総合福祉部会 第5回 H22.7.27 参考資料2
尾上委員提出資料
(第5回総合福祉部会)「障害者総合福祉法」(仮称)の論点についての意見
DPI日本会議事務局長 尾上浩二
分野A 法の理念・目的・範囲
項目A-1 法の名称
論点A-1-1) 法の名称についてどう考えるか?
○結論
今後の部会での検討結果を受けた法律の内容を示す名称がふさわしいと考えるが、現時点では、「障害者総合福祉サービス法」がよいと考える。
○理由
「制度の谷間のない」、かつ、(医療、労働それぞれの分野で障害者政策を押し進めることを前提にして)「福祉的支援(サービス)」を中心にカバーすることを表す必要があるから。
項目A-2 誰の何のため
論点A-2-1) そもそも、この総合福祉法は、誰の何のためにつくるのか?
○結論
社会生活を送る上で、何かしらの支援が必要な「障害のあるすべての人」に対して、「地域社会で生活する平等の権利を認め、障害のある人によるこの権利の完全な享有並びに地域社会への障害のある人の完全なインクルージョン及び参加を容易にするため」(条約第19条)
○理由
障がい者制度改革は障害者権利条約の批准のための国内法整備を第一の目的としており、その一環として障害者権利条約をふまえた法律とすることが必要であるから
論点A-2-2) 憲法、障害者基本法等と「総合福祉法」との関係をどう考えるか?
○結論
整合性を確保する。特に、今後検討される障害者基本法の抜本改正で示される「障害の定義」をはじめとする規定を十分ふまえた検討が重要である
○理由
上位に位置する憲法、障害者基本法等と整合性を確保することが必要である。
項目A-3 理念規定
論点A-3-1) 障害者権利条約の「保護の客体から権利の主体への転換」「医学モデルから社会モデルへの転換」をふまえた理念規定についてどう考えるか?
○結論
設問にある理念規定を、この法律においても行うことは必要である。
○理由
推進会議の第一次意見書を受けて、6月29日の閣議決定には「障害者制度改革の基本的考え方」として「あらゆる障害者が障害のない人と等しく自らの決定・選択に基づき、社会のあらゆる分野の活動に参加・参画し、地域において自立した生活を営む主体であることを改めて確認」(権利の主体)、「日常生活又は社会生活において障害者が受ける制限は、社会の在り方との関係によって生ずるものとの視点」(社会モデル)とある。閣議決定をふまえた記述が必要である
論点A-3-2) 推進会議では「地域で生活する権利」の明記が不可欠との確認がされ、推進会議・第一次意見書では「すべての障害者が、自ら選択した地域において自立した生活を営む権利を有することを確認するとともに、その実現のための支援制度の構築を目指す」と記された。これを受けた規定をどうするか?
○結論
明文化することが必要である。
○理由
A-2-1)で述べた、権利条約の規定から、どのような障害者も障害のない人と同等の権利を確保されて、地域で生活する権利があることや、施設ではなく地域生活を実現するためには、障害者が、必要とする支援を確保することが必要不可欠であるから。
論点A-3-3) 障害者の自立の概念をどう捉えるか?その際、「家族への依存」の問題をどう考えるか?
○結論
障害者の自己決定(支援付きの自己決定を含む)を核とした概念としてとらえるべきである。また、その際、本人のみを主体とすることが必要である。
○理由
条約第3「一般原則」(a)項に、「固有の尊厳、個人の自律(自ら選択する自由を含む。)及び人の自立に対する尊重」、並びに推進会議の第一次意見書で「地域生活を可能とするための支援」として「すべての障害者が家族への依存から脱却し、自ら選択した地域において自立した生活を営む権利を有することを確認」とあることをふまえた規定が必要だから。
項目A-4 支援(サービス)選択権を前提とした受給権
論点A-4-1) 「地域で生活する権利」を担保していくために、サービス選択権を前提とした受給権が必要との意見があるが、これについてどう考えるか?
○結論
サービスの選択権と受給権の明記は、必要である。
○理由
推進会議・第一次意見書の「地域で暮らす権利の保障とインクルーシブな社会の構築」がかかげられており、その実現のためにも明記が不可欠であり、障害福祉サービスの権利性と利用者の選択権を保障するための明文化が必要である。
論点A-4-2) 条約第19 条の「特定の生活様式を義務づけられないこと」をふまえた規 定を盛り込むか、盛り込むとしたらどのように盛り込むか?
○結論
盛り込むことが必要である。施設や病院などでの「特定の生活様式を義務づけられる」ことなく、障害者自身が居住地、誰とどこで住むかの選択かあること、並びに地域で生活する際に必要な介護等の支援(サービス)を得られるようにする規定が必要。
○理由
権利条約第19条の規定並びに、推進会議第一次意見書の「教育、福祉、医療等における制度設計に当たっては、分離又は排除の傾向や地域間格差を限りなく取り除き、誰もが有する地域で暮らす権利を実現するため、地域移行や地域生活支援の充実を柱に据えた施策を展開していく」をふまえた規定にする必要がある
論点A-4-3) 障害者の福祉支援(サービス)提供にかかる国ならびに地方公共団体の役割をどう考えるか?
○結論
それぞれの役割と責任を当事者を主体することを前提として明記する。
○理由
この間の我が国の施策及び福祉先進国の歴史から、国の法律において国及び地方政府が、人権施策として障害福祉サービスの提供することを義務化するとともに、そのための予算措置も同様とする。加えて、長時間サービス等を必要とする障害者や財政基盤の脆弱な自治体におけるサービス確保については、国が責任をもって予算措置をすることも明記しなければ障害者福祉サービスが確保できない器具がある。
項目A-5 法の守備範囲
論点A-5-1) 「総合福祉法」の守備範囲をどう考えるか?福祉サービス以外の、医療、労働分野、コミュニケーション、また、障害児、高齢者の分野との機能分担や(制度の谷間を生まない)連携について推進会議の方向性に沿った形でどう進めていくか?
○結論
「障害者総合福祉法」の主な守備範囲は、差し当たって「自立支援法」がカバーしてきた福祉的支援(サービス)が中心になると考える。ただ、それ以外の近接領域とのあり方については、推進会議本体と、当総合福祉部会のそれぞれの構成員からなる合同検討チームをつくって検討するべきである。
○理由
今後、推進会議本体においても各課題について、適宜作業チームをつくって検討していくこととなっている。医療、労働、障害児等の課題は、推進会議本体との検討とも重なるから。
論点A-5-2) 身体障害者福祉法、知的障害者福祉法、精神保健福祉法、児童福祉法、その他の既存の法律のあり方、並びに総合福祉法との関係についてどう考えるか?
○結論
まずは、本「総合福祉法」の検討・実施を進めていくことが前提である。障害種別3法中で規定されている機能や機関は、今後、段階的に統合移管していく必要がある。ただ、精神保健福祉法のみ医療に福祉が付け足されている特異な体系となっているので、早急に福祉と医療を分ける方向での検討が必要である。児童福祉法については、地域で暮らし・共に育つということを前提に、インクルーシブな早期支援が得られるようにすべきである。
○理由
障害種別ごとに分かれているものを見直し、「制度の谷間を生まない」ようにするため。
項目A-6 その他
論点A-6-1) 「分野A 法の理念・目的・範囲」についてのその他の論点及び意見
○結論
○理由
分野B 障害の範囲
項目B-1 法の対象規定
論点B-1-1) 推進会議では、障害の定義について、「社会モデルに立った、制度の谷間を生まない定義とする」ことが確認されている。これをふまえた、「総合福祉法」における障害の定義や支援の対象者に関する規定をどう考えるか?
○結論
手帳の有無に関係なく、支援が必要な人すべてを対象者にする。例えば、「身体障害者手帳、療育手帳、精神保健福祉手帳の所持にかかわらず、身体的、精神・知的障害にともない、他の者との平等を基礎として社会への完全かつ効果的な参加を妨げられている者(児)であって、この法律のサービスが必要であると支給決定において認められる者(児)を対象とする」といった規定が考えられる。
○理由
現行の手帳は、医療モデルに基づく制度であるから。また、手帳制度に基づくことが、制度の谷間の問題を生み出した大きな要因でもあるため。
論点B-1-2) 「自立支援法」制定時の附則で示されていた「発達障害、 高次脳機能障害、難病(慢性疾患)」等も含みこんだ規定をどうするか?制限列挙で加えるのか、包括的規定にするのか?
○結論
B-1-1)で例示したように、包括的に規定する必要がある。
○理由
制限列挙は、新たな谷間を生み出す懸念があることおよび、権利条約が、障害を発展途上の概念としていることから、支援の必要性に基づき対応できるようにすることが必要である。
項目B-2 手続き規定
論点B-2-1) 障害手帳を持たない高次脳機能障害、発達障害、難病、軽度知的、難聴などを有する者を排除しない手続き規定をどう考えるか?
○結論
手帳を所持しない発達障害、高次脳機能障害、軽度障害などとともに、難病、慢性疾患を有する人たちが医師の意見書や1週間の利用計画票等を提出したものは入り口で排除せず、他の者との平等を基礎として、日常生活、社会生活上の参加に制限が認められる人については介護、就労支援等の施策が利用できるようにすべきである。
○理由
部会でまとめた当面の課題の重点課題として示された内容を受けて、緊急措置以降もふまえた手続き規定とする必要がある。その際、新たな仕組みとなることから、各種モデル事業を行いながら具体的なプロセスを煮詰めていけばよい。今後の制度設計のためにも、当面の緊急措置において手帳を所持しない者が「自立支援法」へアクセスできるようにし、ケースを把握すべきである。
項目B-3 その他
論点B-3-1) 「分野B 障害の範囲」についてのその他の論点及び意見
○結論
○理由
分野C 「選択と決定」(支給決定)
項目C-1
論点C-1-1) 「必要な支援を受けながら、自らの決定・選択に基づき、社会のあらゆる分野の活動に参加・参画する」(意見書)を実現していくためには、どういう支援が必要か?また「セルフマネジメント」「支援を得ながらの自己決定」についてどう考えるか?
○結論
地域の身近なところでエンパワメントの支援を受けられるようにすること、本人の身近に相談者や支援者がいるような体制をつくり、「セルフマネジメント」「支援付きの自己決定」により、自らの選択・決定に基づいて地域で暮らせるような支援が必要である。なお、その際、当事者によるピアサポートが重要な役割を果たすこととなろう。
○理由
権利条約12条-3「障害のある人がその法的能力の公使に当たり必要とする支援にアクセスすることができるように」と、「自己決定支援」の必要性が述べられている。こうした点をふまえて、どんな障害であっても、その人自らの自己決定を進めていく支援が重要である。「自己決定できる人」「できない人」と区分けしてはならない。大切なのは、自己決定に至る支援を手厚く、丁寧にできるような仕組みをどう構築するかという点にある。
論点C-1-2) 障害者ケアマネジメントで重要性が指摘されてきたエンパワメント支援についてどう考えるか?また、エンパワメント支援の機能を強化するためにはどういった方策が必要と考えるか?
○結論
前述の通り「自己決定支援」を基本に考えるならば、エンパワメント支援の充実は不可欠である。これまでも、ピアカウンセリングや自立生活プログラム、体験自立等が施設・病院や親元からの地域以降の際に重要な役割を果たしてきた。しかし、それらは制度的な位置づけに乏しい現状にある。これまでの活動実績をふまえて、障害者主導で運営される「地域エンパワメント事業」のような新しい事業を創設する必要がある。
○理由
エンパワメントを通じて地域で生活するイメージをつくっていくことが、地域生活、地域移行のためにも重要だから。
論点C-1-3) ピアカウンセリング、ピアサポートの意義と役割、普及する上での課題についてどう考えるか?
○結論
これまでピアカウンセリング等の活動を進めてきた実績のある当事者団体の協力を得て、ピアカウンセラー・ピアサポーターを養成していくようにするとともに、地域エンパワメント事業や相談支援等に、ピアカウンセラー・サポーター等を配置する規定を設ける。
○理由
支援の現場においてピアカウンセラー・サポーターの意義・重要性は確かめられているにもかかわらず、これまで制度設計の中では十分活かされていないから。
論点C-1-4) 施設・病院からの地域移行や、地域生活支援の充実を進めていく上で、相談支援の役割と機能として求められるものにはどのようなことがあるか?その点から、現状の位置づけや体制にはどのような課題があると考えるか?
○結論
地域エンパワメント機関や相談支援センターが、施設や病院からの地域移行に関する取り組みに関与する仕組みをつくる。
○理由
施設や病院内で地域移行に関する相談をしても、地域移行後に改めて相談室を見つけなければならない。施設・病院は、地域移行した障害者の相談支援にあまり関与していない現状から、最初から地域の相談支援センターとの連携を確保することが必要である。また、多くの施設・病院が、地域移行に関する知識や認識が無い現状からも地域の相談支援センターが関与して地域移行を進めるべきである。
項目C-2 障害程度区分の機能と問題点
論点C-2-1) 現行「自立支援法」の支給決定についてどう評価し、どういう問題点があると考えるか?また、その中で「障害程度区分」の果たした機能と、その問題点についてどう考えるか?
○結論
障害者本人のニーズが後回しにされるようになった。地域間格差を生み、障害者の実際の生活・社会参加ニーズにみあわない支援格差を生んだ。また、5割を超える区分変更に見られるように、現在の障害程度区分判定に要している人的労力・財政は壮大な浪費となっているのではないか。(そのお金があれば、相談支援やピアカウンセラーの充実に使えたのではないか)
○理由
障害程度区分の判定項目内容が、医学モデルであること。程度区分による国庫負担基準が設定されたこと等。
論点C-2-2) 「障害程度区分」と連動している支援の必要度及び報酬と国庫負担基準についてどう考えるか?特に、今後の地域移行の展開を考えた際に、24 時間の地域でのサポート体制(後述)が必要となるが、そのための財源調整の仕組みをどう考えるか?
○結論
実際に自治体が負担した額に対して国庫負担額を決定し国・都道府県が支払うようにし、真の意味での義務的経費とすべき。また、長時間サービス等で自治体だけで負担困難なものは、国・都道府県の責任で財源調整できるようにする。
○理由
義務的経費といいながらも現行の障害程度区分とリンクした国庫負担基準の仕組みは、市町村の持ち出しが多くなっていてサービスの確保に支障が生じている。また、都道府県も市町村の負担実態に対して財源調整する仕組みが必要だから。
項目C-3 「選択と決定」(支給決定)プロセスとツール
論点C-3-1) 第3回推進会議では、障害程度区分の廃止とそれに代わる協議・調整による支給決定プロセスのための体制構築についての議論がなされた。これらの点についてどう考えるか?
○結論
障害程度区分の廃止を前提に、新たな仕組みの構築が必要である。
○理由
個々人によって障害の程度、生活状況、必要なサービスが違うので、障害程度区分は廃止した上で、障害者本人と自治体の担当者が協議・調整の上、支給決定できる仕組みにすべきである。
論点C-3-2) 「障害程度区分」廃止後の支給決定の仕組みを考える際に、支給決定に当たって必要なツールとしてどのようなものが考えられるか?(ガイドライン、本人中心計画等)
○結論
地域エンパワメントの創設、本人中心の考えを理解した相談支援の充実が必要である。その上で、ガイドラインや本人中心計画等のツールを位置づける必要がある。
○理由
障害者が望む生活を実現するためのツールであり、仕組みであるべきだから。
論点C-3-3) 支給決定に当たって自治体担当者のソーシャルワーク機能をどう強化するか?
○結論
地域エンパワメント事業や本人中心計画の作成支援等、障害者に対する支援の充実の一方で、支給決定にあたる自治体の担当者が障害者の地域生活について深い知識・経験を有していることが、協議・調整を成り立たせるためには重要である。そうした点から、自治体担当者のソーシャルワーク的能力構築が必要である。
○理由
これまで、「支給決定に当たる人材不足」も一つの理由にして、コンピューター判定を軸にした「障害者程度区分」の開発・導入が進められてきた。しかし、それが実際には大きな問題・歪みを生み出したのは前述の通りである。「自立支援法」でも「障害程度区分だけで一律に決まるわけではなく、障害者個々人の状況をふまえて決めている」という説明がなされてきた。だとするならば、ちゃんと協議・調整ができるように、人材養成を真剣に考える必要がある。
論点C-3-4) 推進会議でも、不服審査機関の重要性が指摘されているが、どのような不服審査やアドボカシーの仕組みが必要と考えられるか?
○結論
協議・調整モデルに基づく支給決定を進めていくためには、すみやかに不服申し立てができる仕組みが必要である。行政裁判所のような仕組みをそのまま導入はできないとしても、異議申し立て手続きの検討が求められる。また、身近な地域レベルでの地域エンパワメント事業を前提に、都道府県ごとの権利擁護機関の創設も求められる(差別禁止法とも関係してくるが)
○理由
「自立支援法」では「不服審査会」がつくられたが、その多くは形式的な手続き上の審査にとどまっており、実際の問題の解決に役立っていないから。
項目C-4 その他
論点C-4-1) 「分野C 「選択と決定」(支給決定)」についてのその他の論点及び意見
○結論
○理由