差別禁止部会 第12回(H24.1.27) 資料2-2 文部科学省提出資料 平成24年1月13日(金)開催 中央教育審議会初等中等教育分科会特別支援教育の在り方に関する特別委員会 合理的配慮等環境整備検討ワーキンググループ(第8回)資料2 中央教育審議会初等中等教育分科会 特別支援教育の在り方に関する特別委員会 合理的配慮等環境整備検討ワーキンググループ 報告 ―学校における「合理的配慮」の観点― (案) 平成24年1月13日 目次 はじめに 1.「合理的配慮」の定義等について (1)「合理的配慮」の定義 (2)「合理的配慮」と「基礎的環境整備」 2.「合理的配慮」の決定方法等について (1)決定に当たっての基本的考え方 (2)決定方法について (3)「合理的配慮」の見直しについて (4)一貫した支援のための留意事項 (5)通級による指導、特別支援学級、特別支援学校と「合理的配慮」の関係について (6)その他 3.基礎的環境整備について (1)ネットワークの形成・連続性のある多様な学びの場の活用 (2)専門性のある指導体制の確保 (3)個別の教育支援計画や個別の指導計画の作成等による指導 (4)教材の確保 (5)施設・設備の整備 (6)専門性のある教員、支援員等の人的配置 (7)取り出し指導や学びの場の設定等による特別な指導 (8)交流及び共同学習の推進 4.学校における「合理的配慮」の観点 <「合理的配慮」の観点(1)教育内容・方法> <(1)−1 教育内容> (1)−1−1 学習上又は生活上の困難を改善・克服するための配慮 (1)−1−2 学習内容の変更・調整 <(1)−2 教育方法> (1)−2−1 情報・コミュニケーション及び教材の配慮 (1)−2−2 学習機会や体験の確保 (1)−2−3 心理面・健康面の配慮 <「合理的配慮」の観点(2) 支援体制> (2)−1 専門性のある指導体制の整備 (2)−2 幼児児童生徒、教職員、保護者、地域の理解推進を図るための配慮 (2)−3 災害時等の支援体制の整備 <「合理的配慮」の観点(3) 施設・設備> (3)−1 校内環境のバリアフリー化 (3)−2 発達、障害の状態及び特性等に応じた指導ができる施設・設備の配慮 (3)−3 災害時等への対応に必要な施設・設備の配慮 5.関連事項 (1)早期からの教育支援について (2)学校外・放課後における支援について (3)教職員の確保及び専門性の向上について はじめに 1)「障害者の権利に関する条約」の批准に向けた検討のため、平成21年12月に、内閣総理大臣を本部長とし、文部科学大臣も含め全閣僚で構成される「障がい者制度改革推進本部」が設置された。同本部は、当面5年間を障害者制度改革の集中期間と位置付け、改革の推進に関する総合調整、改革推進の基本的な方針の案の作成及び推進に関する検討等を行うこととしている。同本部の下に、障害者施策の推進に関する事項について意見を求めるために「障がい者制度改革推進会議」が設置され、平成22年6月7日、同会議による第一次意見が取りまとめられた。上記第一次意見を踏まえた平成22年6月29日の閣議決定において、各個別分野については、事項ごとに関係府省において検討することとされ、平成22年7月12日に、文部科学省より中央教育審議会初等中等教育分科会に対し審議要請があり、同分科会の下に、「特別支援教育の在り方に関する特別委員会」が設置された。同特別委員会においては、8回に渡り検討を経て、平成22年12月に、その審議を「論点整理」として取りまとめたところである。 2)同特別委員会は、「論点整理」において今後の検討課題とされていた、合理的配慮等の環境整備について、 ・合理的配慮について(障害種別(視覚障害、聴覚障害、知的障害、肢体不自由、病弱及び発達障害)並びにこれら障害種に共通する事項) ・その他の環境整備について の二つについて検討事項を審議するため、平成23年5月27日、本ワーキンググループを設置することを決定した。 3)本ワーキンググループにおいては、まず、障害当事者・保護者より、障害種別における「合理的配慮」を含む配慮すべき事項等について聴取した後、委員による障害種別の検討を行いつつ、それら障害種を超えた共通事項を整理する過程の中で、「合理的配慮」の観点を整理した。また併行して、障害者の権利に関する条約における「合理的配慮」について、本ワーキンググループとしての定義を行った。本報告は、○回に渡る審議について整理し、特別委員会に報告するものである。 4)学校教育においては、設置者・学校により、これまでも個々の幼児児童生徒の発達や年齢に応じた個別の配慮が行われてきたところである。教育基本法第6条第2項においても、「(前略)教育の目的が達成されるよう、教育を受ける者の心身の発達に応じて、体系的な教育が組織的に行われなければならない。この場合において、教育を受ける者が、学校生活を営む上で必要な規律を重んずるとともに、自ら進んで学習に取り組む意欲を高めることを重視して行わなければならない。」とされている。 5)今般、障害者の権利に関する条約の批准のための障害者基本法の改正により、障害者に対して、合理的な配慮を行うことが示された。また、教育分野については、第16条第1項において、「国及び地方公共団体は、障害者が、その年齢及び能力に応じ、かつ、その特性を踏まえた十分な教育が受けられるようにするため、可能な限り障害者である児童及び生徒が障害者でない児童及び生徒と共に教育を受けられるよう配慮しつつ、教育の内容及び方法の改善及び充実を図る等必要な施策を講じなければならない」とされた。さらに、第16条第4項において、「国及び地方公共団体は、障害者の教育に関し、調査及び研究並びに人材の確保及び資質の向上、適切な教材等の提供、学校施設の整備その他の環境の整備を促進しなければならない」とされている。(参考資料1:障害者基本法(抄)) 6)「合理的配慮」は新しい概念であり、また、上記のとおり、障害者基本法において、新たに「可能な限り障害者である児童及び生徒が障害者でない児童及び生徒と共に教育を受けられるよう配慮しつつ」と規定された趣旨をも踏まえて、本ワーキンググループにおいて、障害者の権利に関する条約の理念を踏まえた障害のある子どもに対する「合理的配慮」の観点について整理を行った。学校教育においてこれまでも行われてきた配慮を、今回、本ワーキンググループにおいて「合理的配慮」の観点として改めて整理したことで、それぞれの学校における障害のある子どもへの教育が一層充実したものになっていくことを願ってやまない。また、「合理的配慮」については、教育委員会、学校、各教員が正しく認識しなければならないことは言うまでもないが、保護者、当事者も含めて、地域における理解も進んでおらず、理解促進のための啓発活動が必要である。 1.「合理的配慮」の定義等について (1)「合理的配慮」の定義 1)「合理的配慮」についての条約上の定義  「障害者の権利に関する条約」においては、 第24条(教育)において、教育についての障害者の権利を認め、この権利を差別なしに、かつ、機会の均等を基礎として実現するため、障害者を包容する教育制度(インクルーシブ教育システム;inclusive education system)等を確保することとし、その権利の実現に当たり確保するものの一つとして、「個人に必要とされる合理的配慮が提供されること」とされている。  また、第2条の定義において、「合理的配慮」とは、「障害者が他の者と平等にすべての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう」とされている。なお、「負担」については、「変更及び調整」を行う主体に課される負担を指すとされている。  さらに、第2条(定義)において、「障害を理由とする差別」として、「障害を理由とするあらゆる区別、排除又は制限であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のあらゆる分野において、他の者と平等にすべての人権及び基本的自由を認識し、享有し、又は行使することを害し、又は妨げる目的又は効果を有するものをいう。障害を理由とする差別には、あらゆる形態の差別(合理的配慮の否定を含む。)を含む」とされている。(参考資料2:障害者の権利に関する条約(抄)、参考資料3:合理的配慮について) 2)本ワーキンググループにおける「合理的配慮」の定義  上記の定義に照らし、本ワーキンググループにおける「合理的配慮」とは、「障害のある子どもが、他の子どもと平等に「教育を受ける権利」を享有・行使することを確保するために、学校の設置者及び学校が必要かつ適当な変更・調整を行うことであり、障害のある子どもに対し、その状況に応じて、学校教育を受ける場合に個別に必要とされるもの」であり、「学校の設置者及び学校に対して、体制面、財政面において、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」、とする。なお、障害者の権利に関する条約において、「合理的配慮」の否定は、障害を理由とする差別に含まれるとされていることに留意する必要がある。 3)「均衡を失した」又は「過度の」負担について  「合理的配慮」の決定・提供に当たっては、各学校の設置者及び学校が体制面、財政面をも勘案し、「均衡を失した」又は「過度の」負担について、個別に判断することとなる。各学校の設置者及び学校は、障害のある子どもと障害のない子どもが共に教育を受けるというインクルーシブ教育システムの構築に向けた取組として、「合理的配慮」の提供に努める必要がある。その際、現在必要とされている「合理的配慮」は何か、全てできないとすれば何を優先するか、について共通理解を図る必要がある。 (2)「合理的配慮」と「基礎的環境整備」 1)障害のある子どもに対する支援については、法令に基づき又は財政措置により、国は全国規模で、都道府県は各都道府県内で、市町村は各市町村内で、教育環境の整備をそれぞれ行う。これらは、「合理的配慮」の基礎となる環境整備であり、それを「基礎的環境整備」と呼ぶこととする。これらの環境整備は、その整備の状況により異なるところではあるが、これらを基に、設置者及び学校が、各学校において、障害のある子どもに対し、その状況に応じて、「合理的配慮」を提供する。(参考資料4:合理的配慮についての整理) 2)学校の設置者・学校は、個々の障害のある子どもに対し、「合理的配慮」を提供する。「合理的配慮」を各学校の設置者・学校が行う上で、国、都道府県、市町村による「基礎的環境整備」は重要であり、本ワーキンググループにおいては、「基礎的環境整備」について現状と課題を整理した。 3)また、「合理的配慮」については、個別の状況に応じて提供されるものであり、これを具体的かつ網羅的に記述することは困難であることから、本ワーキンググループにおいては、「合理的配慮」を提供するに当たっての観点を「合理的配慮」の観点として、1)教育内容・方法、2)支援体制、3)施設・設備について、それぞれを類型化するとともに、各「合理的配慮」の観点ごとに、各障害種に応じた「合理的配慮」を例示するという構成で整理した。 2.「合理的配慮」の決定方法等について (1)決定に当たっての基本的考え方 1)本ワーキンググループにおいては、「合理的配慮」を行う前提として、学校教育に求めるものを以下のとおり整理した。 (ア)障害のある子どもと障害のない子どもが共に学び共に育つ理念を共有する教育 (イ)一人一人の状態を把握し、一人一人の能力の最大限の伸長を図る教育(確かな学力の育成を含む) (ウ)健康状態の維持・改善を図り、生涯にわたる健康の基盤をつくる教育 (エ)コミュニケーション及び人との関わりを広げる教育 (オ)自己理解を深め自立し社会参加することを目標にした教育 (カ)自己肯定感を高めていく教育 2)これらは、障害者の権利に関する条約第24条第1項の目的である、 (a)人間の潜在能力並びに尊厳及び自己の価値についての意識を十分に発達させ、並びに人権、基本的自由及び人間の多様性の尊重を強化すること。 (b)障害者が、その人格、才能及び創造力並びに精神的及び身体的な能力をその可能な最大限度まで発達させること。 (c)障害者が自由な社会に効果的に参加することを可能とすること。 と方向性を同じくするものであり、「合理的配慮」の決定に当たっては、これらの目的に合致するかどうかの観点から検討が行われることが重要である。 (2)決定方法について 1)「合理的配慮」は、一人一人の障害の状態や教育的ニーズ等に応じて決定されるものであり、その検討の前提として、設置者・学校は、興味・関心、学習上又は生活上の困難、健康状態等の当該幼児児童生徒の状態把握を行う必要がある。これを踏まえて、設置者・学校と本人・保護者により、個別の教育支援計画を作成する中で、発達の段階を考慮しつつ、「合理的配慮」の観点を踏まえ、「合理的配慮」について可能な限り合意形成を図った上で決定し、提供されることが望ましく、その内容を個別の教育支援計画に明記することが望ましい。また、個別の指導計画にも活用されることが望ましい。 2)「合理的配慮」の決定に当たっては、各学校の設置者及び学校が体制面、財政面をも勘案し、「均衡を失した」又は「過度の」負担について、個別に判断することとなる。その際、現在必要とされている「合理的配慮」は何か、全てできないとすれば何を優先するか、について共通理解を図る必要がある。なお、設置者・学校と本人・保護者の意見が一致しない場合には、第三者機関により、その解決を図ることが望ましい。 3)学校・家庭・地域社会における教育が十分に連携し、相互に補完しつつ、一体となって営まれることが重要であることを共通理解とすることが重要である。教育は、学校だけで行われるものではなく、家庭や地域社会が、教育の場として十分な機能を発揮することなしに、子どもの健やかな成長はあり得ない。子どもの成長は、学校において組織的、計画的に学習しつつ、家庭や地域社会において、親子の触れ合い、友達との遊び、地域の人々との交流等の様々な活動を通じて根づいていくものであり、学校・家庭・地域社会の連携とこれらにおける教育がバランスよく行われる中で豊かに育っていくものであることに留意する必要がある。 (3)「合理的配慮」の見直しについて  「合理的配慮」の決定後も、幼児児童生徒一人一人の発達の程度、適応の状況等 を勘案しながら柔軟に見直しができることを共通理解とすることが重要である。定 期的に教育相談や個別の教育支援計画に基づく関係者による会議等を行う中で、必 要に応じて「合理的配慮」を見直していくことが適当である。 (4)一貫した支援のための留意事項 1)移行時における情報の引継ぎを行い、途切れることのない支援を提供することが必要である。個別の教育支援計画の引継ぎ、学校間や関係機関も含めた情報交換等により、「合理的配慮」の引継ぎを行うことが必要である。 2)発達や年齢に応じた配慮を意識することが必要である。子どもの精神面の発達を考慮して、家族や介助員の付添い等を検討する。また、年齢に応じ、徐々に自己理解ができるようにし、その上で、自分の得意な面を生かし、苦手なことを乗り越える方法を身に付けられようにする。さらに、自己理解に加えて、大多数の人々がどのように行動するか他者理解できるようにする。特に、知的発達に遅れがある場合には、小学校段階では基礎的な学力の育成、年齢が高まるにつれて社会生活スキルの習得を重点的に行うなど、卒業後の生活を見据えた教育を行う。 3)高等学校については、入学者選抜が行われており、障害の状態等に応じて適切な評価が可能となるよう、学力検査の実施に際して、一層の配慮を行うとともに、選抜方法の多様化や評価尺度の多元化を図ることが必要である。また、自立と社会参加に向け、障害のある生徒に対するキャリア教育や就労支援の充実を図っていくことが重要である。 4)私立学校に在籍する幼児児童生徒についても、公立学校と同様の支援が受けられることが望ましい。 (5)通級による指導、特別支援学級、特別支援学校と「合理的配慮」の関係について 1)「合理的配慮」は、各学校において、障害のある子どもに対し、その状況に応じて、個別に提供されるものであるのに対し、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校の設置は、多様な学びの場の確保のため「基礎的環境整備」として行われているものである。 2)通常の学級のみならず、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校においても、「合理的配慮」として、障害のある子どもが、他の子どもと平等に教育を受ける権利を享有・行使することを確保するために、学校の設置者及び学校が必要かつ適当な変更・調整を行うことが必要である。 3)通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校それぞれの学び場における「合理的配慮」は、前述の「合理的配慮」の観点を踏まえ、個別に決定されることとなるが、「基礎的環境整備」を基に提供されるため、それぞれの学びの場における「基礎的環境整備」の状況により、提供される「合理的配慮」は異なることとなる。 4)障害のある子どもが通常の学級で学ぶことを可能な限り配慮していくことが重要である。他方、十分な教育を受けられるようにするためには、本人・保護者の理解を得ながら、必ずしも通常の学級で全ての教育を行うのではなく、通級による指導等多様な学びの場を活用した取り出し指導を柔軟に行うことも必要な支援と考えられる。例えば、通常の学級に在籍している障害のある児童生徒に支援員を配置したものの、他の子どものための教室の学習環境の維持であったり、本人の安全面の補助のためだけになり、十分な教育を受けられるようにするための支援になっていない場合などは、通級による指導を行ったり、特別支援学級、特別支援学校と連携して指導することなどの方が効果的と考えられる。 (6)その他  障害のある保護者との意思疎通を図る際の「合理的配慮」や障害のある教職員を配置した場合の「合理的配慮」についても、必要に応じ、関係者間で検討されることが望ましい。また、同じ障害のある子ども同士の交流についても情報提供が行われることが望ましい。 3.基礎的環境整備について 1)「合理的配慮」の充実を図る上で、「基礎的環境整備」の充実は欠かせない。そのため、必要な財源を確保し、国、都道府県、市町村は、障害のある子どもと障害のない子どもが共に教育を受けるというインクルーシブ教育システムの構築に向けた取組として、「基礎的環境整備」の充実を図っていく必要がある。(参考資料5:基礎的環境整備について) 2)その際も、「合理的配慮」と同様に体制面、財政面を勘案し、均衡を失した又は過度の負担を課さないよう留意する必要がある。現在の財政状況に鑑みると、そのためには、共生社会の形成に向けた国民の共通理解を一層進め、社会的な機運を醸成していくことが必要であり、それにより、財政的な措置を図る観点を含めインクルーシブ教育システム構築のための施策の優先順位を上げていく必要がある。 3)なお、「合理的配慮」は、「基礎的環境整備」を基に個別に決定されるものであり、それぞれの学校における「基礎的環境整備」の状況により、提供される「合理的配慮」は異なることとなる。 (1)ネットワークの形成・連続性のある多様な学びの場の活用 (ア)現状  義務教育段階においては、通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校といった多様な学びの場を確保している。幼稚園、高等学校段階については、通常の学級、特別支援学校により対応している。  また、各教育委員会が専門家による巡回相談を行っているほか、特別支援学校はセンター的機能として幼、小、中、高等学校等への助言・援助を行っている。  さらに、「特別支援連携協議会」の開催等により、教育機関のみならず医療、福祉、労働等の各関係機関との連携が進められている。  一部の自治体では、特別支援学校に主籍を置き、副籍を地域の学校に置く、又は逆の形などの弾力的な取組を行っている。  通級による指導、特別支援学級、特別支援学校への就学等の特殊事情を踏まえ、障害のある児童生徒等の保護者の経済的負担を軽減するため、通学費、学用品費等の必要な経費について「特別支援教育就学奨励費」として、各自治体等において給付しており、国はその国庫負担等を行っている。 (イ)課題  障害のある子どもが十分な教育を受けられるようにするためには、個別の教育的ニーズのある幼児児童生徒に対して、その時点で教育的ニーズに最も的確にこたえる指導を提供できる多様で柔軟な仕組みを整備していく必要がある。 (2)専門性のある指導体制の確保 (ア)現状  文部科学省の平成22年度体制整備状況調査によれば、全体として体制整備が進んでおり、とりわけ、公立の小・中学校においては、「校内委員会の設置」、「特別支援教育コーディネーターの指名」といった基礎的な支援体制はほぼ整備されている。また、各教育委員会の巡回相談、特別支援学校のセンター的機能等外部の専門家を活用した専門性のある指導体制の整備が進められている。 (イ)課題  専門性ある指導体制を一層確保するため、各校長が特別支援教育について理解を深めるのみならず、自らリーダーシップを発揮して体制を整えるとともに、それが機能するよう、教職員を指導する必要がある。また、幼稚園、高等学校における体制整備や国立・私立の学校における体制整備を一層進める必要がある。さらに、公立の小・中学校においては、体制整備の一層の充実を図っていく必要があり、具体的には、専門性のある教員の活用、指導方針の共有化、チームによる指導等による充実が挙げられる。 (3)個別の教育支援計画や個別の指導計画の作成等による指導 (ア)現状  特別支援学校においては、個別の教育支援計画や個別の指導計画を作成することが学習指導要領等に明記されている。特別支援学校以外の学校についても、指導についての計画や家庭、医療、福祉等の業務を行う関係機関と連携した支援のための計画を個別に作成することなどにより、個々の子どもの障害の状態等に応じた指導内容や指導方法の工夫を計画的、組織的に行うよう、学習指導要領等に明記されている。 (イ)課題  個別の教育支援計画、個別の指導計画については、現在、特別支援学校の学習指導要領等には作成が明記されているが、幼・小・中・高等学校等で学ぶ障害のある幼児児童生徒については、必要に応じて作成されることとなっており、必ず作成することとなっていない。これを障害のある幼児児童生徒全てに拡大していくことが望ましい。 (4)教材の確保 (ア)現状  小・中・高等学校等や特別支援学校では、教科書を使用するほか、各学校の判断により有益適切な教材を使用することができ、国は教材整備費について地方財政措置を講じている。  教科書については、文部科学省において、視覚障害者用の点字教科書、聴覚障害者用の言語指導や音楽の教科書、知的障害者用の国語、算数・数学、音楽の教科書を作成している。  また、「障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律」に基づき、教科書発行者の発行する検定済教科書に対応した拡大教科書のうち、小学校用の拡大教科書はその全点が発行されており、中学校用の拡大教科書についても、平成24年度以降、全点が発行される予定である。さらに、同法に基づき、教科書発行者が保有する教科書のデジタルデータを、文部科学省等を通じて、ボランティア団体等に対して提供することにより、拡大教科書等の作成に係る負担の軽減が図られている。 (イ)課題  視覚障害のある児童生徒のための音声教材、発達障害のある児童生徒が使用する教材等の整備充実を図ることが求められる。また、高等学校用の拡大教科書の発行の促進が求められる。 (5)施設・設備の整備 (ア)現状  各学校の設置者が、施設・設備の整備を行っている。公立の幼、小、中、特別支援学校等の施設整備に要する経費については、国がその一部を補助している。 (イ)課題  各学校におけるバリアフリー対策の推進が求められる。また、特別支援学校については、幼児児童生徒数の増加に伴う、教室不足を解消することが求められる。 (6)専門性のある教員、支援員等の人的配置 (ア)現状  公立の小・中学校の国の学級編制の標準は、通常の学級について40人(小学校第1学年のみ35人)とされているが、特別支援学級については、8人とされている。さらに、特別支援学校の学級編制の標準は、小・中学部において6人、高等部において8人、重複障害児童生徒の場合は3人とされている。これらの標準に基づき編制される学級数等に基づき、都道府県等が配置すべき教職員定数が算定されている。  また、学級数等の客観的な指標に基づいて算定される教職員定数とは別に、通級による指導のためや特別支援学校が地域の特別支援教育のセンター的機能を果たすためなど特別支援教育の実施に係る教職員定数の改善も進められているところであり、国が、これらの教職員定数に係る給与費の一部を負担している。  さらに、特別支援教育支援員の配置に係る経費が地方財政措置されているところである。  また、専門性を確保するための研修については、国、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所により、指導者層の研修のための研修の計画・実施を行っている。都道府県では研修の計画・実施、市町村では研修の実施等を行い、学校で校内研修を行っている。 (イ)課題  公立小・中学校における少人数学級の推進は、子ども一人一人に対するきめ細かい指導の充実や家庭との連携を緊密にする効果があることから、特別支援教育の推進にも資するものであり、一層の教育環境の充実を図っていくことが求められる。また、特別支援学級の学級編制、特別支援学校における学級編制については、今後のインクルーシブ教育システム構築の状況を勘案しつつ、その在り方を検討していく必要がある。さらに、通級による指導のためや特別支援学校が地域の特別支援教育のセンター的機能を果たすためなど特別支援教育の実施に係る教職員定数の一層の改善が求められる。特別支援教育支援員については更なる充実が必要である。  また、教員、支援員等の一層の専門性の向上を図るための研修等の実施が求められる。 (7)取り出し指導や学びの場の設定等による特別な指導 (ア)現状  小・中学校については、取り出し指導に加えて、通級による指導、特別支援学級における指導が可能である。通級による指導、特別支援学級においては、特別の教育課程による教育を行うことができる。  特別支援学校については、取り出し指導に加えて、特別の教育課程による教育を行うことができる。 (イ)課題  通常の学級で指導を行う場合、各小・中学校においては、小・中学校の学習指導要領に基づく教育課程を編成・実施する必要がある。通常の学級で学ぶ障害のある児童生徒一人一人に応じた特別の指導・評価の在り方について検討する必要がある。その際、各学校段階の学習指導要領の総則等において、障害のある児童生徒の指導について、教育課程実施上の配慮事項が示されているが、更なる配慮事項を示すべきかを今後検討していく必要がある。 (8)交流及び共同学習の推進 (ア)現状  学習指導要領に基づき、交流及び共同学習の機会等を設けることとされている。 (イ)課題  改正障害者基本法の理念に基づき、障害のある子どもと障害のない子どもが可能な限り共に教育を受けられるように配慮する観点から、交流及び共同学習を一層推進していくことが重要である。また、一部の自治体で実施している居住地校に副次的な学籍を置くことについては、居住地域との結びつきを強め、居住地校との交流及び共同学習を推進する上で意義がある。居住地校交流を進めるに当たっては、幼児児童生徒の付添いや時間割の調整等が課題であり、それらについて検討していく必要がある。また、特別支援学級と通常の学級の交流及び共同学習も一層進めていく必要がある。 4.学校における「合理的配慮」の観点 1)「合理的配慮」は、個々の障害のある幼児児童生徒の状況等に応じて提供されるものであり、多様かつ個別性が高いものであることから、本ワーキンググループにおいては、その観点について以下のとおり整理した。 2)障害のある幼児児童生徒については、障害の状態が多様なだけでなく、障害を併せ有する場合や、障害の状態や病状が変化する場合もあることから、個々の状態や時間的な経緯により必要な支援が異なることに留意する必要がある。また、障害の状態等に応じた「合理的配慮」を決定する上で、ICF(国際生活機能分類)を活用することが考えられる。(参考資料6:ICFについて) 3)各学校の設置者及び学校が体制面、財政面をも勘案し、「均衡を失した」又は「過度の」負担について、個別に判断することとなる。その際は、「合理的配慮」を決定する際において、現在必要とされている「合理的配慮」は何か、全てできないとすれば何を優先するか、について関係者間で共通理解を図る必要がある。 4)障害種別に応じた「合理的配慮」は、全ての場合を網羅することはできないため、その代表的なものと考えられる例を以下に示している。ここに示されているもの以外は「合理的配慮」として提供する必要がないということではなく、一人一人の障害の状態や教育的ニーズ等に応じて決定されることが望ましい。また、障害種別に応じた「合理的配慮」を例示しているが、障害を併せ有する場合には、各障害種別に例示している「合理的配慮」を柔軟に組み合わせることが適当である。 5)「合理的配慮」は、一人一人の障害の状態や教育的ニーズ等に応じて決定されるものであり、すべてが同じように決定されるものではない。設置者・学校が決定するに当たっては、本人・保護者と、個別の教育支援計画を作成する中で、「合理的配慮」の観点を踏まえ、「合理的配慮」について可能な限り合意形成を図った上で決定し、提供されることが望ましい。例えば、設置者・学校が、学校における保護者の待機を安易に求めるような対応をすることは適切ではない。 <「合理的配慮」の観点(1)教育内容・方法> <(1)−1 教育内容> (1)−1−1 学習上又は生活上の困難を改善・克服するための配慮(別表1)  障害による学習上又は生活上の困難を主体的に改善・克服するため、また、障害の特 性、個性、その持てる力を高めるために必要な知識、技能、態度、習慣を身に付けられ るよう支援する。 (1)−1−2 学習内容の変更・調整(別表2)  認知の特性、身体の動き等に応じて、具体の学習活動の内容や量、評価の方法等を工夫する。障害の状態等や年齢を考慮しつつ、卒業後の生活や進路を見据えた学習内容を考慮するとともに、学習過程において人間関係を広げることや自己選択・自己判断する機会を増やすこと等に留意する。 <(1)−2 教育方法> (1)−2−1 情報・コミュニケーション及び教材の配慮(別表3)  障害の状態等に応じた情報保障やコミュニケーションの方法について配慮するとともに、教材(ICT及び補助用具を含む)の活用について配慮する。 (1)−2−2 学習機会や体験の確保(別表4)  学習機会が確保できないことや体験不足のために理解が困難であることに対し、学習機会や体験を確保する。また、障害の状態により、実施が困難な学習活動についての活動内容・方法を工夫するとともに、感覚と体験を総合的に活用できる学習活動を通じて概念形成を促進する。また、入学試験やその他の試験において配慮する。 (1)−2−3 心理面・健康面の配慮(別表5)  適切な人間関係を構築するため、集団におけるコミュニケーションについて配慮するとともに、他の幼児児童生徒が障害について理解を深めることができるようにする。学習に見通しが持てるようにして、心理的不安を取り除くとともに、周囲の状況を判断できるようにする。また、健康状態により、学習内容・方法を柔軟に調整し、障害に起因した不安感や孤独感を解消し自己肯定感を高める。  学習の予定や進め方を分かりやすい方法で知らせておくことや、それを確認できるようにすることで、心理的不安を取り除くとともに、周囲の状況を判断できるようにする。 <「合理的配慮」の観点(2) 支援体制> (2)−1 専門性のある指導体制の整備(別表6)  校長がリーダーシップを発揮し、学校全体として専門性の確保に努める。そのため、個別の教育支援計画や個別の指導計画を作成するなどにより、校内外の関係者の共通理解と役割分担を行う。学習の場面等を考慮した役割分担を行う。必要に応じ、適切な人的配置(支援員等)を行うほか、学校内外の教育資源(自校の通級による指導や特別支援学級、特別支援学校のセンター的機能、専門家チーム等による助言)の活用や医療、福祉、労働等関係機関との連携を行う。 (2)−2 幼児児童生徒、教職員、保護者、地域の理解推進を図るための配慮(別表7)  共生の理念を涵養するため、障害のある幼児児童生徒に関して、他の幼児児童生徒の理解が進むよう配慮する。障害のある幼児児童生徒の集団参加の方法について、障害のない幼児児童生徒が考え実践する機会や障害のある幼児児童生徒自身が障害について周囲の人に理解を広げる方法等を考え実践する機会を設定する。また、保護者、地域に対しても理解増進を図るような活動を行う。  障害によっては、日常生活や学習場面において様々な困難が生じることから、障害による学習上又は生活上の困難を主体的に改善・克服するために必要な知識、技能、態度、習慣を養うことへの配慮を行う。 (2)−3 災害時等の支援体制の整備(別表8)  災害時等の対応について、障害のある幼児児童生徒の状態を考慮し、危機の予測、避難方法、災害時の人的体制等、災害時体制マニュアルを整備する。また、災害時等における対応が十分にできるよう、避難訓練等の取組に当たっては、一人一人の障害の状態等を考慮する。 <「合理的配慮」の観点(3) 施設・設備> (3)−1 校内環境のバリアフリー化(別表9)  障害のある幼児児童生徒が安全かつ円滑に学校生活を送ることができるよう、障害の状態等に応じた環境にするために、スロープや手すり、便所、出入口、エレベーター等について施設の整備を計画する際に配慮する。また、既存の学校施設のバリアフリー化についても、障害のある幼児児童生徒の在籍状況等を踏まえ、学校施設に関する合理的な整備計画を策定し、計画的にバリアフリー化を推進できるよう配慮する。 (3)−2 発達、障害の状態及び特性等に応じた指導ができる施設・設備の配慮(別表10)  幼児児童生徒一人一人が障害の状態等に応じた学習に十分に取り組めるよう、必要に応じて様々な教育機器等の導入や施設整備を行う。また、それぞれの障害の状態、障害の特性、認知特性、体の動き、感覚等に応じて、その持てる能力を最大限活用して自主的、自発的に学習や生活ができるよう、各教室等の施設・設備について、分かりやすさ等に配慮を行うとともに、日照、室温、音の影響等に配慮する。また、心理的ケアを必要とする幼児児童生徒への配慮を行う。 (3)−3 災害時等への対応に必要な施設・設備の配慮(別表11)  災害時等への対応のため、障害の状態等に応じた施設・設備を整備する。 5.関連事項  以下の事項については、障害種別における「合理的配慮」をまとめる際に、併せて整理を行ったものであり、特別委員会において検討されることが望まれる。 (1)早期からの教育支援について 1)生活行動の基礎を築く早期の専門教育が重要であり、適切なコミュニケーション手段、社会生活技能の獲得に向けて最大限に発達を促すよう配慮することが望ましい。本人の意欲・関心を育て、積極的に物事に関わるように配慮しつつ、どこまでできるようになるのかを見極めながら支援することが望ましい。また、保護者が障害に気付いた際に保護者への支援と適切な情報提供が求められる。 2)体験や経験が十分にできるように配慮することが望ましい。能動的な体験や経験ができるよう支援する。また、多様な実態に対応できるよう体験や経験を準備する。特に、視覚障害について、自分で最初から最後まで行い、手順やポイントの理解を明確にできるようにする。経験したことを言語化して、次の活動の予測につなげられるようする。 3)保護者の障害理解や心理的安定を図るため、支援の充実を図ることが望ましい。保護者の気持ちに寄り添いながら支援を行う、預かり保育や行事等への付添いの代理等の支援の充実、先輩保護者の話を聞く機会の提供、悩みを聞くなどの相談の実施、障害の理解のための研修の実施等が考えられる。また、障害のある子どもが、できるようになったことを共有し成長を確認したりすることも考えられる。 4)個別の教育支援計画を活用し、医療、保健、福祉の各機関等の関係機関が連携し、情報共有を図ることが望ましい。また、親の会や学校等関係機関とも連携することが望ましい。 5)教育行政と福祉行政が連携を更に密にして、早期教育について具体的に取り組むことが必要である。 (2)学校外・放課後における支援について 1)学校が放課後支援サービスや外部機関との連絡を密にし、児童生徒等の生活を一層 充実させることが望ましい。その際、障害について理解のある者が配置されるよう 配慮する。 2)通学時の移動支援や通訳介助者等について、福祉サービスの活用や社会的支援の整 備等の支援の充実を図ることが望ましい。 3)生涯学習等の機会が確保されることが望ましい。具体的には、職業教育に関する学 習の機会が確保されること、障害による学習上又は生活上の困難を改善・克服する 方法についてあらかじめ在学中に指導しアフターケアを行うこと、学習教室や成人 学校等生涯学習に関する情報が本人や保護者に届くようにすること、引継ぎがなさ れること等が望ましい。 (3)教職員の確保及び専門性の向上について 1)教員の専門性については、特に子どもの見立てが重要である。重複障害についても、子どもの見立てができることが基本になる。 2)「合理的配慮」については、特別支援教育の専門性として位置付けていくことが必要である。これは担当教員、特別支援教育コーディネーター、学校外のボランティアといった特別支援教育に関わる者はもちろんのこと、全体として、「合理的配慮」に対する認識を高めていくことが重要である。全国民が認識することが重要ではあるが、まず、特別支援教育に関わる教員や担い手は、「合理的配慮」についての認識と行動力を持つべきである。 3)専門性のある教員の確保と併せて、教員の養成課程において、障害児教育や特別支援教育のこと等を、学び体験できるような場を確保するべきである。 4)インクルーシブ教育システムを構築する上で、障害当事者である教員を確保することも大きな意味がある。 別表1 (1)−1−1 学習上又は生活上の困難を改善・克服するための配慮 障害による学習上又は生活上の困難を主体的に改善・克服するため、また、障害の特性、個性、その持てる力を高めるために必要な知識、技能、態度、習慣を身に付けられるよう支援する。 視覚障害 見えにくさを補うことができるようにするための指導を行う。(弱視レンズ等の効果的な活用、他者へ積極的に関わる意欲や態度の育成、見えやすい環境を知り、自ら整えることと必要な場合の援助依頼 等) 聴覚障害 聞こえにくさを補うことができるようにするための指導を行う。(補聴器等の効果的な活用、相手や状況に応じた適切なコミュニケーション手段(身振り、簡単な手話等)の活用に関すること 等) 知的障害 年齢段階を考慮しつつ、生活指導等において、できるだけ実生活につながる技術や態度を身に付けられるように考慮するとともに、社会生活上の規範やルールの理解を促すための指導を行う。 肢体不自由 道具の操作の困難や移動上の制約等を改善できるように指導を行う。(片手で使うことができる道具の効果的な活用、本人が校内のバリアフリーマップを作ることや移動しにくい場所の移動方法について考えること及び実際の移動の支援 等) 病弱 病気の改善や病状を維持するための服薬管理や環境調整、病状に応じた対応等ができるようにするための指導を行う。(服薬しない場合の病状悪化などを理解させ指示された量の服薬や定期的な服薬を徹底、薬や治療による副作用を理解させ服薬後に眠気を伴う場合には危険な作業等を避けるなど適切な対応が出来るように指導、負担過重な活動とならないよう必要に応じて休憩を取るなど病状に応じた対応方法が取れるように指導 等) 言語障害 話すことに自信をもち積極的に学習等に取り組むことができるようにするための発音の指導を行う。(一斉指導における個別的な発音の指導、個別指導による音読、九九の発音等の指導) 自閉症・情緒障害 自閉症の特性である「適切な対人関係形成の困難さ」「言語発達の遅れや異なった意味理解」「手順や方法に独特のこだわり」等により、学習内容の習得が困難であったり、生活に必要な技術や態度が十分に身に付きにくかったりすること等があることを踏まえ、補完を考慮した指導を行う。(動作等を利用して意味を理解する、繰り返し練習し道具の使い方を正確に覚える 等) 学習障害 読み書きや計算等に関わる苦手なことを練習する、別の方法で代替する、他の能力で補完するなどに関する指導を行う。(形の弁別、社会生活上のルール、ワープロやデジカメ・電卓等の使用、口頭試問による評価 等) 注意欠陥多動性障害 行動を最後までやり遂げることが困難な場合には、途中で忘れないように工夫したり、別の方法で補ったりすることができるようにするための指導を行う。(自分を客観視する、物品の管理方法の工夫、メモの使用 等) 別表2 (1)−1−2 学習内容の変更・調整 認知の特性、身体の動き等に応じて、具体の学習活動の内容や量、評価の方法等を工夫する。 障害の状態等や年齢を考慮しつつ、卒業後の生活や進路を見据えた学習内容を考慮するとともに、学習過程において人間関係を広げることや自己選択・自己判断する機会を増やすこと等に留意する。 視覚障害 視覚による情報が受容しにくいことを考慮した学習内容の変更・調整を行う。(丁寧な状況等の説明、複雑な図の理解や読むことに時間がかかること等を踏まえた時間延長、観察では必要に応じて近づくことや触感覚の併用、体育等における安全確保 等) 聴覚障害 音声による情報が受容しにくいことを考慮した学習内容の変更・調整を行う。(外国語のヒアリング等における音質・音量調整、学習室の変更、文字による代替問題の用意、球技等運動競技における音による合図を視覚的に表示する等の工夫 等) 知的障害 知的発達の遅れにより、全般的に学習内容の習得が困難な場合があることを考慮し、理解の程度に応じた学習内容の変更・調整を行う。(焦点化を図ること、基礎的・基本的な学習内容が習得できるように工夫すること、生活上必要な言葉等の意味を確実に理解できるようにすること 等) 肢体不自由 上肢の不自由により時間がかかることや活動が困難な場合の学習内容の変更・調整を行う。(書く時間の延長、書いたり計算したりする量の軽減、体育等での運動の内容を変更 等) 病弱 病気により実施が困難な学習内容等について、主治医からの指導・助言や学校生活管理指導表に基づいた学習内容の変更・調整を行う。(習熟度に応じた教材の準備、実技を実施可能なものに変更、入院等による学習空白を考慮した学習内容に変更・調整、アレルギー等のために使用できない材料を別の材料に変更 等) 言語障害 発音のしにくさ等を考慮した学習内容の変更・調整を行う。(教科書の音読や音楽の合唱等における個別的な指導、書くことによる代替、構音指導を意識した教科指導 等) 自閉症・情緒障害 自閉症の特性により、数量や言葉等の理解が部分的であったり、偏っていたりする場合の学習内容の変更・調整を行う。(理解の程度を考慮した基礎的・基本的な内容の確実な習得、社会適応に必要な技術や態度が身に付くような指導 等) 学習障害 「読む」「書く」等特定の学習内容の習得が難しいので、基礎的な内容の習得を確実にすることを重視した学習内容の変更・調整を行う。(習熟のための時間を別に設定、軽重をかけた学習内容の配分 等) 注意欠陥多動性障害 注意の集中を持続することが苦手であることを考慮した学習内容の変更・調整を行う。(学習内容を分割して適切な量にする 等) 別表3 (1)−2−1 情報・コミュニケーション及び教材の配慮 障害の状態等に応じた情報保障やコミュニケーションの方法について配慮するとともに、教材(ICT及び補助用具を含む)の活用について配慮する。 視覚障害 見えにくさに応じた教材及び情報の提供を行う。(聞くことで内容が理解できる説明や資料、拡大コピー、拡大文字を用いた資料、触ることができないもの(遠くのものや動きの速いもの等)を確認できる模型や写真 等) 視覚障害を補う視覚補助具やICTを活用した情報の保障を図る。(画面拡大や色の調整、読み上げソフトウェア 等) 聴覚障害 聞こえにくさに応じた視覚的な情報の提供を行う。(分かりやすい板書、教科書の音読箇所の位置の明示、要点をプリントにまとめて提供、身振り、簡単な手話等の使用 等) 聞こえにくさに応じた聴覚的な情報・環境の提供を図る。(座席の位置、話者の音量調整、机・椅子の脚のノイズ軽減対策(使用済みテニスボールの利用等)、防音環境のある指導室、必要に応じてFM式補聴器等の使用 等) 知的障害 知的発達の遅れに応じた分かりやすい指示や教材・教具を提供する。(文字の拡大や読み仮名の付加、話し方の工夫、文の長さの調整、具体的な用語の使用、動作化や視覚化の活用、数量等の理解を促すためのフラッシュカードや文字や数カード、数え棒、パソコンの活用 等) 肢体不自由 書字や計算が困難な子どもに対し上肢の機能に応じた教材や機器を提供する。(書字の能力に応じたプリント、計算ドリルの学習にパソコンを使用、話し言葉が不自由な子どもにはコミュニケーションを支援する機器(文字盤や音声出力型の機器等の活用 等) 病弱 病気のため移動範囲や活動量が制限されている場合に、ICT等を活用し、間接的な体験や他の人とのコミュニケーションの機会を提供する。(療養中の児童生徒への友達との手紙やメールの交換、テレビ会議システム等を活用したリアルタイムのコミュニケーション、ベッド上での生活のため立体物に触れることが少ない児童生徒に対し実物を活用するなどして立体感のある教材等を活用 等) 言語障害 発音が不明瞭な場合には、代替手段によるコミュニケーションを行う。(筆談、ICT機器の活用等) 自閉症・情緒障害 自閉症の特性を踏まえた、視覚を活用した情報を提供する。(写真や図面、模型、実物等の活用)また、細かな制作等に苦手さが目立つ場合が多いことから、扱いやすい道具を用意したり、補助具を効果的に利用したりする。 学習障害 読み書きに時間がかかり、内容の理解に不十分なことが多い場合、本人の能力に合わせた情報を提供する。(文章を読みやすくするための体裁を変える、拡大文字を用いた資料、振り仮名をつける、声やコンピュータの読み上げ等、聴覚情報を併用して伝える 等) 注意欠陥多動性障害 余分な情報に気を取られることにより、聞き逃しや見逃し、書類の紛失等が多い場合には伝達する情報を整理して提供する。(掲示物の整理整頓・精選、目を合わせての指示、メモ等の視覚情報の活用、静かで集中できる環境づくり 等) 重複障害 (視覚障害と聴覚障害)障害の重複の状態と学習の状況に応じた適切なコミュニケーション手段を選択するとともに、必要に応じて状況説明を含めた情報提供を行う。(補聴器、弱視レンズ、拡大文字、簡単な手話の効果的な活用 等) 別表4 (1)−2−2 学習機会や体験の確保 学習機会が確保できないことや体験不足のために理解が困難であることに対し、学習機会や体験を確保する。また、障害の状態により、実施が困難な学習活動についての活動内容・方法を工夫するとともに、感覚と体験を総合的に活用できる学習活動を通じて概念形成を促進する。また、入学試験やその他の試験において配慮する。 視覚障害 見えにくさからの概念形成の難しさを補うために、実物や模型に触る等能動的な学習活動を多く設ける。また、気付きにくい事柄や理解しにくい事柄(遠かったり大きかったりして触れないもの、動くものとその動き方等)を知らせる。 さらに、学習の予定を事前に知らせ、学習の過程や状況をその都度説明することで、主体的に状況の判断ができるように指導を行う。 聴覚障害 言語経験が少ないことによる、体験と言葉の結び付きの弱さを補うための指導を行う。(話合いの内容を確認するため書いて提示し読ませる、慣用句等言葉の表記と意味が異なる言葉の取り立て指導等)また、日常生活で必要とされる様々なルールや常識等の理解、あるいはそれに基づいた行動が困難な場合があるので、実際の場面を想定し、行動の在り方を考えさせる。 知的障害 知的発達の遅れにより、実際的な生活に役立つ技術や態度の習得が困難であることから、調理実習や宿泊学習等の具体的な活動場面において、生活力が向上するように指導するとともに、学習活動が円滑に進むように、図や写真を活用した日課表や活動予定表等を活用し、自主的に判断し見通しをもって活動できるように指導を行う。 肢体不自由 経験の不足から理解しにくいことや移動の困難さから参加が難しい活動については、一緒に参加することができる手段等を講じる。(新しい単元に入る前に新出の語句や未経験と思われる活動のリストを示し予習できるようにする、車いす使用の子どもが栽培活動に参加できるよう高い位置に花壇を作る 等) 病弱 入院時の学習への配慮や仮退院時の教育の機会を確保する。その際、入院による日常生活の体験不足、集団活動の体験不足を補い、概念形成を図ることを考慮した指導を行う。(視聴覚教材等の活用、ビニール手袋をして観察・実験を行う等衛生面を考慮した指導、テレビ会議システム等を活用した遠隔地の友達と協働した取組 等) 言語障害 発音等の不明瞭さによる自信の喪失を軽減するために、個別指導の時間等を確保し、音読、九九の発音等の指導を行う。 自閉症・情緒障害 自閉症の特性により、実際に体験しなければ、行動等の意味を理解することが困難であることから、実際的な体験の機会を多くした指導を行うとともに、言葉による指示だけでは行動できないことが多いことから、学習活動の順序を分かりやすくなるよう活動予定表等の活用を行う。 学習障害 身体感覚の発達を促すための活動を通した指導を行う。(体を大きく使った活動、様々な感覚を同時に使った活動 等) 活動内容を分かりやすく説明して安心して参加できるようにする。 注意欠陥多動性障害 好きなものと関連付けるなど興味・関心が持てるような学習活動の導入や危険防止策を講じた上で本人が直接参加できる体験学習を通した指導を行う。 別表5 (1)−2−3 心理面・健康面の配慮 適切な人間関係を構築するため、集団におけるコミュニケーションについて配慮するとともに、他の幼児児童生徒が障害について理解を深めることができるようにする。学習に見通しが持てるようにして、心理的不安を取り除くとともに、周囲の状況を判断できるようにする。また、健康状態により、学習内容・方法を柔軟に調整し、障害に起因した不安感や孤独感を解消し自己肯定感を高める。 学習の予定や進め方を分かりやすい方法で知らせておくことや、それを確認できるようにすることで、心理的不安を取り除くとともに、周囲の状況を判断できるようにする。 視覚障害 自己の視覚障害を理解し、眼疾の進行や事故を防止できるようにするとともに、身の回りの状況が分かりやすい校内の環境作りを図り、見えにくい時には自信をもって尋ねられるような雰囲気を作る。また、視覚に障害がある児童生徒等が集まる交流の機会の情報提供を行う。 聴覚障害 情報が入らないことによる孤立感を感じさせないような学級の雰囲気作りを図る。また、通常の学級での指導に加え、聴覚に障害がある児童生徒等が集まる交流の機会の情報提供を行う。 知的障害 知的発達の遅れ等によって、友人関係を十分には形成できないことや、年齢が高まるに連れて友人関係の維持が困難になることもあることから、集団の一員として帰属意識がもてるような機会を確保するとともに、自尊感情や自己肯定感、ストレス等の状態を踏まえた適切な対応を図る。 肢体不自由 下肢の不自由による転倒のしやすさ、車いす使用に伴う健康上の問題等を踏まえた支援を行う。(体育の時間に膝や肘のサポーターの使用、長距離の移動時の介助者、車いす使用時に必要な1日数回の姿勢の変換及びそのためのスペース確保) 病弱 入院や手術、病気の進行への不安等を理解し、心理状態に応じて弾力的に指導を行う。(治療過程で学習可能な時期を理解し、健康状態に応じた指導、体調の変化に応じた指導、アレルゲン除去や病状に応じた適切な運動等について、医療機関との連携による指導 等) 言語障害 言語障害のある児童生徒等が集まる交流の機会の情報提供を行う。 自閉症・情緒障害 自閉症の特性により、二次的な障害(情緒不安や不登校、ひきこもり、自尊感情や自己肯定感の低下等)が起きることが多いことから、それらの予防に努める。(カウンセリング的対応や医師の診断を踏まえた対応 等) 学習障害 苦手な学習活動があることで、自尊感情が低下している場合には、成功体験を増やしたり、友達から認められたりする場面を設ける。(文章の理解をすること等に時間がかかることを踏まえた時間延長、必要な学習活動に重点的な時間配分、受容的な学級の雰囲気づくり、困ったときに相談できる人や場所の確保 等) 注意欠陥多動性障害 活動に持続的に取り組むことが難しく、また不注意による紛失等の失敗や衝動的な行動が多いので、成功体験を増やし、友達から認められる機会の増加に努める。(十分な活動のための時間の確保、物品管理のための棚等の準備、良い面を認め合えるような受容的な学級づくり、感情のコントロール方法の指導、困ったときに相談できる人や場所の確保 等) 重複障害 (視覚障害と聴覚障害)見えにくく聞こえにくいことから多人数と同時にコミュニケーションが取りにくいため、学級内で孤立しないように、適時・適切な情報の提供を保障する。 別表6 (2)−1 専門性のある指導体制の整備 校長がリーダーシップを発揮し、学校全体として専門性の確保に努める。そのため、個別の教育支援計画や個別の指導計画を作成するなどにより、校内外の関係者の共通理解と役割分担を行う。学習の場面等を考慮した役割分担を行う。必要に応じ、適切な人的配置(支援員等)を行うほか、学校内外の教育資源(自校の通級による指導や特別支援学級、特別支援学校のセンター的機能、専門家チーム等による助言)の活用や医療、福祉、労働等関係機関との連携を行う。 視覚障害 特別支援学校(視覚障害)のセンター的機能及び弱視特別支援学級、通級による指導等の専門性を積極的に活用する。 点字図書館等地域資源の活用を図る。 聴覚障害 特別支援学校(聴覚障害)のセンター的機能及び難聴特別支援学級、通級による指導等の専門性を積極的に活用する。 耳鼻科、補聴器店、難聴児親の会、聴覚障害者協会等との連携による、理解啓発のための学習会や、児童生徒のための交流会の活用を図る。 知的障害 知的障害の状態は外部からは分かりにくいことから、専門家からの支援や、特別支援学校(知的障害)のセンター的機能及び特別支援学級等の専門性を積極的に活用する。 てんかん等への対応のために、必要に応じて医療機関との連携を図る。 肢体不自由 体育担当教員、養護教諭、栄養職員、学校医を含むサポートチームが教育的ニーズを把握し支援の内容方法を検討する。必要に応じて特別支援学校(肢体不自由、知的障害)からの支援を受けるとともにPT、OT、ST等の指導助言を活用する。 医療的ケアが必要な場合には看護師等、医療関係者との連携を図る。 病弱 学校生活を送る上で、病気のために必要な生活規制や必要な支援を明確にするとともに、急な病状の変化に対応できるように校内体制を整備する。(主治医や保護者からの情報に基づく適切な支援、日々の体調について保護者との連携、緊急の対応が予想される場合には全教職員による支援体制の構築) 医療的ケアが必要な場合には看護師等、医療関係者との連携を図る。 言語障害 言語障害の専門家(ST等)との連携による指導の充実を図る。 自閉症・情緒障害 自閉症や情緒障害を十分に理解した専門家からの支援や、特別支援学校のセンター的機能及び自閉症・情緒障害特別支援学級、医療機関等の専門性を積極的に活用し、自閉症等の特性について理解を深められるようにする。 学習障害 特別支援学校や発達障害者支援センター、教育相談担当部署等の外部専門家からの助言等を生かし、指導の充実を図る。また、通級による指導等学校内の資源の有効活用を図る。 注意欠陥多動性障害 特別支援学校や発達障害者支援センター、教育相談担当部署等の外部専門家からの助言等を生かし、指導の充実を図る。また、通級による指導等学校内の資源の有効活用を図る。 別表7 (2)−2 幼児児童生徒、教職員、保護者、地域の理解推進を図るための配慮 共生の理念を涵養するため、障害のある幼児児童生徒に関して、他の幼児児童生徒の理解が進むよう配慮する。障害のある幼児児童生徒の集団参加の方法について、障害のない幼児児童生徒が考え実践する機会や障害のある幼児児童生徒自身が障害について周囲の人に理解を広げる方法等を考え実践する機会を設定する。また、保護者、地域に対しても理解 増進を図るような活動を行う。 障害によっては、日常生活や学習場面において様々な困難が生じることから、障害による学習上又は生活上の困難を主体的に改善・克服するために必要な知識、技能、態度、習慣を養うことへの配慮を行う。 視覚障害 使用する視覚補助具や教材について児童生徒、教職員、保護者への理解啓発に努める。 聴覚障害 使用する補装具や、多様なコミュニケーション手段について、児童生徒、教職員、保護者への理解啓発に努める。 知的障害 知的障害の状態は、外部から分かりにくいこと、かつ、その特性としては、実体験による知識等の習得が必要であることから、その特性を踏まえた教育内容や指導方法等について、児童生徒、教職員、保護者への理解啓発に努める。 肢体不自由 移動や日常生活動作に制約があることや、そのための環境整備の具体的な方法について、児童生徒、教職員、保護者への理解啓発に努める。 病弱 病気によっては継続的又は断続的に医療や生活規制を必要とすることがあるので、病気の状態によっては特別な支援を必要とするという理解を広め、病状が急変した場合に緊急対応ができるよう、児童生徒、教職員、保護者の理解啓発に努める。(見ただけでは分かりにくい障害の理解、心身症や精神疾患等の心の病気の特性についての理解、服薬や実施出来ない実技等についての理解 等) 言語障害 言語障害について、児童生徒、教職員、保護者への理解啓発に努める。 自閉症・情緒障害 自閉症や情緒障害の状態は、外部から分かりにくく、かつ、それらの改善は難しい場合もあるが、それらを生かした指導方法も効果的であること、また、「いじめ」に遭いやすいこと等について、児童生徒、教職員、保護者の理解啓発に努める。 学習障害 努力によっても変わらない苦手なことや生まれつき得意なこと等、様々な個性があることや特定の感覚が過敏な人がいること等について、児童生徒、教職員、保護者の理解啓発に努める。 注意欠陥多動性障害 不適切と受け止められやすい行動についても、本人なりの理由があることや、生まれつきの特性によること、危険な行動等の安全な制止、防止の方策等について、児童生徒、教職員、保護者の理解啓発に努める。 別表8 (2)−3 災害時等の支援体制の整備 災害時等の対応について、障害のある幼児児童生徒の状態を考慮し、危機の予測、避難方法、災害時の人的体制等、災害時体制マニュアルを整備する。また、災害時等における対応が十分にできるよう、避難訓練等の取組に当たっては、一人一人の障害の状態等を考慮する。 視覚障害 見えにくさに配慮して災害とその際の対応や避難について理解できるようにするとともに、緊急時の安全確保ができる校内体制を整備する。 聴覚障害 放送等による避難指示を聞き取ることができない児童生徒に対し、緊急時の安全確保と避難誘導等を迅速に行うための校内体制を整備する。 知的障害 適切な避難等の行動の仕方が分からず、極度に心理状態が混乱することを想定した避難誘導のための校内体制を整備する。 肢体不自由 移動の困難さを踏まえた避難の方法や体制及び避難後に必要となる支援体制を整備する。(車いすで避難する際の経路や人的体制、移動が遅れる場合の対応方法の検討、避難後に必要な支援の一覧表の作成 等) 病弱 医療機関への搬送や必要とする医療機関からの支援を受けることが出来るようにするなど、子どもの病気に応じた支援体制を整備する。(近隣の病院へ搬送した場合の対応方法、救急隊員等への事前の連絡、病気のため急いで避難することが困難な児童生徒(心臓病等)が逃げ遅れないための支援) 言語障害 発語による連絡が難しい場合には、その代替手段により安否を伝える方法等の避難訓練に取り組む。 自閉症・情緒障害 自閉症や情緒障害のある児童生徒は、災害時の環境の変化に適応することが難しく、極度に混乱した心理状態やパニックに陥ることを想定した支援体制を整備する。 学習障害 指示内容を素早く理解し、記憶することや、掲示物を読んで避難経路等を理解することが難しい場合等を踏まえた避難訓練に取り組む。(具体的に分かりやすい説明、不安感を持たずに行動ができるような避難訓練の継続 等) 注意欠陥多動性障害 落ち着きを失ったり、指示の途中で動いたりする傾向を踏まえた、避難訓練に取り組む。(項目を絞った短時間での避難指示、行動を過度に規制しない範囲で見守りやパニックの予防 等) 別表9 (3)−1 校内環境のバリアフリー化 障害のある幼児児童生徒が安全かつ円滑に学校生活を送ることができるよう、障害の状態等に応じた環境にするために、スロープや手すり、便所、出入口、エレベーター等について施設の整備を計画する際に配慮する。また、既存の学校施設のバリアフリー化についても、障害のある幼児児童生徒の在籍状況等を踏まえ、学校施設に関する合理的な整備計画を策定し、計画的にバリアフリー化を推進できるよう配慮する。 視覚障害 校内での活動や移動に支障がないように校内環境を整備する。(廊下等も含めて校内の十分な明るさの確保、分かりやすい目印、段差等を明確に分かるようにして安全を確保する 等) 聴覚障害 放送等の音声情報を視覚的に受容することができる校内環境を整備する。(教室等の字幕放送受信システム 等) 知的障害 知的発達の遅れにより、校内での移動などに他者からの多くの援助が必要となることから、自主的な移動を促せるよう、視覚的に動線や目的の場所が理解できる校内環境を整備する。 肢体不自由車いすによる移動やつえを用いた歩行ができるように、教室配置の工夫や施設改修を行う。(段差の解消、スロープ、手すり、開き戸、自動ドア、エレベーター、障害者用トイレの設置 等) 病弱 心臓病等の病気のため、車いすでの移動が必要であったり、階段昇降が困難であったりする場合、児童生徒が自ら医療上の処置(T型糖尿病の自己注射や二分脊椎症等の自己導尿等)を必要とする場合等に対応できる施設・設備を整備する。 自閉症・情緒障害 自閉症の特性を考慮し、備品等を分かりやすく配置したり、視覚的に動線や目的の場所が理解できるようにしたりする。 別表10 (3)−2 発達、障害の状態及び特性等に応じた指導ができる施設・設備の配慮 幼児児童生徒一人一人が障害の状態等に応じた学習に十分に取り組めるよう、必要に応じて様々な教育機器等の導入や施設整備を行う。また、それぞれの障害の状態、障害の特性、認知特性、体の動き、感覚等に応じて、その持てる能力を最大限活用して自主的、自発的に学習や生活ができるよう、各教室等の施設・設備について、分かりやすさ等に配慮を行うとともに、日照、室温、音の影響等に配慮する。また、心理的ケアを必要とする幼児児童生徒への配慮を行う。 視覚障害 見えやすいように環境を整備する。(眩しさを防ぐために光の調整が可能なブラインドやカーテン、スタンド 等)必要に応じて教室に拡大読書器を設置する 等) 聴覚障害 教室等の聞こえの環境を整備する。(絨毯・畳の指導室の確保、行事における進行次第や挨拶文、劇の台詞等の文字表示 等)、 知的障害 衝動的な行動や注意力が低く危険な行動が見られることから、高所からの落下防止等を踏まえ、安全性を確保した校内環境を整備する。また、必要に応じて、生活力の向上が必要であることから、生活体験を主とした活動を可能にする場を用意する。 肢体不自由 上肢や下肢の動きの制約に対して施設・設備を工夫又は改修するとともに、車いす等で移動しやすいような空間を確保する。(上下式のレバーの水栓、教室内を車いすで移動できる空間、廊下の障害物除去、姿勢を変換できる場所、休憩スペースの設置等) 病弱 病気の状態に応じて、健康状態の維持、衛生面、心理的な安定等を考慮した施設・設備を整備する。(色素性乾皮症の場合の紫外線カットフィルム、相談室や箱庭等の心理療法を活用できる施設、落ち着けない時急性期の精神状態の児童生徒が落ち着ける空間の確保等) 自閉症・情緒障害 衝動的な行動や高所からの落下、怪我、火傷等の危険性等を踏まえ、安全性を確保した校内環境を整備する。また、興奮が収まらない場合を想定し、クールダウン等のための場所を確保するとともに、必要に応じて、自閉症特有の感覚を踏まえた校内環境を整備する(明るさやちらつきへの過敏性等)。 学習障害 類似した情報が混在していると、必要な情報を選択することが困難になるため、不要な情報を隠したり、必要な情報だけが届くようにしたりできるように校内の環境を整備する。(余分な物を覆うカーテンの設置、視覚的にわかりやすいような表示 等) 注意欠陥多動性障害 注意集中が難しいことや衝動的に行動してしまうこと、落ち着きを取り戻す場所が必要なこと等を考慮した施設・設備を整備する。(余分なものを覆うカーテンの設置、照明器具等の防護対策、危険な場所等の危険防止柵の設置、静かな小部屋の設置 等) 別表11 (3)−3 災害時等への対応に必要な施設・設備の配慮 災害時等への対応のため、障害の状態等に応じた施設・設備を整備する。 視覚障害 避難経路に明確な目印や照明を設置する。 聴覚障害 緊急情報を視覚的に受容することができる設備を設置する。 知的障害 災害等発生後における行動の仕方が分からないことによる混乱した心理状態に対応できるように、簡潔な導線、分かりやすい設備の配置、明るさの確保等を考慮して施設・設備を整備する。 肢体不自由 移動の困難さに対して避難経路を確保し、必要な施設・設備の整備を行うとともに、避難後の必要な物品を準備する。(車いす、担架、非常用電源や手動で使える機器 等) 病弱 薬や非常用電源の確保、長期間の停電に備えて手動で使える機器等を整備する。 自閉症・情緒障害 災害等発生後における環境の変化に適応できないことによる心理状態(パニック等)を想定し、外部からの刺激を制限できるような避難場所及び施設・設備を整備する。 注意欠陥多動性障害 災害等発生後における避難場所においても、落ち着きを取り戻す場所が必要なことを考慮した静かな小空間等を確保する。 参考資料1 障害者基本法(抄) 第一章 総則 (地域社会における共生等) 第三条 第一条に規定する社会の実現は、全ての障害者が、障害者でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを前提としつつ、次に掲げる事項を旨として図られなければならない。 一 全て障害者は、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されること。 二 全て障害者は、可能な限り、どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないこと。 三 全て障害者は、可能な限り、言語(手話を含む。)その他の意思疎通のための手段についての選択の機会が確保されるとともに、情報の取得又は利用のための手段についての選択の機会の拡大が図られること。 (差別の禁止) 第四条 何人も、障害者に対して、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない。 2 社会的障壁の除去は、それを必要としている障害者が現に存し、かつ、その実施に伴う負担が過重でないときは、それを怠ることによつて前項の規定に違反することとならないよう、その実施について必要かつ合理的な配慮がされなければならない。 3 国は、第一項の規定に違反する行為の防止に関する啓発及び知識の普及を図るため、当該行為の防止を図るために必要となる情報の収集、整理及び提供を行うものとする。 (国際的協調) 第五条 第一条に規定する社会の実現は、そのための施策が国際社会における取組と密接な関係を有していることに鑑み、国際的協調の下に図られなければならない。 (国及び地方公共団体の責務) 第六条 国及び地方公共団体は、第一条に規定する社会の実現を図るため、前三条に定める基本原則(以下「基本原則」という。)にのつとり、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策を総合的かつ計画的に実施する責務を有する。 (国民の理解) 第七条 国及び地方公共団体は、基本原則に関する国民の理解を深めるよう必要な施策を講じなければならない。 第二章 障害者の自立及び社会参加の支援等のための基本的施策 (教育) 第十六条 国及び地方公共団体は、障害者が、その年齢及び能力に応じ、かつ、その特性を踏まえた十分な教育が受けられるようにするため、可能な限り障害者である児童及び生徒が障害者でない児童及び生徒と共に教育を受けられるよう配慮しつつ、教育の内容及び方法の改善及び充実を図る等必要な施策を講じなければならない。 2 国及び地方公共団体は、前項の目的を達成するため、障害者である児童及び生徒並びにその保護者に対し十分な情報の提供を行うとともに、可能な限りその意向を尊重しなければならない。 3 国及び地方公共団体は、障害者である児童及び生徒と障害者でない児童及び生徒との交流及び共同学習を積極的に進めることによつて、その相互理解を促進しなければならない。 4 国及び地方公共団体は、障害者の教育に関し、調査及び研究並びに人材の確保及び資質の向上、適切な教材等の提供、学校施設の整備その他の環境の整備を促進しなければならない。 参考資料2 障害者の権利に関する条約(抄) 第二条 定義  この条約の適用上、  「意思疎通」とは、言語、文字表記、点字、触覚を使った意思疎通、拡大文字、利用可能なマルチメディア並びに筆記、聴覚、平易な言葉及び朗読者による意思疎通の形態、手段及び様式並びに補助的及び代替的な意思疎通の形態、手段及び様式(利用可能な情報通信技術を含む。)をいう。  「言語」とは、音声言語及び手話その他の形態の非音声言語をいう。  「障害を理由とする差別」とは、障害を理由とするあらゆる区別、排除又は制限であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のあらゆる分野において、他の者と平等にすべての人権及び基本的自由を認識し、享有し、又は行使することを害し、又は妨げる目的又は効果を有するものをいう。障害を理由とする差別には、あらゆる形態の差別(合理的配慮の否定を含む。)を含む。  「合理的配慮」とは、障害者が他の者と平等にすべての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。  「ユニバーサルデザイン」とは、調整又は特別な設計を必要とすることなく、最大限可能な範囲ですべての人が使用することのできる製品、環境、計画及びサービスの設計をいう。ユニバーサルデザインは、特定の障害者の集団のための支援装置が必要な場合には、これを排除するものではない。 第五条 平等及び差別されないこと 1 締約国は、すべての者が、法律の前に又は法律に基づいて平等であり、並びにいかなる差別もなしに法律による平等の保護及び利益を受ける権利を有することを認める。 2 締約国は、障害を理由とするあらゆる差別を禁止するものとし、いかなる理由による差別に対しても平等のかつ効果的な法的保護を障害者に保障する。 3 締約国は、平等を促進し、及び差別を撤廃することを目的として、合理的配慮が提供されることを確保するためのすべての適当な措置をとる。 4 障害者の事実上の平等を促進し、又は達成するために必要な特別の措置は、この条約に規定する差別と解してはならない。 第八条 意識の向上 1 締約国は、次のことのための即時の、効果的なかつ適当な措置をとることを約束する。 (a)障害者に関する社会全体(家族を含む。)の意識を向上させ、並びに障害者の権利及び尊厳に対する尊重を育成すること。 (b)あらゆる活動分野における障害者に関する定型化された観念、偏見及び有害な慣行(性及び年齢を理由とするものを含む。)と戦うこと。 (c)障害者の能力及び貢献に関する意識を向上させること。 2 このため、1 の措置には、次のことを含む。 (a)次のことのための効果的な公衆の意識の啓発活動を開始し、及び維持すること。 (i)障害者の権利に対する理解を育てること。 (ii)障害者に対する肯定的認識及び一層の社会の啓発を促進すること。 (iii)障害者の技術、価値及び能力並びに職場及び労働市場に対する障害者の貢献についての認識を促進すること。 (b)教育制度のすべての段階(幼年期からのすべての児童に対する教育制度を含む。)において、障害者の権利を尊重する態度を育成すること。 (c)すべてのメディア機関が、この条約の目的に適合するように障害者を描写するよう奨励すること。 (d)障害者及びその権利に関する啓発のための研修計画を促進すること。 第二十四条 教育 1 締約国は、教育についての障害者の権利を認める。締約国は、この権利を差別なしに、かつ、機会の均等を基礎として実現するため、次のことを目的とするあらゆる段階における障害者を包容する教育制度及び生涯学習を確保する。 (a)人間の潜在能力並びに尊厳及び自己の価値についての意識を十分に発達させ、並びに人権、基本的自由及び人間の多様性の尊重を強化すること。 (b)障害者が、その人格、才能及び創造力並びに精神的及び身体的な能力をその可能な最大限度まで発達させること。 (c)障害者が自由な社会に効果的に参加することを可能とすること。 2 締約国は、1 の権利の実現に当たり、次のことを確保する。 (a)障害者が障害を理由として教育制度一般から排除されないこと及び障害のある児童が障害を理由として無償のかつ義務的な初等教育から又は中等教育から排除されないこと。 (b)障害者が、他の者と平等に、自己の生活する地域社会において、包容され、質が高く、かつ、無償の初等教育の機会及び中等教育の機会を与えられること。 (c)個人に必要とされる合理的配慮が提供されること。 (d)障害者が、その効果的な教育を容易にするために必要な支援を教育制度一般の下で受けること。 (e)学問的及び社会的な発達を最大にする環境において、完全な包容という目標に合致する効果的で個別化された支援措置がとられることを確保すること。 3 締約国は、障害者が地域社会の構成員として教育に完全かつ平等に参加することを容易にするため、障害者が生活する上での技能及び社会的な発達のための技能を習得することを可能とする。このため、締約国は、次のことを含む適当な措置をとる。 (a)点字、代替的な文字、意思疎通の補助的及び代替的な形態、手段及び様式並びに適応及び移動のための技能の習得並びに障害者相互による支援及び助言を容易にすること。 (b)手話の習得及び聴覚障害者の社会の言語的な同一性の促進を容易にすること。 (c)視覚障害若しくは聴覚障害又はこれらの重複障害のある者(特に児童)の教育が、その個人にとって最も適当な言語並びに意思疎通の形態及び手段で、かつ、学問的及び社会的な発達を最大にする環境において行われることを確保すること。 4 締約国は、1 の権利の実現の確保を助長することを目的として、手話又は点字について能力を有する教員(障害のある教員を含む。)を雇用し、並びに教育のすべての段階に従事する専門家及び職員に対する研修を行うための適当な措置をとる。この研修には、障害についての意識の向上を組み入れ、また、適当な意思疎通の補助的及び代替的な形態、手段及び様式の使用並びに障害者を支援するための教育技法及び教材の使用を組み入れるものとする。 5 締約国は、障害者が、差別なしに、かつ、他の者と平等に高等教育一般、職業訓練、成人教育及び生涯学習の機会を与えられることを確保する。このため、締約国は、合理的配慮が障害者に提供されることを確保する。 参考資料3 合理的配慮について  障害者の権利に関する条約第2条にある「合理的配慮」の定義中、「均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」の「負担」の解釈について、外務省に照会したところ、以下の回答があった。  条約第2条において、「「合理的配慮」とは、障害者が他の者と平等にすべての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。」というところの「負担」は、一義的には、「変更及び調整」を行う主体に課される負担を指すものと解されます。  合理的配慮がいかなる範囲かつ内容で実現されるかについては各国の裁量にゆだねられており、様々な要素を総合的に勘案して、個々の事案に即して判断されるべきものですが、個々の事案において「均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」であるか否かについては、「変更及び調整」を行う主体にとっての負担という観点から判断されるものであると考えます。 (参考) 障害者の権利に関する条約(署名時仮訳) 第2条 定義 「合理的配慮」とは、障害者が他の者と平等にすべての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。 “Reasonable accommodation” means necessary and appropriate modification and adjustment not imposing a disproportionate or undueburden, where needed in a particular case, to ensure to persons with disabilities the enjoyment or exercise on an equal basis with others of all human rights and fundamental freedoms. (了) 参考資料4 合理的配慮についての整理 図の説明 「国、都道府県、市町村による環境整備」と書かれた四角い土台の上を、「設置者・学校が実施」するものとして「Aさんのための合理的配慮」、「Bさんのための合理的配慮」の文字が入った円と名前の入っていない円が並んで埋め尽くしている。 「国、都道府県、市町村による環境整備」と書かれた四角い土台の部分が「合理的配慮の基礎となる環境整備(基礎的環境整備)」である。 「設置者・学校が実施」するものとして「Aさんのための合理的配慮」、「Bさんのための合理的配慮」の文字が入った円と名前の入っていない円が並んでいる部分が「合理的配慮」である。 参考資料5 基礎的環境整備について (現状及び国・都道府県・市町村の役割分担) (1)ネットワークの形成・連続性のある多様な学びの場の活用 1)特別支援学校(幼稚部・小学部・中学部・高等部)における在籍者の推移 平成20年 112,334人 平成21年 117,035人 平成22年 121,815人 2)小・中学校における特別支援学級数及び在籍者数の推移 平成20年 40,004学級 124,166人 平成21年 42,067学級 135,166人 平成22年 44,010学級 145,431人 3)小・中学校における通級による指導対象児童生徒数の推移 平成20年 49,685人 (うち言語障害29,860人、自閉症7,047人、学習障害3,682人、注意欠陥多動性障害3,406人) 平成21年 54,021人 (うち言語障害30,390人、自閉症8,064人、学習障害4,726人、注意欠陥多動性障害4,013人) 平成22年 60,637人 (うち言語障害31,066人、自閉症9,148人、学習障害6,655人、注意欠陥多動性障害5,798人) (2)専門性のある指導体制の確保 (幼稚園、小・中学校、高等学校における体制整備の状況(各年9月1日現在)) 1)国公私立計・幼小中高別・項目別実施率(平成22年度)(%) ・校内委員会の設置(幼48.5、小99.3、中95.3、高80.8) ・実態把握(幼89.1、小98.3、中92.8、高72.5) ・特別支援教育コーディネーターの指名(幼56.4、小99.3、中94.8、高79.1) ・個別の指導計画の作成(幼37.0、小87.3、中76.3、高16.9) ・個別の教育支援計画の作成(幼28.1、小64.1、中58.4、高14.0) ・巡回相談員の活用(幼67.6、小80.6、中63.8、高35.8) ・専門家チームの活用(幼50.7、小54.9、中44.3、高25.0) ・特別支援教育に関する教員研修の受講(幼46.4、小72.7、中55.3、高41.7) 2)国公私立別、幼小中高計・項目別実施率(平成22年度)(%) ・校内委員会の設置(国84.2、公97.5、私29.5) ・実態把握(国82.0、公96.4、私75.8) ・特別支援教育コーディネーターの指名(国79.7、公98.3、私34.9) ・個別の指導計画の作成(国33.8、公76.3、私21.3) ・個別の教育支援計画の作成(国30.2、公56.7、私17.2) ・巡回相談員の活用(国65.8、公74.0、私50.4) ・専門家チームの活用(国59.5、公50.7、私39.6) ・特別支援教育に関する教員研修の受講(国50.0、公63.9、私29.4) 3)公立小中計・項目別実施率(平成20〜22年度)(%) ・校内委員会の設置(H20:99.7、H21:99.9、H22:99.9) ・実態把握(H20:97.5、H21:97.6、H22:98.1) ・特別支援教育コーディネーターの指名(H20:99.8、H21:99.9、H22:99.9) ・個別の指導計画の作成(H20:80.9、H21:83.7、H22:86.2) ・個別の教育支援計画の作成(H20:52.3、H21:58.6、H22:64.0) ・巡回相談員の活用(H20:72.8、H21:75.3、H22:76.8) ・専門家チームの活用(H20:43.8、H21:48.1、H22:52.3) ・特別支援教育に関する教員研修の受講(H20:60.2、H21:64.1、H22:67.8) (3)個別の教育支援計画や個別の指導計画の作成等による指導 国公私立計・幼小中高計・項目別実施率(平成20〜22年度)(%) ※(2)と同様 ・個別の指導計画の作成(H20:58.9、H21:62.4、H22:64.9) ・個別の教育支援計画の作成(H20:38.9、H21:44.1、H22:48.5) (4)教材の確保 1)教科書 国 検定、無償給与、文部科学省著作教科書の作成 都道府県 採択についての指導、助言、援助 市町村 採択 2)教材 国 地方財政措置 市町村 教材の届出又は承認 学校 教材の選択・使用 (5)施設・設備の整備 1)施設・設備の整備 国 学校施設・設備の整備に要する経費の国庫負担(1/3又は1/2) (バリアフリー設備の整備を含む) 市町村 学校施設・設備の整備に要する経費の負担(実質1/2又は2/3) 2)施設・設備の維持修繕 国 維持修繕費として地方財政措置 市町村 維持修繕の実施 (6)専門性のある教員、支援員等の人的配置 1)教員の給与負担・定数 国 給与費の1/3国庫負担 教職員定数の総数の標準を設定(特別支援学級、通級指導担当教員) 都道府県 給与負担(実質2/3) 教職員定数の設定(特別支援学級、通級指導担当教員) 2)教員の研修 国 指導者層養成のための研修の計画・実施 都道府県 研修の計画・実施 市町村 研修の実施、都道府県が行う研修への協力 学校・校長 校内研修の実施 3)公立小・中学校の特別支援学級担当教員の特別支援学校教諭免許状保有率(H22.5.1) 小学校 33.0% 中学校 27.4% 合計 31.3% 4)公立特別支援学校教員の特別支援学校教諭免許状及び自立教科等の教諭免許状保有率 70.0%(H22.5.1) 5)公立小・中学校における特別支援教育に関する教員研修の受講状況 (平成15年4月1日〜平成22年9月1日の間に研修を受講した教員の割合) 小学校 73.2% 小学校管理職 80.4% 中学校 58.2% 中学校管理職 73.8% 6)支援員の配置 国 地方財政措置 市町村 特別支援教育支援員の配置 7)公立小・中学校における特別支援教育支援員の地方財政措置 34,000人(H22年度) 8)公立小・中学校における特別支援教育支援員活用状況 34,132人(H22.5.1) 9)医療的ケア 公立特別支援学校小・中学部における医療的ケアが必要な児童生徒数 5,433人(H22.5.1) ※公立特別支援学校小・中学部全在籍者の約8.8% ※公立特別支援学校における看護師等については、都道府県等が措置 (7)取り出し指導や学びの場の設定等による指導 1)教育課程編成 国 教育課程の基準の設定(学習指導要領等) 市町村 教育課程の管理 学校・校長 教育課程の編成 (8)交流及び共同学習 ※国立特別支援教育総合研究所が平成22 年度に実施した全国の国公私立特別支援学校(1.045校)に対するアンケート調査(有効回答数849校、回収率81%) 1)学校間交流を実施している特別支援学校の割合 幼稚部 71.9% 小学部 94.6% 中学部 82.9% 高等部 73.6% 2)居住地校交流を実施している特別支援学校の割合 幼稚部 45.2% 小学部 80.9% 中学部 48.9% 高等部 3.6% 参考資料6 ICFについて (特別支援学校学習指導要領解説自立活動編(抜粋)) 2 障害のとらえ方と自立活動 (1) 障害のとらえ方の変化  近年,障害のある人々を取り巻く社会環境や障害についての考え方等に大きな変化が見られる。  国際的な動向としては,障害者の社会参加に関する取組の進展を踏まえ,平成18 年12 月,国際連合総会において「障害者の権利に関する条約」が採択され,障害者の権利や尊厳を大切にしつつ社会のあらゆる分野への参加を促進することが合意された。  国内においては,平成5年の障害者基本法の改正をはじめとして,障害の有無にかかわらず,国民のだれもが相互に人格と個性を尊重し支え合う共生社会を目指した施策が推進されてきた。その後,平成15年度を初年度とした「障害者基本計画」により,障害者本人の自己選択と自己決定の下に,社会のあらゆる活動への参加を一層促す施策が積極的に進められているところである。  この間,「障害」のとらえ方についても変化があった。昭和55 年にWHO(世界保健機関)が「国際障害分類(ICIDH: International Classification of Impairments,Disabilities and Handicaps)」を発表し,その中では疾病等に基づく個人の様々な状態をインペアメント,ディスアビリティ,ハンディキャップの概念を用いて分類した。インペアメントは,身体の機能損傷又は機能不全で,疾病等の結果もたらされたものであり,医療の対象となるものである。ディスアビリティは,インペアメントなどに基づいてもたらされた日常生活や学習上の種々の困難であって,教育によって改善し,又は克服することが期待されるものである。ハンディキャップは,インペアメントやディスアビリティによって,一般の人々との間に生ずる社会生活上の不利益であり,福祉施策等によって補うことが期待されるものである。  ICIDHについては,各方面から,疾病等に基づく状態のマイナス面のみを取り上げているとの指摘があった。そこで,WHO は検討を重ね,平成13年5月の総会において,従来のICIDH の改訂版として「国際生活機能分類(ICF:International Classification of Functioning, Disability and Health)」を採択した。  ICFでは,人間の生活機能は「心身機能・身体構造」,「活動」,「参加」の三つの要素で構成されており,それらの生活機能に支障がある状態を「障害」ととらえている。そして,生活機能と障害の状態は,健康状態や環境因子等と相互に影響し合うものと説明され,構成要素間の相互関係については,図3のように示されている。 図3 構成要素間の相互作用(概念図:具体例が入ったもの) (ICFの構成要素間の相互作用に具体例が入った図。このテキストデータでは省略する。) (2) 障害のとらえ方の変化と自立活動とのかかわり  従前の解説では,ICIDH の三つの概念を踏まえ,自立活動の指導によって改善し,又は克服することが期待されるのは,主としてディスアビリティ,すなわちインペアメントに基づく日常生活や学習上の困難であると考えてきた。それを,従前の学習指導要領等では「障害に基づく種々の困難」と示した。今回の改訂においては,学校教育法第72 条の改正を踏まえ,「障害に基づく種々の困難」を「障害による学習上又は生活上の困難」と改めた。  自立活動が指導の対象とする「障害による学習上又は生活上の困難」は,WHOにおいてICFが採択されたことにより,それとの関連でとらえることが必要である。つまり, 精神機能や視覚・聴覚などの「心身機能・身体構造」, 歩行やADL などの「活動」,趣味や地域活動などの「参加」といった生活機能との関連で「障害」を把握することが大切であるということである。そして,個人因子や環境因子等とのかかわりなども踏まえて,個々の幼児児童生徒の「学習上又は生活上の困難」を把握したり,その改善・克服を図るための指導の方向性や関係機関等との連携の在り方などを検討したりすることが,これまで以上に求められているのである。  ICFのこのような視点は,実は,自立活動の指導においても考慮されてきた点である。なぜなら,自立活動の内容は,人間としての基本的な行動を遂行するために必要な要素と,障害による学習上又は生活上の困難を改善・克服するために必要な要素を含むものだからである。「人間としての基本的な行動を遂行するために必要な要素」とは,例えば,食べること,視覚や聴覚を活用すること,歩くことなど,生活を営むために基本となる行動に関する要素であり,これらはICF で示している生活機能に当たるものと言える。後者の「障害による学習上又は生活上の困難を改善・克服するために必要な要素」とは,例えば,視覚障害ゆえの見えにくさを改善する方法を身に付けること,あるいは病気の進行を予防するための自己管理の仕方を学ぶことなどであり,ICF でも障害として示している状態を改善・克服するための要素である。したがって,自立活動の内容は,ICF で示されている「生活機能」と「障害」の双方の視点を含むものと言える。  また,自立活動の内容には,例えば,「障害による学習上又は生活上の困難を改善・克服する意欲に関すること。」,「姿勢保持と運動・動作の補助的手段の活用に関すること。」などがあり,ここには,「意欲」といった個人因子や「補助的手段の活用」といった環境因子に関する項目も示されている。  さらに,自立活動の内容は,個々の幼児児童生徒に必要な項目を選定し,相互に関連付けて指導されることになっており,具体的な指導内容を設定する際に項目相互の関連性が考慮されることになる。このように,自立活動の指導をする際には,生活機能の側面と障害による困難の側面とともに,それらと個人因子や環境因子等とのかかわりなども踏まえて,個々の幼児児童生徒の実態を把握し,具体的な指導内容を設定するのである。  つまり,自立活動の指導の対象としては,障害による学習上又は生活上の困難を挙げてきたが,その困難を改善・克服するための指導を考えるに当たっては,生活機能や環境因子等も既に考慮してきているのである。ICFの考え方が広く浸透しつつあることを踏まえ,今後の自立活動の指導においては,生活機能や障害,環境因子等をより的確に把握し,相互の関連性についても十分考慮することがこれまで以上に求められていると言えよう。  さて,ICF の考え方を念頭に置いて,自立活動の指導を考えるとどのようになるのであろうか。下肢にまひがあり,移動が困難な児童が,地域のある場所に外出をできるようにする指導を例に考えてみよう。まず,実態把握においては,本人のまひの状態や移動の困難にだけ目を向けるのでなく,移動手段の活用,周囲の環境の把握,コミュニケーションの状況などについて,実際に行っている状況や可能性を詳細に把握する。そして,このような生活機能と障害に加えて,本人の外出に対する意欲,習慣等や地域のバリアフリー環境,周囲の人の意識等を明らかにし,生活機能と障害に個人因子や環境因子がどのように関連しているのか検討する。このように実態を把握した上で,児童の自立を目指す観点から指導の目標を設定する。次に,目標を達成するために必要な指導内容を多面的な視点から検討するのであるが,その際,学習指導要領等に示された区分や項目を踏まえることが重要である。すなわち,移動を円滑に行う観点からだけでなく,心理的な安定,環境の把握,コミュニケーションなど様々な観点を踏まえて具体的な指導内容を設定し,実際の指導に当たることが求められるのである。ICFの考え方を踏まえるということは,障害による学習上又は生活上の困難を的確にとらえるとともに,幼児児童生徒が現在行っていることや,指導をすればできること,環境を整えればできることなどに一層目を向けるようになることを意味しているといえよう。  なお,自立活動の指導においては,次のような点に留意することが必要である。  ICFの特徴の一つは,環境因子等を適切に考慮する点にあるが,成長期にある幼児児童生徒の実態は様々に変化するので,それらを見極めながら環境を構成したり整えたりする必要がある。自立活動の指導においては,幼児児童生徒が障害による学習上又は生活上の困難を改善・克服するために必要な知識・技能等を身に付けることが目標となる。したがって,それにつながるように個々の幼児児童生徒の実態に応じて環境を整えつつ,指導内容・方法の創意工夫に努め,幼児児童生徒の自立と社会参加の質の向上につながる指導を進めることが大切である。