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別府市障害のある人もない人も安心して安全に暮らせる条例

平成25年9月30日 条例第32号

目次

 私たちのまち別府市では、身体障害者福祉モデル都市や住みよい福祉のまちづくりの指定を受け、障害のある人にとって住みやすいまちづくりが行われてきた。
 しかしながら、障害のある人は、保育、教育、就労、医療、移動、生活環境、情報、防災、親亡き後等の問題など社会生活全般において、障害への理解の不足や社会にある様々な障壁により、依然として障害があるために諦めなければならない現実や障害への無理解による差別や偏見がなくならない状況があり、あらゆる場面で、生活のしづらさと不安を感じている。
 また、平成23年3月11日に発生した東日本大震災では、多くの尊い命と貴重な財産が失われ、障害のある人も多大な被害を受けた。このことに関する課題を明らかにし、考えられるあらゆる災害を想定した対応や対策を、市、市民及び事業者がお互いに連携・協働して講ずることにより、被害は最小限にとどめることができるものと考える。
 このような中で私たちは、障害のある人もない人も同じ地域社会の一員として、全てに隔たりがなく平等な機会が与えられ、誰もがありのままの存在を認め合い、一人ひとりの個人の尊厳や人格や思いが大切にされ、互いに支え合う心や共に思いやる心を育み、自己選択や自己決定を尊重する真の意味での自立と社会参加の実現を確立し、住む人も訪れる人も、障害のある人もない人も、全ての人が社会の一員として共生社会を築きあげる役割を担い、幸せや喜びを享受できる安心して安全に暮らせる別府市を実現することを目指して、この条例を制定する。

第1章 総則

(目的)
第1条 この条例は、障害を理解し、障害のある人への差別をなくすことに関し、基本理念を定め、市、市民及び事業者の責務を明らかにするとともに、障害のある人への差別及び虐待をなくすための取組に係る施策の基本となる事項を定めることにより、その施策を総合的に推進し、もって障害のある人もない人も安心して安全に暮らすことのできる共生社会の実現に寄与することを目的とする。

(定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
 (1) 障害 身体、知的、精神その他の心身の機能が傷病その他の事由によりその能力が発揮されないため、継続的に日常生活又は社会生活を営むに当たって、社会的な制度の整備及び支援を必要とする状態のことをいう。
 (2) 差別 障害を理由として不利益な取扱いをすること及び合理的配慮を怠ることをいう。
 (3) 社会的障壁 障害のある人にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。
 (4) 合理的配慮 障害のある人が、他の人と平等に全ての人権及び基本的自由を享有し、日常生活又は社会生活を営むことができるよう社会的障壁を取り除くに当たって、その実施に伴う負担が過重でない場合に、障害のある人にとって必要とされる社会的な制度の整備及び支援を行うことをいう。
 (5) 虐待 障害のある人に対して、暴行、暴言、侮辱、嫌がらせ、無視、放置、財産の侵奪、わいせつ行為、性的無配慮等を行うこと又は障害のある人をしてそれらの行為をさせることをいう。
 (6) 自立 第三者の支えを必要とするか否かにかかわらず、自らの人生を自らの意思で選択できることをいう。
 (7) 市民 別府市内に居住し、又は通勤し、若しくは通学する者をいう。
 (8) 事業者 別府市内において事業活動を行う全ての者をいう。

(基本理念)
第3条 全て障害のある人は、障害を理由として差別を受けず、自らが選択した地域において生活し、地域社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する権利を有する。
 障害は、個人の心身の機能の状態から直接的に生じるものではなく、その状態と社会的障壁との相互作用によって生じるものであることから、障害のある人に対しては合理的配慮が行われなければならない。

(市の責務)
第4条 市は、第1条に規定する目的の実現を図るため、前条に定める基本理念にのっとり、障害のある人への差別及び虐待をなくすための取組に係る施策を総合的かつ計画的に実施するものとする。
 市は、障害のある人への差別及び虐待をなくすための取組を行うに当たって、次に掲げる事項を基本としなければならない。
 (1) 障害のある人への差別の多くが、障害に対する理解の不足から生じていることを踏まえ、障害に対する理解を広め、定着させること。
 (2) 公共的施設の整備その他障害のある人に関する施策を実施するに当たっては、障害のある人から意見を聴取するよう努めること。
 (3) 市、市民及び事業者が相互に連携し、障害のある人の選択を尊重して取り組むこと。
 (4) 障害のある人だけではなく、障害のない人にとっても暮らしやすい地域づくりにつながるとの考え方の基に、多くの市民の参加の下で取り組むこと。
 (5) 地縁による団体その他地域づくりを目的とする団体及び組織と連携し、協働を図ること。

(市民及び事業者の責務)
第5条 市民及び事業者は、第3 条に定める基本理念にのっとり、障害に対する理解を深めるとともに、障害のある人への差別及び虐待をなくすための取組に協力するよう努めなければならない。

(合理的配慮の評価)
第6条 市は、毎年度、この条例に基づく合理的配慮の実施状況を確認し、その評価を行わなければならない。

第2章 障害のある人への差別及び虐待をなくすための取組

第1節 差別及び虐待の禁止

(差別の禁止)
第7条 何人も、障害のある人に対し、差別をしてはならない。

(虐待の禁止)
第8条 何人も、障害のある人に対し、虐待をしてはならない。

第2節 相互理解の促進

第9条 市は、市民及び事業者が障害に対する理解を深めるよう啓発その他必要な施策を講ずるものとする。
 市は、障害のある人に対する支援を適切に行うため、全ての職員が合理的配慮の必要性を理解するよう研修その他必要な施策を講ずるものとする。
 市は、義務教育において、児童及び生徒が障害に対する理解を深めるよう障害に関する教育を教育課程に位置付けるとともに、児童及び生徒に対して、当該教育を行うものとする。

第3節 合理的配慮

(生活支援に関する合理的配慮)
第10条 市及び事業者は、障害のある人及びその家族の人権に配慮し、障害のある人が地域で自立した生活を営むに当たって必要とする支援及びその情報提供を行うよう努めるものとする。
 市は、障害のある人への相談及び支援を行うに当たって、事業者との連携を図り、相談者を円滑に各種相談窓口へつなぐための体制並びに障害のある人及びその家族を含め同じ課題を解決するためにお互いを支え合う仕組みを備えた総合的な相談体制を整備するよう努めるものとする。
 市及び事業者は、障害のある人への相談及び支援を行うに当たって、これらの事務を担当する者の専門知識及び職業倫理の向上に努めるものとする。
 市は、情報を取得又は利用することが困難な障害のある人に対して、情報を取得又は利用しやすくするための機器の活用の促進及び障害の特性に配慮した情報の提供を行うよう努めるものとする。
 市及び事業者は、障害のある人及びその家族の求めに応じ、重度の障害があっても安心して自立した生活を営むことができるよう必要な施策を講じるとともに、障害福祉サービス、障害のある人を支援する者その他の障害のある人にとって必要とされる社会資源の充実に努めるものとする。

(生活環境に関する合理的配慮)
第11条 市は、道路の整備に当たって、障害のある人の通行及び公共交通機関の利用に支障がないよう努めるものとする。
 市は、市営住宅においては、障害のある人にとって必要とされる住戸を確保するよう努めるとともに、民間共同住宅においては、障害のある人にとって必要とされる住宅の整備が促進されるよう支援に努めるものとする。
 市は、障害のある人の民間住宅の賃借を円滑にするため、障害のある人にとって必要とされる保証人制度の整備に努めるものとする。
 市及び事業者は、公共的施設において、障害のある人にとって必要とされる設備の確保に努めるものとする。
 市及び事業者は、障害のある人の公共交通機関の利用を円滑にするため、障害のある人にとって必要とされる体制の整備及び研修の実施に努めるものとする。

(防災に関する合理的配慮)
第12条 市は、障害のある人に対する災害時の安全を確保するため、防災に関する計画を策定するに当たっては、障害のある人にとって必要とされる配慮に努めるものとする。
 市は、障害のある人及びその家族が災害時に被る被害を最小限にとどめるため、災害が生じた際に障害のある人にとって必要とされる援護の内容を具体的に定め、その整備を継続的に行うよう努めるものとする。

(雇用及び就労に関する合理的配慮)
第13条 市及び事業者は、障害のある人にとって必要とされる雇用及び就労に関する環境を整備するよう努めるものとする。
2  市は、障害のある人の希望と適性に応じ、障害のある人が一般就労又は福祉的就労を行えるよう、行政、企業、福祉、医療その他の関係者による支援体制を広げるよう努めるものとする。
3  市は、障害のある人の就労を推進するため、障害の適性に応じた雇用の創出の促進に努めるものとする。

(保健及び医療に関する合理的配慮等)
第14条 市は、障害のある人及びその家族が安心して医療を受けられるよう、福祉、保健、医療、自治委員、民生委員、児童委員その他の関係者と連携し、障害のある人及びその家族の置かれている実情への理解を深め、支援に努めるものとする。  市は、障害のある人及びその家族に緊急を要する事態が発生した場合の対応を確立するよう努めるものとする。
 市は、障害のある人の保健事業又は医療支援の利用を円滑にするため、障害のある人にとって必要とされる制度の整備を行うよう努めるものとする。
 医療及び介護に関係する事業者は、従事者に対して、障害に対する理解を深めるための研修を実施するよう努めるものとする。

(保育及び教育に関する合理的配慮等)
第15条 市は、小学校就学前の障害のある人に対し、共に生き、共に育ち合うことを基本とし、他の子どもとともに保育及び教育を実施するよう努めるものとする。
 市は、子どもたちに、障害についての正しい知識を提供するとともに、障害のある人に対する差別又はいじめを根絶するため、教職員に対し、障害に対する理解並びに障害のある人及びその家族の置かれている実情への理解を深めるために必要な研修の実施に努めるものとする。
 市は、特別支援学校と小学校、中学校等との連携及び調整を推進するよう努めるものとする。

(芸術文化及びスポーツに関する合理的配慮)
第16条 市は、障害のある人が芸術文化及びスポーツに参加することができるよう障害のある人にとって必要とされる支援体制の整備、指導員の育成及び情報提供を行うよう努めるものとする。

第3章 差別等事案を解決するための仕組み

(相談)
第17条 障害のある人、その家族又はその関係者は、障害のある人への差別又は虐待に該当すると思われる事案( 以下「差別等事案」という。)について、市に相談することができる。
 市は、前項の規定による相談があったときは、次に掲げる事務を行うものとする。
 (1) 関係者への事実の確認及び調査を行うこと。
 (2) 関係者に必要な助言及び情報提供を行うこと。
 (3) 相談に係る関係者間の調整を行うこと。
 (4) 関係行政機関への紹介を行うこと。
 市は、障害のある人への相談支援を行う事業者に、前項各号に掲げる事務の全部又は一部を委託することができる。

(助言又はあっせんの申立て)
第18条 障害のある人は、差別等事案があるときは、市長に対し、当該差別等事案を解決するために必要な助言又はあっせんを行うよう申し立てることができる。
 障害のある人の家族その他関係者は、前項に規定する申立てをすることができる。ただし、障害のある人本人の意に反することが明らかであると認められるときは、この限りでない。
 前2項の規定による申立ては、その差別等事案が次の各号のいずれかに該当するときは、することができない。
 (1) 行政不服審査法(昭和37年法律第160号)その他の法令により審査請求その他の不服申立てをすることができるとき。
 (2) 申立ての原因となる事実のあった日(継続する行為にあっては、その行為の終了した日)から3 年を経過しているとき(その期間に申立てができなかったことにつきやむを得ない理由があるときを除く。)。
 (3) 現に犯罪の捜査の対象となっているとき。

(調査)
第19条 市長は、前条第1 項又は第2 項の規定による申立てがあったときは、当該申立てに係る事実について調査を行うことができる。この場合において、調査の対象となる者は、正当な理由がある場合を除き、これに協力しなければならない。

(助言又はあっせん)
第20条 市長は、前条の規定による調査の結果、必要があると認めるときは、別府市障害者差別等事案解決委員会に対し、助言又はあっせんを行うことについて諮問するものとする。
 前項の場合において、別府市障害者差別等事案解決委員会が助言又はあっせんを行うことが適当と認めたときは、市長は、当該差別等事案に係る障害のある人及び関係者に対し、助言又はあっせんを行うものとする。

(勧告)
第21条 市長は、前条第2 項の規定により助言又はあっせんを行った場合において、差別又は虐待をしたと認められる者が正当な理由なく当該助言又はあっせんに従わないときは、当該差別又は虐待をしたと認められる者に対して当該助言又はあっせんに従うよう勧告することができる。

(別府市障害者差別等事案解決委員会の設置)
第22条 市長の附属機関として、別府市障害者差別等事案解決委員会(以下この条において「委員会」という。)を置く。
 委員会は、市長の諮問に応じ、差別等事案に係る申立てについて調査及び審議する。
 委員会は、委員12人以内で組織する。
 委員は、障害のある人への差別又は虐待に関し、優れた識見を有する者のうちから市長が委嘱する。
 委員の任期は、2 年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
 委員は、再任されることができる。
 委員会に委員長を置き、委員の互選によりこれを定める。
 委員長は、会務を総理し、委員会を代表する。
 委員長に事故があるとき又は委員長が欠けたときは、委員長があらかじめ指名する委員が、その職務を代理する。

第4章 親亡き後等の問題を解決するための取組

第23条 市は、障害のある人を保護する者が死亡その他の事由により当該障害のある人を保護できなくなる場合の問題を解決する総合的な施策を策定し、これを実施するものとする。

第5章 雑則

第24条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。

附則

(施行期日)
 この条例は、平成26年4月1日から施行する。

(特別職の職員で非常勤のものの報酬及び費用弁償に関する条例の一部改正)
 特別職の職員で非常勤のものの報酬及び費用弁償に関する条例(昭和31年別府市条例第25号)の一部を次のように改正する。
 別表に次のように加える。

別府市障害者差別等
事案解決委員会委員
日額 4,900円 同上