第13回差別禁止部会 (H24.2.10) 委員提出資料 池原委員、大谷委員、竹下委員提出資料 「障がいを理由とする差別を禁止する法律」日弁連法案概要 2007年3月 情報 第1 総則 ※総則で「適切な情報伝達方法」を定義 6 情報伝達方法の保障 障がいのある人は、あらゆる生活の場において、手話若しくは点字、手話通訳者、要約筆記、指文字、触手話、指点字、手書き文字その他の方法による通訳、拡大文字、音声サービス、文字情報サービス、写真・図画、ひらがな及び平易な表現による表記その他の自ら選択する適切な情報伝達方法(以下「適切な情報伝達方法」という。)を用いて生活を営む権利を有するものとする。 第6 情報 ※情報各論では、合理的配慮の義務主体を特定 1 情報を受領し、利用する権利 何人も、障がいを理由として、いかなる差別を受けることなく、自らが選択する情報伝達方法により、あらゆる種類の情報の提供を受け、これを利用する権利を有し、その機会を保障されるものとする。 2 合理的配慮義務 (1) 国及び地方公共団体は、次の義務を負う。 @ 適切な情報伝達方法を使用して、公共的サービスを広報し、社会保障制度等を周知すること。 A 適切な情報伝達方法を使用して、自然災害に関する情報を周知すること。 B 障がいのある人の情報の利用を確保するために必要な情報処理機器、電気通信設備及び情報サービスに関する基準(以下「情報円滑化基準」という。)に適合する措置を講じること。 C その他、障がいのある人の情報を受領し、利用する権利を実質的に保障するために必要な合理的配慮を行うこと。 (2)@ テレビジョン放送事業者は、放送番組に、字幕放送、手話放送、文字放送、音声解説放送その他の情報伝達方法による放送を付する義務を負う。 A @に関する基準は、障がいのある人の権利委員会が別に規則で定めるものとする。 (3) 電気通信事業者及び特定電気通信役務提供者は、高度情報ネットワークを利用して情報及びサービスを提供するにあたり、情報円滑化基準に従う義務を負う。 (4) テレビジョン放送受信装置の製造業者は、その製造する製品に、(2)の各放送の受信が可能な装置を内蔵させる義務を負う。 (5) 情報処理機器・電気通信設備の製造業者は、製品の製造にあたり、情報円滑化基準に従う義務を負う。 (6) 情報円滑化基準は、障がいのある人の権利委員会が別に規則で定めるものとする。 3 差別の定義 情報に関する差別とは、次に掲げるものをいうものとする。 (1) 事業として不特定又は多数の者に対して情報の提供又は発信を行う者が、障がいを理由として、情報の提供又は発信について不利益な取扱いを行うこと。 (2) 2(1)から(5)の者が前条記載の合理的配慮義務に違反すること。 4 適用除外 (1) 3は、@技術的に著しい困難がある場合、Aテレビジョン放送事業者において著作権者の許諾を得ることに著しい困難がある場合は、適用しない。 (2) 3(2)は、各々の者において、著しい困難又は出費がある場合は、適用しない。 (3) (1)(2)に規定する事由の具体的内容は、障がいのある人の権利委員会が別に規則で定めるものとする。 (4) 「著しい困難又は出費」の有無は、第3、4(4)と同じものとする。 5 差別の推定 事業として不特定又は多数の者に対して情報の提供又は発信を行う者が、情報の提供又は発信に関し、障がいのある人をそうでない人と比較して不利益に取り扱ったときは、当該行為は障がいを理由として行われたものと推定するものとする。 6 国及び地方公共団体の責務 国及び地方公共団体は、適切な情報伝達方法の無償利用制度を整備し、2(2)ないし(5)の者が合理的配慮義務を履行することができるように必要な施策を講じ、また、障がいのある人の情報処理機器及び電気通信設備の利用を支援するための必要な施策を講じるものとする。 第7 サービス ※教育、労働、サービス、医療等、全ての各論の合理的配慮義務の中で情報保障が規定される。 2 合理的配慮義務 サービス提供者は、次に掲げる行為を行う義務を負う。 (1) サービスを提供するにあたり、障がいのある人がサービスを利用することを容易にするため、適切な情報伝達方法を使用すること。 (2) 障がいのある人がサービスの内容を理解するために必要とする補助者の付添いを承諾すること。 (3) サービスを提供するにあたり、障がいのある人がサービスを利用することを容易にするための補助機器及び人的援助を提供すること。 (4) サービスの提供に関する運用、方針又は手続が障がいのある人に対して相当の不利益を及ぼしている場合において、その不利益を除去するための施策を講じること。 (5) その他、障がいのある人のサービスを受ける権利を実質的に保障するために必要な合理的配慮を行うこと。 「障がいを理由とする差別を禁止する法律」日弁連法案概要 2007年3月 教育 第2 教育 1 教育を受ける権利 (1) 何人も、障がいを理由として、いかなる差別を受けることなく、教育を受ける権利を有し、機会を保障されるものとする。 (2) 障がいのある人は、あらゆる段階において、共生教育を受ける権利を有するものとする。 この法律において「共生教育」とは、自己の住む地域社会において他の者との平等を基礎として、合理的配慮及び必要な支援を受けながら同一世代の者たちと共に学ぶ教育をいうものとする。 (3) 障がいのある人は、障がいを理由に普通教育から排除されない権利を有するものとする。 (4) 聴覚に障がいのある人は、手話を習得し使用できるようになる教育を受ける権利及び手話を用いた教育を受ける権利を有するものとする。 2 合理的配慮義務 国、地方公共団体及び学校法人その他の教育にかかわる団体及び個人(以下「教育機関」という。)は、次の義務を負う。 (1) 適切な情報伝達方法を用いて教育をすること。 (2) 利用可能な物理的環境を提供すること。 (3) 必要な人員を配置すること。 (4) その他、障がいのある人が教育に完全に参加し、教育を受ける権利を実質的に保障するために必要な合理的配慮を行うこと。 3 差別の定義 教育における差別とは、次の各号に掲げるものをいうものとする。 (1) 障がいを理由として、教育の機会を剥奪もしくは制限し、又は教育の機会について不利益な取扱いを行うこと。 (2) 障がいを理由として、自己の住む地域社会の普通教育から排除すること。 (3) 2の合理的配慮義務に違反すること。 4 差別の推定 教育機関が、教育に関し、障がいのある人をそうでない人と比較して不利益に取り扱ったときは、当該行為は障がいを理由として行われたものと推定するものとする。 5 普通教育を受ける権利 (1) 何人も、自己の住む地域社会の小学校及び中学校において普通教育を受ける権利を有するものとする。 (2) 国、地方公共団体及び学校法人は、障がいのある子が小学校及び中学校の普通教育に完全に参加するために、2に規定する合理的配慮に加え、通学手段の保障及び学級人数の調整その他の合理的配慮をしなければならない。 6 必要な支援 (1) 教育機関は、障がいのある人に対して効果的な教育を保障するために、普通教育において、必要な支援を提供しなければならず、その支援は、次の点に留意して行われなければならない。 @ 障がいのある人が同一世代の人たちと共に学ぶことを阻害せず、分離的な効果を生まないこと。 A 障がいのない人が負う以上の負担を課さないこと。 (2)@ 国及び地方公共団体は、未だ小学校及び中学校において(1)に規定する必要な支援を十分に実現できないときは、障がいのある子の保護者の選択により、同一世代の子どもたちと分離された場における効果的な支援を伴う教育(以下「特別支援教育」という。)を提供することができるものとする。 A 特別支援教育は、次の条件を満たすものでなければならない。 イ 共生教育への移行という目標に合致したものであること。 ロ 学業面の発達を最大にする環境で、普通教育で提供される教育と同一の基準及び趣旨が維持されていること。 ハ 社会性の発達を最大にする環境が保障されていること。 B 国、地方公共団体及び学校法人は、Aの条件に合致させる範囲で、特別支援教育を目的とする特別支援学校を設置し、又は小学校及び中学校に特別支援教室を設置できるものとする。 C 6の規定によっても、国及び地方公共団体は合理的配慮及び必要な支援を小学校及び中学校において充足させる義務を免れるものではない。 7 教育選択権 (1) 障がいのある子の保護者は、小学校及び中学校での支援が未だ不十分であると判断したときは、特別支援教育を選択することができるものとする。 (2) 国、地方公共団体及び学校法人は、障がいのある子の保護者に対し、(1)の選択を行うために必要な情報を提供しなければならない。 (3) 障がいのある子の保護者はいつでも(1)の選択を変更することができるものとする。 (4) 障がいのある子は、その保護者が(1)の選択又は(3)の変更を行うに際し、自己の意見を表明する権利を有するものとする。この場合において、障がいのある子の意見は、その年齢及び成熟度に従って相応に考慮されなければならない。 (5) (1)の選択又は(3)の変更に関し、障がいのある子とその保護者との間で意見を異にするときは、障がいのある子又はその保護者は12に規定する共生教育推進委員会に意見の調整を求めることができるものとする。 8 高等教育等を受ける権利 (1) 障がいのある人は、高等学校、大学、高等専門学校及び専修学校その他の教育機関において、教育を受ける権利を有するものとする。 (2) (1)の教育機関は、入学選抜試験の実施にあたり、その本質に反しない限り、適切な情報伝達方法、試験時間の延長、介助又は物理的環境の整備などの合理的な配慮をしなければならない。 (3) (1)の教育機関は、障がいのある人が同項の教育に完全に参加するために、2に規定する合理的配慮をしなければならない。 (4) (1)の教育機関は、学生の定員、応募者の状況、教育機関及び教育課程の性格等を総合考慮し、あらゆる障がいのある人が同項における教育を受ける権利を享受するため入学の機会を増大させるための特別な措置を講じるよう努めるものとする。この場合の特別措置は差別と解してはならない。 (5) 6及び7の規定は、その性質に反しない限り、(1)の教育機関にこれを準用するものとする。 9 教員養成等の義務 国及び地方公共団体は、共生教育を実現するために、次の義務を負う。 (1) 適切な情報伝達方法についての適格性を有する教員(障がいのある教員を含む。)を雇用するための適当な措置をとること。 (2) 教育のすべての段階において、教育に従事する教員、介助員その他の職員に対する研修及び訓練を行うために適当な措置をとること。この場合の研修及び訓練は、障がいに対する理解、障がいのある人との情報伝達方法の習得並びに障がいのある人を支援するための教育技法及び教材の使用を組み入れたものでなければならないものとする。 10 早期の支援及び技能習得 (1) 障がいのある人は、地域社会の構成員として教育に完全かつ平等に参加することを容易にするために、できるだけ早期の段階から必要な支援を受け、生活技能及び社会性の発達技能を習得する権利を有するものとする。 (2) (1)の権利を実現するために、国及び地方公共団体は、次に掲げる措置をとらなければならない。 @ 手話の習得及びろう社会の言語的な同一性の促進を容易にすること。 A 点字その他の情報伝達方法の習得を容易にすること。 B 歩行技能の習得を容易にすること。 C その他、障がいのある人が必要とする支援を提供すること。 11 生涯教育等 (1) 障がいのある人は、就学前教育・保育、放課後の学童保育、地域社会における社会教育、就学後の職業教育及び手話若しくは点字その他の情報伝達方法の学習その他の生涯教育を受ける権利を有するものとする。 (2) 国及び地方公共団体は、(1)の生涯教育の重要性に鑑み、これらの条件整備を積極的に行わなければならない。 12 共生教育推進委員会 (1) 都道府県は、障がいのある人に対し、障がいを理由として、いかなる差別を受けることなく、共生教育を受ける権利を保障するために、共生教育推進委員会を設置しなければならない。 (2) 共生教育推進委員会は、障がいのある人及び共生教育に理解のある者によって構成されなければならない。 (3) 共生教育推進委員会は、共生教育への移行及び推進について、各地域の特性に応じた計画を策定しなければならない。 (4) 地方公共団体は、(3)の計画を効果的に推進しなければならない。 (5) 共生教育推進委員会は、共生教育が円滑に実施されるよう、障がいのある人及び障がいのある子の保護者並びに教育機関に対して、情報の提供、相談、関係機関との連絡調整及び当事者間の意見の調整その他の援助を行うものとする。