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総合福祉部会 第8回 H22.10.26 参考資料1

第7回総合福祉部会(会議後提出)意見

提出者 野原正平委員 2010年9月26日

 部会開会中に発言すべき意見ですが、時間不足の関係で「会議後意見提出」という便宜が図られたので、第7回総合福祉部会の討論内容等に関る意見を文書で提出します。

1.負担について

 難病患者の場合、難治性疾患克服研究事業対象疾患(344 疾患)、小児慢性特定疾患(514疾患)が研究対象とされています。稀少難病を含めると本来研究対象とされるべき疾患は5,000~7,000 ある(疾病対策課)といわれています。この難治性疾患克服研究事業で医療費の公費助成を受けているのは56 疾患(特定疾患)です。
 他の疾患の患者は、通常の医療費本人3 割負担に加えて、かなりの患者が保険適用外の医療や薬の使用のために多額の負担が強いられています。また、専門医や専門医療機関が少ないために、遠方医療機関への通院、入院、付き添いなどのために非常な高額負担をしなければならないという現状です。
 ところが、本日、障害保健福祉部から提出された「『障害者総合福祉法』(仮称)の論点に関する現在の制度の状況等について」NO-3 には、自立支援法の関係のみの報告で、疾病対策課が所管する難病対策要綱で対応している難病医療費の負担と問題点(不公平さの拡大)、また厚労省母子保健課が管轄する小児慢性特定疾患に関係する医療費の問題(特にキャリーオーバー)などはまったく報告されませんでした。前回の同部から出された資料も同じでした。高次脳機能障害や発達障害についても同じことが言えます。
 「制度の谷間をなくす」(「谷間のない制度をつくる」…私達が求めるもの」)同じではないが)という当初のスローガンがあるにも拘らず、国のサイドから谷間の公認を求めるということにならないのか、同時に難病に対する福祉制度上の差別…「合理的配慮に欠けた」ことを、無自覚に行っているということではないでしょうか。谷間の現実を目の当たりに見る思いです。
 「難病を障害概念の中に入れる」ことは、大筋の合意になっていますが、これでは、総論的な合意を反古にすることになるのではないかという懸念を表明します。
 このような問題は、他にもいくつか指摘できます。部会の論議が、認定や給付、地域での生活体制や基盤の構築などでも、主な流れは現3 障害に限られる傾向があります。
 状況に応じた難病当事者への障害年金適用の拡大なども、実は大きな問題です。
 今後、このようなことのないよう部会としても十分留意されるよう要望します。

2.移行期間について

 自立支援法の廃止時期は、当然新法の成立の見通しとも関連することです。
 財源問題も絡むことも理解できますが、大きなミッションを明示した当初の制度設計について、財政の現状を考慮しながら設計するとしたら、権利条約の批准とか差別禁止条約の制定は困難です。
 現3障害は、自立支援法の応益負担を廃止して給付等の一部を改正すれば何とか良いという方向付けができるかもしれませんが、難病・慢性疾患に関しては、高額医療費負担、医療がらみの障害認定、生活保障、地域生活を支える体制づくりなどなど…文字どおり新しい「生活機能基準」で行うような制度設計をするとしたら大変ドラスティックな変革とならざるを得ません。
 これを行うには、制度の改変・構築から多くの人材の養成を必要とし、それに見合った財源確保も必要です。とても、2~3年でできるものではありません。
 難病対策要綱は、不十分ながら医療費の助成とともに地域で難病患者が生活するためのいくつかの施策(①調査研究の推進、②医療施設等の整備、③医療費の自己負担の軽減、④地域における保健医療福祉の充実・連携、⑤QOLの向上を目指した福祉施策の推進)や難病患者の就労支援も独自の体系をもって実施されています。
 こういう事業を進めたり支えたりしてきた人たちは、医師(専門医、開業医、難病の研究者、保健師、ケアマネ、看護師、介護士、地域看護研究者、患者当事者たちです。こういう領域の問題に論議のスポットが当たらなければ、隙間(谷間)は埋まりません。
 移行期間一つとっても、あれこれ絡んでいて既存の3 障害と同じようには行きません。
 2013年8 月という期限には、大枠を決め(難病と福祉の関係・「障害」の概念の中に「難病による社会的不利の明文化規定」などを入れるなど)、できる改革(改善)課題は実現する、この時期に間に合わない分野は基本的な方向性を示すなど(難病・慢性疾患は「難病と福祉の検討委員会」(仮称)の立ち上げなどを明記する)ことなども検討すべきではないでしょうか。

3.理念と目標を正面にすえた論議を期待する

 権利条約批准の前提づくり、差別禁止条約の制定の条件をつくる、「基本合意」の遵守(自立支援法廃止、新法の制定など)という理念や目標を掲げて出発したのが障がい者制度改革推進本部であり同推進会議、同総合福祉部会であった筈です。
 初めのうちは、副本部長(福島大臣)が毎回福祉部会に参加して熱っぽくその実現を語りましたが、次の特命大臣誰は誰かも紹介されず顔も見せませんでした。総理大臣が本部長で官房長官と特命大臣が副本部長、全大臣が構成員になっている障がい者制度改革推進本部は、まさに国家プロジェクトを進めることができる体制です。しかし、それに見合った現状の体制にはとてもそうなっていません(事務局体制、必要な団体(メンバー)の会議構成員の補充、ヒヤリングもあまりできない、横断的な連携が殆ど見られないなど)。予算も貧弱です。
 福祉部会の今後の論議が「谷間をなくす」ことを正面から見据え、理念や目標に本気 になって接近する内容になることを心から期待するものです。
 福祉部会の継続する論議が竜頭蛇尾にならないよう心から願うものです。