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総合福祉部会 第12回 H23.2.15 資料6-1

施策体系~地域生活支援事業の見直しと自治体の役割報告書

Ⅰ.はじめに

 当作業チームでは、これまで支援の狭間にいた人たちに必要な福祉サービス(D-1-1)や、また、現行の介護給付、訓練等給付と地域生活支援事業の区分、総合福祉法での支援体系のあり方や生活構造やニードに基づいた支援体系という観点を念頭に、D-1-5 地域生活支援事業、D-1-6 コミュニケーション支援事業及びF-1 地域生活支援整備のための措置、F-2 自立支援協議会を検討の範囲とし、障害者総合福祉法(仮称)におけるサービス体系及び自治体の役割のあるべき姿について、地域生活の権利(障害者権利条約第19条)の保障を念頭に整理した。
 第1回(10月13日)では、サービス体系(現行の給付区分等)、地域生活支援事業(当該事業の仕組み)、コミュニケーション支援事業(聴覚障害者、盲ろう者、視覚障害者、知的障害者等を含む)、移動支援事業(ガイドヘルプ等の仕組み等、労働行政や教育行政との枠割分担)、日常生活用具の給付等事業、地域生活の資源整備(障害福祉計画を含む)、自立支援協議会、自治体の役割について、現状と課題、あるべき姿について検討を行った。
 第2回目(11月19日)は、前回の報告と議論を受け、①個人への支援(小さなケア)と自治体の基盤整備(大きなケア)を一体的に結びつけるための方策、②地域移行や訪問支援・日中活動支援・コミュニケーション支援・移動支援を含む社会参加活動支援・居住支援を効果的に進めるためのあるべき自治体の役割の検討、③地域生活支援事業という枠組みの捉え直し、④残された論点に関する4つの点をベースに、ⅰ.数値目標を定めて自治体レベルで整備すべき緊急かつ重要な地域生活の基盤や相談支援体制や地域自立支援協議会の関わり、ⅱ.中長期的な障害の理解・普及啓発に関する自治体の役割、ⅲ.コミュニケーション支援及び移動支援の個別給付化における制度設計やその範囲、ⅳ.地域生活支援事業の見直しと自治体の役割に関して議論されていない重要な課題について検討を行った。
 そして、これまでの検討を踏まえ、第3回(12月7日)では、当該作業チームの意見取りまとめに向けた作業と、障害者総合福祉法(仮称)における地域生活支援事業の見直しと自治体の役割やあるべき姿とその方向性を整理した。

Ⅱ.結論

1.コミュニケーション支援の確立(盲ろう者通訳介助含む)について(論点D-1-2、D-1-5、D-1-6、D-3-1)

結論

 コミュニケーション支援については、支援を必要とする障害者に対し、社会生活の中で対応すべき必要な基準を設け、義務的経費で無料とする。特に、盲ろう者のコミュニケーション支援に関しては、移動介助を含めた運用を求める。そして、上記支援の基盤整備のうえに、さらに教育・雇用・人権などの観点から必要な支援のあり方については、当該分野の法律で保障する事や将来的な立法も含めて検討する。このように、段階的に支援の量を拡大していく必要があるのではないか。

2.移動支援の自立支援給付化(個別給付化)について(論点D-1-2、D-1-5、D-2-2、D-3-1)

結論

 移動に関しては、介護給付である「重度訪問介護」「行動援護」と地域生活支援事業の「移動支援」でわかれている。だが、「歩く」「動く」は「話す」「聞く」「見る」と同様、基本的権利の保障であり、自治体の裁量には馴染まないものであり、自立支援給付化が求められる。ただその際、教育・雇用などの場面での移動支援は、当該分野の法律で保障する事も求められる。これらの制度の重複、市町村格差や、使いにくい現状については、福祉の範囲で具体的にどこまで対応すべきか、も含めて、第2 期作業チームで具体的に検討する。

  • 上記1と2に関しては、今後検討の上で立法化が予定されている差別禁止法の中で、合理的配慮とは何か、を定めた上で、総合福祉法の中でカバー出来ない(福祉以外の立法がカバーすべき)部分について、規定すべきである。

3.地域活動支援センター事業の再編成について(論点D-1-2、D-1-5)

結論

 地域活動支援センター事業の内容については、就労の面と日中活動の場の面があり、就労部会および第2 期での議論を踏まえた上で、地域生活支援事業に残すものと、他事業との体系の統合の中で自立支援給付にするものとに分ける。なお、小規模作業所については、新体系に移行できない作業所があることに鑑み、第2 期作業チームで問題点の検証とともに、具体的に検討する。

4.相談支援事業(成年後見制度及び居住サポートを含む)について(論点D-1-5)

結論

 医療・福祉・保健など各分野が連携したトータルな支援を行うためには、相談支援の充実が必要であり、市町村の相談支援機能を強化するとともに、障害者の人生をトータルにサポートするような支援の仕組みが必要である。
 相談支援事業本体については、選択と決定・相談支援プロセスの作業チームの協議結果に委ねるべきである。

5.福祉ホーム及び居住サポートについて(論点D-1-2、D-1-5)

結論

 福祉ホームについては、居住機能に応じたサービス体系のあり方を考えれば、居住支援の一部としてグループホーム(GH)・ケアホーム(CH)と同じ位置づけで自立支援給付化するとともに、公営住宅、民間賃貸住宅等の活用も含めた障害者の居住の場の確保という観点から整理をするべきである。

6.補装具と日常生活用具のあり方について(論点D-1-7)

結論

 日常生活用具給付等事業は補装具と同様に自立支援給付とすべきである。

7.権利擁護の仕組み(成年後見制度など)について(論点D-1-5)

結論

 権利擁護の仕組みについては、障害者が必要とする支援を受けながら自己決定を行えることが、最も大切にされる分野であり、成年後見制度そのものを含めた一体的な内容として議論されるべき部分である。今後上程が予定される障害者虐待防止法や障害者差別禁止法でカバーすべき部分と、自治体が主体的に担う部分の役割分担については、第2期作業チームで検討すべき内容であるが、障がい者制度改革推進会議においても議論をする必要がある。

8.地域生活のサポートにおける自治体の役割(障害の理解と普及啓発を含む)について(論点F-1-1、F-1-2、F-1-3、F-2-3)

結論

 緊急かつ重要な地域における社会資源整備は、地域生活のサポートにおける自治体の重要な役割である。具体的には、住まい、相談支援、労働・日中活動支援、コミュニケーション支援等について、総合福祉法制定時から数年間で何らかの数値目標を作り、モニタリングする仕組みをつくる。その具体的な内容は第2期作業チームで検討する。
 それと同時に、障害の問題についての理解を深める広義の普及啓発についても、例えば鳥取県で取り組んでいる“あいサポート運動”(※)等のような社会全体の意識を高めつつ、中長期的な戦略として、自治体施策の中に盛り込む。普及啓発は、一方的なものでは効果が薄い。学校教育の段階からの繰り返しの啓発が必要であり、高齢者支援など他の福 祉分野と連携した普及啓発が必要である。

(※)あいサポート運動とは、地域の理解が不可欠という考えをもとに、障害のある人が、地域の一員としていきいきと暮らしていくため、国民に広く、障害の特性や障害のある人への配慮の仕方などを知っていいただき実践していただく運動。一般市民、さまざまな障害者団体や県内外の民間企業等が“あいサポーター”として参加協力し、暮らしやすい地域社会作りのために運動を繰り広げている。平成21年より実施。

9.障害福祉計画と地域自立支援協議会、個別支援計画の連動(社会資源の整備を含む)について(論点F-1-4、F-2-1、F-2-2、F-2-3、F-5-1)

結論

 地域自立支援協議会が実態的により機能が発揮できるようにするためには、法的位置づけを明確にするとともに、委員の公募方式の採用や、障害当事者が参画できる形態を重視すること、また運営支援に関する研修等も求められる。同協議会の設置の規模や形態については、実質的な運営ができるように、自治体に裁量をもたせる。
 内容に関しては、その地域における解決困難事例に取り組む中で、地域生活が実現可能となるための各種社会資源の開発の役割や、障害福祉計画へとつなげる役割として位置づける。また、数値目標のモニタリングの問題は、施策推進協議会との役割分担も含め、障がい者制度改革推進会議で議論すべきである。ただ、上記の役割を果たすための方法については、市町村の実情によって一定の幅があってよい。
 また、都道府県は、市町村の障害福祉計画を取りまとめるだけでなく、広域的・専門的支援の見地から、市町村の地域自立支援協議会の運営の助言や情報提供、障害福祉計画と地域自立支援協議会、個別支援計画の連動を手助けするための人材育成支援などにも取り組む。

10.広域的・専門的支援にかかわる都道府県の役割について(論点F-1-1、F-1-2、F-1-3、F-5-1)

結論

 相談支援専門員、手話通訳者、盲ろう者の支援員(通訳を含む)市町村の実務担当者等の人材育成等、市町村が単独ではできないことについて、都道府県が主体的な広域調整・専門的な支援を行うべきである。また、視覚障害・聴覚障害・盲ろう・重度重複障害や重心障害・発達障害・高次脳機能障害・難病など、障害の困難性に伴う専門的な知識及び技術を要する支援あるいは相対的に数が少ない障害に対応する支援(広域的センター等)について都道府県の果たすべき広域的・専門的支援とは何か、も具体的に規定する。

11.地域生活移行(社会的入院・入所を防ぐための整備)について(論点F-1-2、F-1-3、F-5-1)

結論

 地域生活を希望するどんなに重い障害のある人も地域生活が出来るような支援システムを創ることによって、社会的入院・入所や新規の入院・入所を減らすためには、自治体にはこれまで以上に大きな役割が求められている。自治体は、障害福祉計画などで地域生活支援を促進する計画を立て、それを着実に実行すべきである。その内容は、第2期作業チームで具体的に検討する。

Ⅲ.理由

 現行の自立支援給付(介護給付、訓練等給付)と地域生活支援事業との区分からみた場合、地域生活支援事業については、障害者自立支援法上の様々な矛盾が特に詰まっている事業であると言える。
 移動支援とコミュニケーション支援の二つの事業に関しては、本来「話す」「聞く」「見る」「歩く」「動く」という基本的権利の保障であり、自治体の裁量には馴染まないものでありながら、現状では自治体が個別に判断する事を求められている。そのことによる自治体間格差も深刻な問題である。また、日常生活用具給付等事業は、自立支援給付である補装具との明確な定義上の違いも不明瞭である。自立支援法施行前後における国家財政の制約が強く働き、結果として今後サービス支給の伸びが予測されそうな上記の各種支援が、自立支援給付化されなかった、とも考えることができる。附言すれば、これらのサービスは、障害者の地域生活支援に不可欠であり、かつ今までその権利性が十分に認められてこなかった支援類型である。
 地域生活支援事業は、できるだけ自立支援給付・義務的経費化し、自治体の裁量として残す方がよいものは残すという方向にする。但し、自立支援給付・義務的経費化した内容については、その提供する支援内容に応じて、応益負担の原則は廃止し、仮に負担が求め得られる場合であっても、定率負担とすることなく、また本人の所得を基礎とするということが言え、これらの問題を解消するためには、地域生活支援事業の抜本的な見直しが求められている。

Ⅳ.おわりに

1.他の作業チームへの検討要望(意見書提出済み)

(1)移動支援にかかる訪問系チーム及び就労チームへの議論の要望

 移動支援の範囲については、日常生活や社会生活における様々な場面への支援が必要とされるところだが、教育や労働(通学・通勤)における移動支援については、教育あるいは労働との一体的な保障という観点から検討することが必要と思われる。

(2)地域活動支援センターの再編成にかかる就労チームへの議論の要望

 地域活動支援センターの再編成の検討については、自立支援給付化も含めて検討していかなければならないと考えるところだが、現在の地域活動支援センターの事業体系には、就労にかかわることも多く、当チームだけの検討では不十分であると思われ、就労チームでも検討する必要があると思われる。

(3)家族支援にかかる障害児チームへの議論の要望

 地域生活のためのサポートについては、基礎自治体の役割の見直しも求められるところだが、特に、障害のある子どもをもったことを受容するための家族への支援については、十分に支援できる機能がほとんどないといった現状があり、家族支援の検討にあたっては、障害児チームでも検討する必要があると思われる。

2.推進会議への検討要望(意見書提出済み)

(1)障害の理解に関する普及啓発については、「障害者基本法」改正の検討を進める中において重要な事項と理解しており、このことについて、議論が必要と思われる。

(2)「障害者基本法」に基づく障害者施策推進協議会と地域自立支援協議会では、多くの自治体で役割や人選が重複している現状がみられることから、この2 つの協議会の棲み分けや役割分担、整理に関する議論が必要と思われる。

(3)地域自立支援協議会については、法的な位置づけを定めた上で、その地域における解決困難事例に取り組む中で、障害福祉計画へとつなげる役割として位置づけることが必要であり、また、数値目標のモニタリングの問題については、施策推進協議会との役割分担も含め、議論が必要と思われる。但し、上記の役割を果たすための方法については、市町村の実情によって一定の幅があってよい。

3.第2期作業チームへの申し送り

(1)コミュニケーション・移動支援については、労働行政や教育行政との関係性を十分に検討する必要があるが、制度上の重複、市町村格差や制度の利用のしづらさに関しては、福祉の範囲で具体的にどこまで対応するべきかも含め、具体的に検討する必要がある。

(2)地域活動支援センターの事業内容並びにいわゆる小規模作業所のうち、新体系に移行できない作業所の問題点の検証を含め、具体的な検討を要する。

(3)権利擁護の仕組みそのものに加え、障害者差別禁止法や障害者虐待防止法でカバーすべき部分と自治体が自主的に担う役割について、障がい者制度改革推進会議での議論はもとより、作業チームとして、さらに検討することが必要である。

(4)地域自立支援協議会の設置については、自治体の実情(実態)を理解した上で、運営主体や手段等をどうするのか、検討をさらに重ねる必要がある。

(5)地域生活移行(社会的入院・入所を防ぐための整備)の結論で示したように、自治体が障害福祉計画等で地域生活支援を促進する計画を立て、着実に実行すべきと考えるが、障がい者制度改革推進会議「第二次意見」では、地域生活移行について“国は一定の年次目標を揚げて取り組むべきであり、その年次目標の実現のため受入先となる居住等の計画的整備が必要” とされたところであり、具体的な内容については検討を要する。

以上

「地域生活支援事業の見直しと自治体の役割」報告書【補足版】

○これまで当作業チームにおいて検討の論点としてあがらなかった事項で、かつ第2期作業チームで問題点の検証と具体的な検討を要すると思われる「地域生活支援事業の見直しと自治体の役割報告書」に対する主な意見は、以下のとおり。

  1. コミュニケーション支援の確立」について、その支援の対象者の範囲に、重篤な難病患者でコミュニケーションができない人たちを対象にすることを含めていただきたい。
  2. 地域活動支援センター事業の再編成」について、地域活動支援センターは、利用者の利便性に鑑み、人口比ではなく面積に合わせた整備が必要と考える。また、財政的支援と要件緩和を含めた小規模な地域活動支援センターを増やす必要がある。
  3. 「7.権利擁護の仕組み」について、知的や発達障害の人たちに対する「権利擁護」への理解が充分ではないことからも、「権利」について議論し、明確にしていく必要があると思う。施策も消極的権利擁護の施策と積極的権利擁護の施策や支援を分けて考えていく必要があると思う。入所施設については、積極的な意味での入所機能を明確化していくなど抜本的に変える必要があると思う。
  4. 「9.障害福祉計画と地域自立支援協議会、個別支援計画の連動」について、
    1. 24時間など長時間介護の障害者や、長時間利用者を自立支援している障害者団体等も、原則として参加させることによって、当事者主導の自立支援協議会を確立するべきである。
    2. 委員の公募方式がいいのだが、障害当事者の参画を重視というのではなく義務付けとした方がいいのではないか。

以上