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障害のある人もない人も共に生きる鹿児島づくり条例

目次

 全ての県民は,障害の有無にかかわらず,等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人であり,障害の有無によって分け隔てられることなく,相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現が望まれる。
 しかしながら,今なお障害のある人が,日常生活及び社会生活の様々な場において,障害を理由とする不利益な取扱いや,様々な社会的障壁による制約に直面している。  本県においては,高齢化の進行等とともに,年々障害のある人の数が増加する傾向にあり,また,離島においては,福祉サービスの利用が島内に限定されるなど地理的条件による制約がある。
 このような状況を踏まえ,私たちは,障害のある人に対する福祉サービスを充実するとともに,幼児期から障害のある人とない人とが交流する機会を設けるなどして,障害のある人もない人も共に地域社会で生きるという意識を育むことにより,県民の障害に対する理解を深め,障害を理由とする差別の解消を推進しなければならない。
 ここに,障害を理由とする差別をなくし,障害のある人もない人も,一人一人の人格と個性が尊重され,社会を構成する対等な一員として,安心して暮らすことのできる鹿児島づくりを進めるため,この条例を制定する。

第1章 総則

(目的)
第1条 この条例は,障害を理由とする差別の解消に関し,基本理念を定め,県及び県民の責務を明らかにするとともに,障害を理由とする差別を解消するための基本となる事項を定めることにより,障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)と相まって,障害を理由とする差別の解消を推進することを目的とする。

(定義)
第2条 この条例において,次の各号に掲げる用語の意義は,それぞれ当該各号に定めるところによる。
 (1) 障害のある人身体障害,知的障害,精神障害(発達障害を含む。) その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって,障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。
 (2) 社会的障壁障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物,制度,慣行,観念その他一切のものをいう。
 (3) 障害を理由とする差別障害のある人に対し,正当な理由なく障害を理由とする不利益な取扱いをすること又は社会的障壁の除去を必要としている障害のある人が現に存し,かつ,その実施に伴う負担が過重でないときに,障害のある人の権利利益を侵害することとならないよう,社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮がなされないことをいう。

(基本理念)
第3条 障害を理由とする差別の解消に関する施策は,次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。
 (1) 全ての県民は,障害の有無にかかわらず,等しく基本的人権を享有する個人としての尊厳が重んぜられ,その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有すること。
 (2) 全ての障害のある人は,社会を構成する一員として社会,経済,文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されること。
 (3) 全ての障害のある人は,可能な限り,どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され,地域社会において他の人々と共生することを妨げられないこと。
 (4) 障害を理由とする差別の多くが障害のある人に対する誤解,偏見その他の理解の不足から生じていること及び誰もが障害を有することとなる可能性があることを踏まえ,障害のある人だけでなく全ての県民が,障害についての知識及び理解を深める必要があること。

(県の責務)
第4条 県は,前条に規定する基本理念にのっとり,障害を理由とする差別の解消の推進に関して必要な施策(以下「障害者差別解消施策」という。) を策定し,及びこれを実施する責務を有する。

(市町村への要請及び支援)
第5条 県は,市町村に対し,地域の実情に応じた障害者差別解消施策を策定し,及びこれを実施することを求めるものとする。
 県は,障害のある人に関する施策における市町村の役割の重要性に鑑み,市町村と連携を図るとともに,市町村が障害者差別解消施策を策定し,及びこれを実施しようとするときは,市町村に対して情報の提供,技術的な助言その他の必要な支援を行うものとする。

(県民の責務)
第6条 県民は,第3条に規定する基本理念にのっとり,障害のある人に対する理解を深めるとともに,県又は市町村が実施する障害者差別解消施策に協力するよう努めるものとする。
 障害のある人は,自らの障害の特性及び障害があることによる社会的障壁について可能な範囲内において,県民に伝え,理解が得られるよう努めるものとする。

(財政上の措置)
第7条 県は,障害者差別解消施策を実施するために必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

第2章 障害を理由とする差別の禁止

(障害を理由とする差別の禁止)
第8条 次条から第16条までに定めるもののほか,何人も,障害のある人に対して,障害を理由とする不利益な取扱いをしてはならない。
 社会的障壁の除去は,それを必要としている障害のある人が現に存し,かつ,その実施に伴う負担が過重でないときは,それを怠ることによって障害のある人の権利利益を侵害することとならないよう,その実施について必要かつ合理的な配慮がなされなければならない。

(福祉サービスの提供における障害を理由とする不利益取扱いの禁止)
第9条 福祉サービスに従事する者は,障害のある人に対して福祉サービスを提供する場合において,正当な理由なく,障害を理由として,福祉サービスの提供を拒否し,若しくは制限し,又はこれに条件を付し,その他不利益な取扱いをしてはならない。
 福祉サービスに従事する者は,障害のある人の心身の状況,その置かれている環境及び障害のある人の福祉サービスの利用に関する意向等を勘案することなく,障害を理由として,障害のある人の意思に反して,福祉サービスを行う施設への入所その他福祉サービスの利用を強制してはならない。

(医療の提供における障害を理由とする不利益取扱いの禁止)
第10条 医療従事者は,障害のある人に対して医療を提供する場合において,正当な理由なく,障害を理由として,医療の提供を拒否し,若しくは制限し,又はこれに条件を付し,その他不利益な取扱いをしてはならない。
 医療従事者は,法令に別段の定めがある場合を除き,障害を理由として,障害のある人が希望しない長期間の入院その他の医療を受けることを強制してはならない。

(商品の販売及び役務の提供における障害を理由とする不利益取扱いの禁止)
第11条 不特定かつ多数の者に対して商品の販売又は役務の提供を行う者は,障害のある人に対して商品の販売又は役務の提供を行う場合において,正当な理由なく,障害を理由として,商品の販売若しくは役務の提供を拒否し,若しくは制限し,又はこれに条件を付し,その他不利益な取扱いをしてはならない。

(労働及び雇用における障害を理由とする不利益取扱いの禁止)
第12条 事業主は,労働者の募集又は採用を行う場合において,障害のある人に対し,正当な理由なく,障害を理由として,応募又は採用を拒否し,若しくは制限し,又はこれに条件を付し,その他不利益な取扱いをしてはならない。
 事業主は,障害のある人を雇用する場合において,次に掲げる事項について,正当な理由なく,障害を理由として,不利益な取扱いをしてはならない。
 (1) 賃金
 (2) 労働時間,休憩,休日及び休暇
 (3) 昇進,降格,配置転換,休職及び復職
 (4) 教育訓練及び研修
 (5) 福利厚生
 (6) 前各号に掲げるもののほか,労働条件に関すること。
 事業主は,正当な理由なく,障害を理由として,障害のある人を解雇してはならない。

(教育における障害を理由とする不利益取扱いの禁止)
第13条 教育委員会及び校長,教員その他の教育関係職員は,障害のある人が教育を受ける場合において,障害のある人の年齢及び能力に応じ,かつ,その特性を踏まえた十分な教育が受けられるようにするための教育上必要な支援を講じなければならない。
2 教育委員会は,障害のある人若しくはその保護者(学校教育法(昭和22年法律第26号)第16条に規定する保護者をいう。)に対し必要な説明を行わず,又はこれらの者から意見を聴取せずに,就学させるべき学校(同法第1条に規定する小学校,中学校又は特別支援学校(小学部及び中学部に限る。)をいう。)を決定してはならない。

(公共的施設及び交通機関の利用における障害を理由とする不利益取扱いの禁止)
第14条 不特定かつ多数の者の利用に供される建物,施設又は設備(以下「公共的施設」という。)の所有者,管理者又は占有者は,その公共的施設を障害のある人が利用する場合において,正当な理由なく,障害を理由として,利用を拒否し,若しくは制限し,又はこれに条件を付し,その他不利益な取扱いをしてはならない。  公共交通事業者等(高齢者,障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(平成18年法律第91号)第2条第4号に規定する公共交通事業者等をいう。)は,その管理する旅客施設(同条第5号に規定する旅客施設をいう。)又は車両等(同条第7号に規定する車両等をいう。)を障害のある人が利用する場合において,正当な理由なく,障害を理由として,利用を拒否し,若しくは制限し,又はこれに条件を付し,その他不利益な取扱いをしてはならない。

(不動産取引における障害を理由とする不利益取扱いの禁止)
第15条 不動産取引を行う者は,障害のある人と不動産取引を行う場合において,正当な理由なく,障害を理由として,取引を拒否し,若しくは制限し,又はこれに条件を付し,その他不利益な取扱いをしてはならない。

(情報の提供及び受領における障害を理由とする不利益取扱いの禁止)
第16条 不特定かつ多数の者に対して情報の提供を行う者又は不特定かつ多数の者から情報を受領する者は,障害のある人に対して情報の提供を行い,又は障害のある人から情報を受領する場合において,正当な理由なく,障害を理由として,情報の提供又は受領を拒否し,若しくは制限し,又はこれに条件を付し,その他不利益な取扱いをしてはならない。

第3章 障害を理由とする差別をなくすための施策

(相談への対応)
第17条 県は,障害を理由とする差別に関し,相談に応ずるものとする。
 県は,前項の相談を受けたときは,次に掲げる業務を行うものとする。
 (1) 相談者に対して必要な助言及び情報提供を行うこと。
 (2) 相談に係る関係者間の調整を行うこと。
 (3) 関係行政機関への通告,通報その他通知を行うこと。

(相談員の配置)
第18条 知事は,前条第2項各号に掲げる業務を行わせるため,障害のある人に関する相談又は人権擁護について知識又は経験を有する者のうちから,相談員を委嘱することができる。
 相談員は,この条例に基づき業務上知り得た秘密を漏らしてはならない。相談員でなくなった後においても,同様とする。

(鹿児島県障害者差別解消支援協議会の設置)
第19条 障害を理由とする差別を解消するための取組を推進するため,鹿児島県障害者差別解消支援協議会(以下「協議会」という。)を設置する。
 協議会は,次に掲げる事務を行う。
 (1) 障害を理由とする不利益な取扱いに該当する事案(以下「対象事案」という。)について,あっせんを行うこと。
 (2) 知事の諮問に応じ,障害を理由とする差別の解消の推進に関する事項に関し,調査審議すること。
 協議会は,障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律第17条第1項に規定する障害者差別解消支援地域協議会とする。

(あっせんの申立て)
第20条 障害のある人は,自己に対する対象事案の解決を図るため,知事に対してあっせんの申立てをすることができる。
 対象事案に係る障害のある人の家族その他の関係者は,前項の申立てをすることができる。ただし,当該申立てをすることが障害のある人の意に反することが明らかであると認められるときは,この限りでない。
 前2項の申立ては,第17条第2項に規定する相談への対応を経た後でなければ,することができない。
 第1項及び第2項の申立ては,行政不服審査法(昭和37年法律第160号)その他の法令に基づく不服申立て又は苦情申立てをすることができる行政庁の処分又は職務執行については,することができない。

(あっせん)
第21条 知事は,前条第1項又は第2項の申立てがあったときは,協議会に対して,あっせんの手続を開始するよう求めるものとする。
 協議会は,前項の規定による求めがあったときは,あっせんが対象事案の解決に資すると認められない場合を除き,あっせんを行うものとする。
 協議会は,あっせんを行うために必要があると認めるときは,対象事案の関係者に対して,その出席を求めて説明若しくは意見を聴き,又は資料の提出を求めることができる。
 協議会は,第2項の規定によりあっせんを行わないこととしたとき,あっせんが終わったとき又はあっせんを打ち切ったときは,その旨を知事に報告するものとする。

(勧告及び公表)
第22条 協議会は,障害を理由とする不利益な取扱いを行った者が,正当な理由なくあっせん案を受諾せず,又はこれを受諾したにもかかわらず,あっせんに従わないときは,知事に対して,障害を理由とする不利益な取扱いを行った者が,障害を理由とする不利益な取扱いを解消する措置をとるように勧告することを求めることができる。
 知事は,前項の規定による求めがあった場合において,必要があると認めるときは,障害を理由とする不利益な取扱いを行った者に対して,必要な措置をとるように勧告することができる。
 知事は,前項の規定による勧告を受けた者が正当な理由なく当該勧告に従わないときは,その旨を公表することができる。

(意見陳述の機会の付与)
第23条 知事は,前条第3項の規定による公表をしようとするときは,あらかじめ,当該公表に係る者に対してその旨を通知し,かつ,その者又はその代理人に対して意見を述べる機会を与えなければならない。

(表彰)
第24条 知事は,障害を理由とする差別の解消の推進に特に功績があったものに対し,表彰を行うものとする。

(普及啓発)
第25条 県は,障害を理由とする差別を解消することの重要性について県民の関心と理解を深めるため,障害及び障害のある人に関する知識の普及啓発に努めるものとする。

第4章 雑則

(規則への委任)
第26条 この条例に定めるもののほか,この条例の施行に関し必要な事項は,規則で定める。

附則

 この条例は,平成26年10月1日から施行する。ただし,第19条第3項の規定は,平成28年4月1日から施行する。

 知事は,この条例の施行後3年を目処として,この条例の施行の状況,社会経済情勢の推移等を勘案し,必要があると認めるときは,この条例の規定について検討を加え,その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。