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障害者差別禁止指針

障害者に対する差別の禁止に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針

第1 趣旨

 この指針は、障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号。以下「法」という。)第36条第1項の規定に基づき、法第34条及び第35条の規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処することができるよう、これらの規定により禁止される措置として具体的に明らかにする必要があると認められるものについて定めたものである。

第2 基本的な考え方

 全ての事業主は、法第34条及び第35条の規定に基づき、労働者の募集及び採用について、障害者(身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者をいう。以下同じ。)に対して、障害者でない者と均等な機会を与えなければならず、また、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、労働者が障害者であることを理由として、障害者でない者と不当な差別的取扱いをしてはならない。
 ここで禁止される差別は、障害者であることを理由とする差別(直接差別をいい、車いす、補助犬その他の支援器具等の利用、介助者の付添い等の社会的不利を補う手段の利用等を理由とする不当な不利益取扱いを含む。)である。
 また、障害者に対する差別を防止するという観点を踏まえ、障害者も共に働く一人の労働者であるとの認識の下、事業主や同じ職場で働く者が障害の特性に関する正しい知識の取得や理解を深めることが重要である。

第3 差別の禁止

1 募集及び採用

(1) 「募集」とは、労働者を雇用しようとする者が、自ら又は他人に委託して、労働者となろうとする者に対し、その被用者となることを勧誘することをいう。「採用」とは、労働契約を締結することをいい、応募の受付、採用のための選考等募集を除く労働契約の締結に至る一連の手続を含む。

(2) 募集又は採用に関し、次に掲げる措置のように、障害者であることを理由として、その対象から障害者を排除することや、その条件を障害者に対してのみ不利なものとすることは、障害者であることを理由とする差別に該当する。ただし、14に掲げる措置を講ずる場合については、障害者であることを理由とする差別に該当しない。
イ 障害者であることを理由として、障害者を募集又は採用の対象から排除すること。
ロ 募集又は採用に当たって、障害者に対してのみ不利な条件を付すこと。
ハ 採用の基準を満たす者の中から障害者でない者を優先して採用すること。

(3) (2)に関し、募集に際して一定の能力を有することを条件とすることについては、当該条件が当該企業において業務遂行上特に必要なものと認められる場合には、障害者であることを理由とする差別に該当しない。一方、募集に当たって、業務遂行上特に必要でないにもかかわらず、障害者を排除するために条件を付すことは、障害者であることを理由とする差別に該当する。

(4) なお、事業主と障害者の相互理解の観点から、事業主は、応募しようとする障害者から求人内容について問合せ等があった場合には、当該求人内容について説明することが重要である。また、募集に際して一定の能力を有することを条件としている場合、当該条件を満たしているか否かの判断は過重な負担にならない範囲での合理的配慮(法第36条の2から第36条の4までの規定に基づき事業主が講ずべき措置をいう。以下同じ。)の提供を前提に行われるものであり、障害者が合理的配慮の提供があれば当該条件を満たすと考える場合、その旨を事業主に説明することも重要である。

2 賃金

(1) 「賃金」とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称のいかんを問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払う全てのものをいう。

(2) 賃金の支払に関し、次に掲げる措置のように、障害者であることを理由として、その対象から障害者を排除することや、その条件を障害者に対してのみ不利なものとすることは、障害者であることを理由とする差別に該当する。ただし、14に掲げる措置を講ずる場合については、障害者であることを理由とする差別に該当しない。
イ 障害者であることを理由として、障害者に対して一定の手当等の賃金の支払をしないこと。
ロ 一定の手当等の賃金の支払に当たって、障害者に対してのみ不利な条件を付すこと。

3 配置(業務の配分及び権限の付与を含む。)

(1) 「配置」とは、労働者を一定の職務に就けること又は就いている状態をいい、従事すべき職務における業務の内容及び就業の場所を主要な要素とするものである。
 なお、配置には、業務の配分及び権限の付与が含まれる。「業務の配分」とは、特定の労働者に対し、ある部門、ラインなどが所掌している複数の業務のうち一定の業務を割り当てることをいい、日常的な業務指示は含まれない。
 また、「権限の付与」とは、労働者に対し、一定の業務を遂行するに当たって必要な権限を委任することをいう。

(2) 配置に関し、次に掲げる措置のように、障害者であることを理由として、その対象を障害者のみとすることや、その対象から障害者を排除すること、その条件を障害者に対してのみ不利なものとすることは、障害者であることを理由とする差別に該当する。ただし、14に掲げる措置を講ずる場合については、障害者であることを理由とする差別に該当しない。
イ 一定の職務への配置に当たって、障害者であることを理由として、その対象を障害者のみとすること又はその対象から障害者を排除すること。
ロ 一定の職務への配置に当たって、障害者に対してのみ不利な条件を付すこと。
ハ 一定の職務への配置の条件を満たす労働者の中から障害者又は障害者でない者のいずれかを優先して配置すること。

4 昇進

(1) 「昇進」とは、企業内での労働者の位置付けについて下位の職階から 上位の職階への移動を行うことをいう。昇進には、職制上の地位の上方 移動を伴わないいわゆる「昇格」も含まれる。

(2) 昇進に関し、次に掲げる措置のように、障害者であることを理由として、その対象から障害者を排除することや、その条件を障害者に対してのみ不利なものとすることは、障害者であることを理由とする差別に該当する。ただし、14に掲げる措置を講ずる場合については、障害者であることを理由とする差別に該当しない。
イ 障害者であることを理由として、障害者を一定の役職への昇進の対象から排除すること。
ロ 一定の役職への昇進に当たって、障害者に対してのみ不利な条件を付すこと。
ハ 一定の役職への昇進基準を満たす労働者が複数いる場合に、障害者でない者を優先して昇進させること。

5 降格

(1) 「降格」とは、企業内での労働者の位置付けについて上位の職階から下位の職階への移動を行うことをいい、昇進の反対の措置である場合と、昇格の反対の措置である場合の双方が含まれる。

(2) 降格に関し、次に掲げる措置のように、障害者であることを理由として、その対象を障害者とすることや、その条件を障害者に対してのみ不利なものとすることは、障害者であることを理由とする差別に該当する。ただし、14に掲げる措置を講ずる場合については、障害者であることを理由とする差別に該当しない。
イ 障害者であることを理由として、障害者を降格の対象とすること。
ロ 降格に当たって、障害者に対してのみ不利な条件を付すこと。
ハ 降格の対象となる労働者を選定するに当たって、障害者を優先して対象とすること。

6 教育訓練

(1) 「教育訓練」とは、事業主が、その雇用する労働者に対して、その労働者の業務の遂行の過程外(いわゆる「オフ・ザ・ジョブ・トレーニング」)において又は当該業務の遂行の過程内(いわゆる「オン・ザ・ジョブ・トレーニング」)において、現在及び将来の業務の遂行に必要な能力を付与するために行うものをいう。

(2) 教育訓練に関し、次に掲げる措置のように、障害者であることを理由として、その対象から障害者を排除することや、その条件を障害者に対してのみ不利なものとすることは、障害者であることを理由とする差別に該当する。ただし、14に掲げる措置を講ずる場合については、障害者であることを理由とする差別に該当しない。
イ 障害者であることを理由として、障害者に教育訓練を受けさせないこと。
ロ 教育訓練の実施に当たって、障害者に対してのみ不利な条件を付すこと。
ハ 教育訓練の対象となる労働者を選定するに当たって、障害者でない者を優先して対象とすること。

7 福利厚生

(1) 「福利厚生の措置」とは、労働者の福祉の増進のために定期的に行われる金銭の給付、住宅の貸与その他の労働者の福利厚生を目的とした措置をいう。

(2) 福利厚生の措置に関し、次に掲げる措置のように、障害者であることを理由として、その対象から障害者を排除することや、その条件を障害者に対してのみ不利なものとすることは、障害者であることを理由とする差別に該当する。ただし、14に掲げる措置を講ずる場合については、障害者であることを理由とする差別に該当しない。
イ 障害者であることを理由として、障害者に対して福利厚生の措置を講じないこと。
ロ 福利厚生の措置の実施に当たって、障害者に対してのみ不利な条件を付すこと。
ハ 障害者でない者を優先して福利厚生の措置の対象とすること。

8 職種の変更

(1) 「職種」とは、職務や職責の類似性に着目して分類されるものであり、「営業職」・「技術職」の別や、「総合職」・「一般職」の別などがある。

(2) 職種の変更に関し、次に掲げる措置のように、障害者であることを理由として、その対象を障害者のみとすることや、その対象から障害者を排除すること、その条件を障害者に対してのみ不利なものとすることは、障害者であることを理由とする差別に該当する。ただし、14に掲げる措置を講ずる場合については、障害者であることを理由とする差別に該当しない。
イ 職種の変更に当たって、障害者であることを理由として、その対象を障害者のみとすること又はその対象から障害者を排除すること。
ロ 職種の変更に当たって、障害者に対してのみ不利な条件を付すこと。
ハ 職種の変更の基準を満たす労働者の中から障害者又は障害者でない者のいずれかを優先して職種の変更の対象とすること。

9 雇用形態の変更

(1) 「雇用形態」とは、労働契約の期間の定めの有無、所定労働時間の長短等により分類されるものであり、いわゆる「正社員」、「パートタイム労働者」、「契約社員」などがある。

(2) 雇用形態の変更に関し、次に掲げる措置のように、障害者であることを理由として、その対象を障害者のみとすることや、その対象から障害者を排除すること、その条件を障害者に対してのみ不利なものとすることは、障害者であることを理由とする差別に該当する。ただし、14に掲げる措置を講ずる場合については、障害者であることを理由とする差別に該当しない。
イ 雇用形態の変更に当たって、障害者であることを理由として、その対象を障害者のみとすること又はその対象から障害者を排除すること。
ロ 雇用形態の変更に当たって、障害者に対してのみ不利な条件を付すこと。
ハ 雇用形態の変更の基準を満たす労働者の中から障害者又は障害者でない者のいずれかを優先して雇用形態の変更の対象とすること。

10 退職の勧奨

(1) 「退職の勧奨」とは、雇用する労働者に対し退職を促すことをいう。

(2) 退職の勧奨に関し、次に掲げる措置のように、障害者であることを理由として、その対象を障害者とすることや、その条件を障害者に対してのみ不利なものとすることは、障害者であることを理由とする差別に該当する。ただし、14に掲げる措置を講ずる場合については、障害者であることを理由とする差別に該当しない。
イ 障害者であることを理由として、障害者を退職の勧奨の対象とすること。
ロ 退職の勧奨に当たって、障害者に対してのみ不利な条件を付すこと。
ハ 障害者を優先して退職の勧奨の対象とすること。

11 定年

(1) 「定年」とは、労働者が一定年齢に達したことを雇用関係の終了事由とする制度をいう。

(2) 定年に関し、次に掲げる措置のように、障害者であることを理由として、その対象を障害者のみとすることや、その条件を障害者に対してのみ不利なものとすることは、障害者であることを理由とする差別に該当する。ただし、14に掲げる措置を講ずる場合については、障害者であることを理由とする差別に該当しない。
イ 障害者に対してのみ定年の定めを設けること。
ロ 障害者の定年について、障害者でない者の定年より低い年齢とすること。

12 解雇

(1) 「解雇」とは、労働契約を将来に向かって解約する事業主の一方的な意思表示をいい、労使の合意による退職は含まない。

(2) 解雇に関し、次に掲げる措置のように、障害者であることを理由として、その対象を障害者とすることや、その条件を障害者に対してのみ不利なものとすることは、障害者であることを理由とする差別に該当する。ただし、14に掲げる措置を講ずる場合については、障害者であることを理由とする差別に該当しない。
イ 障害者であることを理由として、障害者を解雇の対象とすること。
ロ 解雇の対象を一定の条件に該当する者とする場合において、障害者に対してのみ不利な条件を付すこと。
ハ 解雇の基準を満たす労働者の中で、障害者を優先して解雇の対象とすること。

13 労働契約の更新

(1) 「労働契約の更新」とは、期間の定めのある労働契約について、期間の満了に際して、従前の契約と基本的な内容が同一である労働契約を締結することをいう。

(2) 労働契約の更新に関し、次に掲げる措置のように、障害者であることを理由として、その対象から障害者を排除することや、その条件を障害者に対してのみ不利なものとすることは、障害者であることを理由とする差別に該当する。ただし、14に掲げる措置を講ずる場合については、障害者であることを理由とする差別に該当しない。
イ 障害者であることを理由として、障害者について労働契約の更新をしないこと。
ロ 労働契約の更新に当たって、障害者に対してのみ不利な条件を付すこと。
ハ 労働契約の更新の基準を満たす労働者の中から、障害者でない者を優先して労働契約の更新の対象とすること。

14 法違反とならない場合

1から13までに関し、次に掲げる措置を講ずることは、障害者であることを理由とする差別に該当しない。
イ 積極的差別是正措置として、障害者でない者と比較して障害者を有利に取り扱うこと。
ロ 合理的配慮を提供し、労働能力等を適正に評価した結果として障害者でない者と異なる取扱いをすること。
ハ 合理的配慮に係る措置を講ずること(その結果として、障害者でない者と異なる取扱いとなること)。
ニ 障害者専用の求人の採用選考又は採用後において、仕事をする上での能力及び適性の判断、合理的配慮の提供のためなど、雇用管理上必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ、障害者に障害の状況等を確認すること。


出典:厚生労働省.改正障害者雇用促進法に基づく「障害者差別禁止指針」と「合理的配慮指針」を策定しました.http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000078980.html (参照 2015-11-20).