差別禁止部会 第11回(H23.12.9) 資料3 委員提出資料 ○太田修平委員 第11回 障害者制度改革推進会議差別禁止部会(公共的施設及び交通施設の利用における差別禁止について)で検討すべき点  交通機関及び公共的施設の問題についてJDFの委員会で事例を募集したところ、以下の問題が浮かび上がってきました。  後半では、それらを考察し、合理的配慮の不提供の問題については、交通施策や公共建築物など、まちづくり施策の中に合理的配慮を満たす方策が落とし込まれていく必要性について提起いたします。 1.差別であると思われる事例の紹介 (1)拒否、排除の問題 1)鉄道やバスでの乗車拒否 A ハンドル形電動車イスやストレッチャー形車イスは、いまだに鉄道利用を拒否されることが大きい 2)リフトタクシーの事前予約の問題、夜間・土日は対応しないという問題 3)ろう者夫婦での旅行が拒否された案件 A 世界一周の旅行に申し込んだが、ろう者のみの参加は安全の問題があるとされ、拒否された 4)ろう者が一人で宿泊した時にホテルのドアのロック 5.精神障害者の移動介助者の交通費無料化がなされていないこと これは実質的に公共交通利用を拒否している (2)合理的配慮を行わないことだと考えられること 1)筆談や手話、指点字などコミュニケーション保障の提供がされないこと、 A 盲ろう者が居住都道府県外に行く場合、移動介助はつくが、移動先での通訳保障はない B 聴覚障害で、3月11日地震が起きた時、名古屋の地下鉄にいた。その時は電光掲示板がない電車に乗っていたので、突然止まった。数分後再び出発したので、ただの故障だろうと思っていたところ、2 時間後に大地震が起きたことに気付いた。(地下鉄では電光掲示板が普及しているが、まだま だ完全には至ってなく、交通機関の情報保障がきちんとされていないこと を感じた。) C 交番には、警官が留守のとき、「緊急の用事のときは電話してください」と掲示してあるが聴覚障害者の私は電話できない。 D エレベーター内で閉じ込められた場合、音声言語で緊急対応はできても、視覚言語による対応はない。扉に窓も付いていない。 E 聴覚障害者が東名高速の静岡に無人の料金所があり割引ができなかった。後で確認してもらったらマイクでの対応があるとのこと。聴覚障害者への配慮がない。同じような例が電車の無人駅ある。 F 関西地方の電鉄会社の中には、多くの駅が無人でインターホンのみです。ろうの高齢の方が広野ゴルフ場前駅でどうしようもなく無理やり通った。 G 緊急時の車内放送は聴覚障害者には届かない。特に列車の遅れに伴う接続便に関する放送は重大な情報であるので、全ての乗客に保障する義務があるはず。 2)わかりやすい表示などがないこと、 A 案内板等にルビが打たれていないこと B 広告により(例えばラッピングバスや駅の構内の表示)障害者が混乱すること 情報量の多さは障害者にとってはバリア また人的支援が必要、合理化が進みホームに職員がいないため迷った時に尋ねる人がいない 3)垂直移動手段がないこと 4)公共交通機関におけるシルバーシート利用について、見えない障害のあるものは使えないこと、あるいは普通の座席で座っていても高齢者が目の前に来ると譲らなければならない圧力があること 見えない障害に対しての配慮がないこと 5)ホームレス対策で横になれるベンチがないこと あるいはあっても横になると阻止されること ホテルあるいは公共施設で行われるシンポなどでも、ロビーのソファに横になっていると注意され阻止される 6)図書館の利用について  図書館にいけない障害者については宅配などの配慮がなされている例があるが、精神障害者が除外されている例が多い また返却期間についても障害者に対しては配慮が必要 7)国立公園等で障害者が歩きやすい(車イス等で利用しやすい)道や設備等 が整備されていないこと 2.議論すべきこと  障害者が日常的に直面している差別と思われるさまざまな形で、障害のない人と異なる扱い(別異扱い)、不利益扱いと合理的配慮が行われないことが差別類型で議論となっています。上記のとおり、建物や交通機関における拒否事例は枚挙にいとまがありません。  いわゆる直接差別や関連差別は、救済機関等でそれを防止する制度づくりが求められます。しかし実は、これらの中でかなりの部分がバリアフリー法等による施策の推進と大きく関係してくる問題です。それは合理的配慮をどのように考えるのか、どこまでできるか、という問題になります。そこで、以下の2点の議論が大変重要だと思われます。 1)合理的配慮の性質 2)施策の推進を図りながら法制度に落とし込むための工夫  たとえば、エレベーター等がなく階段しかない建物において、車いす利用者が2階以上の階を利用するとき、もちろん人的支援という方法もあり、それしか方法がない場合は、人的支援で行うことも選択肢のひとつとしてその場しのぎ的に捉えていく必要もあります。しかし、当事者にとって「危ない」と感じられる場合や身体接触が必要になる場合に「不快」な場合があります。交通手段のトイレにしても同じ問題があります。車いす用トイレがない場合尿瓶等で用を足すことがあり、それを周りの乗客が了承する、ということはよくあることですが、当事者の羞恥心や気まずさなど、個人の尊厳の問題も出てきます。上記のホテルのドアをロックするなということも、これに通じる問題になりうることです。そして、車いすの障害者が平等に移動できること、車いすトイレを設置すること、ホテル等の施設に音と光が出る警報装置の設置などは、費用等がかかる者であり、これは、個人や個別事業所の努力だけでなく、施策の推進を図り充実させるべきであり、現在もバリアフリー法などによってそれが行われています。  そこで、合理的配慮とはなにか、ということが重要になってきます。障害のない人との機会の実質的な平等、尊厳の確保、等等です。そしてこの合理的配慮の視点に立ち、その目的を果たすことができる施策推進、すなわちどのような法制度が必要なのかについて議論すべきであると思います。