音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

総合福祉部会 第12回 H23.2.15 資料2

資料2 「障害」の範囲チーム 作業チーム報告

平成23年1月25日

1 本作業チームにおける検討範囲

(分野B 障害の範囲)に列挙された各論点

2 作業チームにおける各論点についての議論

(1)項目B-1 法の対象規定について

ア 論点

論点B-1-1) 推進会議では、障害の定義について、「社会モデルに立った、制度の谷間を生まない定義とする」ことが確認されている。これをふまえた、「総合福祉法」における障害の定義や支援の対象者に関する規定をどう考えるか?

論点B-1-2) 「自立支援法」制定時の附則で示されていた「発達障害、 高次脳機能障害、難病(慢性疾患)」等も含みこんだ規定をどうするか?制限列挙で加えるのか、包括的規定にするのか?

イ 結論

 前記アの各論点についての作業チームにおける議論の結果は、別紙1「障害」の範囲チーム~「障害」の定義規定に関する検討整理案記載のとおりである。

(2)項目B-2 手続き規定について

ア 論点

論点B-2-1) 障害手帳を持たない高次脳機能障害、発達障害、難病、軽度知的、難聴などを有する者を排除しない手続き規定をどう考えるか?

イ 結論

 前記アの各論点についての作業チームにおける議論の結果は、別紙2「障害」の範囲チーム~手続規定に関する検討整理案記載のとおりである。

以上

別紙1 「障害」の範囲チーム~「障害」の定義規定に関する検討整理案

第1 作業チーム案について

(作業チーム案)

 「障害者とは、身体的または精神的な機能障害(慢性疾患に伴う機能障害を含む)を有する者と、これらの者に対する環境に起因する障壁との間の相互作用により、日常生活又は社会生活に制限を受ける者をいう。」

1 「身体的または精神的な機能障害」

(1)作業チームでは、当初、障害者権利条約1条後段における「身体的、精神的、知的又は感覚的な機能障害」という文言や、発達障害者支援法2条1項の「脳機能の障害」という文言を参考とした上、「その他これに類する機能障害」という文言を付して、障害の種類を例示列挙しつつ、包括的な規定とすることを検討した。

(2)しかし、特定の障害名に着目し例示列挙とする場合、どの特定障害名を例示列挙の対象として条文に明記し、どの特定障害名を「その他これに類する機能障害」の概念に包摂するものとするのかについて合意を得ることが難しい。また、例示列挙の対象となる障害名が多数にのぼり、条文が長くなることや、今後新たな障害が発見・認知された場合、これを例示列挙の対象とする要請が強まることが予想され、その都度、法改正作業が必要となる可能性があることなど、多くの問題点が指摘できる。

(3)そこで、特定の障害名に着目することを行わず、人の活動実態が身体活動と精神作用であることに着目して、「機能障害」の範囲を定めることが適切であるとの結論を得た。すなわち、「機能障害」とは、人の身体活動機能または精神作用機能の双方または一方が、その全部または一部において喪失し、または減弱した状態と捉えることとし、これを表す文言として、「身体的または精神的な機能障害」という文言を採用することとしたものである。このように捉えることにより、全ての「機能障害」を谷間なく拾い上げるとともに、今後新たに発見・認知される障害をも含み得る規定になると考えられる。

(4)なお、この「機能障害」が「長期的」なものであることを要するかについては、議論があるので、後述する。

2 「慢性疾患に伴う機能障害を含む」

(1)これは、難病が「機能障害」に含まれることを注意的に規定するため、挿入することとした文言である。

(2)難病に罹患した者は、日常生活を営む上で、医療的サービスとともに、福祉的サービスを受けることが必要となる。しかし、現実には、「疾患」は病であって医療的サービスの対象、「障害」は福祉的サービスの対象とする二者択一の立場が根強い。このような現状に照らせば、「機能障害」の解釈として、「疾患」によるものを除くとする解釈が採られかねない危険がある。

(3)そこで、本条における「機能障害」概念は、「疾患」に伴うものを排除しない趣旨であることを明らかとするため、「慢性疾患に伴う機能障害を含む」という文言を注意的に規定することとしたものである。このような文言は、医療サービスを受けながら、福祉サービスを必要とする障害者が多数存在すると考えられることや、従来、制度の谷間に置かれていた発達障害、高次脳機能障害、難病の他、精神障害など、症状が固定せず、可変的な障害者が、医療サービスを受けつつも、本法の支援の対象者であることを確認するために挿入することとしたものである。

3 「これらの者に対する環境に起因する障壁との間の相互作用により」

(1)この文言は、障害者権利条約の前文( E)項を参考としたものである。

(2)「障害」をどのようなものとして捉えるかについては、作業チームにおいて、障害者が他の者と平等な立場で社会に参加することが阻害されていることとして捉えること、すなわち「参加障害」として捉えることで意見の一致をみたが、人間が生物としての存在である以上、「機能障害」の側面を無視する規定となっては、「障害」の概念自体が漠然としすぎるきらいがあるとの指摘がなされていた。

(3)そこで、作業チームとしては、「障害」を、「機能障害」を起点としつつ、最終的には「参加障害」として捉えることで意見の一致をみた。そこで、作業チームとしては、「機能障害」と「環境に起因する障壁との相互作用」が「参加障害」の原因であることを定めることを一案とすることとした。

(4)なお、「環境」の内容、及び「相互作用」を規定するか否かについて、議論があるので、後述する。

4 「日常生活または社会生活に制限」

(1)この文言は、障害者基本法2条、発達障害者支援法2条2項でも用いられている表現であり、「障害」を「参加障害」として捉える場合、具体的にどのような点で参加が阻害されているのかについて、その阻害内容を包括的に定めようとするものである。

(2)この文言の解釈にあたっては、「生活」、「制限」の内容を狭く解されないよう注意する必要がある。この「生活」という文言は、「生活上の主要な活動」という意味に狭く解されるべきではなく、また、「制限」という文言は「多大な支障」という意味に狭く解されるべきではない。前述したとおり、「障害」を障害者が社会に参加することを阻害される状態(参加障害)として捉える以上、「生活」とは主要な活動であるか否かを問わず、また「制限」とは多大な支障であるか否かを問わず、広く障害者の社会への参加が阻害される状態を含むものとして解される必要がある。

(3)また、この文言については、「継続的に日常生活または社会生活に制限」とすることや、「日常生活または社会生活に相当な制限」とすることなどの案がある。このように「継続的に」や「相当な」という文言の双方または一方を付するか否かについては、議論があり、後述する。

第2 要検討事項

論点1 例示列挙の要請について

(1)本作業チームにおいては、「身体的または精神的な機能障害」とすることで一致をみたが、特定の障害名に着目して、例示列挙を行うべきであるとの要請も強い。特に、発達障害については、既に発達障害者支援法が制定され、その対象者も相当数に達するとの調査結果があることから、身体、精神、知的に並ぶものとして発達障害を法文上明記すべきとの意見が、本作業チームでも出されている。

(2)これまで制度の谷間にあった障害については、法文に明記すべきとの要請が強いことは十分に理解されるべきである。高次脳機能障害、難病の他、社会の理解が得られにくいてんかんなど、社会の認知をはかるべき障害は多数に上る。
 「障害」の定義規定については、障害者基本法の定義規定がどのように定められるのかという点との関係もあり、例示列挙の手法も含め、引き続き検討される必要がある。

論点2 「長期的な・・機能障害」とすべきかについて

(1)「長期的な」との文言を機能障害に付するべきとの意見は、一時的な機能障害は本法における支援の対象とはならないのではないかとの考え方に基づくものである。

(2)一時的な機能障害については、二つの見方が可能である。その一つは、一時的なものであれば、将来回復・治癒することが前提であるから、本法の支援対象から外しても問題はないとする見方であり、他の一つは、一時的なものであっても支援の必要性が存在する限り、本法の支援の対象とすべきであるとの見方である。前者は、支援の対象者が過度に広がりすぎることへの懸念から、定義規定自体に絞りをかけようとするものであり、後者は、定義規定には絞りをかけず、支援を申請する際の手続きにおいて、支援の必要性や支援の相当性を判断する中で、絞りがかけられれば十分であるとの考え方に基づくものである。

(3)いずれの見解を採用するかについては、手続き規定をどのように定めるのか、相談支援業務の内容などとの関連の中で判断していく必要がある。引き続き検討が必要な事項である。

論点3 「環境」、「障壁」、「相互作用」の内容について

(1)「環境」について

ア 「環境」の内容としては、一般的に、物理的環境、制度的環境、情報環境、心理・態度に伴う環境が含まれるとされる。

イ しかし、「態度」による「障壁」は、差別禁止法により解消されるべき問題であるとも考えられることから、本法に定める「環境」の内容としては考慮しなくてもよいのではないかとの見解も成り立つ。今後、「環境」という文言を用いる場合には、その内容を検討する必要がある。

(2)「障壁」について

 この文言についても、内容が不明確となる可能性がある。どのようなものを「障壁」とするのかについては、その内容をある程度検討し、例示できるようにしていく必要があると考えられる。

(3)「相互作用」について

ア この文言についても、内容が不明確となる可能性がある。作業チームにおける議論では、内容が不明確であるがゆえに、この「相互作用」を用いない定義規定も検討する必要があるとされていたが、十分な検討を行うことができなかった。

イ 今後、「相互作用」という文言を用いる場合には、その内容をある程度検討し、例示できるようにしていく必要があると考えられる。

論点4 「継続的に・・制限」、「相当な制限」とすることについての議論について

(1)「日常生活または社会生活に制限」という文言に「継続的に」または「相当な」という文言を付するか否かについての議論も、論点2で述べたように、「障害」の定義規定自体に絞りをかけるのか、定義規定自体には絞りをかけず、手続き規定における支援の必要性や支援の相当性を判断する中で絞りがかけられればよいとするのかに関わる議論である。従って、手続き規定の定め方、相談支援業務の内容とも関連する問題として、引き続き検討する必要がある。

(2)ただ、いずれの立場を採用するとしても、これを判断する者の問題は残ると考えられる。どのような者に判断を委ねるのか、判断者は一人か複数か、判断が区々にならないような方策をどのように立てるのかなどが、引き続き検討される必要がある。

以上

(部会委員からの追加意見)

  • 「慢性」と認定される期間の検討が必要である。新法における「障害者」と認定されるためには、一定の期間継続の要件を付すことによる線引きが必要である。
  • 「難病」の内容について、具体化する必要がある。

別紙2 「障害」の範囲チーム~手続規定に関する検討整理案

第1 手続規定における論点について

 手続規定の議論においては、定義規定で定められた障害者が、その者が必要とする支援を受けることができるようにする手続きを定めることになる。すなわち、支援を必要とする者が(支援の必要性)、その必要に応じた相当な支援(支援の相当性)を受けられるような制度が議論されなければならない。したがって、ここで議論すべき点は、以下のように整理することができる。

A 支援の必要性をしめす指標
A1 「機能障害」を示す具体的資料
A2 本人の支援申請行為
A3 環境による障壁との相互作用により、日常生活または社会生活に制限を受けている事実の認定

B 支援の相当性の確保
支援の必要性に応じた相当な支援計画の策定のための方法

第2 A1 「機能障害」を示す具体的資料

1 基本方針

 機能障害の存在を示すための資料としては、従来、障害者手帳が用いられてきた。しかし、新法における支援は、手帳の有無に関わらず、支援を必要とする障害者が、自らの必要とする支援を受けられるようにしなければならない。本作業チームにおいても、このような基本方針の下に、議論を行った。

2 作業チームにおける議論

(1)機能障害を示す具体的資料としては、まず、医師の診断書の利用が考えられる。医師の診断書は、機能障害の存在を示す資料として、公正性が担保される点で優れているが、他方で、発達障害、高次脳機能障害、難病など、医師の診断書が得にくい場合も考えられる。

(2)そこで、公正性を確保しつつ、医師の診断書が得られにくい場合に対処する方策としては、以下の2つの方策を検討すべきであるとの意見が出された。

  1. 医師の診断書に限定せず、意見書でもよいものとする。
  2. 「機能障害」の存在を判断する者を医師のみとせず、その他障害特性に関して専門的な知識を有する専門職の意見でもよいとする。

(3)特に、前期②に関しては、具体的な専門職として、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、臨床心理士、発達心理士、精神保健福祉士、看護師などが挙げられている。

(4)また機能障害の認定に際しては、各障害当事者団体が有する認定基準を用いることも一方法として考え得る。各障害当事者団体の有する認定基準を用いる場合には、公正性を確保し、国民の理解を得られるよう、公表することが検討されなければならない。

(5)なお、この「機能障害」には、「長期的な」という文言が付される余地も残されている。この「長期的な」という文言が付された場合、その期間をどの程度とするのかについて、議論がなされる必要がある。また、障害の性質によっては、症状を発祥した後、速やかな支援の実施が必要な場合も考えられ、このような緊急性の要請がある場合と、「機能障害」の認定のために一定期間の経過を必要とする「長期的な」という文言を付すこととの調整が検討課題となると考えられる。

第3 A2 本人の支援申請行為

1 基本方針

 「保護の客体から権利の主体へ」という基本的立場を前提とする以上、新法における支援の提供は、まず、障害者本人の意思に基づく申出が必要となる。本作業チームにおける議論も、この点を出発点としている。

2 作業チームにおける議論

(1)障害者の場合、障害者本人が十分に支援の必要性を理解し、申請を行うことができない場合も考えられる。このような場合には、家族など、障害者本人の生活を支える関係者の意見を、障害者本人の意思を推認するものとして考える必要がある。従って、新法においては、障害者本人の家族による支援の申請も許容することが望ましい。

(2)ただ、家族が抱える事情も様々であって、家族であっても障害の理解が不十分な場合や、障害者本人の立場を尊重していない場合なども考えられる。家族からの申請を許容する場合には、どのような支援が必要であるのかについて、相談支援機能の充実をはかり、障害者本人や、その家族をサポートしていく体制を整える必要がある。相談支援事業の一内容として、第三者アセスメントの制度が検討されてもよいと考えられる。

(3)また、障害者本人のみならず、その家族においても、障害の理解が十分ではなく、必要な支援の申請にさえ結びつかない場合も考えられる。このような場合に備えて、相談窓口と、障害者本人、またはその家族とを結ぶためにも、地域ネットワークの構築をはかる必要がある。

(4)申請行為に用いる申請用紙には、予め特定障害名を列記しておき、これを定型として全国一律に用いる方法が考えられる。「障害者」の定義規定において、「身体的または精神的な機能障害」という包括規定により定める場合、あらゆる障害を包摂して谷間を生まない利点がある反面、具体的にどのような障害が含まれているのかが条文上は不明確となってしまう。そこで、この包括規定の具体的内容を申請用紙に列記することにより、利用者に対して包括規定の内容を明らかにすることが望ましいとの意見が出されている。しかし、この意見に対しては、申請用紙上の列記だけでは法的拘束力に欠けるとの問題点を指摘する意見も出されている。

(5)申請行為における支援の申込み方法には、以下のような複数の方法が併用されてよいと考えられる。

  1. 申請者が特定の支援を申し込む方式
  2. 申請者が相談窓口において必要な支援の提案を受ける方式
  3. 申請者が特定の支援を申込んだ場合であっても、相談窓口でその他

に必要と考えられる支援の提案を受けることができる方式

第4 A3 環境による障壁との相互作用により、日常生活または社会生活に制限を受けている事実の認定

1 基本方針

 この要件は、「障害」を社会モデルを基調として捉える立場から、障害者権利条約の前文(E)項をを参考として、新法における「障害者」の定義規定に取り込んだものである。しかし、「環境」、「障壁」、「相互作用」という必ずしもその内容が明確ではない文言が含まれるため、新法における支援を求める手続きの中で、どのような事実をもってこれらの要件を認定していくのかが検討される必要がある。

2 作業チームにおける議論

(1)この要件については、以下のような疑問点が出された。

  1. 遷延性意識障害など、障害によっては「環境」とは無関係に支援が必要な場合が考えられるのではないか。
  2. 障害者本人が支援を申請する際に、「障壁」、「相互作用」の各要件を認定するために必要な事実を挙げなければならないとするのでは厳格にすぎるのではないか。

(2)これに対して、障害者本人から支援の申請がなされれば、申請行為の存在という事実をもって、申請した障害者本人が「環境による障壁との相互作用により、日常生活または社会生活に制限」を受けていることを推認することができると考えれば問題はないとの意見が出されている。そして、障害者本人が、具体的にどのような「環境による障壁との相互作用によ」って、どのような「日常生活または社会生活に制限」を受けているのかは、相談支援員が個別のケースに応じた支援計画を策定していく上で確認することが必要となる事実であるから、障害者本人が申請時にこれらの要件に該当する事実を挙げる必要はないとする。

(3)また、「環境に起因する障壁」の原因が人的要素にある場合には、差別禁止法上の「合理的配慮」によって解消すべき問題ではないかとの指摘も出されている。「障壁」の原因には種々のものが考えられることから、相談支援員は十分に障壁の原因を特定した上で、これを除去するために適切な方策として、総合福祉法における「支援」と、差別禁止法における「合理的配慮」のいずれが適切な方策であるのかを選択していく必要が生じる可能性がある。

(4)なお、「日常生活または社会生活に制限」の要件については、「継続的な」、「相当な」という文言が付される余地が残されている。このような文言が付された場合には、「制限」を受けている期間の長短が「継続」性の認定にあたり必要となり、「制限」を受けている程度が「相当」性の認定にあたり必要となる。この点についても、公正性を担保するため、一定の基準が議論される必要が生じる可能性がある。

第5 B 支援の相当性の確保

1 基本方針

 新法における支援は、障害者本人にとって必要とされる支援が、その必要性に応じて提供されなければならない。そして、障害者本人に提供される支援は、支援計画の策定の段階から、提供された支援が適切なものであったかどうかに関する事後的なチェックに至るまで、障害者本人の意思が反映されたものにする必要がある。

2 作業チームにおける議論

(1)支援計画の策定の段階においては、障害者本人のニーズを十分に把握する必要がある。そのための方法としては、現在、例えば、生活困難度の尺度の研究が進められているところであるが、このような基準作りの検討も、障害者本人のニーズの把握のために重要である。

(2)支援計画の具体的内容については、予め定められた支援メニューを割り振るような定型的な方法ではなく、障害者本人のニーズに応じて柔軟に決する方法、すなわち創設的に支援計画の内容を決する方法がとられることが望ましい。この支援計画の策定にあたっては、ケース会議などの手法により、数人のチームにより対応することも検討されるべきである。
 なお、障害者本人の症状や、置かれた状況によっては、即時に支援が必要となる場合も考えられる。このような場合には、支援計画の策定がなされる前であっても、仮の支援計画を策定し、必要不可欠な支援を即時に実施することができる途を開いておくことが望ましい。

(3)また、決定された支援計画に沿って、試行的に支援を実施する期間を設けることも検討されてよい。このような試行的な支援の実施に対して、障害者本人の意思を聞き取り、この意思に基づいて支援計画を修正していくことが重要である。

(4)支援計画が策定された後においても、障害者本人から継続的にヒアリングを実施し、当初策定した支援計画に対する事後的な検証を行うことが必要である。障害者本人の症状や、障害者本人を取り巻く環境は、時の経過とともに変化していく可能性があり、当初策定した支援計画が、現時点における障害者本人のニーズに合致していない場合も考えられる。そこで、これを是正する機会を確保するため、障害者本人からは継続的なヒアリングを実施し、当初策定した支援計画と、本人のニーズとの間にずれが生じている場合には、支援計画に修正を加えていく必要がある。

(5)以上のような、支援計画の策定から事後的な検証に至る過程において、各障害当事者団体との連携は重要である。各障害当事者団体は、長年にわたり、社会の理解をはかるため、さらには、制度の創設・改善を求めて努力を重ねてきている。このような各障害当事者団体の障害特性に関する知識と経験、あるいは障害者本人の心情、家族の心情などに関する知識を、支援計画の策定から事後的な検証に至る過程において活用していくことが、より障害者本人のニーズに応じた支援計画のあり方につながると考えられる。

(6)また、支援計画に関する地域間格差が生じないように留意する必要がある。特に、社会における認知・理解が不十分な障害については、市町村レベルに至るまで、十分な理解がはかられるよう、官民一体となった努力が必要である。重症心身障害児など、対象者が希少な障害については、窓口の設置場所に工夫を加えることも必要ではないかという意見も出されている。

第6 手帳制度について

 本作業チームでは十分に議論することができなかったが、現行の手帳制度については、よりよいものとするために、その問題点や具体的改善策などを議論する場を別途設けた上で、議論を尽くす必要があるとの意見が出されている。
 今後の要検討事項として、委員会を立ち上げるなどの具体策を求めたい。

以上

(部会委員からの追加意見)

  • 「機能障害」にも原因が不明な場合があり、この場合には、医師も専門職もまったく協力できない。こうした場合に機能障害を示す客観的資料をどう確保するのか疑問がある。
  • 現行各種手帳制度は医師の診断書に基づいて交付されており、手帳がなく、診断書を得にくい谷間にある方々には、医師の意見書などが有効であるから、医師の診断書の表記は不要と考える。
  • 相談窓口で対応する職員の裁量権について検討されたのかが疑問である。