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総合福祉部会 第11 回
H23.1.25 資料14

部会作業チーム(障害の範囲と選択と決定~障害の範囲) 議事要旨(12月7日分)

1.日時:平成22年12月7日(火)14:25~16:55

2.場所:厚生労働省低層棟2階講堂

3.出席者
田中(伸)座長、佐藤副座長、氏田委員、佐野委員、末光委員、東川委員、福井委員

4.議事要旨
(1) 障害者の定義について
今回は、前回までの議論において作業チーム案として合意に至った下記に示す障害の 定義規定について、問題点がないかについての再検討を行った。

(作業チーム案)
「障がい者とは、身体的または精神的な機能障害(慢性疾患に伴う機能障害を含む)を有 する者と、これらの者に対する環境に起因する障壁との間の相互作用により、日常生活又 は社会生活に制限を受ける者をいう。」

ア 包括規定とすることについての意見
今回の作業チームでは、障がい者制度改革推進会議において、障害者基本法改正案 の「障害」の定義規定が包括的な規定となる方向に向かっていることを踏まえて、以下の ような議論がなされた。

(ア) 疑問点を指摘する意見

  • 基本法における障害の定義は、広く包括的な規定となるのだろうが、サービスを提供す るための法である総合福祉法でも同じような規定ぶりとすると、現場で混乱するのではな いか。
  • 障害の範囲を広く取って、制度の谷間のない総合福祉法をつくるということだと思って いるが、総合福祉法は、包括的な規定をする基本法よりも踏み込んだ規定にする必要が あるのではないか。
  • 個別法で既に支援の対象であることが明確となっている身体障害者、知的障害者、精 神障害者だけでなく現行の制度では制度の谷間にある者が総合福祉法の対象となること を明確にする必要があるのではないか。
  • 重症心身障害児は児童福祉法に位置づけられているが、18歳以上をどうするかという 問題がある。そういった部分も含めて、総合福祉法では対象から漏れないということが明 確に分かる規定が必要だと思う。

(イ) 支持する意見

  • 「身体的または精神的な機能障害」とすれば、例外なく漏れのない谷間のない定義と することができる。
  • 例示列挙とすると、定義規定に、どの障害を入れ、どの障害を入れないのかという話に なるし、新たな障害が出てきたときにも入れて欲しいという話になる。その都度法改正が必 要になることを考えると、包括的な規定とする方がよいのではないか。
  • 現場の混乱に対する対処は必要であると思うが、それは定義を絞ったとしても起こりうる。
    障害者の定義は包括的に規定し、サービスが必要かどうか、どのような支援が必要かに ついては、相談支援員が判断するということではないか。人材の確保や育成とも関わるこ とであり、そのような対処は考える必要がある。

イ 包括規定とした場合における特定障害名の例示の方策について
法律の定義では包括的にした上で、政省令で具体的な障害を書くという方法もあるが、 制限列挙となってしまわないか。

  • 条文上は包括規定としつつ、申請書の様式として、具体的な障害名を印字して記載し ておくという方法もあるのではないか。自閉症やアスペルガー症候群などの具体的な障害 名を申請書に印字しておき、これにチェックを入れるという形とすれば、包括規定にどのよ うな障害が含まれるのかが申請書で明らかとなる。
  • 申請書を漏れのないような様式に工夫することは、良いことだと思う。

ウ 申請書による例示の方策に対する意見

  • 自己申告に有効性を持たせるという提案だと思うが、正直申し上げて心配である。それ がどの程度徹底できるのか。これまでは、自己申告は無視されてきた。法的な拘束力があ れば、すばらしい。
  • 今は、客観的に支援が必要と認められる手続きに沿うことが基本の制度だが、もう少し 本人の希望が申請書に書けて、それが尊重されるようになると良い。

エ その他の意見・指摘

  • 推進会議の資料にある「周期的に変動する状態」というのは、1週間ごとに繰り返すとい った定期的な変動を指すが、その表現だと、かなり限定される恐れがある。
  • 障害の認定基準は個別法で規定されている。その部分を変えないで、新しい障害認 定ができるのか。総合福祉法において包括的な規定をしても、細部は個別法で規定とな ってしまうのではないか。総合福祉法で認定基準を規定するのかどうか、あるいは、総合 福祉法の規定で個別法を拘束することができるのかなどの諸点を検討する必要がある。
  • 基本法と個別法の真ん中にあるものが総合福祉法というイメージだが、個別法との関 係を整理する必要はある。
  • 新しいことをやろうとしている中では、既存の枠組みを前提にする必要はないのではな いか。

(2) 手続規定について
今回の作業チームでは、手続規定における支援の必要性、及び支援の相当性に対応 する議論がなされた。なお、手続規定における各要件と論点との関係を整理すると、以下 のようになる。

A 支援の必要性をしめす指標
A1 「機能障害」を示す客観的指標(支援の必要性を示す客観的側面)
→論点1 機能障害の認定における医師以外の専門職の参加について

A2 本人の支援申請行為(支援の必要性を示す主観的側面)
→論点2 家族による申請、第三者の補佐について

A3 環境による障壁との相互作用により、日常生活または社会生活に制限を受けてい る事実の認定
→論点3 「環境による障壁との相互作用」の認定について

B 支援の相当性の確保
支援の必要性に応じた相当な支援計画の策定のための方法
→論点4 支援計画の策定に対する意見
→論点5 地域間格差を生まないための方策について
→論点6 窓口の設置場所について
→論点7 当事者団体との連携について

論点1 機能障害の認定における医師以外の専門職の参加について
ア 積極意見
この点については、以下のように、積極に考えることで一致をみた。

  • 様々な障害に対応するためには、ぜひ活用すべきである。
  • 専門職はできるだけ幅広くしたい。
  • 申請書の内容と専門職の意見で審査に入り、支援の必要性、相当性の判断について は、チームで対応してはどうか。

イ 範囲
どの範囲の専門職の意見を機能障害の認定に生かしていくべきかについては、以下の ような議論がなされた。この範囲を画する基準としては、障害特性に関する知識の有無を 挙げることができる。

(ア) 積極に考えることができる専門職

  • 理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、臨床心理士、発達心理士、精神保健福祉士 の参加は十分考えられる。
  • 看護師も、最近は障害に関するカリキュラムも入ってきており、参加が可能と考えられ る。

(イ) 消極に考えられる専門職

  • 社会福祉士や介護福祉士は、機能障害の判定は難しいのではないか。
  • 介護支援専門員は、機能障害の判定は難しいと思われる。
  • 必ずしも特別支援学校の教員が特別支援教育の免許を持っているわけではないので、 機能障害の認定は難しいのではないか。

論点2 家族による申請、第三者の補佐について
この点については、本人が意思表示できない場合、家族も障害を理解していない場合 には、どのような手続きを用意するべきか。本人または家族による申請だけでなく、第三者 の補佐や、措置的な制度なども必要かという問題提起を行い、これに対して、以下のよう な議論がなされた。

  • できる限り本人の意思を確認するとした上で、それができない場合は身近な家族の意 思を確認することが原則。ただし、第三者評価を入れる必要もある。
  • 家族は、支援が必要とは分かっても、具体的にどのような支援が必要かまで分かるとは 限らない。障害の認定と受けるサービスの選択の問題は切り離した方が整理しやすいの ではないか。
  • 重症心身障害児の場合は、本人の意思表示は困難だが、何らかの形で確認はする必 要はある。家族が代理で意見を表明するというのも現実であるが、家族もいろいろあり、必 ずしも本人の立場を尊重するとは限らないので第三者の関与も必要ではないか。また、幼 児の場合は、障害の受け止め方が家族にもできていない場合があり、専門的な支援が必 要な場合は、第三者の支援が必要。
  • 相談支援機能を充実させ、本人、家族を支援することが重要である。
  • ケアマネジメントをする人材の養成は必要。
  • 家族も含めて障害と認めたくないということもあるのではないか。障害者をよく知ってい るケアマネは少ない。社会的な理解と支援基盤を広げていく必要がある。

論点3 「環境による障壁との相互作用」の認定について
この点については、要件としての必要性も含めて、以下のような議論がなされた。

(ア) 問題点を指摘する意見

  • 制限が相互作用によることを条件とするのは、ハードルが高いのではないか。市町村 において、障害者が困っていることを認定できれば良いのではないか。 例えば遷延性意識障害の方など、環境と関係なく支援が必要な場合もある。
  • 一般論として障壁があるというのは分かるが、障壁との関係は個別事例で様々であり、 個別に全て証明する必要はないのではないか。

(イ) 要件を必要とする意見

  • 社会モデルの立場から、障害を参加障害と捉えるのであれば、本人が申請する際に困 っていることを訴えていれば、何らかの障壁があることが推認できるのではないか。
  • 支援計画をたてる際に、適切な支援をするため、その人が置かれている個別具体的な 環境を見る必要はある。

(ウ) 差別禁止法における「合理的配慮」との関係を指摘する意見

  • 環境の障壁は、合理的配慮を必要とする場面という言い方もできるのではないか。
  • 環境の障壁は、差別禁止法で対応する部分もあると思う。
  • 法のサービスの対象者であることを市町村との間で確認する手続きに「合理的な配慮 の必要性」を確認する必要はないのではないか。

論点4 支援計画の策定に対する意見
この点については、以下のような議論がなされた。

  • 現在、生活困難度の尺度の研究が進んでいるが、そのような支援ニーズを把握するた めのツールがあると良い。
  • どのような支援をするかは、柔軟に決めるのが良い。本人の支援の希望を踏まえて、支 援の内容が提案され、やってみて、不合理があれば修正していくという支援創設型が良 いのではないか。
  • 支援計画を立てた後に、定期的な見直しをするのが良いのではないか。
  • 見直しにあたっては、当事者団体との連携も重要である。

論点5 地域間格差を生まないための方策について
地域間格差を生まないため、窓口において、理解しにくい障害の理解をどのようにして 図っていくのかについては、以下のような議論がなされた。

  • リーフレットは、日本脳外傷友の会でも作成し、県の支援機関にも作成してもらい、広 報をしているが、市町村まで配布されているところと、配布されていないところがある。
  • 発達障害の関係では、リーフレット、DVD、年齢ごとのガイドブックなどを作成している。 また、幼稚園の先生などに研修を受けてもらい、支援ニーズに気付けるようにしている。さ らに、子育てのセミナーを実施し、育てにくい子の育て方の周知や周囲の理解促進をして いる。
  • 発達障害は、発達障害者支援法が大きな役割を果たした。市町村レベルで理解を広 げるためには、民間、一般市民との協働が必須。7百万から1千万人の発達障害者の支 援方法を作っていくためには、周りを巻き込んで、環境を作り、協働していくことが必要。
  • てんかんに対する差別や無理解をなくしていくためには、教育が重要である。教科書 への明記を文部科学省に要望しているが、あらゆる障害の記載は難しいということで、実 現していない。社会的な周知は、国を挙げてやる必要がある。
  • 一番効果的なのは、行政のデータを活用することである。例えば、引きこもりの人の数 などを地域ごとに比較して、自分の自治体が他と比較してどのような位置にいるのか確認 し、障害者福祉計画の策定に活かすなど、活用するのが良いのではないか。
  • 少なくとも窓口で障害の理解が不十分であった場合には、当事者団体につなぐような ネットワークがあっても良いのではないか。

論点6 窓口の設置場所について
この点については、以下のような意見が出された。

  • できるだけ身近なところで認定してほしいというのはあるが、重症心身障害児など数が 少ない障害の場合、すべて市町村でやれるかというところは懸念がある。現実問題として 児童相談所ですら正しく見ることができていない。

論点7 当事者団体との連携について
当事者団体との連携については、機能障害の認定の場面から、支援計画の策定の場 面に至るまで、幅広い連携が必要と考えられる。各論点における意見の他、以下のような 意見も出されている。

  • 当事者団体が関わるのは重要。相談支援だけでなく、事業が適切かなどのモニタリン グも、当事者団体が一番よくできると思う。

(3) 手帳制度について
本作業チームでは十分に議論することができなかったが、現行の手帳制度については、 よりよいものとするために、その問題点や具体的改善策などを議論する場を別途設けた上 で、議論を尽くす必要があるとの意見が出されている。
今後の要検討事項として、委員会を立ち上げるなどの具体策を求めたい。

以上