12.また、加盟各国が、行動課題の実施に関し、事務総長に最新の国内報告書を提出するよう求め;
13.事務総長に、本決議の実施に関し、第46回総会に報告するよう要請し;
14.第46回総会の暫定課題に、「障害者に関する世界行動計画の実施と国連障害者の10年」と題された項目を含めることを決定する。
 29)A/45/470
 30)Ibid., sect. Ⅱ, para. 14.
 31)Ibid., sect. Ⅲ.
 32)Ibid., sect. Ⅳ. 

国連総会決議46/96 1991年12月16日

障害者に関する世界行動計画の実施と国連障害者の10年

 国連総会は、
 障害者に関する世界行動計画を採択した1982年12月3日の決議37/52および、とりわけ長期行動プランとして1983年から1992年の期間を国連障害者の10年と宣言した1982年12月3日の決議37/53を含む、あらゆる関連決議を想起し、
 また、加盟各国、関連する政府間組織や非政府組織に、決議の付属文書に示された障害者の10年後半のグローバルな活動や計画の優先事項を、適切に、あらゆるレベルで行動に移すことを求めた1988年12月8日の決議43/98を想起し、
 さらに、障害者に関する国連の計画の焦点を、2010年までに万人のための社会を達成し、また、この達成に必要な手段の検討をする目的で、意識の高揚から行動へと転換することを求めた、1990年12月14日の決議45/91でなされた事務総長への要請を想起し、
 1991年5月30日の決議1991/9で、経済社会理事会が加盟各国に、1992年の国連障害者の10年終了までの国内における年次優先事項を定める目的でその政策と計画を、また、障害者の10年後に及ぶ世界行動計画の完全実施を保障する長期方略をレヴューすることを求めたことに留意し、
 障害をもつ人びとの機会均等化に関する基準原則を練り上げるため、1991年2月20日の決議32/2{64)}によって社会開発委員会が設置した、制限明示のない特別作業部会によってなされた進歩を歓迎し、
 多くの開発途上国の経済的・社会的状況が、障害者を含む傷つきやすいグループにマイナスの影響を及ぼすほど悪化しつつあることに懸念しながら留意し、
 障害者の10年の諸目的を達成するため、あらゆるレベルで、新しくまた、力を合わせた努力、いっそう活発で幅広い行動や手段が必要なことを承知し、
 障害者の状態と福祉を改善するため、障害者の10年の間に払った多くの加盟各国の努力および、障害者とその団体が彼らに関係するあらゆる問題に関与することへの加盟各国の積極性に感謝の念を表明し、
 任意の貢献を通しての、いくつかの政府によって提供された国連障害者の10年に対する任意拠出基金への寛大な支持を感謝をもって留意し、
 世界行動計画をさらに進めるためにあたって演じられる、国内委員会の重要な役割を承知し、
 1990年11月5日から11日にわたった北京(Beijing)での、開発途上国における国内障害問題調整委員会の役割と機能に関する国際会議(International Meeting on the Roles and Functions of National Coordinating Committees on Disability in Developing Countries)の開催および、国内障害問題調整委員会もしくは類似組織の設立と発展のためのガイドライン{65)}(Guidelines for the Establishment and Development of National Coordinating Committees on Disability or Similar Bodies)の採択を感謝の念をもって留意し、
 あらゆる地域における障害をもつ人びとの団体の出現および、それが障害をもつ人びとのイメージや状態に及ぼすプラスの影響に励まされ、
 障害をもつ人びとの地位改善について、他の非政府組織によってなされてきた重要な貢献を心に留め、
 障害者の10年の終了を記念し、さらに、障害をもつ人びとに対する今後の努力に着手することを助ける重要な活動として、1992年に開催が予定されているリハビリテーション・インターナショナルの世界会議、障害者インターナショナル世界会議、世界盲人連合総会、自立92年(Independence '92)およびこうした他の重要な行事を認識し、
 障害問題に対する国連システム内の中心としての、事務局の社会開発・人道問題センターによってなされた働きを推賞し、
 事務局の統計部(Statistical Office)によってなされた働きを推奨すると共に、その「障害統計概要{66)}(Disability Statistics Compendium)」の公刊を歓迎し、
 事務総長の報告{67)}を考慮し、
 障害者の10年以後も世界行動計画を持続し、実質的な実施の奨励を希望し、
1.国連障害者の10年の終了までおよびそれ以後の行動課題中に設定された諸目的ならびに、障害者の10年の終了を記念して取るべき他の手段に関する実行可能性の研究についての事務総長の報告{68)}に含まれている、2000年までおよびそれ以後への長期方略 「万人のための社会」の予備的概要を達成する必要性を再び指摘し;
2.行動課題の実施のさいは、開発途上国の障害をもつ人びとに特別な配慮が払われるべきであることを確信し;
3.加盟各国、国連システムのあらゆる組織および政府間・非政府組織に、障害をもつ人びとの積極的参加、現行の障害関連の政策、計画や利用可能なサービスを、予防、リハ ビリテーションおよび機会均等化の過程で遭遇した妨害と同じく、主要な進歩が達成された分野を確認しながら、レヴューし、評価することを求め;
4.国連システムのあらゆる組織に、積極的実行者であり、また受益者である障害者を含み、その計画や活動に障害をもつ人びとのニーズや関心を組み込むことを求め;
5.現存する資源の範囲内で、障害者の10年以後も障害者に関する世界行動計画を実施することについて、加盟各国によって認められてきた国際的合意を更新することになり、また、障害をもつ人びとの状態の持続的改善を保障する行動志向型の計画に優先性が与えられる必要性を強調し;
6.北京で採択された、障害問題国内調整委員会もしくは類似の組織の設立と発展のためのガイドライン{65)}を承認し;
7.事務総長に、このガイドラインを可能な限り広く普及させることを保障し、また、その実施を促進するために追跡する手段、とりわけ訓練セミナーに着手することについて加盟各国を支援することを要請し;
8.また、事務総長に、世界行動計画の用語、とりわけ「インペアメント」、「ディスアビリティ」、「ハンディキャップ」および「障害者」を国連の公用語に翻訳するさいの問題点のレヴューを来年中にはまとめ上げることを要請し;
9.障害者組織の発展に対するガイドライン{69)}を承認し、また、各国政府がその国内計画にこのガイドラインを考慮するよう奨励し;
10.各国政府および国連システムの諸組織が、障害をもつ人びとの機会均等化に関する基準原則を練り上げることに積極的に参加すること、ならびに、その際、障害をもつ女性の特有なニーズに関心を払うことを要求し;
11.事務総長に、1987年にストックホルム{70)}で、1990年にフィンランドのヤルヴェンパー{68)}で開催された専門家会議でまとめられた勧告で、障害をもつ人びとの団体が、障害者の10年および以後に関する国連のあらゆる活動とりわけ専門家会議に、十分に出席できるようにされるべきであるとされたことに留意するよう要請し;
12.法制化や運営機構、地域に根ざしたリハビリテーション、自立生活、人権に関する諸側面および経済的自立ならびに、1992年までとそれ以後の活動を調整し、モニターする効果的な国際機構の創造といった分野で実施されるべき、実際的で行動志向型の手段を勧告することを中心にし、2000年およびそれ以後まで世界行動計画を実施するための長期方略を構築する目的で、1992年4月、カナダのバンクーバーにおいて、「自立1992年」と連結して開く予定の国連専門家会議を開催するというカナダ政府の発表を歓迎し;
13.また、「国内障害政策の設定~行動課題(Setting National Disability Policies-An Agenda for Action)」というテーマの、障害に関する国際会議を開催するというアメリカ合衆国政府の申し出を歓迎し;
14.国連障害者の10年の終結を記念するため、適切なグローバルなレベルで、第47回総会で4回の全体会をあてることを決定し;
15.事務局の社会開発・人道問題センター障害者部が、現存の資源の範囲内で、効果的・効率的方法で障害者の10年の諸目的の実施において、その役割を果たすことを可能にするため、その任務を再編し、強化する必要性を強調し;
16.障害者部が、障害に関連した問題にその中心的機能を強化できるよう、さらに任意の貢献をするよう各国政府に訴えることを繰り返し;
17.国連障害者の10年のための任意拠出基金の資源は、低開発途上国の計画やプロジェクトに、適切に、優先順位に従い、障害者の10年およびそれ以後の枠組みの内で、世界行動計画の諸目的をさらに実現するための、触媒的・革新的活動を支援するために使用されるべきであることを再確認し;
18.政府および非政府組織が任意拠出基金への貢献を継続することを依頼し、また、まだ検討していない政府や非政府組織に、増大しつつある支援要求に効果的に応じられるよう任意拠出基金へ寄与することを要求し;
19.経済社会理事会が次の会期に、総会決議45/91に応じ、任意拠出基金の継続に関するレヴューをおこなうこと、また、第47回総会にその勧告を提出することを要請し;
20.加盟各国が、行動課題の実施に関し、事務総長に最新の国内報告を提出することを求め;
21.事務総長に、本決議の実施に関し、第47回総会に「社会開発」と題された報告をするよう要請する。
 64)See Official Records of the Economic and Social Council, 1991, Supplement No. 6 (E/1991/26), chap. I, sect. D.
 65)A/C. 3/46/4, annex I.
 66)United Nations publication, Sales No. E. 90.ⅩⅦ . 17.
 67)A/46/366.
 68)See A/45/470.
 69)A/C. 3/46/4, annex Ⅱ.
 70)See CSDHA/DDP/GME/7 of 1 September 1987.

1991年の動き

 1991年2月11~20日、社会開発委員会の第32期会議が開かれた。障害者問題に関しては、昨年5月の経済社会理事会の決議1990/26に従い、決議32/2「障害者の機会均等化に関する基準原則を練り上げるための制限明示のない作業部会の設置」を採択した。作業部会は各5日間、3回の会合を開くとされたが、開発途上国からの参加を促進するためアフリカ3人、アジア3人、ラテンアメリカとカリブ海地域3人、計9人ならびに東欧諸国2人の経費をスウェーデンが拠出するという申し出があった。このことと、基準原則策定の提案(および原案の作成)も含めて、作業部会の議長をスウェーデンに引き受けてもらうことになった。委員会はまた、2010年までに「万人のための社会」をという方針を尊重し、「国連障害者の10年」という決議32/5を採択し、経済社会委員会にその採択を勧告した。 

1990年経済社会理事会決議1990/26 障害者に対する機会の均等化

 経済社会理事会は、
 あらゆる人びとの権利を保護する国連の諸文書や諸勧告、他の国際的諸文書を想起し、
 とりわけ、第30回国連総会で採択された障害者権利宣言{65)}を想起し、
 第37回国連総会で採択された障害者に関する世界行動計画{66)}において、障害者の機会均等化とは、物理的・文化的環境、住宅および輸送、社会的サービスや保健サービス、教育および労働の機会、スポーツやレクリエーションの施設を含む文化的・社会的生活があらゆる人にアクセスできるようにされる過程と定義された{67)}ことに留意し、
 第37回国連総会で宣言された国連障害者の10年の目的が、障害者に関する世界行動計画の効果的実施の開始とみなされた{68)}ことを心に留め、
 障害者の10年の中間点である1987年、国連とスウェーデン政府によってストックホルムに召集された専門家全体会議が、障害者に関する世界行動計画の実施に向けてなされた進歩をレヴューしたことを想起し、
 専門家全体会議が、障害者に関する世界行動計画の実施に関し、数多くの重大で不十分な点を認めた{69)}ことを意識し、
 国連障害者の10年が終結する1992年に近づいた時点でも、まだ、生活のあらゆる面で障害児童・青年・成人が完全参加することを妨げる、重要な社会的・経済的・政治的・文化的障壁ならびに他の障壁が存在することを確信し、
 1989年12月8日の国連総会決議44/70の付属文書「障害分野における人的資源開発に関するタリン行動ガイドライン(Tallinn Guidelines for Action on Human Resources Development in the Field of Disability)」が、世界行動計画の目標をさらに精緻化したことを考慮に入れ、
 1990年5月7日から11日にわたりフィンランドのヤルヴェンパーで開かれた、国連とフィンランド政府共催の「国連障害者の10年の終了を記念し取るべき他の手段に関する専門家会議(Meeting of Experts on Alternative Ways to Mark the End of the United Nations Decade of Disabled Persons)」で障害者に対する機会均等化に関する問題が検討されたことに留意し、
 社会開発委員会による、委員会がおこなったことの実施に関する決議31/3{70)}を想起し、
 障害者が社会に完全参加するのを保障するには、より一層の手段が必要であることを確信し、
1.社会開発委員会がその第32会期に、任意拠出金に基づき、専門諸機関、他の政府間諸機構や非政府組織とりわけ障害者の団体と緊密な協力の下に、障害児童・青年・成人の機会均等化に関する基準原則を練り上げるため、政府諸専門家による制限明示のない特別作業部会を設置する権限を与え、
2.社会開発委員会がかかる作業部会を設置し、経済社会理事会が1993年の最初の定期会期で審議し、第48会期の国連総会に提出するため、諸原則の最終案の取りまとめを要請する。

第13回総会、1990年5月24日

 65)国連総会決議3447(Ⅹ・・Ⅹ・・Ⅹ)。
 66)国連総会決議37/52参照。
 67)A/37/351/Add.1 and Corr.1, annex, sect.Ⅷ, recommendation 1(Ⅳ), para. 12 参照。
 68)国連総会決議37/53、para. 11.
 69)CSDHA/DDP/GME/7 of 1 September 1987 参照。
 70)Official Records of the Economic and Social Council, 1989, Supplement No.7 (E/1989/25), chap.I, sect. D. 参照。

社会開発委員会決議32/2 1991年2月20日
障害者の機会均等化に関する基準原則を練り上げる制限明示のない特別作業部会の設置

 社会開発委員会は、
 1990年5月24日の経済社会理事会決議1990/26が、その第1パラグラフで、社会開発委員会に、その第32会期に障害児童・青年・成人の機会均等化に関する基準原則を練り上げるため、任意拠出金に基づく、政府専門家による制限明示のない特別作業部会を設置する権限を与えたことを想起し、
1.経済社会理事会の決議1990/26第1パラグラフに従い、政府専門家による制限明示のない特別作業部会を設置することを決定し;
2.作業部会が、社会開発委員会第33会期に結果を提出できるよう、各5日間、最大3回でその作業を完了すべきことを決定し;
3.理事会の決議1990/26第2パラグラフに従い、1993年の理事会第1定期会期に検討され、国連総会第48会期に提出できるよう、基準原則を最終的に仕上げることを決定し;
4.基準原則の準備に積極的に参加するよう、あらゆる地域からの加盟各国に要求し;
5.また、加盟各国が、かかる原則の準備を可能にするため、特別な財政的貢献をおこなうことを要求し;
6.事務総長が、必要となる事務局への支援を提供するよう、事務局の社会開発・道問題センターに指示することを要請する。

 5月に開催された経済社会理事会では、障害者問題に関連する4つの決議が採択された。①決議1991/8国内調整委員会に関するもの(即述)。②決議1991/9国連障害者の10年。③決議1991/21障害女性に関するもの。④決議1991/29精神病をもつ人びとの保護と精神保健ケアの改善。国連内では①、②は障害者問題の決議とされ、③、④は人権に関する決議とされている。④は総会で、決議46/119として採択されているが、付属文書「精神病をもつ人びとの保護と精神保健ケアの改善のための原則」は原則1~25にわたって、精神保健施設入所・入院患者の人権問題を取り上げている。
 いずれの決議も無投票採択がなされた。
 総会第3委員会では、事務総長の報告{12)}を基に、焦点を意識の高揚から行動の喚起へ向けること、活動の進展状況、障害者の10年終結を記念する方法、2000年以後への長期方略、任意拠出金、機会均等化の基準原則のことなどが論じられた。11月8日、フィリピンを代表とする34か国の共同提案の決議案「障害者に関する世界行動計画の実施と国連障害者の10年」を無投票で採択した。その直後、アメリカなど7か国が共同提案国に加わり、42か国の共同提案(日本は入っていない)となった{13)}。
 総会では12月14日、無投票で採択された。

 注
 1)E/CN. 5/1989/6
 2)E/1989/25-E/CN. 5/1989/2
 3)A/44/406/Rev. 1
 4)A/44/755
 5)外務省の国際連合第44回総会の事業(下)では32か国としているが、これは誤りであろう。
 6)A/C. 3/44/SR. 16
 7)6)と同じ
 8)Report of the Expert Group Meeting on Alternative Ways to Mark The End of The United Nations Decade of Disabled Persons. 1991.
 9)A/45/470
 10)A/C. 3/45/SR.
 11)E/1991/26-E/CN.5/1991/9
 12)A/46/366
 13)A/46/704


主題 国際連合と障害者問題 - 重要関連決議・文書集 -
編者 中野善達 (Yoshitasu Nakano)
発行日 1997年6月25日 第一刷
発行所 エンパワメント研究所