第10回差別禁止部会(H23.11.11) 専門協力員他数名の委員等提出資料 差別禁止部会 資料:司法へのアクセス (権利条約13 条)/ 政治的及び公的活動への参加(29 条) 【外国法の状況】 1.個別の条文を設ける国 ○韓国  韓国の差別禁止法(2008年4月施行)は、第1章で総則を定め、第2章で各則を定めている。第2章におかれた各則は、@雇用(10〜12 条)、A教育(13〜14条)、B財と用益(注1)(15〜25条)、C司法・行政、サービス及び参政権(26〜27条)、D母・父性権、性等(28〜29条)、E家族・家庭・福祉施設・健康権等(30〜32 条)に整理できる。  このうち、Cが今回の議論と関係する。26条及び27条の規定は、以下の通りである: 第26条(司法・行政手続及びサービス提供における差別禁止) @公共機関等は、障害者が生命、身体又は財産権の保護を含む自らの権利を保護・保障されるに必要な司法・行政手続及びサービス提供において、障害者を差別してはならない。 A公共機関及びその所属員は、司法・行政手続及びサービスの提供において、障害者に対し第4条第1項第1号・第2号及び第4号から第6号までに定めた行為をしてはならない。 B公共機関及びその所属する者は、職務を遂行し、又は権限を行使するにあたり、次の各号に該当する差別行為をしてはならない。 1.許可、申告、認可等において、障害者を正当な事由なく障害を理由に制限・排除・拒否する場合。 2.公共事業の受恵者の選定基準を定めるにあたり、正当な事由なく障害者を制限・排除・分離・拒否し、又は障害を考慮しない基準を適用することにより、障害者に不利な結果を招く場合。 C公共機関及びその所属する者は、司法・行政手続及びサービスを障害者が障害者ではない人と実質的に同等の水準で利用することができるように提供しなければならず、このために正当な便宜を提供しなければならない。 D公共機関及びその所属する者は、障害者が司法法・行政手続及びサービスに参加するために障害者が自分で認識し作成することができる書式の制作及び提供等の正当な便宜を要求する場合、これを拒否し、又は任意で執行することにより障害者に不利益を与えてはならない。 E司法機関は、事件の関係者について、意思疎通や意思表現に困難がある障害の有無を確認し、その障害者が刑事司法手続で助力を受けることを申請する場合、正当な事由なくこれを拒否してはならず、それに必要な措置をしなければならない。 F司法機関は、障害者が人身拘禁・拘束状態において障害者ではない人と実質的に同等な水準の生活を営むことができるよう正当な便宜及び積極的措置を提供しなければならない。 G第4項から第7項までの規定に必要な事項は大統領令で定める。 *注1 動産や不動産の取引、建物や交通機関へのアクセス、情報アクセス、文化芸術活動や体育活動における 第27条(参政権) @国家及び地方自治団体と公職選挙の候補者及び政党は、障害者が選挙権、被選挙権、請願権等を含む参政権の行使にあたり差別をしてならない。 A国家及び地方自治団体は、障害者の参政権を保障するために必要な施設及び設備、参政権の行使に関する広報及び情報伝達、障害の種別及び程度に適合した記票方法等、選挙用補助器具の開発及び普及、補助員の配置等、正当な便宜を提供しなければならない。 B公職選挙の候補者及び政党は、障害者に候補者及び政党に関する情報を障害者ではない人と同等の程度の水準で伝達しなければならない。 2.広く公的機関のサービスに含める国 ○アメリカ  ADAは、第2編(公的機関のサービス)の中で、司法アクセスや選挙における差別を禁止している。ただし、第2 編に、司法アクセスや選挙という言葉は出てこない。そのような細かな区分は、ADA ではなされていない。  なお、アメリカでは、ADA の他に、州レベルでの法規制があり、また、高齢者・障害者投票法(Voting Accessibility for the Elderly and Handicapped Act of 1984)もある。高齢者・障害者投票法は、投票場所を障害者にとってアクセス可能なものとすることを要請すると同時に、選挙人登録や投票に対する支援(例えば、情報アクセス支援等)によって、高齢者及び障害者の投票権の行使を推進するための法律である。 (参考:ADA目次) 第1編 雇用 第2編 公的機関のサービス 第3編 民間の公共施設・サービス 第4編 視覚・聴覚障害者向けの通信 第5編 雑則 ○イギリス  2010年平等法は、第2章で差別の定義を総則的に定めた上で、第3 章以下で分野ごとに差別禁止事項を定めている。司法アクセスや選挙は、第3 章(公的機関の機能)でカバーされる。ただし、平等法でも、ADA と同様、司法アクセスや選挙といった細かな区分はなされていない。より詳細な内容は、計28 の附則が定めるということになっている。なお、第7章団体には、政党に関する特別規定も置かれているので、付言しておく。 (参考:平等法目次) 第1章 社会経済的不平等 第2章 平等概念(合理的配慮を含む差別の定義など) 第3章 サービスと公的機関の機能 第4章 土地・建物(物件) 第5章 労働 第6章 教育 第7章 団体 第8章 禁止行為(補足) 第9章 執行 第10章 契約 第11章 平等推進 第12章 障害者:輸送機関 第13章 障害:その他 第14章 例外事項 第15章 家産 第16章 その他 3.その他 ○フランス  フランスは、統一的な差別禁止法を持たない国である。しかし、障害者の司法へのアクセスや投票権(選挙)を実質的に保障するために、各法において、障害に対する配慮規定が置かれている。 ・司法へのアクセス 2005年2月11日の法律76条:  聴覚障害者、視覚障害者、失語症患者が、裁判所において、その障害に適したコミュニケーション・ツールを利用できるように、又は、コミュニケーション支援を受けられるように、保障。 刑事訴訟法102 条:  被害者又は証人に聴覚障害がある場合、裁判長は、彼らがコミュニケーション支援(手話通訳等)を受けられるようにしなければならない旨を規定。 ・選挙 選挙法典62-2条:  投票所及び投票の方法は、すべての障害者にとって、アクセス可能なものでなければならない旨を規定。