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総合福祉部会 第6回
H22.8.31 参考資料2
尾上副部会長提出資料

(第6回総合福祉部会)「障害者総合福祉法」(仮称)の論点についての意見

DPI日本会議事務局長 尾上浩二

(分野D 支援(サービス)体系)

<項目D-1 支援(サービス)体系のあり方について>

論点D-1-1) これまで支援の狭間にいた人たち(例えば発達障害、高次脳機能障害、難病、 軽度知的障害など)に必要な福祉サービスとはどのようなものであるか?

○結論
障害者権利条約で示されている通り、「障害のある全ての人」に対して必要な支援を行 えるような仕組みとし、当事者の障害及び生活上の必要性を、本人及び家族の求めに応じて提供する。

○理由
「障害」は、生活全般の各分野における制限・制約として考える必要があることから、 それぞれの障害当事者の社会的生活上、必要とする支援のすべてを福祉サービスとするべきであるため。

論点D-1-2) 現行の介護給付、訓練等給付と地域生活支援事業という区分についてどう考えるか?総合福祉法での支援体系のあり方についてどう考えるか?障害者の生活構造やニードに基づいた支援体系はどうあるべきと考えるか?

○結論
障害者の生活構造やニーズに基づき、自立と社会参加の推進という視点から当事者の実 態を踏まえて根本的に見直す。

○理由
現行の支援(サービス体系)は、介護保険との統合を前提に、介護保険のメニューに入 れやすいものと、それ以外に整理したものに過ぎず、そのために複雑化し使いずらくなっている。また、重度訪問介護、居宅・移動支援等の区分は、障害当事者の生活実態にそぐわないため。

論点D-1-3) 現行の訓練等給付についてどう考えるか?労働分野での見直しとの関係で、就労移行支援、就労継続支援等のあり方をどう考えるか?また、自立訓練(機能訓練・生活訓練)のあり方についてどう考えるか?

○結論
費用負担を廃止する。賃金補填等必要な施策を講じ、労働法規の適用を行えるようにす べきである。また、障害者が必要とする介助・移動(通所・通勤)支援等を確保すること。

○理由
条約がもとめるあらゆる雇用及び一般就労との整合性及びILO 勧告から費用負担は廃止 する。また、合理的配慮を介助・移動(通所・通勤)を確保することにより重度障害者の活動の促進が期待できる。

論点D-1-4) 生活介護、療養介護も含めた日中活動系支援体系の在り方をどうするか?

○結論
介護給付に区分けされている生活介護、療養介護等と訓練等給付での支援は、日中活動 支援という枠組みで再構成しなおすべきである。

○理由
D-1-2)で述べた通り介護給付・訓練給付といった区分けには積極的な意味を見いだすこ とはできず、障害者の生活の中で果たしている機能面から整理するべきであるから。 論点D-1-5) 地域生活支援事業の意義と問題点についてどう考えるか?地域生活支援事業 の仕組みになじむものと、なじまないものについてどう考えるか?

○結論
義務的経費化を行うのが困難なサービスをまとめたという財政的な理由からの区分で あり、積極的な意義は見いだし難い。問題点は、地域特性によることなく保障されるべき施策が後退したことから、国と地方の責任と役割(財政負担を含む)を検討することが必要である。

○理由
障害者の地域生活に必要不可欠な移動支援やコミュニケーション支援等が、そのサービ ス量、費用負担の有無等に地域間格差が生じている。そして、その理由の多くが、その地方自治体の財政によるため。

論点D-1-6) 現行のコミュニケーション支援事業についてどう考えるか?推進会議・第一次意見書では、「手話や要約筆記、指点字等を含めた多様な言語の選択、コミュニケーションの手段の保障の重要性・必要性」が指摘された。これらを踏まえて、聴覚障害者や盲ろう者、視覚障害者、さらに、知的障害者、重度肢体不自由者を含めた今後のあり方をどう考えるか?

○結論
コミュニケーションは双方にとって必要なものであるにもかかわらず、手話通訳等のコ ミュニケーション支援が無料で実施されていない自治体がある現状改善が必要である。 また、今後、「支援付きの自己決定」を実現していくために、様々なコミュニケーショ ン支援の充実が必要である。
また、障害者基本法の議論の中で情報・コミュニケーションの分野についての検討を行 うべきである。

○理由
例えば、DPI 全国集会の地方開催にあたっては、8回の会議の情報保障(手話・パソコン通訳)で約30 万円の支出が求められた。
第一次意見書に、「手話、点字、要約筆記、指点字等を含めた多様な言語の選択やコミュニケーションの手段を保障することの重要性及び必要性は省みられることが少なかった ため、それらの明確な定義を伴う法制度が求められる」ことを実現するため。

論点D-1-7) 現行の補装具・日常生活用具についてどう考えるか?今後のあり方についてどう考えるか?

○結論
日常生活用具は、地域特性によることのない最低限必要なものは国の定めによって実施 する。

○理由
視覚障害者の読み上げ機器等の支給状況に地域間格差があるため。

論点D-1-8) 現行の自立支援医療についてどう考えるか?基本合意において、「当面の重点な課題」とされている利用者負担の措置に加えて、どのような課題があると考えるか?

○結論
今後の法体系を考えるに当たって、福祉が主に担うもの、労働関係が主に担うもの、医 療関係が主に担うものを整理した上で、「自立支援医療」に該当する支援をどこにどのように位置づけるかを検討する必要がある。

○理由
「総合福祉法」の主な守備範囲と関係してくるから。

<項目D-2 生活実態に即した介助支援(サービス)等>

論点D-2-1) 推進会議では、シームレスなサービスの確保の必要性が指摘された。また、障害者権利条約では「パーソナル・アシスタンス・サービス」を含む支援サービスも提起されている。これらをふまえ、地域支援サービスのあり方についてどう考えるか?

○結論
障害者権利条約に明記されたパーソナル・アシスタンス・サービスの創設が必要である。現行の制度設計をシームレスな内容に見直すとともに、介助サービス・移動支援は、パーソナル・アシスタンス・サービスとして見直す。

○理由
現行の制度は、障害当事者の生活ではなく行政の縦割りに基づくサービスを当事者が利 用していることから、その改善が必要である。また、生活全般にわたってもシームレスな支援を確保するために必要である。また、重度障害者にとって地域で生活する権利を実現していくためにパーソナル・アシスタンス・サービスが必要不可欠であるから。

論点D-2-2) 現在のホームヘルプ、ガイドヘルプの仕組みについては、何らかの変更が必要か?また、ガイドヘルプに関しての個別給付化は必要か?

○結論
ホームヘルプ、ガイドヘルプは原則として国の責任で実施する。 特に、「自立支援法」になって、それまで個別給付で提供されていたガイドヘルプが地域生活支援事業となり大きな地域間格差をもたらしたことをふまえて、(知的障害者等も含めた)移動支援を個別給付に戻すべきである。

○理由
長時間サービスを必要とする障害者への支援は、地方自治体の財政を理由として制限さ れている。また、サービスの利用範囲も同様であることから。

論点D-2-3) 障害特性ゆえに必要とされる見守りや安心確保の相談といった身体介護・家事援助ではない人的サポートの位置づけをどうするべきか?

○結論
障害特性ゆえに必要とされる見守り等については、地域での生活や様々な社会参加にと って不可欠であり、障害種別を問わずに提供できるよう、見守りも含めた支援をパーソナル・アシスタンス・サービスとして構築すべきである。

○理由
障害者の地域で暮らす権利を実現していくため。
論点D-2-4) 医療的ケアが必要な障害者の地域でのサポート体制を確立するためにはどう いう課題があるか? また、地域生活を継続しながら必要に応じて利用できるショートス テイ等の機能を望む声があるが、確保していくためにどのような課題があるか?

○結論
医療的ケアを生活行為として、医療関係者以外も提供できるための施策を検討する。

○理由
医療的ケアが生活行為として確保できないために介助や日中活動等、生活全般により多 くの制限や制約を受けているとともに、現行の医療的ケアを確保するための施策が貧困であるため。

<項目D-3 社会参加支援(サービス)> 論点D-3-1) 障害者の社会参加の点から就労・就学に際しての介護、通勤・通学の介護が大 きな課題との指摘があるが、総合福祉法のサービスでどこまでカバーすると考えるか、そ の際、労働行政や教育行政との役割分担や財源をどう考えるか?

○結論
シームレスなサービスとして、当事者主体のサービス体系を総合福祉法の検討の中で基 本的な設計は行う。また、サービスの実施にともなう財政負担は、関係省庁の予算で実施 する。

○理由
どんなに重度の障害があっても地域で暮らし、就学や就労、余暇等、様々な活動に参加 するためには切れ目のない支援の確保が不可欠であるから。

論点D-3-2) 居場所機能など広く仲間との交流や文化芸術活動などについてどう考え、確保していくための体系はどう考えるか?

○結論
ピア・サポート活用の観点からも仲間との交流や文化芸術活動などに独自の価値を認め た制度設計が必要である。その観点から支援事業を制度化するべきである。

○理由
「自立支援法」の中で「一般就労」に即時につながらない活動は無価値であるかのよう な取り扱いが行われ、当事者にとって「居づらい」ような状況も生み出してきた。その反 省をふまえて、仲間との交流や文化芸術活動の独自の価値を尊重した制度化が求められる から。

<項目D-4 就労>
論点D-4-1) 「福祉から雇用へ」の移行はどこまで進んだのか?これまでの就労政策の問題点をどう考えるのか?

○結論
労働行政と福祉行政の縦割りの中で、未だに雇用と福祉的就労の間には大きな壁が立ち はだかった状況にある。特に、「支援を得ながら働く」という視点から、重度障害者が働 くために必要な支援を確保することが必要である。

○理由
例えば、障害者の就労を制限している通勤・職場内の介助等の必要性の有無等を採用要 件としている一般就労の実態があるが、逆にみると、そうしたニードに対応できる制度や 支援があれば、重度障害者の雇用促進が期待できる。

論点D-4-2) 福祉的就労のとらえ直しを含む、これからの就労の制度設計をどう考えるの か?

○結論
D-4-1)で述べた通り、雇用と福祉的就労の縦割りをなくしていくことを前提に、賃金 補てん制度や社会的事業所制度等を検討することにより、障害者の働く権利を支援してい く制度設計とすべきである。

○理由
条約第27 条(a)の「あらゆる形態の雇用に係るすべての事項・・・に関し、障害を理由 とする差別を禁止」とあり、他の者との平等を基礎とした制度設計が必要だから。
論点D-4-3) 既存の労働行政における取り組みとあわせて、福祉と労働にまたがるような法 制度については、どこで議論していくべきか?

○結論
推進会議でも労働についての議論がなされてきたことをふまえ、推進会議の下に推進会 議委員と総合福祉部会委員からなる合同作業チームを設置し、そこで行う。

○理由
行政が進めてきた縦割りではなく、当事者が進めてきた連携と連帯にもとづく新たなル ールと体系の確保が期待できる。

<項目D-5 地域での住まいの確保・居住サポートについて>
論点D-5-1) これまで地域移行の障壁になってきた住宅問題を解決するために、具体的にどのような方策が考えられるか?

○結論
必要に応じて行政の保証、相談支援センターの機能充実、公営住宅の活用、借り上げ賃 貸住宅、民間住宅業界へのアプローチ及び住宅手当等の経済的支援を確保する。

○理由
障害者の地域での住まいの確保に当たって当事者が直面してきた問題を改善できる可 能性がある。

論点D-5-2) 地域での住まいの確保の方策として公営住宅への優先枠を広げる方向で考えるべきか?

○結論
考えるべきである。

○理由
地域での住まいの確保の重要性とその公的責任から。

論点D-5-3) また、公営住宅が質量共に不足する現実がある中で、障害がある人のアパートなどの一般住宅の確保の為にどのような対応が必要か?(家賃等の軽減策や借り上げ型賃 貸住宅等)

○結論
家賃補助や借り上げ賃貸住宅等、地域での住まい確保のための多様な支援策を検討する 必要がある。

○理由
施設・病院からの地域移行、地域で生活する権利の実現には、地域での住まいの確保が きわめて重要であるから。

論点D-5-4) 居住サポート事業の評価とさらに必要とされる機能・役割にどのようなことが あるか?

○結論
「地域での住まいの確保」という課題に福祉分野から取り組むという点には意味があっ たが、未実施の自治体が多い等の問題がある。今後の施設・病院からの地域移行を進めて いけるよな「住まい方支援」としての機能強化を図るべきである。

○理由
地域で生活する権利を実現するため。

論点D-5-5) グループホームとケアホームについて、現状の問題点は何か?また今後のあり方をどう考えるか?

○結論
介護給付と訓練給付の区分けにより、グループホーム・ケアホームと複雑になっている。 また、30 人といった「グループホーム」とは呼べない規模のものや施設内グループホーム 等も設置されてきている。経過措置によって多少緩和されたが、ホームヘルプの利用制限 が行われ一人ひとりにあった支援の確保が難しくなっている。総じて、「ミニ施設化」が 進められるような制度設計となってしまっている。
今後においては、あくまで「地域における多様な住まい方」として、小規模化が進むよ うな制度設計(傾斜配分等)と、ホームヘルプ等一人ひとりの支援の確保ができる仕組み とすべきである。また、介護給付・訓練給付の区分けの見直しとあわせて、居住支援機能 としてグループホーム・ケアホームを一本化すべきである。

○理由
「自立支援法」の制度設計によってもたらされた「ミニ施設化」の問題をなくし、「地 域での多様な住まい方支援」とするため。

<項目D-6 権利擁護支援等>

論点D-6-1) 「本人が必要とする支援を受けた自己選択、自己決定、地域生活」を実現して いくためには、どのようなサービス体系が必要と考えるか?

○結論
当事者の生活スタイル(就学、就労等を含む)に応じたサービス体系とする。また、そ うしたサービスを活用して地域生活を実現できるように、ピアサポートなども活用したエ ンパワメントが行えるよう、地域エンパワメント事業(仮称)の創設が必要である。

○理由 自己決定(支援付きの自己決定を含む)に基づく地域生活を実現するため。

論点D-6-2) 権利擁護を推進していくためにはどのような体制が必要か?相談支援やエン パワメントの事業化についてどう考えるか?

○結論
より身近な単位の地域エンパワメント事業(仮称)の創設と都道府県等の単位の権利擁 護センターを設置する。また、本人中心計画の作成支援を行えるよう相談支援の充実を行 う。

○理由
障害者のエンパワメント、並びに、現実の障害者が受けてきた権利侵害に対する実践・ 効果的な対応が期待できる。

論点D-6-3) サービスの質の確保等のための苦情解決と第三者評価の仕組みについてどう考えるか?

○結論

○理由

<項目D-7 その他>

論点D-7-1) 「分野D 支援(サービス)体系」についてのその他の論点及び意見

○結論

○理由
(分野E 地域移行)
<項目E-1 地域移行の支援、並びにその法定化>

論点E-1-1) 条約では、「特定の生活様式を義務づけられないこと」とあるが、これを確保するためにはどのようなことが課題にあるか?また、地域移行の法定化についてどう考え るか?

○結論
施設入所者及び社会的入院者の地域移行に向けたシステムの確立と移行後のサービス 基盤とサービス量及び支援を確保すること。

○理由
施設や病院中心の施策展開の歴史が続いてきた中、地域生活のサービス基盤か圧倒的に 不十分な状況にあるため。

論点E-1-2) 入所施設や病院からの地域移行に関して具体的な期限や数値目標、プログラムなどを定めることは必要か?

○結論
この間、「地域移行」がスローガンのように言われてきたが、目に見える変化はもたら してこなかった。そうた点から、期限を定めた地域移行の目標設定やプログラムと、その 法定化が必要である。そして、あわせて、地域移行する障害者が必要とするサービス基盤 の整備目標・計画等も必要である。

○理由
施設入所者やその家族がが抱く地域生活に対する不安を解消し、必要な支援を得て地域 生活を実現していくため。

論点E-1-3) 地域移行を進めるために、ピアサポートや自立体験プログラムなどをどのように整備・展開していくべきか?

○結論
自治体で行われている退院促進事業や自立生活センター等が自主的に行っている地域 移行支援活動では、ピアカウンセリング・ピアサポートによる支援の有効性が確認されて きている。また、その際、自立体験室を活用した自立体験プログラム等の体験的エンパワ メントが大きな意味を持つ。こうしたことが広く行えるようにするために、ピアサポート や自立体験室(プログラム提供も含む)等の機能をもった地域エンパワメント事業(仮称) を創設すべきである。

○理由
これまでの実践の中で、その意義と必要性が確かめられてきているから。

論点E-1-4) 長期入院・入所の結果、保証人を確保できず地域移行が出来ない人への対応として、どのような公的保証人制度が必要か?

○結論
長期間の入院・入所の中で、親族との離別や保証人になってもらえる知人の確保が難し くなる状況がある。公営住宅での確保とあわせて、民間賃貸住宅での契約がスムースに行 えるような支援策として公的保証人制度を、行政の公的責任として行うべき。

○理由
地域での生活の権利実現のために、多様な住まい方支援が必要だから。

論点E-1-5) 地域移行をする人に必要な財源が給付されるような仕組みは必要か?また、どのようなものであるべきか?

○結論
必要である。

○理由
多くの施設入所者は、幼少から地域と切り離された生活を長年続けてきたため、地域生 活のイメージをもつことも、支援なくして、そうした生活を実現することも難しい状況が 多いと思われるため。

論点E-1-6) 地域移行における、入所施設や病院の役割、機能をどう考えるか?

○結論
現在、入所施設や病院という「特定の生活様式」の下で提供している支援機能を整理し て、居住機能、福祉的支援、医療的支援等を地域の中で提供できるようにしていくべき。

○理由
諸外国の経験などからも、地域移行を本格的に進めていく中で、これまで施設や病院で 提供してきた機能、そこで働いている職員の地域移行が大きな課題となるから。

<項目E-2 社会的入院等の解消>

論点E-2-1) 多くの社会的入院を抱える精神科病床からや、入所施設からの大規模な地域移行を進める為に、何らかの特別なプロジェクトは必要か?

○結論
必要である。その中で、国の政策として入所・入院中心の施策体系を展開してきた歴史 の総括を行うべきである。その上で、地域生活中心への転換が果たせるような時限を定め た特別措置が必要である。

○理由
国の責任において総括を行った上で、今後の地域生活中心への政策転換を行うことが、 当事者並びに関係者の「納得感」を得る意味でも、ドラスティックな転換を行う上でも重 要だから。

論点E-2-2) 現実に存続する「施設待機者」「再入院・入所」問題にどのように取り組むべきか?

○結論
行政上、「施設待機」とされている人の状況・背景の精査・聴き取り調査を行うべきで ある。本人が申し込んでいるのか、家族が申し込んでいるのかで意味が全く異なる。また、 主に介護に当たっている家族の健康不安等が理由で申請されている場合は、家族が行って きた支援を地域で得られるかどうかが不安ということなのだから、「地域生活支援待機者」 と考えるべきである。丁寧な相談支援、エンパワメント支援を通じて、地域生活が続けら れるような支援を行うべきである。

○理由
「施設待機者」と一括りに言われてきたが、その背景分析とその解決のための施策と支 援が必要だから。

論点E-2-3) また、「施設待機者」「再入院・入所」者への実態調査と、何があればそうならないかのニーズ把握は、具体的にどのように行えばよいか?

○結論
「待機者リスト」をもとに、誰が申請しているのか、何が理由か、そして、現在提供で きる地域生活支援のメニューを示した上でどう希望されるかの聴き取りを行うことが必 要である。また、その際、相談支援やピアサポートにつなぎ、自立体験等の機会も提供し ながらの聴き取りもできるようにすべきである。

○理由
地域生活の継続ができるかどうかの不安が大きな原因と考えられ、そこにスポットを当 てた聴き取りと支援が重要と考えられるから。

論点E-2-4) 上記の調査を具体的な施策に活かすためには、どのようなシステムを構築すべきか?

○結論
地域移行とあわせて、「施設待機者」と言われる人たちの再聴き取りと地域生活支援に つなげていく特別プロジェクトやその法制化が必要である。

○理由
「自立支援法」では地域移行を掲げたが、一部の熱心な取り組みを除いては目に見える 変化は見られない。その一方で、新たな入所が生まれてきた。地域移行を掲げながら、一 方で新規入所が生まれていく状況を解決していくことが必要だから。

論点E-2-5) スウェーデンでは1990 年代初頭の改革で一定期間以上の社会的入院・入所の費用は市町村が持つような制度設計にした為、社会資源の開発が一挙に進んだ。我が国で もそのような強力なインセンティブを持った政策が必要か? 必要とすればどのようなも のにすべきか?

○結論
必要である。

○理由
国レベルでの総括と今後の地域生活中心への転換を明確に示さないと、施設・病院から の地域移行が進まないから。

<項目E-3 その他>

論点E-3-1) 「分野E 地域移行」についてのその他の論点及び意見

○結論

○理由
(分野F 地域生活の資源整備)

<項目F-1 地域生活資源整備のための措置>

論点F-1-1) 地域間格差を解消するために、社会資源の少ない地域に対してどのような重点的な施策を盛り込むべきか?

○結論
社会的資源が不足している背景とその要因を把握し、その背景及び要因に応じた施策を 国の責任において実施する。

○理由
現在の障害者制度改革、並びに地域主権改革の動向をふまえるならば、地域資源整備に ついての国の責任は重要であるから。

論点F-1-2) どの地域であっても安心して暮らせるためのサービス、支援を確保するための財源の仕組みをどう考えるか?

○結論
現状の国庫負担金を廃止し自治体が要した費用全額を対象に義務的経費とすること、及 び自治体の予算状況等に応じた個別施策を実施する。

○理由
どの地域においても、地域で生活する権利が担保できるようにするため。

論点F-1-3) 地域移行や地域間格差の解消を図るため、地域生活資源整備に向けた、かつての「ゴールドプラン」「障害者プラン:ノーマライゼーション7 カ年戦略」のような国レ ベルのプランが必要か?あるいは何らかの時限立法を制定する必要があるか?

○結論
必要である。どの地域においても安心して暮らせるような、目標年次を定めた地域基盤 整備のための方策を打ち出すべきである。

○理由
国レベルでの地域基盤整備の方策が不可欠であるから。

論点F-1-4) 現行の都道府県障害福祉計画及び市町村障害福祉計画についてどう評価するか?また、今後のあり方についてどう考えるか?

○結論
今後も計画の義務づけが必要である。また、策定段階から当事者及び関係者の参画を保 障するとともに、その実施状況の検証者としても位置づける。

○理由
計画の実効性及び策定の意義を深めることができるため。

<項目F-2 自立支援協議会>

論点F-2-1) 自立支援協議会の法定化についてどう考えるか?また、その地域における解決が困難な問題を具体的に解決する機関として、どのように位置づけるべきか?

○結論
現在の自立支援協議会は、あたかも「打ち出の小槌」のように「自立支援法」の制度下 で解決し得ない様々な問題への対応が求められ、そのために、実際には機能しないところ が多い。現状のままで法定化しても、形式上の設置が進むだけで実質的な意味は乏しい。 再度、地域生活の実現のためにはどのような機能、仕組みが必要かを整理し、また、そ の構成メンバー等も検討する必要がある。そうした検討を終えてから法定化の検討を行う べきである。

○理由
「自立支援法」廃止にあわせて、一からの見直しが必要だから。

論点F-2-2) 自立支援協議会の議論から社会資源の創出につなげるために、どのような財源的な裏打ちが必要か?

○結論
自立支援協議会で明らかになった資源の不足、満たされないニードの解決につなげてい くような、政策提言機能をもたせるべきである。また、その政策提言が予算に反映される ような仕組みが必要である。

○理由
現状の地域生活資源の不足状況の中で、社会資源の開発機能の強化が必要だから。

論点F-2-3) 障害者福祉の推進には、一般市民の理解と参加が重要であるが、それを促す仕組みを自立支援協議会の取り組み、あるいはその他の方法で、法律に組み込めるか?

○結論

○理由

<項目F-3 長時間介助等の保障>

論点F-3-1) どんなに重い障害があっても地域生活が可能になるために、市町村や圏域単位での「満たされていないニーズ」の把握や社会資源の創出方法はどうすればよいか?

○結論
地域によっては重度障害者の地域生活に対応できる支援機関がないところがある。そう した点をふまえて、都道府県単位(さらには全国レベル)での支援ができる仕組みをつく り、そうした支援機関から当該の自治体に対する提言ができる機能をもたせるべきである。

○理由
重度障害者の地域生活支援を行っている支援機関が未整備な状況があり、地域レベルで は確保できない場合があるから。

論点F-3-2) 24 時間介護サービス等も含めた長時間介護が必要な人に必要量が供給されるために、市町村や圏域単位での支援体制はどのように構築されるべきか?

○結論
身近な市町村で重度障害者の地域生活支援を行う機関ができるような制度化を図る一 方、現状では都道府県単位(あるいは全国レベル)でなければ支援が得られない現状の でそうした支援機関から市町村に対する提言機能をつくる必要がある。

○理由
重度障害者の地域生活支援を行っている支援機関が未整備な状況があり、地域レベルで は確保できない場合があるから。

<項目F-4 義務的経費化と国庫負担基準>

論点F-4-1) 障害者自立支援法では「在宅サービスも含めて義務的経費化」するとされたが、国庫負担基準の範囲内にとどまっている。そのため、国庫負担基準が事実上のサービスの上限になっている自治体が多いと指摘する声がある。このことに関する評価と問題解決についてどう考えるか?

○結論
現在の障害程度区分と連動した国庫負担基準の仕組みを廃止して、障害者介護サービス の提供のために自治体が要した費用全体に対して国等が義務的に負担する仕組みにする。さらに、それでも市町村負担が大きくなる場合は、さらに国からの財政負担を増やすことができるなどの、財政調整の仕組みが必要である。

○理由
どの地域においても、長時間の介護サービスの支給決定ができるような財源調整の仕組 みが求められているから。

<項目F-5 国と地方の役割>

論点F-5-1) 現在、障害者制度改革の中では、「施設・病院から地域生活への転換」「どの地域であっても安心して暮らせる」方向が目指されている。一方、地域主権改革では 「現給付は国、サービス給付は地方」との一括交付金化の考えが示されている。障害者福祉サービスに関して国と地方の役割をどう考えるか?

○結論
障害者施策は、その多くが人権に直結するものであることから、国も地方も、その確保 義務を明確に示す法制度を確立する。そして、国と地方の具体的な役割分担は、当事者及 び関係者の参画によって新たに検討する。

○理由
現在、地域主権改革が進められているが、障害者制度改革と齟齬が起きないようにする 必要があるため。

論点F-5-2) 障害者権利条約の第19 条を受けて、推進会議では「地域生活の権利の明文化」を求める意見が多数であった。地域の実情や特色にあったサービス提供と、 この「地域生活の権利」を担保していくためのナショナルミニマムのあり方についてどう考えるか?

○結論
当事者の視点に基づくナショナルミニマムを確立し、国及び地方に遵守義務を課す。 また、地方がこの基準を超えて独自の施策を実施する場合の国の関与は、原則としてなくす。

○理由
ナショナルミニマムを地方への介入とする意見があるが、これは人権を守るための最低 基準であることから、法制度で遵守する必要がある。また、それを越える地方の取り組み を、正当な理由なくして国が制限することは、地方自治への不当な介入である。

<項目F-6 その他>

論点F-6-1) 「分野F 地域生活の資源整備」についてのその他の論点及び意見

○結論
障害福祉予算等に対する視点を「増大する社会保障費」ではなく「新たな産業・社会構 造への転換」と積極的に位置づけること。

○理由
子どもや教育及び障害福祉予算は、OECDでは低水準とされる一方、その予算増につ いては、財源問題が取りざたされるが、これらの予算内訳のほとんどが雇用創出→消費や 経済成長にもつながっているため。