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総合福祉部会 第6回
H22.8.31 追加資料1

(第6回総合福祉部会)「障害者総合福祉法」(仮称)の論点についての意見

提出委員 三田 優子

(分野D 支援(サービス)体系)
<項目D-1 支援(サービス)体系のあり方について>

論点D-1-1) これまで支援の狭間にいた人たち(例えば発達障害、高次脳機能障害、難病、軽度知的障害など)に必要な福祉サービスとはどのようなものであるか?

○結論
障害者手帳を前提にしないで対応できる相談機関。判定だけでなく、生活の中で困って いることをきちんと聞ける人が必要です。そして利用しやすい居場所を、交通の便のいいところに確保することが大切です。もちろん基幹型の支援センターの登場を待っていますが、間に合わないので、公的な機関と民間の地域活動支援センター、または親の会などで使いやすい居場所モデルを各地で始めることからだと思います。

論点D-1-2) 現行の介護給付、訓練等給付と地域生活支援事業という区分についてどう考えるか?総合福祉法での支援体系のあり方についてどう考えるか?障害者の生活構造やニードに基づいた支援体系はどうあるべきと考えるか?

○結論
介護保険と一緒になることを前提にしていたので、使いやすい、現実にあった区分に大 きく見直すべきです。とにかく複雑で事務的なことで支援側が時間をとられすぎなのでシ ンプルであるべきです。ケアホームとグループホームとに分かれたのももとにもどすべき です。

○理由
まず障害者本人がどう暮らしたいか、どんな生き方をしたか、を支えるためにどんな支 援を組み足てるのか、という順番のはずなのに、まず利用できそうな支援はこれだけで、 支援を使うために今までの暮らしを変えることを求める形になっています。これこそ本人 主体とはほど遠いことだからです。また事業所の人たちは本当はもっと利用者と話したい と思っても時間は事務でとられ、本当の力が発揮できない現状です。もったいないです。

論点D-1-5) 地域生活支援事業の意義と問題点についてどう考えるか?地域生活支援事業の仕組みになじむものと、なじまないものについてどう考えるか?

○結論
地域生活支援事業は重要な核となるものです。ここが核とならないと障害があることで 特定の生活様式でしか暮らせなくなります。障害の特性に合わせたサービスを位置づけたことも意義があったと思います。しかし、だからこそ市町村にお願いしてしまっていいのか、地域で大きな違いが出ていることは問題だと思います。障害の程度に関わらず必要な支援はどこでも同じように利用できなければならないと思います。

論点D-1-6) 現行のコミュニケーション支援事業についてどう考えるか?推進会議・第一次意見書では、「手話や要約筆記、指点字等を含めた多様な言語の選択、コミュニケーションの手段の保障の重要性・必要性」が指摘された。これらを踏まえて、聴覚障害者や盲ろう者、視覚障害者、さらに、知的障害者、重度肢体不自由者を含めた今後のあり方をどう考えるか?

○結論
精神障害者もまた、その障害特性から物覚えが難しかったり、物事の段取りが取りにく さで困っている人がいます。コミュニケーション支援は、生活支援の基本であり、医療機関でも入所施設でも同じです。コミュニケーション保障の充実には、なによりもモニタリングなどで「役にたたないコミュニケーション保障や問題点」をきちんと整理すべきです。
障害者の格尊重が伴わないと質も上がらないので権利として保障するという事だと思 います。第三者による評価に項目としてもっと挙げていくべきです。

○理由
コミュニケーションの支援は地域生活だけを限定している風潮もあると感じています。
入所施設、精神科病院でも、徹底したコミュニケーション支援を行なわないと、モニタリングすらできない、コミュニケーション支援を受ける体験が乏しいままでは本当の地域移行は進まないと思います。

<項目D-2 生活実態に即した介助支援(サービス)等>
論点D-2-1) 推進会議では、シームレスなサービスの確保の必要性が指摘された。また、障害者権利条約では「パーソナル・アシスタンス・サービス」を含む支援サービスも提起されている。これらをふまえ、地域支援サービスのあり方についてどう考えるか?

○結論
パーソナルアシスタントサービスを実現するためには、現在のヘルパーの賃金の低さ、 仕事の評価の低さを改め(考え直す)、働く人を増やすことが必要です。地域支援のサービスは、病院や入所施設での専門的なサービスと言われるものと同等以上で、生活の支援のプロを育てるためにお金がもっと必要です。また、地域支援サービスを当事者が選べる仕組みとそのための支援がなければ、これまでと名前だけが変わったものになり、条約のねらいと遠くなるからです。

○理由
安いお金で、しかも大きな責任が求められるものなったら、そこで働く人は豊かなサー ビスを提供することは難しくなります。何よりも、利用する障害のある人にとってしんどいものになります。日本で障害者福祉に使うお金は他の国に比べ、とても低いので、予算が増えるのは当然です。大学生が卒業後の仕事として

論点D-2-2) 現在のホームヘルプ、ガイドヘルプの仕組みについては、何らかの変更が必要か?また、ガイドヘルプに関しての個別給付化は必要か?

○結論
ホームヘルプは、身体介護と家事援助の2本ではなく、加算でもいいので、もっとお金 を払える仕組みが必要です。「見なし」として本人がその気になったらすぐに使えること が重要です。また、障害者ヘルパーのための現任研修は大切で、市町村のニーズを見つけ るためにもやるべきです。
ガイドヘルプ(移動の支援)は、社会のいろいろな場面への参加のために重要なもので、 地域生活支援事業に入ってると社会参加をすすめにくいので仕組みを見直すべきです。学 校や、病院などでも区別なく使えてこそ、社会参加が進むと思います。

○理由
ヘルパーさんが家事援助だけ行なっている場合は少ないし、それはとても不自然なこと です。たとえば、精神障害者ホームヘルプサービスで、家事援助をしながら、ゆっくりお しゃべりしていることで、実は重要な相談相手になっていたり、再発・再入院を防ぐ役割 を担う応援団になっています。これはとても高度な支援で、心という身体の一部を介護し ているとも言えるので、家事援助のお金では評価が低く見合っていません。

論点D-2-3) 障害特性ゆえに必要とされる見守りや安心確保の相談といった身体介護・家事援助ではない人的サポートの位置づけをどうするべきか?

○結論
見守りや安心確保の相談は、命にかかわる支援です。身体介護と同等のお金を払うべき です。これまでその対象になっていないひとも、実際は結構ヘルパーさんが支援していた と思います。ただ、当事者の権利を護り、人格尊重をきちんと実行できるために、きちん と研修を受けることは重要ですから、障害者ヘルパー研修はいずれにしても必要です。人 的サポートにこそ、お金をかけないでは条約19条の「特定の生活様式」が増えることに なります。

○理由
身体介護、家事援助という2本立ては、介護保険も含めてすでに現実的ではない(支援 現場と合っていない)と思います。しかも、自立支援法になってから、精神障害者のヘル パーサービスは家事援助のみ、と公言する(遠慮せず堂々と言う)市町村も多く出て、こ の枠があること、そのお金の差、そして自立したら家事援助はいらなくなる、といった狭 い自立の考えからヘルパーさんはその良さを発揮できず、辞めていっているのは損だから です。

論点D-2-4) 医療的ケアが必要な障害者の地域でのサポート体制を確立するためにはどういう課題があるか? また、地域生活を継続しながら必要に応じて利用できるショートス テイ等の機能を望む声があるが、確保していくためにどのような課題があるか?

○結論
①医療スタッフとともにチームを組んで、総合的にその人の支援を描く場が重要です。 その際には、重度であっても当事者本人を中心にしたケアマネの手法でです。②障害者の 地域生活に関わる医療スタッフがまだ多くないのは医学教育にも問題がありますし、医療 と福祉とが結ばれていないからです。③地域生活を可能にするバリアフリーの住まいを増 やすべきです。
④ショートステイこそ、町中で、すぐ近くに医療者を確保しながら、いつもの生活圏で できることが重要です。数を増やし、すぐに使えなければ意味がありませんので、マンシ ョンや空き家を改造し、ベットを置いて、レスパイト(ゆっくりする)や緊急避難できる シェルター(場所を変えて過ごす)になれるようにすべきです。

○理由
医療的なケアが必要な障害をもつ人は多くいます。しかし、医療ケアだけが必要なわけ ではなく、障害のとても重い人も、ゆったりとした雰囲気の中で、支援者と心を通わせな がら成長し、そして社会の財産になっている実践例はたくさんあります。家族との交流こ そそれを証明しています。必要な医療を、地域で受けられないのが問題なのです。

<項目D-4 就労>
論点D-4-1) 「福祉から雇用へ」の移行はどこまで進んだのか?これまでの就労政策の問題点をどう考えるのか?

○結論
一般就労できるかできないか、どっちかに分けがちなのはまだまだ就労支援がいろいろ メニューをもっていないからだと思います。また、障害者の雇用は「促進」だけではすす みません。雇用のいろんな場面で起こっている差別(希望の職に就けないことも含めて) をなくし、働く権利の実現を全面に出さないと進まないと思います。

<項目D-5 地域での住まいの確保・居住サポートについて>
論点D-5-1) これまで地域移行の障壁になってきた住宅問題を解決するために、具体的にどのような方策が考えられるか?

○結論
何よりも市民啓発が重要です。家主(大家さん)に届くためのキャンペーンや情報発信 が大切です。
また、相談支援の一貫で、物件探しや契約支援をしている支援者への応援団として、住 まいの相談を受け調整、開拓する専門のセンターが必要だと思います。

論点D-5-2) 地域での住まいの確保の方策として公営住宅への優先枠を広げる方向で考えるべきか?

○結論
ひとつの方法としてはありかと思うが、公営住宅も住まいのひとつに過ぎず、またかな り改築しないと住めない建物が大半です。住みたい場所で暮らすことを保障するためには、 これだけやっていても足りないと思います。民間の住宅がたくさん空いているのをどう利 用できるかを考えることが大切。ただ、不動産業者には協力依頼できるものの、中間専門 業であるため、家主を含めた一般市民への啓発(正しい情報を知らせる)ということにな ります。

論点D-5-3) また、公営住宅が質量共に不足する現実がある中で、障害がある人のアパートなどの一般住宅の確保の為にどのような対応が必要か?(家賃等の軽減策や借り上げ型賃 貸住宅等)

○結論
住まいの支援はグループホームでもアパートでも必要です。家賃補助は住まいの支援と して必要です。借り上げ型の賃貸住宅は、障害者の人数規模が大きくならないようにする ことが前提です。

○理由
グループホーム、ケアホームしかなかったことが、障害者の住まい支援サービスの貧し さだったと思います。グループホームからひとり暮らしをしたいという希望をかなえるた めにもっと住まいの支援のメニューが必要です。ただ、グループホーム卒業してアパート へ、といった段階式にレベルアップするために用意するのでなく、人によって違う暮らし 方へのきめ細かな支援という意味です。

論点D-5-4) 居住サポート事業の評価とさらに必要とされる機能・役割にどのようなことがあるか?

○結論
住まい方を支援することを打ち出した意味では、居住サポート事業は意義があります。 宅建協会などは、このように事業となったものには関係を作りやすいそうです。 しかし、実際はこの事業だけ利用することはなく、また今のままだとどう使っていいの かわからない使いづらさがあるので全国でなかなか利用されていないと思います。相談事 業の強化と同時に、いろいろな法人が

論点D-5-5) グループホームとケアホームについて、現状の問題点は何か?また今後のあり方をどう考えるか?

○結論
5人以上の規模は普通の生活とは言えないと思います。また一ヶ所にたくさんのホーム があることは入所施設のもっていた問題を生みやすいのでやめるべきです。また今のお金 ではひとりひとりの支援には対応できないので、世話人を増やし、またそのための研修も 位置づける必要があります。市民のオンブズマン導入も必要かと思います。住環境を整え る費用が必要で、年をとっても障害が重くなっても住みたい人は住み続けるモデルを増や すことが、施設待機希望の家族にも影響を与えるはずです。

○理由
障害者ばかりがまとまって住んでること自体が、「特定の生活様式」になっています。 市民の理解を得にくい特別なかたちだし、支援側の都合です。職員が暮らしたくないとこ ろに障害者が住むのだとしたらそれだけで権利侵害になると思います。「施設もホームも 一緒」と利用者に評価される形では住まいの支援にならないし、地域移行にもなりません。

<項目D-6 権利擁護支援等>
論点D-6-2) 権利擁護を推進していくためにはどのような体制が必要か?相談支援やエンパワメントの事業化についてどう考えるか?

○結論
基本的な対人サービス業者の研修が必要です。権利侵害が起こっていながら、きちんと した話もできない、丁寧な謝罪も説明もできないで、結局は障害者が「言わなければよか った」と思う場面がとても多いです。専門性の前に、社会性を身につけ、しっかりとした 人権意識をもてるような研修の場が少ないのが問題です。事業でなく教育、研修だと思い ます。

○理由
当事者が「資格をとって専門職になったものの常識がないから支援を受けるのもくたび れる」と漏らすのを何度も聞いています。普通につき合えない、障害ばかりを見て人とし てつき合うことが難しい支援者には地域資源の開拓が難しいと思います。

論点D-6-3) サービスの質の確保等のための苦情解決と第三者評価の仕組みについてどう考えるか?

○結論
苦情解決委員も第三者評価委員も、役割を果たし、権利侵害を発見しても、結局、その 法人や団体の傘の下ではただ発見で終わってしまいます。

(分野E 地域移行)
<項目E-1 地域移行の支援、並びにその法定化>

論点E-1-1) 条約では、「特定の生活様式を義務づけられないこと」とあるが、これを確保するためにはどのようなことが課題にあるか?また、地域移行の法定化についてどう考えるか?

○結論
① 地域移行を法定化すると同時に、誰もが地域社会で暮らす権利があり、他者によって 決定されることは権利侵害であることを法文化すべき。
② 新規入所者・入院者が生まれれば、一向に総数は変わらない。安易な入所・入院を生 まないためにも、知的・身体障害も利用できる精神医療審査会のような機能を新設する。 精神医療審査会も含め、障害当事者が委員として位置づけられることが必要。
③ まず児童施設の廃止(里親制度、小さな単位の住まいに限るグループホームなど新規 施策が必要)を。
④ 今後は入所・入院期限を1年以下とし、入所入院と同時に地域へ戻る援助を開始する ことを義務化。
⑤ 入所定員、精神科病床数の大幅削減を、例えば10年後を期限設定し確実に行なう。 緊急予算配備で地域生活支援の資源を大幅に増やすことが同時に必要。
⑥ 入所施設・精神科病院での権利侵害をなくす取り組みが重要。オンブズマン制度を法 定化することや罰則が必要(指定取り消しや罰金など)。たとえば、重度者をただベッ ドに放置していること、地域での生活の具体的な説明を受けられないことなども権利侵 害であることを明記すべき。このオンブズマン活動には障害当事者の参画(予算も確保) が不可欠。

○理由
これまでに入所施設や精神科病院の廃止や閉鎖を進めてきた国では、短期間は大きな予 算確保が必要であった。が、長期的にみれば、入所施設や病院を維持し、巨額の人件費を 払い続けること、立て替え費用など数倍もの膨大なお金がかかる。またQOL も向上するし、 医療的なケアは人的支援である程度は軽減できることが実績としてある。地域で、家族が 今まで行なってきた援助の質を保ちながら、個別にきめ細かい支援を提供することは、重 度の障害をもつ人の権利でもある。また、アメリカでも児童施設から閉鎖が進んでいる。 成人施設へのエスカレーター化を防ぐことと、子どもこそ地域社会の中で、障害のない子 どもたちや、医療・福祉関係者以外との人間関係を体験することが重要という考え。

論点E-1-2) 入所施設や病院からの地域移行に関して具体的な期限や数値目標、プログラムなどを定めることは必要か?

○結論
数値目標は必要で、「入所定員」「入院病床数」について大幅削減するために設定する。 プログラムはこれまでなかなか成果をあげていないので、地域で生活しながら自分の暮ら しをつくるための本人中心の支援計画を作りながら、実際に地域で体験することが一番で す。ただ支援者向けの研修プログラムは必要です。その際には、19条の意味を中心に学 ぶことだと思います。

○理由
地域移行のための設定は、入り口をなんとかしなければ、ただ回転させるだけになる。 高齢化もあり、結果的に入所者・入院者は変わらない、または増加することになります。 地域での生活を主流にするなら、定員削減や入所期限を決めるのは当たり前のことです。

論点E-1-3) 地域移行を進めるために、ピアサポートや自立体験プログラムなどをどのように整備・展開していくべきか?

○結論
地域生活移行にあたり、ピアの役割は大きいことはこれまでも証明されている。入所者 や入院者が、入所・入院中に失われた地域生活への意欲や自分への自信をなど回復するの にピアは専門職以上の力を発揮しています。それがひとつの仕事として賃金が保障され、 ピアと一緒に働ける専門職がいるならピアサポートはもっと意味をもつはずです。

○理由
ピアサポートに丸投げし、ピアが疲れきるまで動いてしまっている例も少なくありませ ん。一緒にピアと働けない専門職も見られます。また、自立体験プログラムという名称も また違和感があります。退院促進支援に関わった精神障害者は、「生きていてよかったと 思ってもらえる体験のお手伝い」と言っていました。また自分の暮らしを自分で決めてい いことを理解してもらう機会ですので、専門職が決めた名前は変えるべきです。

論点E-1-4) 長期入院・入所の結果、保証人を確保できず地域移行が出来ない人への対応として、どのような公的保証人制度が必要か?

○結論
NPO による保証機関も機能していると思います。がその背景に行政がいることをアピー ルしないと難しいと思うので、キャンペーンなり、説明会なりをもっと開くべきです。

○理由
保証人を必要とする不動産業(大家さん)にとっては、安心を得られればいいわけで、 保証人制度自体がよくわからないとそれだけで不安を与えてしまうので。

論点E-1-5) 地域移行をする人に必要な財源が給付されるような仕組みは必要か?また、どのようなものであるべきか?

○結論
地域で生活したいと願いながらも、手元にほとんどお金がないことが、その思いを表明 できずにあきらめてしまう人もたくさんいます。また、一度、お金の支援を受けたら、何 があっても地域でがんばらないといけないと思わせてしまうと、利用しない可能性もあり ます。ある一定の時期にわりと自由に使える仕組みにすることが大切だと思います。管理 を支援する仕組みが同時に必要になります。

○理由
社会体験をしていただくことにも使えるお金が必要です。長い入所・入院でなかなか地 域生活のイメージがもてない人には、いろいろな体験が必要だからです。

論点E-1-6) 地域移行における、入所施設や病院の役割、機能をどう考えるか?

○結論
入所時、入院時の支援内容をまとめ、支援計画に反映させる。その人の問題課題への対 処ではなく、コミュニケーション支援の実態、ストレングス(その人のいいところ、魅力) を挙げ地域支援の現場につなげる役割です。さらに施設・病院内で施設症(集団にいるの で意欲がなくなって元気がうばわれる)を作らないという大きな役割もあります。 退院促進事業では、主治医が移行に該当するか否かの決定権をもっていたが、それは違 うと思います。いろいろな働きかけや支援を、ピアとともにした上で、チームで決定すべ きで、最も大切なのはそこに入院者が何らかの形で参加することです。何よりも入所施設、 精神科病院における支援の質を高めることが重要です。

<項目E-2 社会的入院等の解消>
論点E-2-1) 多くの社会的入院を抱える精神科病床からや、入所施設からの大規模な地域移行を進める為に、何らかの特別なプロジェクトは必要か?

○結論
入所施設職員、精神科病院スタッフへの徹底した教育訓練プログラムと地域支援体験を 義務とする仕組みをつくることです。特に、入所入院者の意向を聞けるコミュニケーショ ン能力の不足と、個別支援経験の乏しさから、入所者入院者の具体的な生活および生活支 援がイメージできないことが多く見られます。入所施設や精神科病院から地域活動センタ ーに出向し、自立支援協議会などを利用しながら資源開拓にも関わるプロジェクトなど必 要です。地域活動支援センターやグループホームの世話人なども、入所施設や精神科病院 に行ったことがない人がとても多いので、人事交流は必要です。

○理由
地域に出せない人、出せる人といった分け方をしている傾向があるのではないでしょう か。障害の重い人も地域で暮らしている実態を知らない、施設や病院以外での入所者入院 者の顔を知らず、症状や問題行動にばかりとらわれることに、地域で暮らす権利の侵害に なります。また、一度もグループホームに泊まって支援をみたこともなく、地域活動セン ターにも足を運んだことがないのでは地域移行支援の幅が広がらないでしょう。

論点E-2-2) 現実に存続する「施設待機者」「再入院・入所」問題にどのように取り組むべきか?

○結論
施設待機者という名前でも実際には事情はバラバラのはずです。一方で地域で生活を継 続したい人のリスト、という枠もないなら、待機者のリストはいらないです。家族の扶養 義務が撤廃されず、家族介護をあてにした仕組みも要因のひとつです。 また再入所は、地域支援の不足によるものと退所時のケアマネの不足もあります。また 再入院は、入院経験で嫌な思いをしたり、再入院を避けたいあまり、ぎりぎりまでSOS を 出せないために起こることも多く見られます。精神医療の質を上げることも重要です。

○理由
待機者の枠をなぜつくらなくてはならないかは、一昔前の施設整備の根拠データだった はずです。待機しているうちに一家で倒れてしまうこともあるし、保険のためにサインし ている人も大勢います。地域で暮らせる見込みのなさの表れだと思います。

論点E-2-3) また、「施設待機者」「再入院・入所」者への実態調査と、何があればそうならなないかのニーズ把握は、具体的にどのように行えばよいか?

○結論
入所・入院時に、入所入院前の背景(家族関係、支援の利用状況、地域での人間関係な ど)まで含めた、退所・退院に向けた支援計画を作成することを義務づけることが必要と 思います。精神科病院だとしても、退院するための支援を開始するのは入院時で、PSW は そのために地域をかけまわり、他の地域支援者とチームを組む要になる立場でもあります。 ですので、もっとPSW の数も増やさなければ、調整がすすみにくいと思います。

論点E-2-5) スウェーデンでは1990 年代初頭の改革で一定期間以上の社会的入院・入所の費用は市町村が持つような制度設計にした為、社会資源の開発が一挙に進んだ。我が国で もそのような強力なインセンティブを持った政策が必要か? 必要とすればどのようなも のにすべきか?

○結論
キャンペーン的な意味も含めて必要だと思います。市町村が、しっかり入所者・入院者 の思いを聞き、移行のプランを立てる責任を負うべきです。しかし、市町村で負担の不公 平が起こることも予想されますので、その調整は国でやるべきです。また、社会資源の開 発は市町村だけでは難しいものもあるので、都道府県レベルでの開発も応援すべきです。

<項目E-3 その他>
論点E-3-1) 「分野E 地域移行」についてのその他の論点及び意見

○結論
精神障害者の地域移行支援において「主治医の推薦」が重みをもつこと自体が地域移行 を進めない原因になっています。病院、主治医はひとりの精神障害者の支援者の1人であ って、決定権は本人がもつものです。地域移行に、障害の特性を配慮することはあっても、 障害別に仕組みが違うのはおかしいです。

(分野F 地域生活の資源整備)
<項目F-1 地域生活資源整備のための措置>

論点F-1-4) 現行の都道府県障害福祉計画及び市町村障害福祉計画についてどう評価するか?また、今後のあり方についてどう考えるか?

○結論
権利条約をもとにした権利を守る視点で、大きく計画の枠が変わるとは思えないこれま での流れがあります。また、当事者の委員を加え、当事者参画を行なってきているところ でも、当事者の声を反映できているかは地域で差が大きいと思います。今後は、自立支援 協議会などと一緒になって、福祉計画の根本から見直すことも必要です。

<項目F-2 自立支援協議会>
論点F-2-1) 自立支援協議会の法定化についてどう考えるか?また、その地域における解決が困難な問題を具体的に解決する機関として、どのように位置づけるべきか?

○結論
法定化は必要です。ただし、市の付属機関(地方自治法第138 条の8 第3 項)や内部機 関(有識者による懇話会など)ではなく、構成員が規約により設置した、市の外部機関で ある必要があります。つまり市町村は、他の協議会メンバーと対等な立場に協議に加わる 形にならないと、新たに変えることはなかなか難しいのではないかと考えます。

○理由
障害担当課以外、他の分野の関係機関とのネットワークを創るうえでもフットワークが 重要で、しかも現状の支援を評価するうえでもこの形が、自立支援協議会ができたねらい にも合うかと思います。

論点F-2-2) 自立支援協議会の議論から社会資源の創出につなげるために、どのような財源的な裏打ちが必要か?

○結論
ユニークなモデル事業に対する補助事業が必要です。地域性に根ざし、今までの枠にあ てはならない仕組みが必要となるからです。これは、国の財源で行うものです。

論点F-2-3) 障害者福祉の推進には、一般市民の理解と参加が重要であるが、それを促す仕組みを自立支援協議会の取り組み、あるいはその他の方法で、法律に組み込めるか?

○結論
現在でも、地域生活を支援する市民が存在しています。その人たちが、地域の応援団と して専門的資格がなくても、たとえば一定の研修を受けることで、個人の市民サポーター として位置づくことは必要だと思います。市民性を生かしながら、市民としての権利が守 られているのかをチェックする役割として生きると重要な支援者になるからです。

<項目F-5 国と地方の役割>
論点F-5-2) 障害者権利条約の第19 条を受けて、推進会議では「地域生活の権利の明文化」を求める意見が多数であった。地域の実情や特色にあったサービス提供と、この「地域生活の権利」を担保していくためのナショナルミニマムのあり方についてどう考えるか?

○結論
障害者は施設などで一生を過ごすことが幸せである、と漠然と考える国民に対するアク ションを起こすのは国レベルの責任だと思います。国際障害者年のように、キャンペーン などを行い、重点的に「どんな障害があっても皆、同じ地域の住人である」ことを伝えて いくことは今まで弱かった部分です。権利条約を批准するにあたっても、国民の意識を高 めることはまず大前提です。