第13回差別禁止部会 (H24.2.10) 大谷恭子委員 提出資料 学校教育における差別体験 障害者権利条約批准・インクルーシブ教育推進ネットワーク 1.事例募集の時期と方法 ・募集時期:2011年11月9日〜2011年12月16日まで ・メール及び郵送、ファックスで、事例を送付してくれるよう、障害者権利条約批准・インクルーシブ教育推進ネットワーク事務局より、複数のメーリングリスト等で呼びかけ、事例の募集を呼びかけた。 2.事例の整理について 集まった事例の総数は、211件であった。すべての事例を読み込み、それらを4つの類型に分類する作業を行った。4つの類型は、次のとおり。 【学校教育における差別の4つの類型】 ・就学先の決定にかかわる差別−64件 ・障害に基づく異別取り扱い−66件 ・合理的配慮の欠如−101件 ・虐待及びハラスメント−39件 なお、保護者の意向尊重の欠如については、すべての事例に該当する。 (*上記件数は、重複あり) 受付総数 211件 3.事例紹介 ここでは、事例の一部を紹介する。 (1)就学先の決定にかかわる差別(事例の先頭の番号は、整理番号を示す。) No.15 私立幼稚園 知的障害 入園を希望したが、断られた。 No.23 私立幼稚園 知的障害 知的障害があることを伝えると、専門の施設に行った方がよいと言われ、申込用紙さへもらえなかった。他に10か所まわったが、同じだった。 No.32 就学前 知的障害 学務課から、地域の小学校(特別支援学級)に入学したければ必ず保護者が付き添うこと。それが確約できなければ入学を許可することはできないと言われた。 No.16 小学校就学前 人工呼吸器利用 幼稚園、保育園に通いたいが、拒否されている。 No.14 小学校就学前 知的障害 療育機関、児童相談所の人は、普通学級で学ぶ障害児について、「いじめられる」、「世話をしてもらえない」とマイナスイメージのことしか言わなかった。 No.4 小学校普通学級 肢体不自由・人工呼吸器利用 市教委との合意では、介助員確保のために特別支援学級に在籍するものの、普通学級で全日過ごすことになっていたが、校長から障害児学級で過ごすように説得された。 No.22 小学校普通学級 知的障害 普通学級への就学を希望していたが、教育委員会は、特別支援学級に行くように3カ月にわたり説得を続けた。 No.28 小学校普通学級 肢体不自由 「学校は平等に生徒を扱う。特別なことはできない」。「担任は29人(他の児童)のことがあるから、特別なことはできない」と言われた。 No.30 小学校普通学級 知的障害 就学時健康診断で、「就学相談を受けていない子どもは我が校で受けいれることはできない」と言われた。受け入れたくないという意思を感じた。 No.26 小学校特別支援学級 知的障害 普通学級を希望したところ、補助教員の配置があったが、手が足りないと断られた。特別支援学級になったが、親の付き添いを強要され、不平不満を一切言わないことを約束させられた。 No.27 小学校特別支援学級 人工呼吸器利用 地域の学校への入学を希望したが、なかなか認められなかった。「法律で決まっている基準から外れているのに、親の強い希望で入学した」と親の付き添いを求められている。 No.33 小学校普通学級 知的障害 「親の付き添いが大変ならば、特別支援学校へ行ってください」と市教委に言われた。 No.36 小学校普通学級 知的障害 教育委員会から、何度も、特別支援学級へと勧められた。小学校入学後、小学校6年の現在まで、この説得が続いている。 No.38 小学校普通学級 知的障害 普通学級への入学を希望した。就学通知が出ていたが、校長から親の付き添いを求められ、できないならば特別支援学校を勧められた。市教委に相談したが、校長がそう言うなら特別支援学校だと言われた。 No.37 中学校普通学級 知的障害 小学校まで普通学級だった。中学入学前に(中学校の)校長に挨拶に行った時に、介助が必要ではないのに、親が付き添わなければ特別支援学級と言われた。 No.24 中学校特別支援学級 知的障害 担任は、高校受験の情報をくれず、手続きもしてくれなかった。卒業後は、すぐに作業所に行った方が良いと進路指導された。 ○特に、転籍、転学を勧められた例 No.25 小学校普通学級 知的障害 毎日、学校は親が付き添うように求められた。「付き添いがなければ、出席停止にする」、「支援が欲しければ特別支援学級へ」と言われた。執拗な就学指導に耐えられず、特別支援学級に転籍した。 No.21 小学校普通学級 肢体不自由 介助員が配置され、エレベーターがある学校にもかかわらず、校長は、特別支援学校に行けと転校を勧めてくる。 No.1 小学校普通学級 広汎性発達障害(知的障害) 何度も呼び出され、特別支援学級学級への転籍を求められた。 No.3 小学校普通学級 校長を含む教員から、「他の子どもに迷惑」「学校は普通の子が通うところだ」と普通学級にいることを否定され、追い出しをかけられた。 No.5 小学校普通学級 知的障害 入学後数カ月経過した後、校長や他の教員から「他の子どもに迷惑」と言われ続け、子どもを学校に通わせることができなくなった。 NO.6 小学校普通学級 知的障害 担任から、特殊学級に行くべきだと言われ続けられ、他の子どもとは異なる扱いを受け続け転籍することになってしまった。 No.7 小学校普通学級 知的障害 子どもに対する担任の対応が不適切であるにもかかわらず、「落ち着かない」「特別支援学級に行きたがる」と言い、特別支援学級への転籍を勧める。 No.9 小学校普通学級 知的障害 担任から「ここにいるのは本人のためになっていない」、支援員から「できもしないのにみんなと同じことをやりたがって困る」と言われ続けた。 No.10 小学校普通学級 知的障害 校長から、「学校は勉強するところだから、いるだけでは卒業証書をあげられない」と言われた。 No.11 小学校普通学級 知的障害 担任が、発達検査の結果について「3.8歳だ」と常に子どもに言い、毎日、子どものできないことを何ページも連絡帳に書き続け、特別支援学級を勧めてきた。 No.12 小学校普通学級 口唇口蓋裂 教師から、「このような子どもはたいていバカだから言葉の学校へ行け」と言われた。 No.13 小学校普通学級 知的障害 担任が連絡帳に、食事の食べ方が汚い等、できないことを書き続けられた。席替えから子どもだけ外され、特別支援学級に移るように言われ続けた。 No.17 小学校普通学級 知的障害 担任から「学習についていけなければ、特別支援学級へ」と言われている。 No.18 小学校普通学級 知的障害 校長、担任から、「学習が遅れているため、中学校は無理」と言われた。「別の学校で、個別指導が必要だ」とも、言われた。 No.19 小学校特別支援学級 知的障害 給食や掃除の時間だけでも、親学級(普通学級)に参加したいと言ったが、受け入れてもらえなかった。 No.20 小学校特別支援学級 肢体不自由 病欠した際に教師が家庭訪問し、訪問教育を勧められた。 No.29 小学校普通学級 知的障害 「(子どもの)行くところは別にあるのでは」と校長から本を渡され読まされた。 No.31 小学校普通学級 知的障害 子どもがいると「『勉強できない』、『給食も食べられない』と訴える子どもたちがいる」と担任から言われた。 No.34 小学校普通学級 肢体不自由 「この子にとって小学校は過酷すぎる。特別支援学校へ行くべき」。「親が協力しないと学校はだめ」だと言われた。担任は、支援員にまかせきりで子どもを相手にしない。体育も支援員と二人ですごしている。 No.35 小学校普通学級 知的障害 知的障害のある子どもは通常級に入ると自己肯定感が低下すると言われた。通常級に行く場合は支援はない、支援級に行くのが支援であり、それ以外の支援はないと言われた。 No.8 中学普通学級 知的障害 担任から、「勉強が難しくなる」、教室移動が多くなる」、「学校が荒れている」から、特別支援学級に行けと言われ続けた。 No.2 県立高校普通科 知的障害 高校教員に「あなたはここに来る子ではないんだよね。養護学校に行く子なんだよね」とささやき続けられた。 (2)障害に基づく異別取り扱い No.3 小学校普通学級 知的障害 みんなに配るプリント教材を子どもには配らず、周りの子どもたちもおかしいという気持ちを募らせた。 No.4 中学校支援学級 知的障害 入学式の名前のリストの所に、支援学級の人の名前がなかった。 No.5 小学校普通学級 知的障害 軽度の知的な遅れがあるが、それまで級友と同じように過ごしていた。小4になって、娘だけ皆と違う内容の学習課題が与えられ、学級の仕事や係、部活動決め等、制約を受け、本人も不満をもち、級友にも特別な子という意識をもたれ、壁ができてしまった。 No.6 小学校普通学級 知的障害 物を握れるようになることが課題だと、授業中に、書見台にリボンをたくさんはりつけてひっぱらせ、ぬいぐるみを握らせている。 No.7 小学校普通学級 知的障害 算数の時間、席順で前に出て黒板に答えを書く時、障害のある子の順番を何も言わずにとばした。 No.8 小学校普通学級 知的障害 「抱っこすると死ぬ」と校長が親に言い、ほとんどの教員は、抱くことを6年間拒否した。 No.9 小学校普通学級 知的障害 担任は一切子ども(障害児)には関わらず、ほとんど声もかけず、保護者面談で、「私には33人のこどもがいますので、あなたのお子さんには関わりません」と言われ、親の付き添いが強要された。 No.10 小学校普通学級 肢体不自由 秋にある移動教室に保護者が付き添わなければ連れて行かないと言われた。 No.11 小学校普通学級 知的障害 宿泊学習当日、一人だけバスに乗せてもらえず、学校に置き去りされた。 No.12 小学校普通学級 知的障害 保護者に対して、ずっと付き添うのは大変だから現地に直接連れてきてもらえばいいと言われた。 No.13 小学校普通学級 知的障害 親が付き添わない限り、プール授業は見学させられた。「親も入るから、ほんの少しでも一緒に介助して欲しい」と言ったが、「指一本たりとも介助しない」と校長に言われた。 No.14 小学校普通学級 知的障害 水分、食事の介助はできないので、保護者の付き添いがなければ参加できない。 No.15 小学校普通学級 知的障害 車いすがバスにのらないので、車での移動を要請され、車いすは折り畳みができるのでカーシートを頼んだが、それもバス会社との契約にないと断られた。 No.16 小学校普通学級 肢体不自由 学校行事「いもほり」にスクールサポーターが午後から不在になるため参加させてもらえず、午前中は特別支援クラスで過ごし、午後は帰宅させられた。同じ学年のみんなが一斉にバスで出かける姿を見て、息子は泣いていた。 No.17 小学校普通学級 肢体不自由 親の付き添いなしで社会科見学に連れていくことはできないと、特別支援学級の担任から言われる。息子には加配も付いているにもかかわらず、教員の急な出張で、手が足りない等と、計画的確信犯である。 No.18 中学校普通学級 肢体不自由 親の付き添い無しでは「就学旅行に連れて行かない」と言われる。小学校では付き添っていたが中学に入ってからも要求され、もう付き添わないことにした。 No.19 小学校普通学級 肢体不自由 普通学級の生徒と一緒にプールに入れてほしいと要望したところ、安全性を理由に断られ、特別支援学級の子と一緒に授業時にプール指導するがプールには入れないので、親の方でプールサイドにベビープールを購入して準備するように言われた。 No.22 小学校普通学級 肢体不自由 プールはオムツをしているから入れない。特別支援学校でプールでウンチをした人がいる例を引かれ、1年生の時はプールに入れなかった。 No.23 小学校普通学級 肢体不自由 運動会には、日曜日は支援員がつかないから親が付き添うことを条件にされ、玉入れは玉があたると危ない、ダンスは車イスに他の子がぶつかると危ない、と競技参加を拒否された。 No.24 中学校普通学級 知的障害 登校時間を他の生徒より30分遅く、下校時間を30分早くに決められ、親の付き添いなしに登校は許されない。スクールサポーターが午後からいなくなるため、水曜日の午後は、給食後すぐに帰宅させられていた。水曜日の午後、卒業生をまじえてのティータイムに参加できず、「Hくん、かわいそう」という子どもたちの言葉に、他の保護者がびっくりして教えてくれた。 No.25 中学校普通学級 知的障害 職場体験はみんなは4日間なのに息子は2日間だけだった。残りの2日間は自宅待機にされた。 No.26 小学校普通学級 肢体不自由 小学校の教師が、本人に確認することなく、音楽の時間に笛を演奏させなかった。 No.27 小学校支援学級 肢体不自由 教室に入る時に、ブルーシートを引いてから入らされる。 No.28 小学校支援学級 肢体不自由 体育館の出入りは、スロープがある出入り口を使うため、遅れてしまうが、交流学級の担任が待ってくれなかった。 No.29 小学校支援学級 肢体不自由 体育の授業で、車いすを使っている児童は別メニュー。サッカーをしているとき校庭端で歩行訓練。 No.30 小学校普通学級 知的障害 卒業式 一人だけ 校長室でしませんかと担任から言われた。 No.31 中学校普通学級 知的障害 職場体験学習の時、他の子は学校が体験先を手配しているのに、うちの子だけ、お母さんが探してくださいと言われた。 No.32 小学校普通学級 肢体不自由 修学旅行の際、荷物を宅配便で送るように求められた。他の子はお小遣いが3500円なのに、買い物が難しいので1000円にしてくれと言われた。 No.33 中学校普通学級 知的障害 高校受験の二次募集で、16人募集のところ、たった一人の受験者であったにも関わらず、定員内不合格とされた。 No.34 小学校普通学級 知的障害 学力テストの時、別室で自習するように言われ、受けられなかった。テスト用紙が欲しいと申し出たが、うちの子の分はないと言われた。 No.35 小学校普通学級 知的障害 授業を受けているにもかかわらず、通知表の評定欄が白紙だった。 No.36 中学校普通学級 肢体不自由 体育祭の競技に一つも参加させてもらえなかった。 No.37 小学校普通学級 知的障害 食事をこぼすことを理由に、給食のグループから外される。 No.38 小学校特別支援学級 肢体不自由 特別支援学級の児童も参加していた、交流学級のお楽しみ会に参加させてもらえなかった。 No.1 中学校普通学級 知的障害 他の部員がまだ練習しているのにもかかわらず、「君はここまで」と帰宅させられることが続いた。 No.2 中学校支援学級 知的障害 特別支援学級に在籍する息子(中学1年〜中学2年前半まで)が、分離教育と特殊教育に拒否反応を示したので、市にハートフルスペース(適応指導教室)に行かせてほしいと頼んだが、支援級の担任や市教委の不登校対応担当に「支援が2つ重なるので、支援学級、支援学校在籍の場合は、ハートフルスペースを利用する権利が無い」と言われた。 No.39 中学校普通学級 知的障害 登校時間前に学校に来られると困るので、登校時間を8時30分と指定された。 No.40 小学校特別支援学級 知的障害 排泄がしっかりできていないので、プールに入れてもらえず、たらいのようなところで、水浴びをさせられた。 No.41 中学校普通学級 知的障害 試験を受けると平均点が下がり、他の子の受験が不利になるので、試験は受けないでほしいと言われた。 (3)合理的配慮の欠如 No.1 小学校普通学級 肢体不自由 中学校に訪問した際、玄関で「ここにスロープがあるといいね」と言ったところ、中学校の教員から「金出せばつけてやるわ!」と乱暴に言われた。 No.2 小学校普通学級、肢体不自由 中学校入学前にあいさつに行ったら、教頭から校外学習やプール、行事への親の付き添いを求められた。「介助ボランティアが必要なら親が見つけてください」と当然のように言われた。小学校ではすべて学校が介助をつけていた。 No.3 中学校普通学級 肢体不自由 校長から「(教育委員会が手配する)宿泊学習用の加配の人のほかに学校でもう一人手配するので、その費用を出してほしい」と言われた。 No.4 小学校普通学級 知的障害 夏の野外活動について、「保護者の付添がなければ安全確保ができないので参加が難しい」。「障害児学級ならば介助員がつくので替わったら」と言われた。 No.5 小学校普通学級 肢体不自由 「プールは危険なので親の付添が条件です」と言われた。「親が付き添いできないときは見学のみ」と言われプールを楽しみにしているわが子を見ると付き添うしかなかった。 No.6 高等学校 知的障害 飛行機内で何かあったら困るという理由で修学旅行に親の付添を求められ、付添にかかる交通費、宿泊費を負担するように言われた。小学校・中学校では一度も言われたことがなかった。 No.7 小学校 医療的ケア 校長が安全性のためと二階以上への移動を禁止した。階上にある図書館やパソコン室に行くことができず、週一回の図書館に行く授業時間は誰もいないクラスで一人で過ごした。 No.8 中学校普通学級 肢体不自由 母親の体調が悪い時に友達と登校したところ、事故のときの責任問題があるので、友達だけで登校させないでほしいと教員から言われた。小学校の時は友達と登校していた。 No.9 小学校 肢体不自由 保護者の付添がないと、クラブ活動に参加できないといわれた。運動会も危ないという理由で競技に参加できなかった。体育は別プログラムをされ、参加していないという理由なのか評価が「1」だった。介助者が休みの時には保護者に来てくれと言われた。修学旅行に付添をお願いされた。 No.10 小学校特別支援学級 知的障害 修学旅行に際して、親が下見をするよういわれ、付添も求められた。 No.11 高校生 肢体不自由 調理室へはエレベーターが使えないので保健室で過ごすように言われた。本人がいやがっているのに母親に車いすでの移動を手伝うようにと言われた。 No.12 小学校普通学級 肢体不自由 宿泊学習で定員がいっぱいだという理由でクラスの子とは別のワゴン車に乗せられた。教育委員会から派遣された介助者は初めての人で子どものことををよく知らない。 No.13 中学校普通学級 肢体不自由 修学旅行で保護者の付き添いを説得された。授業中に担任に別室に連れ出され、支援員と保護者で修学旅行に付き添うことを保護者に伝えるために、ノートに書けと言われた。「電車に乗れないかもしれないから、その場合はタクシーで追いかけること」「エレベーターに乗るときに車いすを押す人とボタンを押す人がいないとドアが閉まるから」「夜は支援員と別の部屋で保護者と寝なさい」と書かれていた。 No.14 小学校 知的障害 遠足に親の付添を求められたときに拒否したら、当日一人だけ置いて行かれた。 No.15 小学校特別支援学級 医療的ケア 社会見学にリフトバスを使用することが決まった時に、学年の教員全員が、普通学級の児童が費用負担をするのはおかしい、クラスの一部の生徒が別のバスに乗らないといけなくなるなどの理由で反対をした。 No.16 中学校普通学級 知的障害 「社会の時間はみなと同じことをするのではなく、将来のために枠の中に書く練習をしたほうがよい」と言われた。これはクラスを授業から外すことで子どもにとっては屈辱である。 No.17 高等学校 肢体不自由 車いす用トイレがないので洋式トイレにドアを開けたまま車いすから移乗せざるを得ず、他の生徒が使用できないため、「他の生徒が使用し終わった後に使用するように」と言われた。そのため休憩時間内に使用することができず、授業開始に間に合わなくなった。 No.18 中学校普通学級 肢体不自由 階段昇降機を利用していて危険であるのでエレベーターを使用させてほしいとたのんだが、校長が「車いすを使っている生徒がエレベーターを使ってはいけない」といった。 No.19 中学校普通学級 肢体不自由 校外学習に支援員の費用を出してほしいと教育委員会に行ったとき、「普通ではないんだから」と繰り返し言われた。子どもが頭を下げ続けていた。 No.20 小学校 医療的ケア 登下校時に坂道を親だけでは車いすを押せないので、同級生や上級生が手伝ってくれたところ、親だけで押すように教員に言われた。校長が職員に「一切手出しをしてはならない。誰かが手伝うと手伝わない人が悪者になる」という指示をしていた。 No.21 小学校普通学級 肢体不自由 普通学級の授業の中で工夫をして参加させてほしいとお願いしたら「では何もしなくてもいいのですね、なにも手伝いません。みんなには手伝っていませんから。」と障害のない子とまったく同じにし、必要な手伝いも配慮もしないといわれた。 No.22 小学校普通学級 知的障害 クラスメイトが車いすの子どもに手を貸そうとすると、担任が「人のことをかまうより自分のことをしなさい」と言って静止する。そのため子どもは車いすを押してもらえずに教室移動のときに一人っきりでクラスに取り残された。 No.23 小学校普通学級 知的障害 修学旅行の際に呼び出され、「保護者の引率は可能か」「歩くペースが遅いので他の児童と別行動をとるかもしれないがいいか?」と聞かれた。拒否すると障害児学級への移籍をことあるごとに要求される。 No.24 小学校特別支援学級 医療的ケア 特別支援学級の子どもが一人減ったところ、介助員が半分に減らされた。(6人→3人) No.25 小学校 知的障害 修学旅行の際、全員が負担する参加費用以外に、障害のある子の親だけに同行する介助員にかかる費用を求められ支払った。 No.26 小学校特別支援学級 医療的ケア 校長に、「校内は仕方ないが、校外では親が車いすを押せ、何かあった時に介助員がどう責任を取るんだ」と言われた。 No.27 小学校普通学級 肢体不自由 校長に「介助員は体に触れる介助はできない」と言われおんぶしてもらえない。子どもは15分ぐらいかけて階段を一段一段這って降りているのを介助員が見ている。移動教室に間に合 わないが担任からは仕方ないと言われる。体育の授業が着替えだけで授業が終わる。鉛筆や消しゴムが落ちても拾ってくれない。自分でできるようにすることが大事と言われ拒否される。養護学校に移ったほうがよいと校長には何べんも言われている。 No.28 中学校普通学級 肢体不自由 学校に配慮を要求しても取り合わないので市教委に申し入れをし、市教委が訪問したが、「配慮していないわけではない」と校長は回答。直らないので再度市教委に行くと「学校に直接言ってください」と言われた。就学指導委員会のときに提出した「配慮必要」と書いた書類を見せると、校長は「裁判で負けるな」とあわてた。 No.29 中学校通常学級 肢体不自由 介助者とうまくいかず不安で学校に行けない状況になった。介助者の変更を求めたが、契約があるからと変更してもらえなかった。だれのための介助者かという思いだった。車いすの押し方の研修等をしたが、設備の整っている養護学校で行ったため、普通学校では役に立たないものであった。 No.30 普通学級 肢体不自由 エレベーターもあるし身辺自立もしているのに、介助員のいない週3日は保護者の付添を強要された。校長と話し合いボランティアの付添でもいいことになったが、親が探すようにと言われた。教員から、校長に「ボランティア探しに一切協力するなとくぎを刺されたので協力できなくなった」と言われた。 No.31 小学校 肢体不自由 遠足に介助員が同行するのに、保護者にも同行を強要された。 No.32 小学校普通学級 知的障害 排泄は自立していたが、洋式トイレしか使えないため、学校で何度かおもらしをしたら、おむつをさせられるようになった。 (4)虐待及びハラスメント No.1 小学校特別支援学級 知的障害 一人で食事をすることはできるが、「給食の時間、担任が好き嫌いしてはだめだ。飲み込む訓練だ」と言って、吐き出したものを無理やりまた子どもの口に入れた。 No.2 私立保育園 発達障害 担任教師が、自分の思うような絵を描かないと怒り、コンクリート製のベランダに子どもを正座させた。 No.3 特別支援学校高等部 知的障害 通学バスの添乗の教員に知的障害のある女生徒が胸を触られた。やめてと言っても触られ続けた。親が校長に連絡したが、無視され、謝罪がなかった。子どもは不登校になり退学した。子どもは、「本当は普通の高校へ行きたかった」と何度も言っている。 No.4 特別支援学校高等部 肢体不自由 先生が「訓練します」と言って、女生徒の胸や体を撫でまわした。嫌がっても逃げられないでいるのを目撃した他の生徒がやめるように言ったが、教師は、「てめえ、そんなこと告げ口したらぶっ殺すぞ」と胸ぐらをつかまれて車椅子ごと倒されそうになった。 No.5 特別支援学校高等部 知的障害 教員が生徒に対して、「さっさとしろ」と言って蹴っていた。たまたま学校にいた保護者が目撃し、発覚した。 No.6 小学校特別支援学級 知的障害 カッターを使う授業の時、指を切って出血した。教師は「痛いって言えるかな」と言って、手当をしないでそのままにしていた。後に親に、「『痛い』という力をつけるために言うのを待ってあげました」と得意そうに話していた。 No.7 小学校特別支援学級 知的障害 2月の寒い日だったが、子どもが水遊びを始めたが、教師は、そのまま2 時間水遊びをさせておいた。子どもは肺炎になった。 No.8 小学校普通学級 知的障害 担任と校長から「落ちつきがない。薬を飲ませるように」と言われ受診し、薬を飲み始めた。副作用があり、やめたいと相談したが、校長からは、「薬はやめないように。特別支援学級の子はみんな飲んでいる」と強く言われた。 No.9 小学校普通学級 肢体不自由 介助員から訓練だと言われ、100枚もの宿題を毎日出された(他の子は1枚だけ)。担任、介助員からもトイレも食事も介助してもらえず、放置された。担任は「特別支援学校へ行くように」と言った。 No.10 小学校普通学級 知的障害 校長、副校長、担任が、給食の時間にチョークの粉を入れた給食を子どもに食べさせた。保護者が教育委員会へ苦情を言ったが、何も対応しなかった。 No.11 小学校普通学級 発達障害 リタリンを服用しないことを学校に伝えたら、「何の病気だ」「なぜ、薬を飲まない」「薬を飲まないから教師に負担をかける」と責められた。 No.12 小学校特別支援学級 知的障害 宿泊学習の時に、異性に先生と同室にされ、一睡もできなかった。説明を求めると、「特別支援学級は同室にすることはざらにある」と校長らに言われた。 No.13 小学校 肢体不自由 卒業式の練習の時に、教室に戻る際に階段の上に置き去りにされた。20分間、寒くて震えていたら、他の先生が気づいて抱いて教室へ連れて行ってくれた。中学校に進学してから弁論大会で「教師と一緒にいじめをした」と弁論で告白した生徒がいた。 以上 原則共学保障と合理的配慮に関する裁判例 2012年2月3日 大谷 恭子 教育機関は、本人・保護者が求めているにもかかわらず普通学校への就学、幼稚園・保育園への入園を、そこでの教育が不可能もしくは著しく困難であることを証明できない限りは拒否できず、当該児童の就学・入園への合理的配慮を提供する義務がある。 これに関し、以下の判決例がある。 @徳島県藍住町立幼稚園入園拒否事件(徳島地決2005年6月7日判例自治270号) A東大和市立保育園入園拒否事件(東京地決2006年1月25日判例時報1931号) B奈良県下市町立中学校入学拒否事件(奈良地決2009年6月2 日判例自治328号) いずれも仮の義務付け訴訟において就学・入園が認められたものである。 以下、@徳島県藍住町立幼稚園の判旨から、特に公立教育機関における合理的配慮義務に関する判断例を紹介する。 ○ 障害のあるAのα幼稚園への就園を仮に許可することを義務付けるのが相当であるとされた事例 徳島地裁 平成17年6月7日判決 事件番号 平成17年(行ク)第4号 事件名 仮の義務付け申立事件 結果 認容・確定 出典 最高裁判所ホームページ (2) 裁量権の逸脱又は濫用 ア 幼稚園の入園許否の裁量権 幼稚園教育は,幼児を保育し,適当な環境を与えて,その心身の発達を助成することを目的とするものであり(学校教育法77条),地方公共団体が設置する公立の幼稚園の入園は,幼稚園の設置者と保護者との間で上記幼稚園教育を実施するための教育施設の利用関係を設定する行為である。幼稚園の入園に関する事項については,学校教育法等に規定がないことなどからすれば,幼稚園長又は教育委員会は,公立幼稚園への入園申請を許可するか否かについて裁量権を有するというべきである。 イ 裁量権の範囲 (ア) 子どもには,一人の個人又は市民として,成長,発達し,自己の人格を完成するために必要な教育を受ける権利が憲法上保障されており,子どもに対する教育の制度や条件を整備することは国家の重要な責務であるというべきである(憲法26条等参照)。 子どもにとって,幼児期は,その健康かつ安全な生活のために必要な習慣を身につけたり,自主的,自立的な精神を育んだり,集団生活を経験することによって社会生活をしていく上での素養を身につけたりするなどの重要な時期であり,幼稚園教育は,義務教育や普通教育ではないものの,幼児の心身の成長,発達のために重要な教育として位置づけられるべきものということができる。 そうだとすれば,地方公共団体としては,幼児の保護者から公立幼稚園への入園の申請があった場合には,これを拒否する合理的な理由がない限り,同申請を許可すべきであり,合理的な理由がなく不許可としたような場合には,その裁量権を逸脱又は濫用したものとして,その不許可処分は違法になると解するのが相当である。 (イ) 前記1に認定したとおり,本件不許可決定は,Aのα幼稚園への就園の申請である本件申請について,Aに身体障害があり,これに対し,人的,物的に十分な配慮をすることができないことを理由としてされたものである。地方公共団体にとって幼稚園において障害を有する幼児を受け入れることは,施設面等の物的な配慮や,教職員等の負担の増大に対する人的な配慮が必要となり,そのためには財政的な措置等を要することなどが想定されることは明らかである。しかしながら,障害を有する幼児に対し,一定の人的,物的な配慮をすることは,社会全体の責務であり,公立幼稚園を設置する地方公共団体においてもこのような配慮をすることが期待されるものというべきである。心身に障害を有する幼児にとって,社会の一員として生活するために成長,発達していくためには,特に,幼少期から,障害の有無にかかわりなく他者とともに社会生活を送り,自主的,自立的な精神を育むことが重要であると考えられるほか,身体に障害を有する幼児にとっては,その障害を克服する意欲を持続するためにも,他者との社会生活が重要となる場合もあると考えられる。そうだとすれば,心身に障害を有する幼児の公立幼稚園への就園の申請に対する許否の決定をするに当たっては,当該幼児に障害があり,就園を困難とする事情があるということから,直ちに就園を不許可とすることは許されず,当該幼児の心身の状況,その就園を困難とする事情の程度等の個別の事情を考慮して,その困難を克服する手段がないかどうかについて十分に検討を加えた上で,当該幼児の就園を許可するのが真に困難であるか否かについて,慎重に検討した上で柔軟に判断する必要があるというべきであり,そのような観点からみて不許可処分に合理的な理由がないとみられる場合には,当該不許可処分は,裁量権を逸脱又は濫用したものとして違法となると解すべきである。 ウ 裁量権の逸脱又は濫用の有無 中略 しかしながら,以上に述べたAをα幼稚園に就園させるに当たっての問題点は,Aの移動等の介助,安全の確保等をするため,教職員の加配措置を採ることができれば克服することが可能であるということができる。 この点について,本件不許可決定は,Aの障害に対応するための教職員の加配措置を採ることが困難であることを理由の一つに挙げており,被申立人も,財政上の理由等を根拠に加配措置を採ることは困難であると主張する。 (ウ) そこで,Aのα幼稚園への就園を可能とするために教職員の加配措置を採ることができないとの上記判断が合理的なものであるか否かについて検討する。 a 前記1の認定事実によれば,被申立人は,平成13年ころから,財政的に逼迫した状況に陥り,平成17年度においても,平成16年度と比較して,約4億6000万円の予算を縮減し,職員数や職員の報酬の削減をするなど,行財政改革に取り組んでいるほか,歳入不足を補うため,教育関係の積立金を約3億2600万円取り崩して,他の行政施策のために運用せざるを得ない財政状況であり,教職員等の加配には相当程度の費用を要することからすれば,教職員の加配措置を採ることが容易であるということはできない。 しかしながら, @ 地方公共団体がその財政状況の悪化等を理由として,心身に障害を有する幼児について公立幼稚園への就園を不許可にすることができるとすれば,多くの地方公共団体の財政状況が悪化している現状において,およそ障害を有する幼児のすべてが公立幼稚園へ就園することができないことになりかねない。幼児にとっての幼稚園教育の重要性や,行政機関において障害を有する幼児に対してできる限りの配慮をすることが期待されていることなどにかんがみれば,地方公共団体が,財政上の理由により,安易に障害を有する幼児の就園を不許可にすることは許されないというべきである。 A 教職員の加配に要する費用については被申立人の予算全体からみれば多額とはいえないことからすれば,Aのために教職員の加配をすることにより被申立人の財政状況を著しく悪化させるものとは考え難い上,前記1の認定事実によれば,町立幼稚園においては,別紙1 加配状況一覧表のとおり,心身に障害を有する幼児のために教職員の加配をしているのであるから,被申立人の財政上の理由だけから,他の園児と異なり,Aについては加配措置を採ることが不可能であるとは直ちに認め難い。 B γ幼稚園においては,○の障害を有する園児1人に対して教職員1人の加配がされていることなどからすれば(別紙1 加配状況一覧表),A1人のために教職員の加配措置を採ることについて,被申立人の財政上の理由から不適切であると評価されるものとは考え難い。 C 前記1の認定事実によれば,被申立人の町内には,障害を有していて幼稚園に就園していない幼児がAを含めて5人いることから,被申立人は,A1人のために教職員の加配措置を採ると,他の4人の幼児にも同様の対応策を採らなければならなる可能性があり,そのようなことは被申立人の財政上到底不可能であると主張する。 しかしながら,A以外の4人の幼児が町立幼稚園への就園を希望しているか否かも,Aと他の4人の幼児とで就園の諸条件に係る事情が類似するものであるか否かも明らかではないのであるから,Aについて教職員の加配措置を採ったとしても,他の4人の幼児にも同様の措置を採る必要があるということはできない。被申立人の上記主張は,Aについて上記措置を採らない理由となるものとはいえない。 D 町教育委員会の会議録(甲11)をみても,町教育委員会等において,本件申請についての許否の判断をするに当たり,A1人のために加配教職員1人を配置する措置を採ることについて,被申立人の全体的な財政や教育関連予算等に与える影響等を具体的に検討した形跡はなく,上記対応策を実施することが不可能であるとの判断をするに当たり,上記のような財政上の観点を重視していたかは疑わしい。これらの事情からすれば,被申立人の財政上の理由を,Aについて教職員の加配措置を採らないとする決定的な理由とすることはできないというべきである。 d 以上に説示したところによれば,被申立人等において,その財政上の理由,採用手続上の理由等から,Aのために教職員を加配する措置を採ることが不可能ないし著しく困難であるということはできず,○についても申立人がすることが可能であるから,加配する教職員が医療資格を有する者に限定されるということもできない。Aのα幼稚園への就園を可能とするために教職員の加配措置を採ることができないとの判断は合理性を欠くというべきである。