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堺市手話言語の普及及び障害者のコミュニケーション手段の利用を促進する条例

 言語は、人々が交流して情報を伝達し、お互いの気持ちを理解し合い、豊かなコミュニケーションを図るための手段であり、コミュニケーションは、人々が生きていくために欠かすことのできないものである。
 手話は、音声ではなく身振りを起点とするろう者の言語であり、ろう者は、身振りで表現してコミュニケーションを図り、手話として発展させてきた。しかし、過去に、ろう学校において手話の使用が事実上禁止されるなど、手話が言語として認められず、手話を使用することができる環境が十分に整備されてこなかったという歴史がある。
 平成18年に国際連合で採択され、平成26年1月に我が国も批准した障害者の権利に関する条約において、言語とは、音声言語及び手話その他の形態の非音声言語であると定められ、音声言語だけでなく手話についても言語であると国際的に認められた。また、障害者基本法(昭和45年法律第84号)においては、全て障害者は、可能な限り、言語(手話を含む。)その他の意思疎通のための手段についての選択の機会が確保されるとともに、情報の取得又は利用のための手段についての選択の機会の拡大が図られることを旨として、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格及び個性を尊重し合いながら共生する社会の実現が図られなければならないとされるとともに、手話が言語であると位置付けられている。
 手話、音訳、要約筆記、点字、触手話、指点字、平易な表現等は、障害者が日常生活及び社会生活を営む上で欠かすことのできない情報の取得及びコミュニケーションのための手段である。しかし、これまで障害者にとって障害の特性に応じた適切な情報の取得及びコミュニケーションのための手段を選択できる環境は十分に整えられておらず、障害者は、不便又は不安を感じながら生活してきた。
 このような状況に鑑み、全ての障害者が日常生活及び社会生活において容易に情報を取得することができ、十分なコミュニケーションを図ることができる環境を整備することが必要である。
 ここに、堺市は、手話への理解を促進し、手話を始めとする多様なコミュニケーションのための手段を利用しやすい環境を整備することにより、障害者の社会参加を促進し、全ての市民が、相互に一人ひとりの人格及び個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するため、この条例を制定する。

(目的)
第1条 この条例は、手話を言語として明示した障害者の権利に関する条約及び障害者基本法に基づき、手話への理解の促進、手話の普及並びに障害者が情報を取得し、及びコミュニケーション手段を選択して利用する機会の確保について基本理念を定め、市の責務並びに市民及び事業者の役割を明らかにするとともに、障害者にとって個人の障害の特性に応じて情報を取得し、及びコミュニケーション手段を利用しやすい環境を整備するための施策を総合的かつ計画的に推進し、もって全ての人が相互に人格及び個性を尊重し合いながら共生する社会を実現することを目的とする。

(定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
 (1) 障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)、難病その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害又は社会的障壁(障害者基本法第2条第2号に規定するものをいう。)により継続的に、又は断続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。
 (2) ろう者 手話を言語として日常生活又は社会生活を営む者をいう。
 (3) コミュニケーション 人々が相互に情報を伝達し、意思を疎通し、気持ちや心を通わせて理解し合うことをいう。
 (4) コミュニケーション手段 手話、音訳、要約筆記、筆談、字幕、点字、触手話、指点字、平易な表現、絵図、記号、身振り、手振り、重度障害者用意思伝達装置、パーソナルコンピュータ等の情報機器その他の障害者が情報の取得及びコミュニケーションを行う際に必要な手段として利用されるものをいう。
 (5) コミュニケーション支援者 手話通訳者、要約筆記者、点訳者、音訳者その他のコミュニケーション手段を利用して障害者を支援しながら、障害者と障害者以外の者とをつなぐ者をいう。
 (6) 合理的配慮 障害者が障害者以外の者と同等の権利を行使することを確保するために行われる必要かつ適切な変更又は調整であって、実施に伴う負担が過度でないものをいう。

(基本理念)
第3条 手話への理解の促進及び手話の普及は、手話が独自の言語体系を有する文化的所産であり、かつ、ろう者が知的で心豊かな日常生活及び社会生活を営むために受け継いできたものであるとの認識を持って行われなければならない。
2 障害者が情報を取得し、及びコミュニケーション手段を選択して利用する機会の確保は、それが障害者にとって日常生活及び社会生活を営む上で必要不可欠であるとの市民の理解の下、全ての人が相互に人格及び個性を尊重し合うことを基本として行われなければならない。

(市の責務)
第4条 市は、市民に対する手話への理解の促進及び手話の普及を図るとともに、障害者におけるコミュニケーション手段による情報の取得及びコミュニケーションの円滑化に関する施策を総合的かつ計画的に推進するものとする。

(市民の役割)
第5条 市民は、社会において手話が言語であると認識されていること並びに障害者が情報を取得し、及びコミュニケーション手段を選択して利用する機会の確保が、障害者の日常生活及び社会生活にとって必要不可欠であることを理解し、前条の規定に基づく市の施策に協力するよう努めるものとする。

(事業者の役割)
第6条 事業者は、社会において手話が言語であると認識されていること並びに障害者が情報を取得し、及びコミュニケーション手段を選択して利用する機会の確保が、障害者の日常生活及び社会生活にとって必要不可欠であることを理解し、コミュニケーション支援者と連携して障害者が必要なコミュニケーション手段を利用できるよう、障害者に対し合理的配慮を行うとともに、第4条の規定に基づく市の施策に協力するよう努めるものとする。

(滞在者等への対応)
第7条 市、市民及び事業者は、本市を訪問し、又は本市に滞在する障害者が、情報を取得し、及びコミュニケーション手段を選択して利用しやすい環境づくりを行うよう努めるものとする。

(施策の推進方針)
第8条 市は、第4条の規定に基づき、次に掲げる事項に係る施策を推進するための方針(以下「推進方針」という。)を定めるものとする。
 (1) 市民に対する手話への理解の促進及び手話の普及
 (2) 障害者が情報を取得し、及びコミュニケーション手段を選択して利用しやすい環境の整備
 (3) コミュニケーション支援者の育成及び確保
 (4) 前3号に掲げるもののほか、第1条に規定する目的を達成するために必要な事項
2 推進方針は、市が定める市町村障害者計画(障害者基本法第11条第3項に規定するものをいう。)、市町村障害福祉計画(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)第88条第1項に規定するものをいう。)その他障害者のための施策に関する計画と調和のとれたものでなければならない。

(意見の聴取)
第9条 市は、推進方針を策定し、若しくは変更する場合又は第4条の施策の実施状況を確認するために必要がある場合は、障害者、学識経験を有する者その他の関係者の意見を聴くものとする。

(コミュニケーション手段を学ぶ機会の提供)
第10条 市は、障害者、コミュニケーション支援者及びこれらに関係する機関、団体等と協力して、市民が手話への理解を深め、及びコミュニケーション手段を学ぶ機会の提供に努めるものとする。
2 市は、公的機関又は事業者が、手話への理解を深め、又はコミュニケーション手段を学ぶための学習会等を開催する場合においては、当該学習会等の開催を支援するものとする。

(コミュニケーション手段による情報発信)
第11条 市は、障害者が市政に関する情報を速やかに取得することができるようコミュニケーション手段を利用した情報発信を推進するものとする。

(公共施設等における啓発)
第12条 市は、広く市民に公共サービスを提供する施設その他関係機関において、市民における手話への理解の促進及びコミュニケーション手段の普及のための積極的な啓発に努めるものとする。

(学校におけるコミュニケーション手段への理解の促進)
第13条 市は、コミュニケーション手段への理解の促進を図るため、学校(学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条に規定するものをいう。)において、コミュニケーション手段に接する機会の提供等に努めるものとする。

(委任)
第14条 この条例の施行について必要な事項は、市長が定める。

附則

 この条例は、平成29年4月1日から施行する。