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総合福祉部会 第10回 H22.12.7 資料2

部会作業チーム(障害の範囲と選択と決定~障害の範囲)議事要旨(11月19日分)

1.日時:平成22年11月19日(金)14:05~16:55

2.場所:厚生労働省低層棟2階講堂

3.出席者

田中(伸)座長、佐藤副座長、氏田委員、佐野委員、末光委員、東川委員、福井委員

4.議事要旨

(1)今回の議題

今回は、前回(10月26日)における作業チームの議論を踏まえて、座長から提示された「障害」の定義規定の条文素案についての議論を行うとともに、「手続き規定」に関する議論を行った。

(2)「障害者」の定義規定について

ア 例示列挙について

例示列挙の方式を採用するか否かについては、以下のような意見が出された。

(ア)肯定意見

  • 発達障害は独立した法律(発達障害者支援法)があるので、他の障害と並べて明記して欲しい。社会の理解も深まるのではないか。
  • 障害者基本法では包括的で良いが、具体的な支援を提供するための法律では例示が必要。
  • 具体的に例示しないと、国レベルで障害の範囲に入ることが分かっていても、市町村では分かっていないという事態も想定される。法律の規定は包括的としても、例示を別途する方法はないか。

(イ)例示列挙の問題点、及び否定意見

  • 発達障害が入るのであれば、高次脳機能障害やてんかんなど他の障害名の例示も行う必要があるのではないか。
  • 「身体的又は精神的な機能障害・・・」という表現は非常に包括的で良い。個別列挙は避けた方が良い。
  • 「脳機能の障害」という表現であれば、発達障害も高次脳機能障害も含めることができるので良いのではないか。
  • 「てんかん総合福祉法」の制定を目指した時期があったが、総合的な法律の中に含まれるのであればそれで良いではないかという方向になっている。

イ 「障害者等」、「機能障害等」という表現の可否について

この点については、以下のような意見が出された。

(ア)肯定意見

  • 吃音を身体障害者手帳の対象にして欲しい、吃音に対する理解を発達障害並に啓発して欲しいという要望をもらっている。ただし、吃音者の一部が支援を必要としているので、「障害者等」という表現が良いのかもしれない。
  • 「脳機能等」、「機能障害等」というように「等」を入れると支援対象に漏れが出にくくなるのではないか。

(イ)否定意見

  • 「等」の範囲を明確にしないと現場が混乱する。
  • 障害者「等」という括り方は混乱を招くと思うので、「その他のこれに類する機能障害」ということにして同列のものを広くとらえるということで整理してはどうか。

ウ 「機能障害」の解釈に関する留意点

この点については、以下のような意見が出された。

  • 病気と障害は別という考え方が根強い。例えば、がんで生活に支障のある人は、病人ということで福祉の対象外となるおそれがある。
  • 医療を受けながらでも福祉の対象者となり得ることを条文上明記することが、難病の方を外さないようにするためにも必要である。
  • 「慢性疾患に伴う機能障害を含む」という表現を注意的に付記してはどうか。

エ 「長期的な」機能障害、「継続的な」または「相当な」制限とすることの肯否について

障害者の定義に「長期的な」機能障害とか、「継続的な」または「相当な」制限といった要件を付することにより、ある程度対象者を絞る方法と、定義には絞りをかけず、支援の必要性や相当性を判断する中で絞りをかける方法が考えられる。

これらの点については、以下のような意見が出された。

(ア)肯定意見

  • 一時的な機能障害(治る怪我など)を福祉で支援するのは難しい。どこかに期間要件を入れるべき。障がい者制度改革推進会議では、「継続的」を入れようとしている。
  • 一時的に支援が必要な人も、広い意味では障害者になるが、福祉の対象にするかどうかは別である。一時的な心身耗弱などで解雇された場合など、差別禁止法による支援は必要であるが、福祉の対象にする必要はない。
  • 手続き規定における支援の必要性・相当性の判断で絞りをかける場合、支援が必要と認識されなければ、支援の対象になりえないという問題がある。支援が必要と認識されるためにも、個々の障害が理解されるための法的な手当てが必要。
  • 期間要件を付する場合、例えば「6ヶ月以上」とする場合であっても、現に6ヶ月以上続いているということではなく、続くと見込まれるのでも良い。

(イ)否定意見

  • 権利条約をみると、「長期的な・・・含む」となっており、「一時的」なものを除いてはいない。
  • 「一時的」でも支援を求める人を切ってしまうのはどうか。
  • 定義は包括的な規定として、手続き規定における支援の必要性や相当性を判断する中で絞る方向で良いのではないか。
  • いろいろな団体から個別の障害や疾患の支援法、救済法を作るための運動がされているが、個別にやっていても限りがない。包括的な法律があれば、個別法は不要になる。吃音の症状も変化するので、支援が必要な時に救済できれば良い。
  • 期間要件を付すると、早期に支援できれば悪化しないで済むものを悪くなってから支援の対象にするということにならないか。

オ 作業チームとしての意見

障害の定義規定については、概ね以下のような方針が確認された。

  • 定義は、できるだけ包括的な規定とし、個別列挙はしないこととする。
  • 表現としては、「身体的又は精神的な機能障害・・・」で良い。ただし、「機能障害」は、「機能障害(慢性疾患に伴う機能障害を含む)」とする。
  • 期間要件については、定義規定には盛り込まない案とし、支援の利用対象者を定義段階で絞るのか、手続き段階で絞るのかについて、引き続き検討する必要があることを付記するかたちとする。

(3)手続き規定について

手続き規定の議論においては、定義規定で定められた障害者が、その者が必要とする支援を受けることができるようにする手続きを定めることになる。すなわち、支援を必要とする者が(支援の必要性)、その必要に応じた相当な支援(支援の相当性)を受けられるような制度が議論されなければならない。したがって、ここで議論すべき点は、以下のように整理することができる。

A 支援の必要性をしめす指標

A1 「機能障害」を示す客観的指標(支援の必要性を示す客観的側面)

A2 本人の支援申請行為(支援の必要性を示す主観的側面)

A3 環境による障壁との相互作用により、日常生活または社会生活に制限を受けている事実の認定

B 支援の相当性の確保

支援の必要性に応じた相当な支援計画の策定のための方法

以上の諸点について、以下のような議論が行われた。

ア 「機能障害」(支援の必要性を示す客観的側面)について

この点については、手帳の有無に関わらず、支援を必要とする者が必要な支援を受けられる制度にすることで、意見の一致をみているが、どのような資料に基づいて「機能障害」を認定するのかについて、以下のような意見が出された。

(医師の診断書等について)

  • 医師の診断書は、意見書くらいでも良いのではないか。診断書だと、医師が確定的な診断ができないため、診断書を書くことを躊躇する場合がある。
  • 医師をサポートする体制や、医師に過度な負担とならないような証明内容にすることが必要。

(医師以外の専門職の意見書の利用について)

  • 意見書を書くのは、医師だけに限定されるのか。心理専門職やソーシャルワーカーなどに幅を広げられないか。
  • 新しくできた言語聴覚士であれば、医師でなくても難聴の証明はできる。
  • 機能障害の確認については、手帳や医師の診断書だけでなく、窓口で機能障害があることを確認できるということでも良いのではないか。
  • 都道府県レベルで、医師、国家資格者を中心とした専門職を含めた、窓口での対応が良いと考える。
  • 医師のみの意見ではなく、いろいろな意見を入れていく必要がある。チームで対応することが適当である。
  • オーストラリアでは、介助が必要であることを公的に証明するカードがある。本人、家族が支援を必要とする項目を書いて送ると、書類のみで審査され発行される。支援が必要であるという証明書が必要であるが、医師だけでなく、作業療法士、理学療法士やソーシャルワーカーなども書くことができる。

(認知されにくい障害についての対応)

  • 少数の障害については、その障害について正しく認識することが必要。脳脊髄液減少症など、障害に対する理解が得られないで判定されないことがある。
  • 判定するには、一般の医師には判断が難しい障害もある。そこを医師が判断するには、認定する医師の養成が必要。
  • 公的な機関での証明は、信頼性の確保の面ではいいが、それですべてを担えるかというところもある。研究段階の疾病などについては、疾病についての蓄積がある当事者団体を活用することが考えられるが、評価の内容を公表するなどの仕組みも必要になるのではないか。

(機能障害の認定基準について)

  • 全国であまりバラツキがないよう判断できるような担保が必要。
  • 地域差がないように例えば重度、中度、軽度ぐらいの括りでガイドラインは必要であるが、柔軟な判断が必要。
  • 一定の認定基準を作るとしても、杓子定規ではなく、ある程度柔軟に判断できるような仕組みが必要。
  • 一定期間ごと(数年ごとなど)に客観的な評価を行う制度が必要なのではないか。

(機能障害認定にあたっての要望)

  • 利用者が利用しやすいように配慮し、手続きが煩雑にならないようにしてほしい。

イ 本人の申請(支援の必要性を示す主観的側面)について

障害者が保護の客体ではなく、契約の主体であるという観点からすれば、利用者である障害者本人の申請が重要となる。この点については、以下のような意見が出された。

(本人による申請について)

  • 主体的に、本人の希望を基本にして、その希望をかなえるために可能な範囲ではあるが支援を提供するという発想が重要。そういうことを支援する機関や仕組みが必要である。
  • 主体的にサービスを選択して利用できるようにすることが必要。
  • ニュージーランドでは、本人にどうしたいかを聞き、支援ニーズをアセスメントし、本人の希望をもとに支援を組み立てるというシンプルなシステムがある。
  • 自己申告する項目を多く作ることが必要になるのではないか。
  • 申請書作成の支援も必要ではないか。

(家族による申請の補助について)

  • 感覚器障害は、一番障害の状態をよく分かっている本人の自己申告が必要であり、本人が必ずしも障害の自己認識がない場合もあるので、日常生活をともにしている家族の意思も必要。
  • 高次脳機能障害の場合は、医師もよくわからない場合がある。自賠責保険の認定では家族が意見することができる。

(本人申請、家族による申請補助の問題点)

  • 発達障害など本人や家族に障害の認識がない場合がある。自己申告も必要だが、本人に認識がない場合はどうするのかについても考慮する必要がある。
  • 利用者のモラルハザードを防ぐという意味でも客観的な判断は必要。
  • 家族がよく分かっているというのはその通りだろうが、モラルハザードの問題もあり、それでいいとはならない。医師だけでなく、その他の専門職を含めるか、専門職が身近にない場合は、更生相談所や拠点病院、精神保健福祉センターなどを活用する方法が考えられる。
  • 判定を専門機関、関係機関に委ねることにすると、そこに人が集中してしまい、本来業務ができないという声にも留意して欲しい。

ウ 支援の必要性に関するその他の意見

この点については、以下のような意見が出された。

  • 緊急性についても考慮したい。支援を受けるまでに例えば6カ月も待つのは、難しい場合もある。
  • 支援の必要性については、支援をすることによって具体的な改善効果が見込まれるかどうかで判断する。そのためには、本人の申告だけでなく、支給決定する側の調査が必要になる。これをサポートするための相談機関も必要になる。

エ 「日常生活または社会生活に制限」を受けていることの判断について

この点については、以下のような意見が出された。

  • 生活上の支障については、ADLやIADL、社会参加の支障の状況を見ていく。
  • 支援ニーズだけではなく、生活の困難度も評価してもらわないと困る人たちもいることも考慮してほしい。

オ 支援計画の策定方法について

この点については、以下のような意見が出された。

  • 今迄のように障害程度区分と利用できるサービスがリンクするのは問題。本人にとって必要なサービスを利用できるようにするためには、相談支援員が柔軟に判断できるようにする必要がある。
  • 支援計画についても当事者団体はノウハウがあるので、活用していく視点はある。ただし、全面的に当事者の意見を採用するのでは、公正さの問題等があるので、複数でチェックする仕組みが必要。

カ 手帳制度について

この点については、以下のような意見が出された。

  • 手帳制度については、別途委員会を設けるなど、議論する場を設けて欲しい。
  • 難聴の主な原因は突発性難聴であるが、治療を受け、固定して6ヶ月以上経たないと手帳申請用の診断書を書いてもらえない。医療費の助成は受けられるが、福祉的な支援は全く受けられないという状態になる。このような問題点があることを踏まえ、手帳制度の改善を求めたい。

以上