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総合福祉部会 第9回 H22.11.19 資料2

部会作業チーム(障害の範囲と選択と決定~障害の範囲)議事要旨(10月26日分)

1.日時:平成22年10月26日(火)14:10~17:00

2.場所:厚生労働省低層棟2階講堂

3.出席者

田中(伸)座長、佐藤副座長、氏田委員、佐野委員、末光委員、東川委員、福井委員

4.議事要旨

(1)本作業チームの目的について

 本作業チームでは、
 A 総合福祉法(仮称)における定義規定をどのように定めるのか
 B 支援を必要とする者が支援を得るための手続き規定をどのように定めるのか
の2点について、議論を深めることを目的とする。
 今回の議論は、「障害」の定義規定のあり方について議論する。

(2)問題点の提示

 「障害」の定義規定を定めるについて、各委員から、以下のような点に留意すべきとの意見が出された。

  • 障害の定義は包括的なものにする方向性はよいが、発達障害者支援法ができてまだ5年であり、自閉症は明記した方が良い。
  • 障害の定義を検討するときは、国際基準を踏まえ、日常生活上の困難さに着目したものとすることが必要。日本における聴覚障害の認定基準は厳しすぎる。
  • 重度心身障害児者は日本独自の概念であり、その特性に応じた支援をしてきた。重度心身障害児者対策が全体に埋もれることにならないようにしたい。
  • 高次脳機能障害の典型的な症状である失語症は身体障害の3級として認定されているが、コミュニケーション障害や記憶障害がある場合があるなど、障害等級に合わない生活の困難さがある。
  • 脳脊髄液減少症や軽度外傷性脳損傷は診断基準や治療法が確立していないため各制度に取り込まれておらず、日常生活に支障があっても支援が受けられない。
  • 障害の範囲は、現在のような制限列挙だと診断基準が確立していないものなどが救済できないため、制限列挙でない方が良い。
  • てんかんに対する社会の理解が非常に少ない。障害の範囲を広げる際には、従来の障害の範囲に含まれているが障害の認識がない人も制度の対象となるようにすることが必要ではないか。

(3)障害者基本法改正案における「障害」の定義規定の議論状況

 障がい者制度改革推進会議における障害者基本法改正法案の議論状況については、以下のような報告がなされた。

  • 10月12日に開催された障がい者制度改革推進会議において、提示された条文イメージについては、身体障害・知的障害・精神障害だけでなく、感覚障害も含めるべきではないかという意見、制限列挙はやめるべきという意見、障害を医学的に定義すること自体、障害者権利条約と違うので問題ではないかという意見が出されている。
  • その他にも、医学モデルで障害を規定すると医学モデルを強める結果になるのではないかという意見、「継続的に」と「相当な制限」という二重にハードルを設けるのではなく、いずれかのみを規定するべきではないかという意見、例示でも明示して「障害」に入ることがはっきり分かるようにして欲しいという意見が出されている。

(4)障害者基本法改正案における条文イメージに対する意見

 障害者基本法改正案として提示された条文イメージについては、以下のような意見が出された。

  • 障害者基本法の条文イメージにある「心身機能の損傷」で全ての障害を含めることができるか。
  • 発達障害は、もともと母子関係によるものと言われていて、今は脳のDisfunctionに基づくものとされている。このような障害は「心身機能の損傷」に含まれると言えるかどうか。
  • 昏睡状態がないなど高次脳機能障害の基準に該当しない場合でも、日常生活に支障が生じる場合がある。医学モデルでは、救済できない場合があることに留意する必要がある。
  • 障害者基本法では、「障害」と「障害者」をそれぞれ規定しているが、新法では、「障害」と「障害者」を分けて規定しても、1つの条項に規定しても、あまり変わらないのではないか。「障害」を独立させると機能障害が前面に出て、障害者総合福祉法は障害の重さではなく支援ニーズに基づく制度に切り替えるということなのに、そのイメージが弱まる可能性はある。

(5)障害の定義に機能障害の要素(医学モデル)を残すかどうかについて

 この論点については、以下のような意見が出された。

  • 人間が生物学的存在であることを無視して規定することはいかがなものか。
  • 医学モデルを捨てることはできないのではないか。感覚器の障害の場合、日常生活の困難さがあるものをどこで区切るかという問題がある。

(6)包括規定を定めることについて

 この論点については、以下のような意見が出された。

  • 包括的に障害の定義をつくっても、個別法の別表等で対象者を絞り込むような規定が作られては意味がない。
  • 発達障害のコミュニケーションの困難性など関係性の障害にも配慮する必要もある。

(7)例示列挙とするか、制限列挙とするかについて

 この論点については、以下のような意見が出された。

  • 難病、高次脳機能障害、発達障害を例示することも考えられるが、まだ外れてしまうものも出てきてしまうのが問題。
  • 発達障害者支援法に入っているものは法律上も明確に書いた方が良い。
  • 「その他」に含まれるものをなるべく少なくして、難病、発達障害、てんかんなど、例示できるところは、例示してはどうか。

(8)「障壁との相互作用」の概念について

 この論点については、以下のような意見が出された。

  • 「障壁との相互作用」についての規定は、障害者基本法に任せて、障害者総合福祉法には規定しないという考えもあるのではないか。
  • 障害者基本法と同じように「障壁との相互作用」の規定を障害者総合福祉法でも繰り返すことに意味があるのではないか。
  • 「障壁との相互作用」は入れる方向とするが、その概念が不明確な部分があるので、(注)を付して、作業チームとしての見解を付す方法もあるのではないか。

(9)議論のまとめ

 以上のような作業チームの議論により、「障害」の定義規定を定めるにあたっては、以下のような基本方針に基づいて規定すべきことが確認された。

  • 「障害」の定義として機能障害を踏まえる必要があること
  • 「障害」を、基本的に参加障害として捉えること
  • 包括的な規定とすること
  • 個別法の別表等で障害の範囲が狭められないように配慮すること
  • 例示列挙の手法を用いること
  • 「障壁との相互作用」の文言については、これを用いる案と用いない案の双方を検討すること

(10)次回(平成22年11月19日)の議論について

 障害者が支援を必要とする場合に、どのような手続きにより支援を受けられるようにするのかを定める手続き規定のあり方について議論する。

以上